天狗たちが交戦を続ける中、上司である鬼は異変に気付いた。天狗の一人が慌てた様子で報告する。
「報告します。山に人間が侵入しています!」
茨木童子が不機嫌そうに言った。「はあ?そんなのお前らが対処しろよ。」
天狗の一人は焦りを隠せずに答えた。「それが私たちでは手も足もでない状況でして…。」
「分かったよ。私が行く。」茨木童子は不機嫌ながらも指示を出した。
星熊勇儀が口を挟む。「童子、お前が人間をこんな扱いするから手練れを送られるんじゃないのか?いつか身を滅ぼすぞ。」
童子は一笑に付す。「五月蝿いな、勇儀。コイツは負けて好きにしていいと言ったんだ。鎖をつないで躾けるのは飼い主の役目だ。」
その時、妹紅は意地を張りながら叫び返した。「死んどけ!クソ鬼。」
「飼い主の云うことを聞けよ、クソ犬。」茨木童子は容赦なく妹紅を蹴った。妹紅は苦悶の声を上げるが、絶望的な状況の中でも反抗の意志を失わなかった。
諏伯は天狗たちと交戦していたが、奥から現れた鬼が姿を現すと、天狗たちは一斉に去っていった。
「お前が侵入した人間だよな?」茨木童子は冷たい目で諏伯を見据えた。
「そうだが、質問がある。藤原妹紅を知っているか?」諏伯は真剣な眼差しを向けた。
童子は笑いを交えて言った。「妹紅w妹紅と言ったらこれのことだよな?」そう言って後ろを指さすと、そこには鎖に繋がれた妹紅がいた。
「やっぱり鬼かよ。」諏伯の表情が変わる。彼の心の中に怒りと悲しみが渦巻いた。
「だったらどうする?」童子は挑発的に問いかけた。
「お前に首輪を付けて分からせてやる。」諏伯の言葉は力強く、意志が固かった。
その瞬間、周囲の空気がピリピリと緊張感に満ち、鬼と人間の運命を決定づける戦いの幕が上がるかのように感じられた。
「やれるもんならやってみろ!!」茨木童子は叫び、地面を強く殴り地割れを起こした。諏伯の足場が崩れると、童子は素早く距離を詰めて攻撃を仕掛ける。
しかし、諏伯は冷静に地割れを修復し、今度は童子の足元を地盤沈下させて捕らえようとした。
「こいつ、土を操ってんのか!」童子が驚く間もなく、諏伯は穴に沈めた童子をすぐに蓋をし、閉じ込めた。
だが、童子は地面を殴り、あっという間に地表へ出てきた。「童子様を閉じ込めようなんて100年早いぞ。」
「それで終われば痛くなかったんですがね。」諏伯は冷静に言い、次の行動を決意する。
「弾幕!」諏伯は力を集めた光球を作り、それを童子に放つ。
「光の球?お返ししてやるよ!!」童子は光の球を殴り返し、その場で爆発が起こる。
「痛ってねえな!!爆発すんのかよこれ。お返しだ!潰れろ!」童子は近くにあった木を引っこ抜き、諏伯に投げつけた。
諏伯はその衝撃で茂みに飛ばされてしまった。
「これで体潰れたな!人間が鬼に楯突くなってんだ!」童子は勝ち誇り、茂みに入り諏伯の体を探し始めた。
「おっ、あったあった。」童子はようやく諏伯の体を見つけ、その腕を掴んだが、諏伯は急に反撃に出て、童子の手を掴んだ。
「なっ!生きてんのかよ。死ね!」童子は拳で殴りかるが、興奮と恐怖の中で、その攻撃は効果を発揮しない。何度殴っても諏伯にダメージは通らない。
「なんだよ!なんだよお前!!放せ!」童子の声が焦りを帯びる。
「鬼のパワーでもどうやら加護は抜けないみたいだな。」諏伯は冷静な口調で返答する。
「何を言って、、、。」その瞬間、諏伯は仕込み刀の杖を抜き、童子の腕を一閃で切り落とした。
「アー!痛い、お前やりやがったな。殺す!!」童子は苦悶の声をあげ、凄まじい怒りを見せた。
観戦していた星熊勇儀が呟く。「童子が切られた、、、」彼の表情は、状況の急変に驚愕していた。
「テメェふざけやがって。鬼の腕を切るなんてその刀に何しやがった」と、茨木童子は怒りを露わにして言った。
「刀に力を込めたのさ。妖刀とかあるだろ?神の力の刀、神刀でいいのかな。」諏伯は冷静に答えた。
(クソが、、、)と童子は心の中で思いながら、状況を打開する策を練っていた。「幸い綺麗に切られている。戻るとしてもこの人間をなんとかしないと。勝つ方法、勝つ方法、、あの犬を使うか?」
童子は妹紅の近くへ行き、右手でその首を絞めた。「おい人間!コイツが大事なら大人しく殺されろ!!さもないとこの女殺すぞ。」
妹紅は苦しげに言った。「か、、、はっ、苦しい。」
諏伯は冷酷な表情を崩さずに言った。「鬼とは全員こうなのか、、、お前を殺した後に全滅するまで殺してやる。」
彼は構わず歩き続け、童子の挑発を無視して前進した。
「おい聞いてるのか?この女の為に来たんだろ?おい!」童子は焦って叫ぶ。
妹紅は諏伯の姿を見上げ、「兄さん、、」と呼びかける。
諏伯は童子の目の前に来ると迷わず妹紅ごと斬った。刃が二人ともに降下するが、妹紅は蓬莱の薬の力で復活する。
「何故無事なんだよ!」童子は驚きの声を上げた。
「妹紅がいたぶん浅かったか。」諏伯は冷静に告げ、再び童子にトドメを刺そうと剣を胸に置いた。
刀を突き刺そうとしたその瞬間、横から星熊勇儀が刀を掴んだ。「そこら辺で許してくれないかね。」
「なにを言って、、、」諏伯は驚きの声をあげたが、同時に刀が動かないことに気付く。
勇儀は冷静な声で言った。「確かに茨木童子がその子をいたぶっていたのが悪いのは分かる。だが元はと言えば、その子が童子の挑発に乗って勝負をして負けたのが悪い。」
「だが放置したらお前ら鬼はまた似たことをやるんだろ?」諏伯は反論した。
「誤解しなさんな。鬼は本来人攫いすることはあっても人間を甚振ることはしない。理由があれば殺す時は殺すがね。人間をいたぶっていたのはコイツ、茨木童子とその配下だけだ。」勇儀は毅然とした姿勢で答える。
「ならコイツだけでも処分する必要がある。」諏伯は決意を持って言った。
勇儀はその言葉に応えて、諏伯の刀を握り潰し、粉々にしてから頭を下げた。「身内の恥は必ず正す。今回だけでいい。見逃してくれ。」
「何を、、、。」諏伯は驚き、言葉を失った。
妹紅はその場から声を上げた。「兄さん、私からも蹴られたけど殺された訳ではないから、お願い。」
「分かった。今回だけだ。次もし暴れる奴がいたら倒すからな。」諏伯は渋々承諾した。
「よかった!ありがとう。」勇儀の表情には安堵が浮かんでいた。
「妹紅、行くぞ。」諏伯は妹紅を促した。
「うん、兄さん。」妹紅は頷き、二人はそくさとその場を去って行った。
その後、童子は不満の声を漏らす。「助けたつもりか?」
勇儀は静かに語りかけた。「童子、今回の件で分かっただろ?確かに昔は鬼に敵う奴はいなくて全てを思いのまに出来た。だが、人間は研鑽して技術を磨き、今や鬼をも凌ぐ奴が出てきている。私たちも身の振り方を変えないといけない。」
童子はその言葉に反発を覚えたが、自身の痛みと命の重さを感じ、静かに思考を巡らせていた。その瞬間、鬼たちは新たな時代の波に直面していることを痛感するのだった。
諏伯(最後に刀を掴んできた鬼、回りからは星熊勇儀と呼ばれてたか。戦ったら負けてた気がする。)
「ごめんな、妹紅斬り殺して。」諏伯は心から謝った。
妹紅は微笑みを浮かべ、「怖かったけど、私を助けるためでしょ?怒ってないよ。」と優しく答えた。
「ところで、100年間何してたんだ?」諏伯は彼女に尋ねた。
「時間が経つのを忘れてた。竹林でタケノコ食べたり修行したりしてた。鬼に捕まったのは最近。」妹紅は懐かしむように言った。
「全く、心配かけて。寅丸はどうなったか知ってるか?」諏伯は真剣な表情で聞いた。
「旅の途中までは連絡してたけど、今はどこかの人にお世話になっているらしいよ。命蓮って人だっけな。」妹紅は少し考え込んで答えた。
「命蓮?アイツのところにいたのか。私もあそこは半日しか滞在してなかったからな…。でもアイツの所なら心配ないな。」諏伯は安心の色を見せた。
「兄さんはこれからどうするの?」妹紅が次の予定を尋ねた。
「また忘れた何かを探す旅だな。」諏伯は言った。
「昔からずっとそれだね。分かった。諏訪子さんと神奈子さんには私から伝えておくよ。」妹紅は頷いた。
「妹紅、頼んだ!」諏伯は彼女に感謝の言葉を送った。
二人は一旦背を向け、諏伯は再び一人旅を始める決意を固めた。妹紅との再会が彼に力を与え、彼の旅路は新たな希望と共に続いていくのだった。妹紅は見送る中、彼の背中に感謝と期待を馳せる。