純狐の息子は二度目の生で母を追う   作:四国の探索人

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5つの難題1つの遊戯

無事に山道を通り抜けた諏伯は、長い道のりを経て大和に辿り着いた。そこは活気あふれる場所で、人々の賑わいが感じられた。

 

「人が多いな、村とは大違いだ。探し物が見つかるといいけど。」と、彼は周囲を眺めながら呟いた。

 

そのとき、彼はやたらと人が多い場所に出くわした。興味をそられ、近づいてみることにした。

 

「すいません、そこの方、これは何の集まりで?」諏伯は通行人に尋ねた。

 

通行人は少し驚きながらも、「ああ、兄ちゃん。知らずに来たのか。何でもここにいる姫様は大層な美人らしくてな。一目見ようとこんなに集まったという訳だ。」と教えてくれた。

 

「ここまで人を集めるなんて、凄いお人なんだろうな。よっと。」諏伯は、さっそくその名高い姫様がどんな人かを確かめたくなった。

 

彼は地面を隆起させて、上から周囲を見渡そうと試みた。「姫様が建物にいる訳では無いのか。ならまた今度にでもしようか。」と考え、周りには姫の姿は見えないことが分かると、できた隆起を元に戻して、再び歩き出した。

 

諏伯が少し歩いていくと、道端で泣く子供とそれをあやす烏帽子をかぶった親の姿が目に入った。近づいてみると、親は藤原不比等だった。

 

「妹紅、お父さんが話している間、別の部屋にいるだけだよ。すぐに会えるから。」不比等は優しく子供をなだめている。

 

「やだよ。お父さんが女に誑かされて、私のことなんて迎えに来なくなるんだ。」妹紅は涙を流しながら強く拒絶した。

 

「全く困った。これから姫様と会う所なのに。」不比等は苦労している様子だった。

 

その時、石作皇子が横から声をかけた。「不比等殿。後が詰まっておりますぞ。」不比等はあせりを見せていた。

 

諏伯の介入

 

諏伯はその様子を見て見かね、「迷惑でなければ、その子を見ていましょうか。」と声をかけた。

 

「いいのですか?それはありがたい。ほら妹紅。お父さんの友達と一緒にいなさい。」不比等はホッとした顔で妹紅に言った。

 

「分かった。見捨てないでね。」妹紅は少し不安そうながらも、諏伯の優しそうな表情に安心して頷いた。

 

「見捨てるわけないだろ。さあ、旅の御仁、名前は?」不比等が聞く。

 

「諏伯です。」彼は自分の名前を名乗った。

 

「諏伯殿ですか、私の従者として屋敷に共に参りましょう。」不比等は申し出た。

 

不比等の従者として屋敷に入れることとなった諏伯は、隣の部屋にて妹紅と遊びながら待機していた。

 

「妹紅、ほら。ここに和紙があるじゃろ。この紙を折り、これを投げてみなさい。」諏伯は笑顔で和紙を示した。

 

妹紅は興味津々で目を輝かせ、「こう?」と、その紙を投げ上げた。紙は空中を舞いながら落下し、妹紅の目が大きく開かれた。

 

「お、凄い。紙が空を飛んでいる。」妹紅は喜びの声を上げ、無邪気に笑った。

 

その間、別の部屋では姫様の輝夜と彼女を目指す五人の貴公子たちが話し合いを持っていた。

 

「いかがすれば貴方様、いえ輝夜様を手に入れられますか?」不比等が尋ねた。

 

輝夜は微笑みながら、「そうねぇ。私を手に入れたいのなら、まずその気があるのか見せて貰いましょうか。」と答えた。

 

「なんなりと」と、右大臣阿部の御主人がすぐに返した。

 

「それでは、石作皇子殿は仏の御石の鉢を。」輝夜は要求する。

 

「承知」と石作皇子は即座に応じた。

 

「藤原不比等殿は蓬莱の玉の枝を。」輝夜は次に不比等に目を向けた。

 

「分かりました。」不比等はふたりの目をしっかりと見て答える。

 

「右大臣阿部の御主人は火鼠の皮衣を。」輝夜が次に指示した。

 

「了解」と右大臣阿部もすぐに従った。

 

「大納言大伴御行どのは龍の顎の玉を。」輝夜はさらに続ける。

 

「奉った。」大納言大伴御行も名乗りを上げる。

 

「中納言磯上の麻呂どのは燕の子安貝を。」最後に輝夜は中納言に言い渡し、彼は「おけ。」と短く返した。

 

 貴公子たちが難題を渡されている中、諏伯は妹紅と遊んでいた。

 

「今度は諏伯さんが紙飛行機取りに行って。」妹紅が楽しそうに言うと、彼女は自分が作った紙飛行機を投げた。その瞬間、紙飛行機は強風に煽られ、まさに不運にも貴公子たちがいる部屋へ飛んでいってしまった。

 

「あっちは不味い。扉の向こうでは不比等さん達が…。」諏伯は一瞬の判断をし、紙飛行機を追うために全速力で走り始めた。

 

彼は紙飛行機が障子を破らぬよう気をつけて進んだ。しかし、なんとか紙飛行機に手が届いたものの、彼は勢い余って隣の部屋へと転がり込んでしまった。

 

### 静まり返る室内

 

部屋は一瞬静まり返った。貴公子たちの視線が一斉に諏伯に向かう。

 

「諏伯どの、無事ですか?」不比等が心配そうに声をかけた。

 

「すいません、紙飛行機を追っていたもので…」諏伯は少し恥ずかしそうに答えた。

 

輝夜は興味津々に近づいてきて、「紙飛行機?なんですかそれ?」と尋ねた。

 

「えーと。私が子供の頃、遊びで思いついたものです。この様な形を作り、こうスッと投げると…」諏伯は説明しながら、実際に投げてみた。すると、みごとに紙飛行機が空中を切りながらゆっくりと落下していく。

 

「まるで矢のない矢文。」と、大納言大伴御行が感心した。

 

「へぇ、面白いものね。作り方を教えて。5人の貴公子の方々、難題の物を持ってくれば晴れて付き合えますよ。」輝夜は楽しそうに提案した。

 

輝夜は、紙飛行機の作り方を諏伯に教わりながら話し始めた。「どうやったら上手に飛ぶのかしら?」と、彼女は興味津々であった。

 

「ここをこう折って、そしてこの角度で…」諏伯は優しく指導し、妹紅も興味を持ってそれに参加した。「ほら、妹紅もおいで。」と呼ぶと、妹紅は嬉しそうに駆け寄った。

 

妹紅も諏伯の元に来て、輝夜と共に紙飛行機を折る作業に夢中になった。楽しそうな笑い声が部屋に響き渡り、色とりどりの紙飛行機が次々とでき上がっていく。

 

一方で、貴公子たちは各々空気を読みながら帰った。不比等は、壁によりかりながら娘のために遊び続ける三人の姿を微笑ましく眺めていた。

 

諏伯と妹紅、そして輝夜の笑顔は、房の中に温かな空気を作り出し、彼らはそれぞれ自分の思惑を忘れ、和やかな時間を過ごしていた。この瞬間に、貴公子たちも少しずつ心を開かれていた。新たな繋がりが生まれる予感を感じながら、彼らはその場の雰囲気に染まっていくのだった。

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