魅魔は去り際に声をかけます。「あ、そうだ。」
諏伯は振り向いて尋ねます。「何か?」
魅魔はさり気なく言います。「魔理沙に宜しくね。」
諏伯が興味を引かれて聞き返そうとしますが、「どういった関け――」と口にした瞬間、魅魔の姿は消えていました。
ぬえは振り返り、「さっさと行かないと魔界に置いていかれるわよ。」と声をかけます。
諏伯は急いで答えます。「それは不味いな。急ごうか。」
二人は星蓮船へと急ぎ向かいます。
その頃、寅丸たちは――
村紗が声を上げます。「着いたよ。船はこのあたりで止まったけど。」
一輪が指差して言います。「あれでしょうか。結界というか壁のような。」
寅丸はその結界を観察し、「随分と強固な結界ですね。解除出来るでしょうか。」と語りつ、軽く結界に触れます。
すると早苗が元気いっぱいに提案します。「そんなのやってみればいいんですよ!ぶち壊せ!弾幕!」
彼女は弾幕を結界に向けて放ちます。
皆、衝撃で固まりますが、村紗が非難します。「アンタ!これで聖が死んだらどうするのよ!」
早苗は少し無邪気に答えます。「ダメでしたか?」
一輪は呆れながら言います。「見た目は女の子なのに雲山並の頭ね。」
早苗はその意図を気づかず嬉しそうに、「へん!どういたしまして!」と笑います。
一輪が苦笑いしながら言います。「いや、それは違うよ。」
寅丸は少し微笑みながら、「これも一種の褒め言葉なのですかね。」と言います。
ナズーリンが真剣な声で、「みんな、話している場合じゃないよ。結界をなんとかしないと。ご主人、いけるかい?」と促します。
寅丸は結界を見つめて判断します。「これは、、、かなり強固な結界ですね。暫くかる可能性があります。」と、座禅を組み、何かを唱え始めます。
他の仲間も座禅を組み、唱え始めます。
早苗もそれに倣って、同じように座禅を組みます。
その後、数時間が経ち、更に半日ほどが過ぎようとした頃――
座禅し続け、結界の解除に専念する一同。疲労がピークに達し、意識が朦朧とし始めたその時、ついに結界が崩れていきます。
寅丸はその様子を確認し、「やりました、、、か。」と呟きます。
全員が疲労の中で少しの達成感を抱き、身体が力尽きるように倒れ込みます。
その静寂の中、遠くからコツコツと誰かが歩いてくる音が響いてきます。
疲れから空を見上げる寅丸は、まどろむ意識の中で、その人の姿を見ます。
諏伯とぬえが到着すると、寅丸たちは聖白蓮のそばで疲れ果て眠っていました。
白蓮は微笑みながら諏伯とぬえに挨拶をします。「皆さん、私のためにご助力ありがとうございました。」
眠っている者たちの額を優しく撫でながら、白蓮は諏伯を見て言います。「こんにちは、あなたもこの子たちと一緒に来てくださったんですか?」
諏伯は少し緊張しながら答えます。「はい。あなたはもしかして、一輪たちが話していた聖白蓮ですか?」
白蓮はにっこりと笑って、「え。彼女たちにはだいぶ無理をさせてしまったみたいですね。あなたは?」と聞き返します。
諏伯はしばらく考えた後、言います。「洩矢諏伯。あなたの弟、命蓮の友達です。」
その言葉を聞くと、白蓮は驚き、諏伯の手を取り直します。「貴方が、弟の言ってた友達の方でしたか。すいません、私たち一晩だけ会っていたようなんですけど、昔のことなので記憶が。」
諏伯は少し戸惑いながらも答えます。「い、いえ。私の方も命蓮の姉に助けられたのは覚えていましたが、顔までは忘れてしまっていたので。」
白蓮は優しい笑みを浮かべて言います。「ふっふ。お互いに忘れていたなら、これから関係を作っていきましょう。」
彼女は手を差し出し、諏伯もそれをしっかりと握り返します。しかし、その後、諏伯の顔は少し青ざめ、質問をします。
諏伯は慎重に問います。「聞くべきではないかもしれませんが、聞かせてください。命蓮はなぜ亡くなったんですか?」
白蓮は少し考えた後、静かに答えます。「あの子は、、、寿命で亡くなりました。」
諏伯は信じられない思いで聞き返します。「彼ほどの人なら、いくらでも寿命を延ばせたんじゃないですか?」
白蓮は諏伯の疑問を受け止め、優しく語ります。「もちろん、彼の法力は私よりも優れていました。でも、あの子は、人として仏に仕えることを選びました。そして、魔法で病を癒やすことなく亡くなりました。私は命蓮の死を見て死が怖くなり、若返りの魔法を使用して生き延びています、、、」
諏伯は涙を浮かべながら振り絞るように言います。「私に言ってくれれば、どうにかしたのに。友達なのに、なんで何も言わずに。」
白蓮はその涙を見て、静かに言葉を続けます。「あの子と諏伯さんとは1年ほどの旅を共にしましたが、命蓮は旅の後もあなたのことを褒めていました。そして、死の間際でも、あなたに迷惑をかけまいと連絡をせず、諏伯さんの旅の無事を案じていましたよ。」
白蓮は昔を振り返ると、命蓮がまだ元気だった頃の思い出が鮮明に蘇る。
外から帰ってきた彼は、いつも通りの大きな声で「姉上!帰ってきましたよ!」と知らせてくれた。障子を開けると、そこには大きな船をバックに立つ命蓮の姿があった。白蓮は驚きと共に「命蓮?その大きな船は?」と問いかけた。
命蓮は誇らしげに答えた。「姉上!凄いでしょ!これは私と諏伯とが一緒に作ったんです。覚えていますか?私が旅に出た時についていったあの人!」
その後、時は流れ、命蓮が病気で苦しむ日々が訪れた。
「思うように身体が動きませんね。」命蓮が弱々しく呟くのを聞いて、白蓮は何とかして彼を助けたいと強く思った。「あなた、魔法を使わないの?」と勧めるも、命蓮は拒んだ。
「私は人として御仏にお遣えを、、、」血を吐く命蓮の姿は痛々しく、白蓮の心を引き裂いた。
「命蓮あなた、もう危険よ。せめてあの友達にあなたの事を知らせないと」白蓮は筆と墨を取りに行こうとしたが、命蓮は彼女の手をしっかりと掴んで言った。
「姉さん、諏伯は今。大事な旅の途中です。友達として彼の旅を止めさせなくありません。」
命蓮は微かな声で続けた。「私が体を直してまた諏伯と旅をして、、、これまでの旅の話を聞いたりして、、、したい事がたくさんありますね。」
そして、意識を失いそうになる中で囁いた。「諏伯、旅は無事進んでいますか?友達なのに私の病をお伝えせず先にいくことをお赦し下さい。君に幸あらんことを。」
白蓮は必死で彼の名を呼んだ。「命蓮!!」その時、命蓮は微笑みながら、まだ時間があることを示すように「姉上、さすがに死ぬまではもう暫くかりますよ。」と優しく言った瞬間が、彼女の心に深く刻まれた。
それは遠い日々の思い出であり、命蓮が友である諏伯や彼の望む冒険にどれだけの誇りと思いを抱いていたかを、白蓮は今も鮮明に覚えていた。
白蓮は少し微笑みながら言った。「だいだいこんな感じでしたかね。」
その様子を見た諏伯は、少し悔しさを込めて言葉を選んだ。「、、あの馬鹿。こっちの事に気を使いやがって。」
白蓮は少し心配そうに答える。「あの泣いているようですが、、」
その言葉に諏伯の表情は複雑なものに変わった。「私が彼の訃報を知ったのは数百年も後の事なんです。彼の事だから生きてると思って。それなのに、それなのに、、、、、亡くなって。」
彼の目に浮かぶ涙を見て、白蓮は優しく言った。「その考えは決して間違えていませんよ。今は皆寝ています。もしきたければどうぞ。」
白蓮は両手を広げ、彼を受け入れるように促した。諏伯はその優しさに導かれるように、白蓮の胸に飛び込んで泣き続けた。
その場には、静かな温もりが広がり、互いの存在が支え合うように感じられた。彼の悲しみを受け止める白蓮の姿を見て、ぬえが少し戸惑いを感じながら黙って見つめていた。
ぬえ「寝たふりでもした方がいいのかしら」