純狐の息子は二度目の生で母を追う   作:四国の探索人

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故郷への帰還

諏伯は諏訪地方に帰る途中、疲れた体を休めるために道端の小さな休憩所に立ち寄った。周囲の静けさにホッとし、少しの間休息を取ることにした。

 

その時、突然、一人の怪しげな男が近づいてきた。男は自らを詐欺師であることを隠し、親しげに話しかけてきた。「おやおや、旅のお方。珍しい薬を手に入れたが、興味はないかな?」

 

諏伯がその言葉に耳を傾けると、男は続けて言った。「この薬は、体力を回復させる驚異的な効果があると言われているんだ。試すだけでもお得なこと間違いなしだ。」

 

男は小さな袋から丸薬を取り出し、諏伯の前に差し出した。その薬は光を受けて煌めき、見るからに特別なものに見えた。彼の心の中には、「もしかしたら本当に役立つかもしれない」という期待がよぎった。

 

「その薬と引き換えに、どれくらいの金が必要だ?」と尋ねると、男はすかさず答えた。「たったの五十金だ。飲んでみれば、その効果を実感できること間違いなしさ。」

 

諏伯は少し考えたが、薬の魅力に抗えず、財布からお金を取り出し、男に渡した。男はニヤリと笑いながら金を受け取り、薬の入った袋を渡した。

 

「いい選択だ、旅のお方。これを飲めば、貴方の未来は明るい!」と男はとんでもない大げさな笑顔で言い、あっという間に立ち去った。

 

諏伯はその後、しばらくその場に留まって薬を見つめた。袋を開けて丸薬を取り出すと、特別な光沢があることに気づいた。しかし、不安が心の底に残り、飲む前にその薬の本当の正体を確かめるべきだと感じた。

 

諏伯はその場で丸薬を飲んでみたが、特に変わった気はしなかった。しばらく何も感じずにいると、近くの休憩所にいた一人の旅人が心配そうな表情で声を掛けてきた。「それ、詐欺だよ!あの男、信用しちゃいけない。」

 

その言葉は耳に入ったものの、諏伯の心には不思議と「この薬は本物だ」という確信が芽生えていた。彼は自信を持ってその効果を信じていた。

 

 諏伯に薬を売った男は逃げながら高笑いしていた。「笑いが止まらねぇなあ!老夫婦を殺して得た薬が50金にもなるとはねぇ!」

 

 諏伯は50金で良薬を手に入れたと思い込み、再び旅路に戻った。しばらく歩き続けて東海道を進んでいると、見覚えのある女の子が泣いているのに気づいた。

 

「ん?すいません、もしかして」と彼は声をかけた。その声に反応した彼女は、泣くのを止めて顔を上げた。

 

「諏伯のお兄さん。」と妹紅が言った。

 

「やっぱり妹紅でしたか。久しぶりですね。お父さんは元気ですか?」と一瞬の嬉しさを噛みしめながら尋ねる。

 

しかし、妹紅は悲しげな声で言った。「輝夜姫に振られて傷ついて自暴自棄になって、娘を置いて自殺したよ。」

 

「えっ、亡くなったのか。今はどうしてるんですか?」諏伯は信じられない思いで聞き返した。

 

妹紅は目に涙を浮かべながら、「今は知り合いもいないから、一人で生きてる。」と答えた。

 

その言葉を聞いて、諏伯は強い胸の痛みを覚えた。「そうなんですね。よかったら故郷に帰るところなんですが、一緒に行きますか?」と提案した。

 

妹紅は一瞬驚いてから、少し控えめに聞いた。「いいの?」

 

「もちろん!」と彼は笑顔で応じた。「紙飛行機で遊んだ仲だろ?」

 

妹紅は少し微笑みを浮かべ、諏伯の申し出を受け入れることにした。彼は妹紅の手を優しく取ると、再び故郷へと向かうことにした。

 

二人は旅を続けながら、これまでの辛い出来事や互いの思い出を語り合い、少しずつ心の距離を縮めていった。

 

 諏伯と妹紅が故郷に帰ると、母親である諏訪子が温かく迎えてくれた。

 

「お帰り諏伯。ん?」諏訪子は隣にいる妹紅に目を向け、少し考える表情を浮かべた。

 

「神奈子ー!諏伯が子ども作って帰ってきた!」と冗談ぽく叫んだ。

 

その声を聞き、奥からドタドタと神奈子が走って来る。「諏伯。お前もそういう年なのは分かるが、子ども作るなら相手を親に紹介してからだな。」と真面目な顔で諏伯を説教した。

 

その様子を見て、諏訪子は思わず笑い出した。「何がおかしい!」

 

「諏伯の子なわけないでしょ。神奈子ったら笑っちゃうよ。」と冗談めかして言う。

 

「そうなのか、騙された。」と神奈子は少し恥ずかしそうに反応した。

 

その瞬間、神奈子のドタドタに気づいた東風谷の巫女もこちらに駆け寄ってくる。彼女は明るい表情で、「諏伯君にもちゃんとお友達が出来たんですね!!」と言った。

 

「なんか失礼なこと言われた気が、、、。」と諏伯は困惑しながら心の中で思ったが、笑顔を絶やさなかった。

 

妹紅は照れくさそうに名乗った。「藤原妹紅です、、、。」

 

諏伯はその場の空気が和やかになり、心温まる瞬間を感じた。故郷に戻り、かつての仲間たちが交わす会話の中で、彼は少しずつ心の重荷が軽くなるのを感じた。

 

「これから一緒に暮らしながら、また新しい思い出を作っていきましょう。」と諏伯は妹紅に優しく微笑んだ。

 

家族や友人との再会が、彼らの未来に新たな希望をもたらすことを願いながら、彼らは楽しげに語り合い、その日は賑やかな時間が流れていくのであった。

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