縛られた諏伯は、帝の前まで連れて行かれた。
「諏伯。お主の功績を考えると陰陽師連中の事を完全に信用した訳ではない。本当はどうなのだ?」と帝は問いかけた。
「私は妖怪に京を襲わせたりなどしていませんし、輝夜姫も戦った末に負けて月人に取られました。」と諏伯は強く主張する。
卑しい陰陽師が横から口を挟む。「帝様。やったやってないの事などいくら言っても無駄です。」
「証拠でもあるのか?」と帝はさらに疑念を抱く。
「証拠なんてあるわけないだろ!」と諏伯は感情的になった。
卑しい陰陽師は一つの袋を投げ、それが倒れて中身を晒す。「これが何か分かるか?」
袋の中にはお金が入っていた。
「何ってただの金だろ。」と諏伯は冷静に言った。
卑しい陰陽師は続ける。「ここには50金ある。」
「50金?あっ。」諏伯は最近詐欺師から買った薬のことを思い出した。
「お前まさかあの男を使っ、、」と諏伯が言いかけると、卑しい陰陽師は帝に告げる。
「帝様!この諏伯はあろうことが輝夜姫の育ての親を殺害し、蓬莱の薬を奪ったのです。初めは金の力で買おうとしたのでしょう。金が現場に落ちていました。」
帝は考え込む。「あの金、、、確かぬえ撃退の報酬と同額。いやでも諏伯がやったという証拠はない。」
卑しい陰陽師は力強く言った。「これが証拠です!」
短刀を手に取った陰陽師は、諏伯の胸に突き刺す。諏伯はその場で息絶えたが、数秒後に復活した。
「それは、蓬莱の薬の効果。」と帝が呆れた様子でつぶやく。
卑しい陰陽師は勝ち誇ったように宣言した。「これが証拠です。」
「お前があの男を使って売らせたんだろ!!」と諏伯は抗議するが、帝は黙り込み、さらに近づいてくる。その顔は怒りに燃え、諏伯を足蹴りする。
「お前か!お前のせいで!輝夜姫を失ったのか!!ぬえを引き込んだのもお前か!私の兵が死んだのもお前か!」と、帝は怒りを爆発させて言い放つ。
帝は何度も諏伯の頭を踏みつけ、その行動には容赦がなかった。諏伯は無力感に苛まれていたが、次第にこの状況を打破する手がかりを探し始めなければならないと感じ始めていた。彼は内なる力を信じ、さらなる闘志を燃やし続ける必要があった。
帝は冷酷な声で命じた。「その男はどうせ殺しても復活する!陰陽師管理の元、土の中に埋めてしまえ!」
「待ってください、帝様!私は!」と諏伯は必死に訴えたが、帝はその言葉を無視した。
「黙れ。お前の言うことなど聞きたくない!土に埋まれ!」と帝は冷たく命じた。
卑しい陰陽師が冷笑しながら言った。「ほら行くぞ、犯罪者。」
「やめろ!埋めるな!」と諏伯は抵抗するが、無情にも彼は外へと連れ出され、小間使いが用意した穴の中に放り込まれた。
「お前、こんなことしてどうなるのか分かってんのか!!」と諏伯は怒りをもって叫ぶ。
卑しい陰陽師は皮肉交じりに答えた。「モグラとでも仲良くして下さい。」
諏伯は怒りに満ちた気持ちの中、土の中に埋められることになった。彼は必死に叫び続けたが、次第に口の中に土が入り込み、さらに声を上げることができなくなった。周囲の声も次第に遠くなり、まるで孤立した空間に取り残されたかのようだった。
妹紅は、暗い道の真ん中で倒れ込み、恐怖に包まれていた。心臓がドキドキと音を立て、逃げるようにしてきた疲れが彼女を襲う。周りは静寂に包まれ、彼女の心の中に不安が広がっていく。「痛いし、暗いし、怖い。」と呟きながら、彼女の小さな体は震えていた。
孤独感が深まる中で、視界がぼんやりしてきた。妹紅は目を閉じて、どうにか心を落ち着けようとしたが、暗闇が彼女を包み込み、さらなる恐怖が押し寄せる。思わず顔を手で覆い、声をあげて泣き出した。「こんなところに一人でいるなんて、どうしていいか分からない…。」
泣いていると、周囲の静けさが破られ、誰かが近づいてくる気配を感じた。彼女の心臓はさらに速くなる。「誰?近寄らないで!」と叫びたかったが、声が出なかった。ただ怯えた目を向けるだけだった。
足音が近づくにつれて、妹紅は恐怖で身体が硬直してしまう。闇の中でその人物がどんな意図を持っているのか、全くわからない。彼女は背中を反らせ、自然と身を縮めた。心の中では、助けが欲しいと叫んでいるのに、外に出る言葉は封じ込められてしまっている。
その足音は次第に近づき、妹紅の目の前で止まった。彼女は恐怖のあまり目を閉じ、硬く身体を丸めた。
「ちょっと泣かないでよ。そんなに泣いてたら妖怪達に食べられるわよ。」と、優しい声が響いた。
妹紅はその声に引き寄せられるように目を開けた。そこには、封獣ぬえが立っていた。暗がりの中でも知性と優しさを感じさせる姿だ。
「まあ、正体不明の大妖怪である封獣ぬえ様が人間の食べられる心配をするのもおかしな話だけど、実害が出ると諏伯の奴に説教されるからね。」と、ぬえは軽い口調で話し、妹紅の表情を和らげようとした。
「諏伯お兄さん知ってるの?」と妹紅は意外な気持ちを隠せずに尋ねた。
「そりゃ知ってるわよ。アイツとは何度もやりあった仲でお友達よ。一応。」とぬえは答え、少し誇らしげな表情を浮かべた。
「諏伯さんが捕まって殺されそうなの!助けて!」と、妹紅は焦りのあまり叫んだ。その言葉は、彼女の心の中で湧き上がっていた不安と絶望を吐き出すものであり、ぬえの目にも明らかに映った。
ぬえは真剣な眼差しで妹紅に問いかけた。「諏伯が捕まった?誰に?」
「陰陽師の人達。」妹紅は必死に答えた。
「アイツがそんな簡単に捕まるような奴ではないと思ってたけど。」と、ぬえはさすがに驚きを隠せない。
妹紅の目には涙が滲んでいた。「私と友達の人が逃げられないからと大人しく捕まった。」
「それなら納得ね。」ぬえは静かに頷きながら言った。「あのお人好し。あなたはここで待ってなさい。加護を付けておくわ。私がアイツを助けてくる。」
妹紅は不安と期待の入り混じった気持ちでぬえを見つめた。「本当に助けてくれるの?」
「当然よ。」とぬえは笑みを浮かべ、飛行する準備を整えた。「安心して、少しの間守られているから。必ずアイツを助け出してみせるから。」
そう言って、ぬえは空高く舞い上がり、迅速な方向へと飛び去って行った。
「大人しくしていたのに、正体不明の大妖怪、友達のために京を混乱に陥れるか、アイツは助かっても喜ばなそうだね。」と、ぬえは心の中で呟きながら、優雅に空を駆け抜け、諏伯の元へ向かって行った。
彼女の胸には、諏伯を助けようという強い決意が満ちていた。どんな困難が待ち受けていようとも、彼を救うために全力を尽くすつもりだった。どこかで繋がる彼女の思いが、仲間への愛と絆を象徴しているようだった。