純狐の息子は二度目の生で母を追う   作:四国の探索人

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星蓮船の出発

諏伯は広い草原に出て、誰もいないかのように声をかけます。「あのUFO、他人に違うものを見せる能力は健在ですね。いるんですよね、封獣ぬえ。」

 

遠くから、ぬえが飛んできます。彼女の姿はゆっくりと近づいてきました。

 

ぬえは軽やかな声で言います。「UFOに触れてくる存在、何人かいたけど、懐かしい神力に触れられて気づいたわ。久しぶりね、諏伯。」

 

諏伯は少し気まずそうに、「その、なんというか。助けてやれず悪かった。どこに封印されていたのかも分からなくて。」と言います。

 

ぬえは少し微笑みながら応じます。「私は、敵だったあんたが生き埋めになってすぐに助けて上げたのにね。」

 

諏伯は懐かしそうに思い出し、「最後に会ったのは佐渡ヶ島以来だな。あの時も優しく送り出してくれましたね。」

 

ぬえは頷きながら言います。「そりゃそうでしょ。身内が死んだのに行かなそうなアンタをみたら苛ついたのよ。」

 

諏伯は真面目な表情で尋ねます。「どうやって復活したんだ?」

 

ぬえは少し考え込みます。「なんかここ最近、大規模に地下が動いたのよね。その隙間から出てきた訳。地底に出て、そこから地上へ。」

 

諏伯は驚きつ、推測します。「地底での地下移動?もしかしてお空との戦争か。」

 

ぬえは微笑みを浮かべながら言います。「もしかしてアンタだったの?遅かったけど感謝しているわよ。」

 

 諏伯は少し戸惑いながら尋ねます。「それで、なんでまたUFOを?」

 

ぬえは自信たっぷりに答えます。「それはあの一輪やネズミ達が何か企んでいたから邪魔してやったのよ。」

 

諏伯は軽く笑いながら言います。「まあ、そうだよな。私も目的を聞くまでは星蓮船を使わせる気がなかったし。」

 

ぬえは興味を持った様子で尋ねます。「目的って?」

 

諏伯は真剣な表情で答えます。「私の友人の姉が魔界に封印されているので解放するつもりです。」

 

ぬえは警戒した口調で言います。「友人の姉?その人、私にとって悪い奴じゃないでしょうね?」

 

諏伯は毅然とした態度で否定します。「あり得ない。それに悪い奴でも今度は一緒にいるだろ?守るよ。」

 

ぬえは軽く鼻を鳴らし、「ふんっ!お人好しめ。」と言いながらも、内心は理解を示すような表情を浮かべます。

 

ぬえは諏伯に最後の飛倉の破片を手渡します。「それが最後の破片よ。」

 

諏伯は感謝の意を込めて言います。「ありがとう、ぬえ。」

 

ぬえは少し照れくさそうに返します。「アンタだから渡したんだからね。」

 

諏伯はぬえから受け取った破片をしっかりと握り、星蓮船へと帰還します。

 

星蓮船に戻ると、彼は一輪に報告します。「はい、最後の破片。」

 

一輪は喜びの声を上げます。「これで揃いましたね。船長に伝えてきます。」

 

 一輪は操舵室にいる村紗水蜜に向かって元気よく報告します。「せんちょー。もう飛行出来ますよ!」

 

村紗はその言葉に反応し、驚いた様子で甲板に上がります。「いやー。こんなに早く集まるとは、その手伝ってくれた人に礼を言いに行こう。」

 

一輪は甲板で待つ諏伯たちを指差し、「船長、この人達ですよ。手伝ってくれたのは。」と紹介します。

 

村紗は一輪の示す方向を見るや否や、その顔を見て驚き、大股で諏伯に近づきます。

 

様子がおかしい村紗を気にしながらも、一輪はその様子を見守ります。諏伯は村紗が近づいてくるのを訝しげに見ていたが、村紗は目の前まで来ると、諏伯の胸ぐらを掴みます。

 

一輪は驚愕して叫びます。「船長!?」

 

村紗は怒りを露わにし、「その顔忘れもしない、船幽霊の私を沈めたのはお前だろ!あれから海がトラウマなんだからな、畜生!」と叫びます。

 

諏伯は突然の出来事に驚きながらも記憶を辿り、思い出したように村紗の服を掴み返します。「うるさいうるさい、乗ってる船を沈めてきたんだからやり返しただけです。自業自得ですよバーカ。」

 

一輪は不満そうに割って入ります。「もう、そんな事している場合じゃないよ。」

 

諏伯と村紗が罵り合う中、突然ナズーリンが現れ、両者の頭をポンと叩きます。

 

諏伯&村紗は同時に、「あべしっ!」と声をあげます。

 

ナズーリンは冷静に言います。「事情は知らないが、喧嘩両成敗って奴だね。」

 

一輪は安心した様子で声をかけます。「ナズ。戻ってきてたのね。」

 

ナズーリンは頷いて応えます。「うん。宝塔を取り返したと思ったら星蓮船が動いてたから急いで戻ったよ。」

 

ナズーリンは頭を抱える諏伯を見ながら呟きます。「それにしても思い出した。君が星蓮船と宝塔両者の製作者だったね。星蓮船の方は人伝いに聞いたから思い出すのが遅れた。」

 

村紗は驚きます。「ハァッ!?こいつが星蓮船の製作者なの?」

 

諏伯は少し謙遜しながら、「正確には命蓮との合作だ。」と答えます。

 

村紗は頭をかえます。「この素晴らしい船が、憎たらしいこいつの製作物だったとは」

 

諏伯は尋ねます。「宝塔は何に使うんだ?」

 

ナズーリンは冷静に説明します。「無暗に空に放った君とは違って、これはそうだな、効率のいい動力装置といった所だろうか。毘沙門天様の加護もあるから宝塔と飛倉にて星蓮船は少ない力で飛び立てる。」

 

諏伯は少し皮肉を混ぜて言います。「人から奪った者なのに随分勝手に使っていますね。」

 

ナズーリンは鋭い目つきで睨み返します。「君も譲渡には了解したよね?文句があるなら毘沙門天様に連れてくよ。」

 

諏伯はすぐさま平身低頭し、「すいませんでした!」と謝ります。

 

早苗は少し笑いながら、「よっぽどこの小鼠がトラウマになっているんですかね。」と冗談を飛ばします。

 

星蓮船は飛倉と宝塔によりゆっくりと飛び上がります。

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