その日の食事の席で、諏伯と妹紅は旅の思い出について話していた。家族や友人たちからは多くの質問が飛び交った。
諏訪子は興味深げに聞いた。「それで諏伯。一体何と戦ってたんだい?」
諏伯は少し戸惑いながら答えた。「やっぱ、知ってるよね。」
神奈子が納得した様子で話す。「念の為にかけておいた加護が発動するとはな。てっきり諏伯はダメージを受けないものと思ってたが。」
「月人と戦っててね。外傷はなかったけど、相手は浸透勁っていう技で内臓のみを攻撃してきた。」と諏伯は続けた。
諏訪子は心配そうに「内臓ならダメージが入るのか、、、全く無理をして」とため息をつく。
東風谷の巫女は真剣な顔で「そうですよ!諏伯君。私の加護がなければどうなっていたか!」と強調した。
妹紅が尋ねた。「月人と戦ったと言ってたけど、輝夜姫のとこにいたの?」
「そう。帝からの頼みで輝夜姫を守ってたんだ。守備兵は皆負けて僕だけ生き残った。」と諏伯が答えると、妹紅は少し沈んだ表情で訊ねた。「輝夜姫は帰ったのか?」
諏伯は一瞬迷ったが、「あ。帰ったよ。」と答えた。
妹紅は静かに「そう。分かった。」とだけ言った。
神奈子は妹紅の方へ目を向け、「そういえば、親が自殺したと言ってたが、親戚はいなかったのか?見た所貴族の娘なら引き取り手がいただろう?」と尋ねた。
「、、、みんな気持ち悪がって見捨てられた。」と妹紅は少し声を震わせて答えた。
諏訪子が不思議そうに顔をしかめる。「見捨てられた?綺麗な顔しているのにそれまた不思議な話だね。」
妹紅は真剣に語り始めた。「蓬莱の薬を飲んだの。それでどんなに傷を負っても死ななくなった。」
「蓬莱の薬?神奈子知ってる?」と諏訪子が訊ねると、神奈子は首を傾げて「いやぁ~。聞いたことないけど。」と答えた。
妹紅は続けた。「諏訪地方にはまだ話が来てないのかな。死ぬことも老いることもなく、傷ついても再生する夢のような薬。」
「好奇心から帝の使いを富士山にて殺して奪ってしまった。」と震えながら告白する妹紅に、皆は驚愕し、言葉を失った。
その場に重い静寂が訪れた後、神奈子が静かに話し始めた。「やってしまったことは変えられない。それは君の一生の罪になるだろう。」
妹紅はその言葉に打たれ、「、、、。」
神奈子は続けた。「殺した男に対して悪いと思うなら、これから償い続けることだ。神から言えるのはここまでだ。」
涙を流しながら妹紅は「分かった。」と答えた。彼女の心には、これからの人生をどう過ごすか決意が芽生えていくのだった。
神奈子は微妙な笑顔を浮かべ、「どおりで人より魂の形が歪なのが分かった。ところで諏伯、何か私に言うことある?」と訊ねた。
諏伯は冗談めかして答えた。「え?たまには神様らしいこと言ってるなとか?」
諏訪子は困った顔で言った。「、、、。神奈子、本当に諏伯は気づいていないよ。」
神奈子は溜息をつき、「全く諏伯は、、、。正直に答えなよ?妹紅の魂が歪なのは分かったが、諏伯。お前も妹紅と同じ魂をしているぞ。何かしただろ?」
諏伯は驚きつ答えた。「蓬莱の薬なんて飲んでないけど?」
そこで諏訪子が、彼に酒を注いだ器を差し出した。「諏伯、これ飲んでみな。」
諏伯は恐る恐る飲んでみるが、普通の味だと思った瞬間、「これ普通の味じゃ、、、グハッ!」と叫び、目や耳から血が噴き出した。
東風谷の巫女が慌て問いかける。「諏訪子様、何を飲ませたんですか?」
「蛇の毒。」諏訪子は淡々と答える。
東風谷の巫女は驚いて声を荒げた。「息子になんてことを!!」
「まあ見てなって。」と諏訪子は冷静に言う。
諏伯はしばらく苦しんでいたが、やがて体の動きが止まった。周りはその場に緊張が走る。
しかし、数秒後、諏伯は何事もなかったかのように立ち上がった。「あれ?」
諏訪子は面白そうに笑いながら言った。「蓬莱の薬と同じ症状が出てるよ、諏伯。」
諏伯は首をかしげ、心当たりを探そうとして記憶を辿った。何故こんなことになっているのか、彼は理由を探し始めた。
諏伯は突然思い出し、「あっ!!」と叫んだ。
神奈子が期待しながら問いかける。「思い出したかい?」
「そうだ、あの薬売りの男だ!!薬があるからと50金で購入したんだ。」と諏伯は話し始めた。
神奈子は呆れ気味に注意した。「諏伯。お前、人を疑いなさいよ。50金なんて法外な金額。」
妹紅も思い当たるところがあるようで、「噂だけど、輝夜姫の育ての親は蓬莱の薬を受け取った後に殺されたらしいからそれじゃ、、、。私は流石にそっちからは奪えないと思っていかなかったけど。」と話す。
「待って待って。みんな、俺はそんな薬が欲しくて人殺しなんてしないからね。」と諏伯は否定しながら弁解した。
諏訪子は冷静に推測を述べる。「強盗が、盗んだものを法外な値段で売ったというところかね。本当は50金じゃすまない呪いのようなものだったみたいだけど。」
神奈子は深く考えながら言った。「信じて買って服用したわけか、、。」
東風谷の巫女が確認するように問いかけた。「つまり諏伯君は死ななくなったんですか?」
諏訪子は溜息をつきながら答える。「そうだね。不死の呪いだよ全く。息子にこんな呪いを売りつけおって。」
この一件を通じて、不死という一見魅力的に見える特性が、実は重い呪いであることを理解した皆は、これからどうするべきか頭を悩ませた。
神奈子は微笑みながら言った。「幸いにして私と諏訪子は神様だ。既に千年単位で生きてるから、信仰が失われない限りはここにいてやれるぞ。」
諏伯は少し苦笑いしながら、「不幸中の幸いなのだろうか。」とつぶやく。
諏訪子が続ける。「息子の死を見なくて済むのは喜んでいいのかもだけど、諏伯はこれから関わった人間みんなの死を見るんだから覚悟しなよ。」
「変なもの買わなきゃよかった。」と諏伯は愚痴る。
そこへ東風谷の巫女が力強く言った。「私も命ある限りは一緒にいますからね!」
「ありがとう。」と諏伯は感謝の気持ちを伝える。
妹紅も少し安心した様子で言った。「このまま一生孤独かと思ったけど、諏伯のお兄さんが一緒にいてくれるならよかった。」
諏伯は心の中で、幸いにも一緒にいてくれる家族や友人たちへの感謝の気持ちが湧き上がってきた。
諏伯「それにしても母さん。確証していたとはいえ息子に蛇の毒飲ませないでよ。」
諏訪子「ごめんごめん。外傷は元々加護により受けないから毒なら死ぬかなと思って。蓬莱の薬の効果を手っ取り早く知りたかったからさ。」
後日談。
諏訪子が立ち上がり、「ちょっと出てくるね。」と言い残す。
神奈子は理解したように頷き、「分かった。」と返す。
諏伯が不安そうに尋ねる。「母さんは?」
神奈子は少し真剣な表情で、「多分聞かない方がいいぞ。」と忠告する。
暫くして、ある藪の中では、薬売りを名乗る男が大量の蛇に噛まれた死体が見つかったという噂が立っていた。