霍青娥が去った後、白蓮、寅丸、諏伯の三人は赤蛮奇の頭をじっと見つめていました。周囲は静まり返り、彼らの心配が募ります。
「ほっといたら起きますかねこれ?」
寅丸が真剣な表情で尋ねます。
「何もされてないなら起きると思いますけど、、、」と諏伯。
その瞬間、赤蛮奇の頭が目を覚まし、大きく見開き、焦りをもって叫びました。
「やめてくれ!私は食べ物じゃないぞ!」
白蓮は彼を落ち着かせようと、優しい声で言います。
「落ち着いて下さい。今は安全ですよ。」
赤蛮奇の頭は周囲を見回し、心配そうに尋ねます。
「あの青髪の女は?」
諏伯がゆっくりと説明します。
「君を置いてどこかに去っていきましたよ。」
赤蛮奇の頭は安堵の表情を浮かべ、
「そうか、助かった。一緒にいたキョンシーが私を食べようとして気を失ってしまった。」
と話しました。
寅丸は興味津々で質問します。
「キョンシーですか?私たちは見てないですけど。」
赤蛮奇の頭はほっとした様子で、
「いないならいいんだ。助けていただき感謝する。」
そして、
「諏伯と君達二人は?」
白蓮は少し考えた後、
「記憶は共有してないんでしたっけ?」と答えます。
赤蛮奇の頭は頷きながら話します。
「一度体にセットすれば共有されるんだが、それまではできないな。そういえば、本体は?」
寅丸は自信を持って答えます。
「地上でお待ちしていますよ。この道を帰ればすぐです。」
赤蛮奇の頭はすぐにでも戻りたい様子です。
「そうか。私はすぐにでも戻りたいが、君たちはまだ用事はあるのか?」
諏伯は慎重に言葉を選びます。
「ここまで来るのに封印を解いたみたいなので、何があるのか確かめに……」
寅丸は提案します。
「私が連れて帰りましょうか?」
しかし、赤蛮奇の頭は首を振って、
「いや、それならいい。ひとりで帰るよ。今回の件は礼を言う。」
そう言うと、赤蛮奇の頭はふわりと浮かび上がり、地上へ向かって歩き始めました。
背中を見送りながら、一行は再び封印の先に何が待つのかを探るために足を進めます。
先に進むと、烏帽子を被った少女、物部布都がそこには立っていました。
布都は気づくなり、こちらに駆け寄ります。
「おー。もう迎えが来るとはな。関心関心。褒めて遣わすぞ。」
諏伯が尋ねます。
「すいません、会ったことありましたか?」
布都は自分のことを理解されていない様子で答えます。
「我を知らぬでここまで来たのか?いやしょうがないか。我は所詮太子様の腰巾着。物部布都、これからも更に研鑽致す!」
寅丸は興味を持ちつ尋ねます。
「人間のようですが」
諏伯も思い出しながら言います。
「物部……物部……。子どもの頃に聞いたことがあるな。豪族の?」
布都は誇りを持って答えます。
「滅んだ一族の方が有名なのか?我はその物部一族の者である。知らぬのなら教えてやろう、若人。」
白蓮は少し苦笑しながら言います。
「勝手に話してくれて助かりますね。」
布都は続けます。
「我は道教を信仰し、屠自古、太子様と共に尸解仙となるべく眠りにつき、今や復活したわけだ! 今は眠りについてからどのくらい経つ?」
諏伯が答えます。
「え~と。私が生まれる60年くらい前が蘇我氏と物部氏の争いだったから」
布都は驚いた様子で言います。
「なんぞ?100年も経っておらぬのか?以外に早いものであるな。」
諏伯は少し照れながら答えます。
「いや、私の年齢が……」
布都は笑いながら締めくります。
「よいよい。大して変わらぬ。我が復活したということは、屠自古と太子様もすぐに眠りから覚めるだろう。いざ、向かおうぞ!」
そう言うと、布都は諏伯たちを招き、歩き出しました。
布都の案内のもと先に進むと、次第に薄暗い霧の中に少女の亡霊の姿が浮かび上がった。彼女は幽玄な光を放ちながら、ゆっくりとこちらに近づいてきた。
蘇我屠自古の姿だった。彼女は霧の中から現れた瞬間、憂いを帯びた目でこちらを見る。
布都はその少女に気づき、やさしく声をかける。
「屠自古お主も復活できたようだの」
屠自古はぴんと耳を立て、少し怒りを含んだ声で返した。
「お前私に言うことがあるだろ」
布都は、少し戸惑いながらも、冷静に言葉を続ける。
「後ろの人たちか。この人たちは我らの復活を祝ってくれた人たちじゃ」
すると屠自古は不信感を募らせ、こちらを睨みながら命じる。
「違う、足を見ろ。足を」
布都は首をかしげながらも、その言葉に答える。
「足か。我の足は何もないが……屠自古、お主の足がないではないか」
屠自古は首を横に振り、ため息をついた。
「私の壺がなすり替えられていたんだよ。お前だろ」
布都は何かを思い出すように目を細めて答える。
「はて……昔のことゆえ、よく覚えておらぬな」
屠自古は少し気を緩めて、見えない脚に触れながら言った。
「まあいい、もう歩かなくていいしな。そうだ、お前、なんで仏教の人間と一緒に歩いておるのだ?」
布都は周囲の仲間たちを見渡しながら答える。
「仏教?何を仰る。そんなわけなかろう」
白蓮がその場に割って入り、疑問を投げかける。
「仏教に何か思い入れでもありますか」
布都は微笑みながら答えた。
「かつて我らが尸解仙となる前、道教と仏教で激しく争っておったのだ」
屠自古は彼女たちを鋭い目つきで見つめながら言った。
「敵に情報を渡すなよ」
布都は少しだけ真剣な声で返す。
「屠自古、何を言うておる。復活を祝ってくれている人たちだ」
屠自古は鋭く、しかし少し疑念を浮かべながら指摘する。
「そこの金髪に黒が混ざった女が持っているのはなんだ」
布都は寅丸の方を見て、答えた。
「知っているに決まっておろう。錫杖だ、錫杖」
屠自古は観察しながらも呟く。
「知ってるならいいよな。錫杖は修行僧が持つものだ。そうだよな嬢ちゃん」
寅丸は小さく頷き、答えた。
「はい。私は修行僧ですが、、、」
屠自古は冷静に問いかける。
「布都、なぜこいつらが歓迎してくれたと思っている」
布都は少し照れながらも答えた。
「そ、それは我が復活した直後に来てくれたから」
屠自古は疑い深く目を細めてつぶやいた。
「復活したばかりを狙って仏教が道教を潰しにきたのじゃないのか」
布都は首をかしげながら考え込み、結論を述べる。
「考えておらなんだ。騙したな、お主ら」
寅丸は警戒心を見せながら声をかける。
「待ってください、攻撃の意思は」
布都は怒りに任せて叫ぶ
「問答無用"弾幕"」
寅丸らが仏教の一派であるも気づいた布都は攻撃を仕掛けてくる。