ぬえは京の上空で力強く松明を掲げ、笑顔で叫んだ。「京の皆さん久しぶり、正体不明の大妖怪封獣ぬえ!叫びが聞こえ鳴き声溢れる食楽園!旧敵無き今、今夜だけで何人犠牲が現れましょうか!」その声が街中に響き渡ると、家々の明かりが次々と灯り、街の人々は夜空を見上げた。
「ぬえ?ぬえだ!みんな気をつけろ!」と、恐れと混乱が広がる中、街の人たちは避難する準備を始めた。
ぬえはその様子を見て満足して言った。「みんないい感じに家の明かりをつけ始めたわね。そりゃ!」そして彼女は松明を高く掲げ、力強く叫んだ。「業火!灼熱フレア!」投げられた松明は空中で煌めき、彼女の魔力によって街の家屋を火事のように錯覚させる瞬間を生み出した。
「火事だ!みんな火事だ!逃げろ!火を消せ!」と、恐怖が広がり、人々が一斉に家から飛び出し始めた。パニックに陥った彼らは、お互いに押し合い、助け合うことも忘れて逃げ惑う様子は混乱そのものだった。
ぬえはそんな光景に目を細め、「うんうん。いい感じで恐怖してくれてるわね。」と満点の笑みを浮かべた。
その様子に気づいた陰陽師たちが姿を現した。「封獣ぬえ!貴様、今日みたいな日によくも!!」と怒声をあげ、彼らは一斉にぬえを取り囲む。
「わざわざ囲まれてくれたか!」と陰陽師の一人が挑発するように言った。
ぬえは冷淡な視線を送り、「諏伯はどこ?」と尋ねた。
陰陽師は冷笑を浮かべ、「諏伯?罪人だから埋めたよ。アイツ、最期まで死ななくて怖かったわ。本当は妖怪だったのかな。」と答える。周囲の陰陽師たちもその言葉に乗じて笑い出し、無邪気な笑顔を浮かべている。
「殺す。全員死ね!」とぬえは激しい怒りに満ちて叫び、攻撃を仕掛けた。
「正体変化!」と叫びながら、ぬえは陰陽師たちの姿を妖怪に変えてしまう。その瞬間、彼らの表情は驚愕に満ち、恐怖の影が瞬時に広がる。
混乱が生じ、変身した仲間に対して陰陽師たちは攻撃を始めた。「何をする!?」「仲間を攻撃するな!」と言い合いながら、彼らはお互いに刃を向けてしまう。
「こいつ、俺を攻撃してきたぞ!」一人が叫ぶ。別の陰陽師は、「あいつが本当に妖怪だ!」と、混沌とした状況に混乱しきった声を上げる。自分自身を守るために、彼らは同士討ちを始めざるを得なくなった。
流血の声と悲鳴が交錯し、陰陽師たちは互いに刃を交える。彼らの協力が一瞬にして崩れ、まるで狂ったような争いが繰り広げられる。ぬえはその光景を見て、冷たい笑みを浮かべながらつぶやいた。「何も出来ない陰陽師どもが。」
ぬえは、陰陽師達が同士討ちする混乱の中から、一人を捕らえた。彼女はその陰陽師の前に屈み込み、冷淡な視線を向けた。「諏伯はどこ?蛙にされたくなかったら答えて。」
「帝に連れて行かれたことしか分からん。」と、その陰陽師は震えながら言った。
「そう。ありがと。」ぬえは薄笑いを浮かべ、「性別だけで勘弁しといてあげるわ。」と告げると、彼女の力によってその陰陽師は女の姿にされてしまった。
話を聞いたぬえは、その後まっしぐらに帝の屋敷へと向かい、道中で抵抗してくる者たちに容赦なく斬り倒していった。鋭い刃が夜の闇を切り裂く音を響かせ、恐怖の影を広げながら進む。
屋敷にたどり着くと、すぐに帝と対峙した。「お前は、封獣ぬえか。私を殺すつもりか?」と帝は冷やかな目で彼女を見据えた。
ぬえは毅然とした態度で答えた。「諏伯の場所を教えなさい。埋めたとこまでは聞いたわ。」
「諏伯か。その名を、、、。」と、帝は少し考え込み、「奴なら裏手の要石の下だ。」と告げた。
ぬえはその言葉に素早く反応し、屋敷の裏手へと急いだ。「要石、要石、これね。」と彼女は石を見つけ、手を伸ばした。
「待て。奴を封印するためにそれを外したら、強力な封印の代償に災いが起こる。やめてくれ。」と、帝は焦りを見せながら彼女を止めようとしたが、ぬえは気にせず要石を引き抜いた。
「そう。あんたは諏伯が止めてと言って止めたの?」と、ぬえは冷たく言い放った。
要石を引き抜いた瞬間、ぬえは素早く諏伯を土から取り出し、空へ飛び去った。その瞬間、彼女の力が発動し、大気中に広がるエネルギーが笛のように震え、異変が生じた。
その直後、京全体が揺れ始めた。地震が轟音と共に街を襲い、多くの家屋が倒壊する。人々は恐怖の叫び声をあげ、混乱に包まれる。ぬえはその混乱の中で、諏伯を抱えながら空を飛び続け、後ろには破壊された京の風景を見下ろしていた。
ぬえは京都を脱出した後、妹紅の元へと急ぎ、諏伯を優しく降ろした。土まみれの彼の姿を見て、妹紅は心配そうに声をかける。「土まみれ、、諏伯さん生きてる?」
ぬえは頷き、「生きてるようね。水をかけるからのきなさい。」と言い、彼女は諏伯の体に大量の水をかけ始めた。水が土を流し落とし、彼の古ぼけた衣服が元の姿を取り戻していく。
「死ぬかと思った、、。いや、実際何度か死んだんだけど。」と、諏伯は息を整えながら言った。
ぬえは安堵の笑みを浮かべ、「本当に生きてた。蓬莱の薬って凄いのね。」と感慨深くつぶやいた。
「ぬえ、礼は行っておくよ。目は見えなかったが、耳は聞こえた。直接見たわけではないけど、僕のために京の都を壊滅させたことも。」と、諏伯は心の底から感謝を述べる。
ぬえは少し茶目っ気を見せながら、「今から私を討伐する?」と尋ねた。
「命助けてもらったのにするわけないだろ。お前の心配をしてたんだよ。」と、諏伯は微笑みながら返した。
「十中八九、ただの大妖怪が日本中の陰陽師に狙われるでしょうね。」と、ぬえは冷静に語った。
妹紅は申し訳なさそうに、「私が助けを求めたばっかりに、、。」と呟いた。
「妹紅が悪いもんか。俺が騙されたのが全て悪い。」と諏伯は続け、「ぬえ、一回ほとぼりが冷めるまで俺の故郷に行こう。」と言った。
ぬえはまず、おどけた調子で「両親に紹介?案外隅におけないねえ。」と返す。
「こんな時に冗談言うなよ。」と、諏伯は真剣な表情を浮かべた。
そして三人は、戻れない京の街を背に、諏訪地方へと再度移動することを決意した。