純狐の息子は二度目の生で母を追う   作:四国の探索人

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純狐の息子は二度目の生にて母を追う
新たな生は洩矢の息子


ある幼い少年、純狐の子である伯封は父によって命を奪われ、死後の世界へと辿り着いた。目を開けた彼の前には広い川が広がっていた。

 

伯封は血濡れの体を見下ろし、その血を洗い落とそうと川に手をゆっくりと伸ばす。

 

小町:「それはやめたほうがいいよ、坊や。」

 

その声を聞いて驚き、伯封は声の主に顔を向けると、そこには赤い髪と鎌を携えた女性、小野塚小町が立っていた。

 

小町:「こんなに小さいのに、かわいそうなことよ。自分がどうなったか、分かっている?」

 

伯封:「父に殴られて、それから、、、」

 

小町:「あ、親からの暴力か。あまり愛されなかったのか?」

 

伯封:「お母さんはとっても優しかったんだ!」

 

小町:「そうか、じゃあお母さんがいるところまで案内してあげよう。ほら、そこに船があるから、一緒に乗りましょう?」

 

伯封は頷き、小町とともに船に乗る。小町は力強く船を漕ぎ、彼らは三途の川を渡っていく。

 

伯封:「お姉ちゃんは毎日船を漕いでいるの?」

 

小町:「うん、君だけじゃなくて、毎日いろんな人を運んでいるのさ。」

 

伯封:「大変だね。」

 

小町:「ありがとう、気を使ってくれて。ほら、もうすぐ向こう岸だよ。」

 

小町は無事に対岸まで辿り着き、二人は船から降りる。

 

伯封:「この建物は?」

 

小町:「ここはね、君が良い子かどうかを見定める場所だよ。一緒に入りましょう。」

 

二人が中に入ると、緑の髪を持つ女性、四季映姫・ヤマザナドゥが彼らを待っていた。

 

四季映姫:「小町、今日はちゃんと仕事をしているみたいですね。」

 

小町:「四季様、この子を見たら仕事をサボれるわけないですよ。」

 

四季:「いつもそうなら助かるのですが、、、さて、この子のこれからを決めましょう。」

 

四季映姫は閻魔の鏡を覗き込み、伯封のこれまでの人生を確認する。

 

映姫:「問題はないですね。転生できますよ。まだ子どもですから、次の生をすぐに得ることができます。」

 

伯封:「お母さんに会える?」

 

映姫:「残念ですけど、お母さんと会える可能性は低いでしょうね。」

 

伯封:「ここに来るのは亡くなった人なら、母も来ますか?」

 

映姫:「待つことはできますが、いつ来るかわからないし、仮に会えたとしても一緒に次の生を受けられる保証はありません。」

 

伯封:「それでも構いません。」

 

映姫:「分かりました。お待ちなさい。気が変われば次の生を授けますよ。」

 

その日から、伯封は母が来るのをひたすら待ち続けた。1年、2年、そして10年、20年と経つが、母は姿を現さなかった。待機している間に、父が通りかかったこともあったが、親子は何も言葉を交わすことはなかった。

 

四季映姫:「まだ待ち続けますか?」

 

伯封:「はい、待ちます。母に会いたい……。」

 

彼はさらに待ち続けた。50年、100年が過ぎても、母は現れる気配がなかった。

 

四季映姫:「お母さんはまだ来ませんね。それでも待ち続けますか?」

 

伯封:「……もう少し待ちます。」

 

少年は何百年と待ったが、結局母は姿を見せることはなかった。

 

映姫:「お母さんはかなりの長命のようですね。もう待っても無駄かもしれません。いっそ次の生を受け、母を探してみるのはどうでしょうか?」

 

伯封:「僕はお母さんのことを覚えて生を受けることができますか?」

 

映姫:「それは無理です。しかし、魂は同じです。お母さんなら、息子のことを分かる可能性はあるかもしれません。」

 

伯封:「会える可能性があるなら、転生します。たとえ僕が覚えていなくても、お母さんなら……」

 

伯封は四季映姫に頼み、転生することを決めた。映姫はその願いを受け入れ、伯封を新たな人生に送り出すことにした。

 

小町:「元気でね、伯封。お母さんと出会えることを祈っているよ。」

 

四季映姫:「次の生が幸多きものでありますように。」

 

伯封:「待たせてくれてありがとうございます。」

 

こうして、伯封は新たな旅立ちを迎え、再び生を受けることになったのだった。

 

伯封は新たな生を受け、青い空が広がる穏やかな村に生まれ落ちた。柔らかな日差しが窓から差し込み、彼の小さな体を優しく包み込んでいる。あたたかい布団の中で、心地よい母の声が響き渡る。

 

八坂神奈子が赤子の無邪気な泣き声を聞き、微笑みながら薄明かりの中に立ち尽くしていた。彼女の目は喜びに輝き、その表情には笑みが浮かんでいる。小さな命が宿ったことを実感し、心の奥深くから湧き上がる幸福感を感じていた。

 

一方、洩矢諏訪子はその様子を見つめながら、思わず口元に笑みを浮かべる。「子を授かるなんて、いつぶりのことだろうか」と感慨深くつぶやく。彼女の心には、神としての存在と、人々を見守る使命が交錯していた。

 

神奈子が赤子に目を向け、「相手は誰なんだ?」と問いかけると、諏訪子は嬉しそうに、その意図を察知して答えた。「知ってて聞いているでしょ、私は神様だから、相手がいなくても授かるのだよ」と、自信に満ちた声で返した。

 

部屋の中には幸福感が満ち、伯封の誕生を祝福するかのように、穏やかな風が窓から入り込む。神奈子はしばらく赤子を見つめ、その無邪気な目が未来への希望を映しているのを感じていた。この瞬間の大切さが、彼女の心に深く刻まれていく。

 

「名前はどうする?」神奈子が真剣に考えると、諏訪子も思考を巡らせる。彼女の眼差しには、赤子に与える名前の重みを感じているようだった。

 

 諏訪子は考え込むようにしばらく黙っていた後、「うーん、諏訪男にでもしておく?」と冗談めかして言った。

 

すると、神奈子は驚いたように目を丸くし、「止めてあげなさい!虐めでも受けたらどうするの?」と反論した。母親として、子どもの名前には特別な意味が込められているべきだと感じていた。

 

諏訪子は少し笑いながら、「じゃあ、どんな名前がいい?」と赤子に問いかけた。彼女の心には、愛情からこの子にふさわしい素敵な名前を与えたいという思いがあった。

 

神奈子は首を振りながら、「おい、諏訪子。産まれたばかりの子供に名前を聞いても、、、」と言いかけると、その瞬間、赤子が小さな声で「はくふー。」と呟いた。

 

二人は驚き、その言葉に耳を澄ます。諏訪子は目を輝かせ、「はくふー?じゃあ、私の名前も入れて諏伯(すはく)にしよっか!」と興奮気味に提案した。

 

神奈子は少し考えた後、「まあ、諏訪男よりかはマシだな。洩矢諏伯(もりやすはく)、悪くない名前だ。」と頷く。その声には微笑みがこぼれ、赤子に対する期待感が溢れていた。

 

「諏伯、今日からよろしくね」と、諏訪子はその小さな存在に向けて愛情を込めて言った。新しい名前、新しい人生が始まる瞬間、部屋には優しい温もりと未来への希望が満ちていた。赤子はその新たな名を胸に、これからの道を歩み始めるのだろう。

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