道中、華扇がふと思い出したように質問した。「あのー、諏伯さん。今回は何故幻想郷に?」
諏伯は真剣な表情で答えた。「母が幻想郷にいるかと思いまして、純狐さんも母なのですが、正確に言うと前世での母なので。」
華扇は頷きながら理解を示し、「なるほど、、、因みに母親の名前は?」
「洩矢諏訪子です。」諏伯は自信を持って言った。
華扇は首をかしげ、「洩矢?存じないですね。」と返した。
「幻想郷にも来ていないのかな。」諏伯は少し残念そうに言った。
「念の為言っておきますが、幻想郷では殺しは厳禁です。昔の私のようにトドメを刺そうとするなら、賢者たちに追放されますからね。」華扇は注意を促した。
「分かりました。誤解されているけど、別に童子以外には直接重傷を負わせてないですからね。天狗はボコしたりしましたけど、あれは若気の至りというか……」諏伯は反省しきりの様子で応じた。
「問題を起こした人をボコボコにするのはセーフなので大丈夫です。そして、今はスペルカードルールというものがあり、弾幕を使う者が主になっています。」華扇は説明を続けた。
「弾幕ですか?」諏伯はかつて使用していた技が普及していたのに驚いた。
「ええ、諏伯さんもかつて使ってましたよね。昔のように強い球を一つ用意して放つのではなく、多彩な弾幕や美しい弾幕を使う者たちが増えています。」華扇は自信を持って詳細を語った。
2人が話していると、ようやく博麗神社が見えてきた。神社の縁側には巫女である博麗霊夢が座っていた。
霊夢は華扇に気づくと、「華扇、珍しいわね。暇になったから修行の催促でもしに来た?」と問いかけた。
華扇は苦笑いしながら、「違いますよ、霊夢。今日は隣のこの人を紹介しに来ました。」
霊夢は諏伯を見つめ、「隣の人……人間に見えるけど、華扇が紹介する人か、紫が連れてきたの?」と疑問を投げかけた。
「いえ、今回は紫には話さず、私が連れてきました。」華扇が説明すると、
諏伯も前に出て自己紹介をした。「洩矢諏伯です。どうも。」
霊夢は諏伯をじっと見つめ、「洩矢諏伯ね。よろしく。悪さしたら私が退治するから覚えておきなさい。」と警告を発した。
華扇は補足するように言った。「諏伯、この霊夢が幻想郷の治安を保っている巫女になります。幻想郷最強のため、あなたでも勝てないと思いますよ。」
諏伯は驚いて、「そんな、別に悪さする予定はないですよ。」と慌て否定した。
「ところであんた。」霊夢が視線を変え、もう一度尋ねた。「幻想郷に来たばかりのようだけど、住まいはどうするの?華扇の所にでも泊めてもらうの?」
華扇は少し顔を赤らめて言った。「それはちょっと昔のトラウマがあるので嫌というか……今晩だけ泊めてあげて下さい。明日以降は天狗の所に泊めてもらいます。」
霊夢はため息をつきながら、「全く、ここは神社であってホテルじゃないのに。まあ、分かったわよ。一晩だけね。」と了承した。
「それでは諏伯、私は一度帰ります。また明日迎えに来ますよ。」華扇は言うと、そくさと帰っていった。
霊夢は諏伯を見て、少し疑問そうに尋ねた。「アンタ、華扇と関係があるみたいだけど、どんな関係?」
諏伯は考え込みながら答えた。「うーん、鬼退治した時に出会って、今日久しぶりの再会を果たしたという感じですかね。」
霊夢は少し驚いて、「華扇が退治されるってことは、仙人になる前、アンタ何年生きてるのよ。」と追及した。
「もう数えてないけど結構な年数ですね。」諏伯は少し恥ずかしそうに言った。
霊夢と諏伯は、他愛のない会話をしながらその日は過ごした。
次の日の朝、神社で華扇が諏伯を迎えに来た。「行きますよ、諏伯。」
諏伯は少し疑問を抱き、「思ったんだけど、なんで華扇はずっといるの?」と尋ねた。
華扇は真剣な表情で答えた。「あなたが暴れないようにですよ!!今日行く妖怪の山も本来なら入山禁止ですからね。私はもう天狗とは関わっていないのに、かつての鬼の威光を使うことになるとは……。」
華扇に案内されて妖怪の山に着くと、見張りをしている犬走椛に出会った。
「華扇さん、久しぶりです。何か用ですか?」椛は問いかけた。
華扇は少しためらいながら、「ちょっと頼みにくいんだけど、この人を暫く止めてくれない?」と依頼した。
椛は諏伯のことを暫く見つめ、突然叫んだ。「諏伯?ヒッヒェッ、、、、、た、た、た、、、助けて誰か!!」椛は見張りの仕事を逃げ出した。
華扇は苦笑しながら「諏伯、あなた完全に天狗のトラウマになってるじゃないの。」と言った。
諏伯は首をすくめ、「一人一人なんてもう覚えてないけどな」と返した。
華扇はしれっと言った。「うーん、鬼の私もいるのにあなたを恐れるなんて、よっぽどトラウマなのね。」
2人がしばらくその場で待っていると、椛が射命丸文の背中に隠れながら近づいてきた。
「お久しぶりですね。諏伯さん。」射命丸は笑顔を見せた。「椛から名前を聞いた時は耳を疑いましたよ。」
「誰?」と諏伯は尋ねた。
射命丸は少し驚いた様子で、「お忘れですか?私が見張りをしていた頃、かつて一対一にて互角に戦い惜しくも敗れた私!射命丸文ですよ!いやー、その数百年後に天狗組織を半壊させるとは思わなかったですけど」と続けた。
諏伯は記憶の糸を辿りながら「うーむ、、、あ!思い出した。旅してる時に隠し道を教えてくれた天狗か。」
射命丸は嬉しそうに頷き、「覚えていましたか!そうです、その天狗が私です。泊めてほしいとの事でしたが、守矢神社じゃなくていいんですか?」と尋ねた。
「守矢神社が幻想郷にあるのか!!」諏伯は驚きを隠し得なかった。
射命丸は驚いて、「あれ?八雲紫から聞いてませんでした?」
「私が幻想郷に連れてきたから紫とは会ってないの。」華扇が言った。
射命丸は理解したように、「あー、なるほど。守矢神社がきたのはほんの数日前の事なので、てっきり諏伯さんもその時来たのかと」と説明した。
「すぐ守矢神社に案内してくれ!!」諏伯は熱意を込めて頼んだ。
「お任せください!!」射命丸は元気よく答え、二人は早々にかけて行った。
椛は安心して、「ふー、文さんが上手く誘導してくれて平和的に終わった。」と言った。
華扇は不安げに、「新しい神社が来ているなんて初耳なんだけど。」と続けた。
椛は少し顔をしかめながら話した。「本当はお話したらダメなんですが、外の世界から八雲紫が連れて来たんですよ。博麗の巫女と競わせるみたいです。近々には宣戦布告するとの噂も。」
華扇は興味津々で、「霊夢のいい対戦相手になりそうね。私はもう帰ります。あの人の近くにいると腕を飛ばされた時の記憶が……」と頭を抱えながら帰路に着いた。