純狐の息子は二度目の生で母を追う   作:四国の探索人

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月への誘い

200年ほどの歳月が流れ、諏伯は年月を忘れ、旅を続けながら時折諏訪地方の故郷に帰る生活を繰り返していた。ある日、旅の途中にふと声をかけられた。

 

「ようやく見つけた。」

 

振り向くと、そこには中華風のドレスを着た女性が立っていた。

 

「こんな山奥で一体何用ですか?」諏伯は驚きの声を上げた。

 

「私は八雲紫。妖怪よ。」彼女は悠然と名乗った。

 

「私のことを食べにでも来ましたか?」

 

「違うわよ。あなたのことずっと見てたわよ。」紫は微笑みを浮かべる。

 

「ずっとと言うと?」

 

「そりゃもう全部よ。京にて封獣ぬえを撃退、その後、月人とも戦い撃退。あの命蓮上人とも旅をして鬼の一角も撃退。」紫は誇らしげに続けた。

 

「凄いな。本当に見てたんだ。」諏伯は感心したが、同時に警戒もしていた。

 

「大妖怪だからねぇ。今日はお誘いに来たの。あなた以外の適任者は中々いないわ。ちょっと月に攻め込みたいんだけど手伝ってくれない?」紫は直接的な提案を投げかけた。

 

「その経歴知ってるなら、ぬえか鬼か命蓮にでも頼みなよ。殺生はしないが俺よりすこぶる強い。」

 

「あら、知らないのあなた?鬼は参加してくれるけどぬえは封印されて、命蓮はとうの昔に死んだわよ?」紫の言葉には冷厳な事実が込められていた。

 

「命蓮とぬえが、、」諏伯は驚愕した。連絡は取っていないが、俄には信じられなかった。「だが断る。月への侵攻なんて興味ない。」

 

「まあ、そう言うと思ってプランBがあるわ。」紫は薄く微笑んだ。

 

「プランB?」諏伯は警戒心を強めた。

 

「強制ご招待よ。」紫がそう言うと、諏伯の足元にスキマが開き、彼を吸い込んでいった。

 

不意に吸い込まれた諏伯は、次の瞬間多くの妖怪たちが集まる場所に出ていた。彼は周囲を見渡し、何が起こったのかを理解しようとしていた。紫はその様子を見て満足そうに笑い、周囲の妖怪たちに出会いの場を引き立てる。

 

 諏伯は周囲を見渡したが、目に入るのは妖怪たちばかりで、知っている者は誰もいなかった。

 

(ここにいる妖怪たちは強制的に集められたのだろうか)彼は不安に思いながら、自身が置かれた状況を考えていた。そんな時、鬼の少女から声をかけられた。

 

「お前、諏伯だろ?」

 

「ちんちくりんの知り合いに心当たりはないのですが。」諏伯は少し冷たい返事を返した。

 

「ちんちくりんとはなんだ!ちんちくりんとは!私は伊吹萃香。角を見ての通りの鬼さ。」彼女は怒りを込めて名乗った。

 

「鬼、、、。あまりよくない思い出が。」諏伯は思い出し、少し警戒した。

 

「まあ、お前と童子の出会い方はよくなかったしな。」萃香が応じた。

 

「別の場所にいたのか?」諏伯は興味を示した。

 

「いたぞ。流石の諏伯でも私迄は見破れなかったみたいだな。ところでお前はなんで今回参加したんだ?」

 

「月攻めのことか?断ったら強制的に連れてこられた。」諏伯はため息をついた。

 

「にゃはははは。鬼の四天王の1人を倒したんだから呼ばれるか!!」萃香は明るい声で笑った。

 

「ところで、ここの妖怪は?」諏伯は周りを見渡しながら尋ねた。

 

「私もよく知らないが、紫の奴が日本中の勢いのある妖怪を集めたって言ってたぞ。」萃香は肩をすくめて答えた。

 

「どうやら、私たちの力を借りたいようだな。」諏伯は冷静に考えつ言った。

 

 「月の連中がどんな強さか気になるもんだ!」萃香は興奮気味に言った。

 

その時、周囲にスキマが開き、空中には紫の従者と思われる黄色い髪の狐が浮いているのが見えた。

 

「私は八雲藍。紫様の式だ。今回、複雑な事はこちらでやる。そのため君たちがやる事がシンプルだ。スキマを通った後は存分に暴れ給え。」藍は穏やかに説明をした。

 

彼女の言葉が終わると、周囲の妖怪たちは熱狂し、次々とスキマの中に飛び込んでいった。賑やかな声や期待が充満する中、諏伯と萃香もその流れに流されるようにスキマを通ることになった。

 

「こうなったら、行くしかないな。思いっきり暴れてやろうぜ!」萃香は拳を握を握りしめて叫んだ「ええ、行こう。」諏伯も彼女に続き意を決した。

 

スキマを通ると、彼らの周囲は一瞬のうちに変わった。妖怪たちが一堂に集い、月の世界への冒険が始まる。期待と緊張が交錯する空間。月での戦いがどのようなものか、既にその気配を感じつつあった。

 

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