霊夢と諏伯が地底の街を歩いていると、人間が珍しいのか周りから視線が集まりました。
「嫌に見られるな。」と諏伯が言うと、
「無視よ、無視。」と霊夢は冷静に返します。
そのまま歩みを進めていると、目の前に鬼の星熊勇儀が立っています。
「勇儀?」と諏伯は驚きます。
「知り合い?」と霊夢が尋ねます。
「ちょっとだけ。」と諏伯は答えます。
「ん?お前、諏伯か。久しぶりだな。」と勇儀が笑顔で近づいてきます。
「鬼が地底にいるのか。」と諏伯は再び驚きます。
「むしろ妖怪の山からはもういなくなってるぞ。」と勇儀が言います。
「地霊殿に行きたいんだけど、通してくれないか?」と諏伯は頼みます。
「そうはしてやりたいが、せっかくの機会だ。華扇を倒した実力、私も試してみたくてな。」と勇儀は笑顔を崩さずに言い、構え始めました。
「手加減したら死ぬから、本気でやりますよ。」と諏伯は覚悟を決めます。
「お、来いよ!いつもなら手加減してやるんだが、お前は本気でいいよな。そこの巫女、これ持っててくれ。」と勇儀は言いながら、霊夢に盃を渡します。
「諏伯、あんたの本気を見るのは初めてかもね。」と霊夢はわくわくしながら言います。
諏伯も戦闘の構えをとりました。
「土弾!」と諏伯が叫ぶと、土弾を生成して勇儀に放ちました。
勇儀は拳を固め、その場で一撃を放つと、諏伯の土弾は吹き飛びました。
「今度はこっちからだよ!」と勇儀が勢いよく言い、距離を縮めながら、諏伯との格闘戦を挑もうとします。
「その拳に殴られるのは勘弁だな。」と諏伯は言いながら、勇儀の下半身を直ちに地中に埋めますが、勇儀は全く畏れず、構えを崩さずにそのま進んできました。
「土で私を止められると思うなよ!」と勇儀は叫び、諏伯に向かって殴りかりますが、その拳は加護によって防がれました。
「一撃じゃ破れんか。なら、試してみようじゃないか。」と勇儀は諏伯の手を両手で握りしめます。
「ふんぬっ!5割……」と勇儀が力を込めますが、諏伯の加護はまだ耐えています。
「耐えるか。7割の力ならどうだ。」と勇儀はさらに力を増しました。すると、諏伯の加護に少しばかり神力の変形が見られ始めました。
「来たな……。8割。」と勇儀は言います。
諏伯の加護はミシミシと音を立て始めます。
「本気でいくぞ!10割!」と勇儀は一気に力を入れました。
その瞬間、諏伯の加護はギリギリのところで支え続けていた防御を破られ、諏伯の腕は握り潰されてしまいます。
「加護が……」と諏伯は痛みに呻きます。
「やりぃ!正面からでも破れる!」と勇儀は勝利の声を上げました。
諏伯は仕込み杖を抜き取り、自分の腕を切り落として距離を取ります。
「その焦り方、正面から破られたのは初めてみたいだな。」と勇儀が言います。
「ああ。」と諏伯は頷きます。
蓬莱の薬により腕は復活しますが、諏伯の加護は失われました。
「加護を張り直すことも出来るが、力をそれなりに使う。このまま戦うか。」と諏伯は選択を迫られます。
「待ってやっててもいいぞ。」と勇儀は提案します。
「構わない。このままやろうじゃないか。」と諏伯は決意します。
「それなら……これを凌げるかな!」と勇儀は近くにあった大石を投げました。
「与え給う加護『瓦解』!」と諏伯は叫び、投げられた大石を加護により粉々に砕きます。
石を砕いた後ろには、勇儀が控え、再度こちらを狙ってきます。
諏伯は自身の地面を隆起させ、勇儀の攻撃を避けました。
「いつまで持つかな!」と勇儀は挑発します。さらに、隆起させた土を一発で殴り崩します。
諏伯は仕込み杖を抜き、勇儀に振るも、簡単に避けられてしまいます。
「それは2つ目の刀かい?」と勇儀は興味を示します。
「1本目は勇儀が握り折っただろ。」と諏伯が返します。
「それもそうだったねえ。鬼を切る刀か。私の左手にもあの時の傷が残ってるぞ。」と勇儀は言いながら、かつての左手の傷を見つめ、過去を思い出しました。
「不味いな……。近接は幸いにも刀のおかげか、勇儀は一歩下がってくれてるが、かといって中距離、遠距離は決め手に欠ける。アレを使うか?」と諏伯は考えます。
懐から宝塔(二代目)を取り出すと、勇儀が目を輝かせます。「おっ、何かやる気かい?」
諏伯は宝塔に力を込め始めました。「このままだと決着がつかなそうなので……少々威力が高いけど使わせてもらいますよ。」
「イイねぇ!私もどうしたものかと思っていた所さ。これで決着をつけようじゃないか。」と勇儀も異様なほど振り被り、拳に力を溜めます。
「本気で来ないと、少々の威力ならアンタごと消し飛ばす威力だからな。」と勇儀は忠告し、明らかに危険なほど妖力を拳に集めます。
両者が力を溜め終わると、諏伯は叫びました。「宝塔『威光』!」
眩い集約された神力が、勇儀めがけて放たれます。
「鬼拳『覇鬼破山』!」と勇儀も全力で拳を振るい、宝塔からの神力に向かって突進します。
2つの技がぶつかり合い、近隣の家屋は吹き飛ばされました。
煙が晴れた後、両者は息絶え絶えの姿で立っていました。
「何よこの威力。2人とも凄いけど、諏伯の奴、私と戦った時は本気じゃなかったの?」と霊夢は驚きを隠せません。
しばらくして、魔理沙も追いつきます。「遠くにいたけど、凄い威力だったな。」
「勝ったの?」と霊夢が尋ねます。
「ああ、バッチリだぜ!」と魔理沙は得意げに答えます。
「いいもん持ってるじゃないか。」と勇儀は諏伯に微笑みます。
「その攻撃で普通に立たれるのは泣きたくなるんだけど……。」と諏伯は苦笑します。
「何言ってるんだい。私も同じ技は直ぐには出せないよ。今回は引き分けだな。通っていいぞ。」と勇儀は道を開けました。
「先に進もうか。」と諏伯は指示します。
「そうね。」と霊夢も同意し、3人は地霊殿へと歩みを進めました。
3人が去った後、勇儀の元へ水橋パルスィが走ってきます。
「勇儀、凄い威力の技が見えたけど。」とパルスィが尋ねます。
「いや~。久々にいい戦いが出来たぞ!本気を出して引き分けたんだからな!」と勇儀は満足げに答えます。
「それにしても、あの連中、予想外に化物だったみたいね。」とパルスィは言います。
勇儀は頷きながら、「ああ、特にあの人間の一人はなかなかの実力だった。これからも目が離せないな。」と返しました。
パルスィは興味深そうに、「これが地上の人間たちの力ってわけね。面白いわ。」と言います。