純狐の息子は二度目の生で母を追う   作:四国の探索人

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命蓮との別れ

 諏伯の製作した宝塔が放った光は雲を突き抜けたと思われていたが、諏伯の神力を一身に受けたその雲は、ふと意思を持って地上へと落ちてきた。

 

「ワシは誰じゃ?確か雲なのに光を浴びたら実体化したような」雲は困惑しながら自分の存在意義を問うた。

 

そんな雲の前に、藪の中から一人の少女が現れる。

 

「あなた、誰?」と一輪は不思議そうに問いかけた。

 

「ワシか?ワシは分からん。」雲山は自らの状況に戸惑いを隠せなかった。

 

「山に落ちた雲、雲山でいいんじゃない?」一輪の提案に雲山は耳を傾けた。

 

「なしてワシがそがいなオナゴに名を決められんとあかん!!」雲山は反発したが、その声にはどこか興味が隠れていた。

 

「見越し入道見越したぞ。」一輪は流れるように言った。

 

「なっ!!なんでや動かん!」雲山はその反応に驚き、焦りを感じる。

 

「私は雲居一輪。お友達が欲しかったの。よろしくね。」一輪は明るい笑顔で続けた。

 

雲山は困惑しながらも、「分かった。お主オナゴなのに従えさせるとか存外したたかじゃの。」と少し意地を張りつ、一輪の呼びかけに応じた。

 

「そう、友達だからたくさんお話しようよ。雲山、何ができるか教えて?」一輪は嬉しそうに提案した。

 

「ワシは高いところから物を見るのが得意じゃ。雲の力で、広い世界を見渡せる。」雲山は誇らしげに話した。

 

「それなら、一緒に旅をしよう!私、もっと色んな世界を見たいの!」一輪の目は輝いていた。

 

「ほう、一緒に旅をするか。面白いことになるかもしれんの。」雲山も次第に新たな出会いに心を躍らせ始めた。

 

そして、雲山と一輪は新たな友情を育むことになり、二人での冒険が始まった。雲山の高い視点からの情報と、一輪の機敏さが組み合わさることで、彼らは様々な困難を乗り越え、未知なる世界への旅を続けることになった。

 

 

 

 

 命蓮は聖輦船を前に振り返り、諏伯に声をかけた。「さて、聖輦船も完成したことですし、一度姉さんのところに見せに行きましょうか! 諏伯。」

 

しかし、諏伯は少し寂しそうな表情で言った。「それなんだがな、命蓮。俺はここで別れることにするよ。」

 

命蓮は驚き、「えっ! どうかしたんですか?」と訊ねた。

 

諏伯は少し苦笑しながら答えた。「お前との旅が楽しくて忘れてたが、妹たちを探さないといけなくてな。でも感謝してるぞ、命蓮。お前のお陰で行き倒れを救われたし、力の使い方も会得した。」

 

命蓮も寂しさを隠せずに応じる。「そう、、、ですか。淋しくなりますね。」

 

すると諏伯は朗らかに笑った。「何言ってるんだ。また次会った時は一緒に旅しよう。」

 

命蓮は少し元気を取り戻し、「そう、そうですね。諏伯も妹探し頑張ってください。」と笑顔で言う。

 

その後、命蓮は聖輦船に乗り込み、故郷へと帰る旅に出た。諏伯は友との別れを静かに見送りながらも、再会を信じてそれぞれの道を歩み始めた。

 

二人の冒険は終わりを迎えたが、また新たな旅の始まりを感じさせるような、そんな日だった。命蓮と諏伯はそれぞれの願いを胸に、この世での旅を続けるのだった。

 

 諏伯は京の街を歩き回り、妹の寅丸や妹紅の行方を探していた。噂話を集めながら、ふと目に入ってきたのは、懐かしい阿礼の家があった場所だった。

 

「阿礼、、、。最後に話したのは、俺が捕まった時だったか。人間だから、もうとうに亡くなっているだろうけど。」諏伯は少しの悲しみとともに、過去の思い出に浸った。

 

阿礼の家の跡地には、立派な図書館が建てられていた。興味を惹かれた諏伯は中に入り、本棚を巡ると一冊の本を手に取った。

 

「妖怪についてびっしりと書かれているな。」ページをめくるうちに、諏伯は一つの可能性に心がざわめく。「妖怪?まさか妹紅も妖怪に連れて行かれたのか?」

 

さらに読み進めるにつれ、彼は人攫いの妖怪について探査を続けた。

 

「妹紅はただ殺されただけなら復活できるはず。だが、もし攫われたとすれば……。」不安は確信に変わりつあった。

 

諏伯はついに目的の情報を見つけた。

 

「人攫いの妖怪、、、鬼。」その言葉は胸に重く響いた。

 

これまでの捜索が新たな方向性を与えられた瞬間だった。諏伯は鬼に差し示された手がかりを元に、妹の行方を追う手がかりを得るため、さらに調査を進めることを決意した。

 

 諏伯は自らの目的を胸に刻み、再び山を歩き始めた。天狗を探して山中を進むと、しばらくして哨戒天狗に出会うことができた。

 

天狗は人間を見て驚き、厳しい声で告げる。「人間、ここは天狗の山ぞ。」

 

しかし諏伯は毅然とした態度で尋ねた。「天狗の上司は鬼で合ってるか?」

 

天狗は少し眉をひそめつも認めた。「そうだが、お前には関係ない。何用だ?」

 

諏伯は真剣な眼差しで短く答えた。「鬼退治。」

 

 天狗は諏伯の言葉に反発し、怒りをあらわにして言った。「鬼退治だと?人間のくせしてふざけてるのか、成敗する!」

 

天狗が諏伯に向かって突進してくるが、彼は神力を発揮し空気を圧縮して、地面に這いつくばらせることに成功した。

 

「なに?なんで……。」天狗は驚き、不安に満ちた表情で言葉を発した。

 

「力を使い押さえつけている。気絶してろ。」諏伯は冷静に宣言し、天狗の動きを封じた。

 

異変に気付き、他の天狗たちが続々と駆けつけるが、諏伯は一体ずつ倒していく。力強く、そして迅速に、彼は彼らの攻撃をかわし、反撃を続けた。

 

「こいつ、何者だ!?」と、迫る天狗たちは驚愕の声を上げながら次々と圧倒されていく。

 

諏伯の神力は強大で、彼は自身の決意を胸に、せわしなく天狗たちを制圧し、仲間たちが反撃に転じる余地を与えなかった。

 

「鬼がどこにいるか教えろ!それが済んだら、放っておいてやる。」諏伯は、倒した天狗たちを背景に一喝する。

 

徐々に彼方に迫られる鬼の影を思い浮かべながら、諏伯は確固たる意志で彼の目的を達成するために進み続けた。天狗たちの反乱を制圧し、彼の旅は新たな段階に入るのだった。

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