純狐の息子は二度目の生で母を追う   作:四国の探索人

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監視生活の日々

豊姫との生活を終えた次の週、諏伯は稀神サグメの部屋に向かう。

 

「失礼します。」ドアを開けて中に入ると、サグメはバルコニーの椅子に座っていた。

 

サグメは手招きするので、諏伯が近づくと、彼女は紙に文字を書き始めた。「今宵は月が綺麗だ。」

 

「ここが月じゃないんですか?」諏伯は少し驚きながら尋ねる。

 

すると、サグメは慌て月の文字に横線を引き、代わりに「太陽」と書き換える。その様子に、諏伯は思わず微笑んだ(かわいい)。

 

サグメが再び書き始める。「言いたいことは幾らかあるが、よく殿をしたな。」

 

「他の妖怪達では手も足もでない感じでしたからね。」諏伯はその経験を振り返りながら言った。

 

「綿月姉妹相手によく時間を稼いだと思うぞ、マジで。」サグメは敬意を込めて評価する。

 

「これも地上にいた友人のお陰ですね。」諏伯は微笑みながら続けた。

 

サグメが次に書いたのは、「その友人と綿月姉妹、どちらが強い?」

 

「能力なしなら友人ですが、含めてなら綿月姉妹でしょうね。勝つプランが見えない。」諏伯は真剣な表情で応えた。

 

 サグメが静かに問いかける。「ところでだ。なんで私の能力は君に効かなかったんだ?」

 

諏伯は首をかしげながら答えた。「分からないですが、昔から僕に影響を与えるものは無効化されるんですよね。理由はわからないです。」

 

サグメはその言葉を考え込むように受け止め、「それで蓬莱人、君も厄介な奴だな。」と書いた。彼女の表情は少し珍しげでありながら、どこか楽しんでいるようにも見えた。

 

 サグメとの生活を終えた諏伯は、次に依姫の監視へと向かう。

 

「失礼します。」諏伯が部屋に入ると、依姫が正面を向いていた。

 

「来たか。前回はサグメ様だったが、変なことしてないだろうな?」依姫が鋭い目で問いかける。

 

「してたら首が飛びますよ。」諏伯は冗談めかして答えるが、その緊張感を隠せない。

 

「まあ、そうだな。私は前の2人のように優しくないから覚悟しろよ。」依姫はさらに真剣な表情で言う。

 

「はい。」諏伯は素直に答え、覚悟を決める。

 

「そこの椅子に座れ。」依姫が指示し、諏伯はその通りに椅子に座った。

 

「八意様について知っている事を吐け!!」依姫の声が鋭く響く。

 

「嫦娥を倒した後は記憶がなくて覚えていないんです。」諏伯は正直に答える。

 

「嘘をつくな!!」依姫は厳しい表情で諏伯を叱責する。

 

「逃げるために僕は要らないから無視されたんですよ。」諏伯は少し悲しげに言う。

 

「お前、今師匠を侮辱したな!」怒った依姫は、勢いよく諏伯の頬を叩く。

 

依姫との生活は、まるでドラマに出てくる新人警官のような厳格さで満ちていた。

 

 依姫との厳しい生活を終えた諏伯は、次の豊姫との時間で彼女に泣きついた。

 

「依姫が……依姫が厳しいよ。叩いてきたよ、あの子。」諏伯は涙を拭いながら訴えた。

 

豊姫は優しく微笑み、「まあ、大変だったわね。でももう大丈夫よ、私のところにいる間はリラックスして。」と言いながら、諏伯をソファに座らせた。

 

「本当に怖かったんだ。依姫といると、常に不機嫌で冷たくて……」諏伯が言い終わる前に、豊姫は彼の肩を優しくなでながら、温かいお茶を手渡した。

 

「大変だったわね。もう気にしないで、ここでは自由にしていいのよ。」豊姫は彼を微笑んで見守り続ける。

 

「でも……このままずっとここにいられないし、依姫は『お前に帰る方法なんてないんだ!』って……」諏伯が不安を口にすると、豊姫は彼の手を取りながら優しく言った。

 

「うん、大丈夫。安心して、私が何とかするから。」彼女の柔らかな声に諏伯は少しホッとする。

 

「それでね、諏伯。もしよかったら、何か知っていることがあれば少し教えてもらえないかしら?あなたを守るためにも必要なことだから。」豊姫は親しげに、そして優しく彼に促す。

 

「……話すよ。話すから……永琳は輝夜と一緒にどこかに隠れている。それだけは知ってるけど、本当にそれ以上は知らないんだ。」諏伯はついに口を開いた。

 

豊姫はその言葉に満足して、「ありがとう、諏伯。よく頑張ったわ。これからも私があなたを支えるから、安心していてね。」としっかりと彼を抱きしめ、彼の心を少しでも軽くするように努めた。

 

諏伯にとって、豊姫との時間は温かな安らぎとなり、心に余裕を取り戻すことができた。

 

 諏伯は、豊姫の時には甘やかされ、サグメの時には普通に接され、依姫の時には厳しく接される生活を送っていた。特に依姫との生活が恐ろしかったため、豊姫に会うと心が安らぎ、思わず彼女に甘えて情報を話してしまっていた。

 

豊姫は諏伯にとって、その優しさと安心感を与える存在になり、彼は次第に彼女に依存していくようになった。彼女の温かい言葉や甘いお菓子、穏やかな笑顔が、彼の心を癒してくれるのだった。

 

 豊姫は微笑みながら言った。「ふふふ。これで次の月面戦争で裏切ることはなさそうね。」

 

依姫は首をかしげながら、「姉さん、それが理由で私に厳しくやるように言ってたんですか?」と問いただす。

 

サグメは静かにうなずき、紙に大きく「グッジョブ!豊姫。」と書き記す。その様子に、豊姫は満足げに笑みを浮かべた。

 

時は流れ、幾年かが経過した。月面での平穏な日々が続いていたが、ついに月に攻め込む者の影が迫ってきた。過去の事態が影を落とし、再び戦争の足音が聞こえてくる。豊姫はその動向を見守りながら、準備を整えていた。

 

「今回は失ってもいい地上人がいるから気が楽ね。」豊姫は神妙な面持ちで言った。

 

 「前回の妖怪達程度なら彼一人でやってくれるでしょう。」依姫は諏伯を思いながら言う。

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