純狐の息子は二度目の生で母を追う   作:四国の探索人

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月からの使者

諏伯は変わらぬ日々を京で過ごしていたが、ある日、帝からの使者により輝夜姫の元へ向かうように指示を受けた。

 

「例の月からの使者の件か。本当に月人がいるなんて、まだ半信半疑ですけど。」と心の中で呟きながら、支度を整え大和へと向かうことにした。

 

かつて訪れた輝夜姫の屋敷には物見櫓や兵士の詰所が設けられ、防衛の準備が整っていた。騒がしい雰囲気の中、縁側に腰掛けていると輝夜がやってきた。

 

「あら?その顔、、、紙飛行機の人ね。」輝夜が微笑んで話しかける。

 

「覚えておられましたか。」諏伯は少し驚いて答えた。

 

「覚えてるわよ。地上で初めて飛ぶものを見たわ。」と輝夜は楽しそうに言った。

 

「月にもあるんですか?」と興味を持って尋ねる諏伯。

 

「沢山あるけど、地上にはないから説明はできないわ。久しぶりに紙飛行機折ってよ!」と輝夜がリクエストした。

 

「いいですよ。」と言いながら、紙飛行機を折り始めた諏伯はさらに聞いた。「そういえば、貴公子達の求婚はどうなりました?」

 

「あれね。誰も課題をこなせなかったわ。」と輝夜は軽く笑った。

 

「不比等殿もですか?余程に難しい難題だったんでしょうね。」と諏伯は感心する。

 

「え、彼の場合は蓬莱の玉の枝を職人に作らせて持ってきたわ。ヒントなしにほぼ正解の見た目だったから驚いたけど偽物なのが分かったのよね。」

 

「落ち込んでないといいですけど。」と諏伯は心配になった。

 

「全員落ち込んでたわ。難題に四苦八苦する姿は面白かったわよ!」と輝夜は笑いをこらえながら言った。

 

諏伯は面白がる輝夜の話を聞きながら、貴公子達を少し気の毒に思った。

 

そんな話をしている最中、兵士たちが月の異変に気づいた。

 

「来たようね。」と輝夜姫が静かに言った。

 

月周辺の雲が急速に移動し、まるで月と地上を繋ぐ架け橋のようになった。月の方から使者達と思わしき一団が屋敷の上空に降りてくる。

 

「輝夜姫の迎えに参った。地上のもの。姫を渡されよ。」と月の使者が宣告した。その場は静まり返ったが、輝夜姫は諏伯の背中に寄り添い、小さく「帰りたくない。地上にいたい。」と呟いた。

 

その小さな声は静寂の中に響き渡り、兵達は一斉に鬨の声を上げ、弓兵たちは月の使者に向かって矢を放ち戦闘が開始された。

 

月の使者は矢を払い除け、強力な弾幕を生成して兵士達に向けて放った。射程、威力共に優れた使者達は一方的に兵士達を撃破していった。

 

「分かってはいたが、こんなに弱いとは。穢れた土地め。」と月の使者は侮蔑をこめて言った。

 

 諏伯は覚悟を決め、神力を使って土を固め、それを月の使者に向けて放った。

 

月の使者は一瞬驚きながらも弾幕でその攻撃を相殺した。「地上に力ある者が存在したとは。」と思わず口にしながら、一人の使者が地上に降り立ち、諏伯の前に立った。

 

「名は?」と冷やかに尋ねる月の使者。

 

「旅の者、諏伯です。」と諏伯は短く答えた。

 

「そうか、抵抗するなら死ね。」と、使者は多方向から弾幕を放ち攻撃を仕掛けてきた。矢のような攻撃が諏伯を襲い、着弾音が響く中で、使者は勝利を確信した。

 

「厄介者は早めに潰すに限る。」彼は不敵に微笑んだ。

 

「生きてますよ。」と諏伯が静かに言った。

 

「何?」と驚いた使者が目を凝らすと、諏伯の周りには土で作られた壁が生成され、その攻撃を防いでいた。

 

「こんな防御初めて見る。」と呟く使者の目の前で、諏伯は再び動き出した。

 

「次はこっちですね。」と言って、右手を上げるとその手に土を集め、巨大な拳を形作った。

 

「なっ!!」と驚愕する月の使者。

 

諏伯はその巨大な拳を振り下ろし、月の使者に直撃させた。使者は弾幕で防ごうとしたが、防御が間に合わずに衝撃を受け、気絶してしまった。

 

この一撃は、諏伯の力強さと意志を地上と月の両方に示すこととなり、輝夜姫を守るための闘志を見せつけた。この行動により、他の使者たちは動きを一瞬止め、地上人の潜在能力を再評価し始めたかもしれない。

 

 月の使者の一人を倒したことにより、回りから歓声が上がった。しかし、月の使者たちは驚きからかしばらく無言が続いた。

 

「力を用いて物質を動かすなんて、穢れで攻撃するようなものだ、、、」と月の使者Aが呟く。

 

「しかし、どうする?あんな戦い方の相手は習ってないぞ。」と使者Bが困惑を示す。

 

「ここは月の叡智に頼んでみては?」と使者Cが提案する。

 

その提案に周りは「それだ!」と言い合いながら、奥にいる月の叡智を呼び寄せた。

 

奥からは、白銀の髪をたえた女性が現れた。

 

「遠くからだけど見させてもらったわ。ただ、あなたは普通の地上人ではないようね。」と白銀の女性が言う。

 

「帰っていただけるとありがたいんですが。」諏伯は落ち着いて返答した。

 

「帰る? 月人が地上人に負ける訳がないのに、帰る理由はないわ。」と白銀の女性は冷静に言い放つ。

 

その会話を見ていた輝夜姫が姿を現した。「永琳?永琳じゃないの!」と声を上げる。

 

「姫様、お久しぶりです。」と永琳は微笑んで返した。

 

「永琳!私、帰りたくない、地上に居たい!」と輝夜は強く訴える。

 

しかし、永琳は輝夜の願いに「駄目です。」と冷たく返し、諏伯の方に戦闘態勢を取った。

 

緊張が再び高まる中、諏伯は輝夜姫を守るためにどう立ち向かうかを考え、月の叡智である永琳との対決に備えた。

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