1人で先へと進んだ諏伯は、障子扉の前に立つ。目の前には破れた障子があり、なにか不自然な印象を与える。
「この障子の破れ、、紙飛行機のか。いや、まさかな。」と独り言を呟くと、
「入ってきていいわよ。諏伯。」と輝夜の声が響いた。
気付かれた諏伯は、勇気を出して障子を開けて中に入った。
「久しぶりですね。輝夜姫。」と挨拶する。
「もう輝夜でいいわよ。姫なのはかつて月にいた時と、帝の手紙を交わしていた時だけだから。」と輝夜は微笑む。
「しかし、この障子の傷おかしくありませんか、まるで、、、」と諏伯が気づいた点を指摘すると、
「まるでかつての私がいた屋敷といいたいのね。合ってるわよ。私の能力でそのままにしてあるの。」と輝夜が説明する。
「そう、、か。見つけられたんだな。安全な場所に」諏伯は感心する。
「ええ。でも、永遠亭に来た時に制服姿のウサギ、、あなたには説明いらなかったわね。鈴仙がここに逃げ込んだことで状況は変わったの。」と輝夜が続けた。
「確か月にいた時にちょっと話題になってたな。」と諏伯が思い出す。
「最近、月から戦争になる可能性があるから戻ってこいと連絡が来てね。その返信をすると、私達の存在がバレるのもそうだし、鈴仙も月に帰らないといけないから偽物にすり替えたの。」と輝夜は話す。
「だが、幻想郷の妖怪達には月が必要なんだ」と諏伯は強調する。
「勿論、勝手なのは分かるけど、せっかく隠れ住んでいたのに、また月に連れ帰られたらたまったものではないわ。」と輝夜は切実な想いを語る。
「なら、、、私が輝夜を守ると言えば?」と諏伯は真剣に言った。
「あら、告白?不比等達が生きていたら怒られるわよ。」と輝夜はからかいながら微笑む。
「いや、告白ではなくて。」と諏伯は慌てる。
「でも永琳、あなたの事疑ってるからな〜。守るという言葉だけなら信用されないかも〜。諏伯さっき弓矢射たれていたしな〜。」と輝夜は茶化す。
「わ、分かったよ。フリ。付き合うフリだけでいいだろ。これで勘弁してくれ。」と諏伯は妥協する。
輝夜はその言葉を聞いて、少し驚いた表情を浮かべるが、すぐに微笑みを浮かべ、彼の提案を受け入れる。
「さて、そうと決まれば終わりよ、終わり。みんな戦闘を止めて部屋まで来なさい。お客様方も連れてきていいわよ。」と輝夜が宣言する。
「何をしているんだ?」と諏伯が戸惑いながら尋ねる。
「瞬間移動しながら永遠亭の皆に伝えてきたのよ。普通の人は認識できない時間でね。」と輝夜は微笑みながら答える。
その言葉が終わると、永遠亭に響いていた戦闘音は消え、静けさが戻った。しばらく待っていると、永遠亭の皆々や霊夢、魔理沙、紫が現れた。
「あらまぁ、みんな手酷くやられているわね。」と輝夜が心配そうに目を向ける。
「姫様、どういう訳ですか?」と永琳が問いかける。
「どういう訳と言われても、諏伯が私を護ってくれると約束してくれたの。それならばもう結界など不要よ。」と輝夜は堂々と言う。
「博麗大結界があるから元々いらないのだけどね。」と紫が冷静に補足する。
「だとしてもその男が約束を守るかどうかは分からないですよ。」と永琳は懸念を示す。
「だからほら、諏伯手を貸して。私達付き合う事にしたの。」と輝夜は自信満々な表情を見せる。
「姫様、ご冗談ですよね?」と永琳は驚き、疑念を抱える。
「今ここで口付けでもしたら信じてくれる?」と輝夜は挑発的に言う。
「ハァ、、、分かりました、信じます。」と永琳は溜息をつく。
魔理沙は微笑みながら言う。「お幸せに?」
「まあ、解決したんならいいわ。バカバカしい。これ以上そんなの見せつけないでよ。帰りましょう。」と霊夢は少し恥ずかしそうに言った。
「ご祝儀は幾ら包みましょうか?」と紫は楽しそうに尋ね、心なしか少しニコニコしている。
「解除。」と永琳が宣言すると、失われた満月は再び夜空に輝きを戻し、綺麗な月空が広がっていく。こうして、妖怪たちの心の中にあった異変は解決したのだった。
「諏伯、付き合うのが姫様の戯れなのは分かるけど、約束は守るのよ。」と永琳が厳しい口調で言う。
「はい。」と諏伯は素直に頷く。
「うどんげから聞いたけど、月で暴れたそうじゃない。」と永琳が尋ねる。
「暴れたと言っても、建物1つ壊しただけですよ。」と諏伯は正直に説明する。
「綿月姉妹と稀神サグメ相手に死なかっただけで十分よ。どれくらい私たちについて話したの?」と永琳が続けて尋ねる。
「えーと、月の使者を撃退した後は分からないとだけ。」と諏伯は率直に答える。
「確認で聞いたけど、私たちの足取りなんて知るわけないわよね。良かったわ。これから長い付き合いになると思うけどよろしく。」と永琳は笑顔で手を差し出す。
「薬とか塗ってないよな?月の使者みたく毒殺されたくはないんだけど。」と諏伯は心配そうに問いかける。
「蓬莱の薬を飲んだのなら、殺してもムダなのは知ってるわよ。」と永琳は安心させるように言った。
諏伯は永琳の手を取り、握手に応じた。その瞬間、彼の心に不安が少し和らぎ、信頼の萌芽が芽生えた。この出会いが彼らの未来にどのような影響を与えるのか、まだ誰にも分からない。