純狐の息子は二度目の生で母を追う   作:四国の探索人

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月へ

守矢神社での静かな一日が、永遠亭の兎、鈴仙の訪問によって一変した。

 

「すいませーん。置き薬いりませんか?」と鈴仙が呼びかけると、神奈子は微笑んで答えた。「生憎ここは神と奇跡を起こせる巫女がいるからね。結構だよ。」

 

失望した様子の鈴仙が肩を落とす。「そうですか、、、折角この階段を登ってきたのに。」

 

買わないことへの申し訳なさから、神奈子は鈴仙にお茶を勧める。「まあ、お茶位なら出してあげるから休んでいきなさい。」

 

「ありがとうございます!」と鈴仙は喜び、お茶をいただくことにした。

 

お茶を飲み干した後、鈴仙は感謝の言葉を口にする。「お気遣いどうも。」

 

「貴方も大変だったね。迷いの竹林からこんなとこまで営業に行かされるなんて」と神奈子は鈴仙の苦労をねぎらう。

 

「まあ、慣れてますから。ついでなんですが姫様から諏伯さんに言伝を預かっています。お会いしても?」と用件を持ち出す鈴仙に、神奈子は丁寧に道を教えた。「構わないよ。あの子なら今は自室にいるよ。廊下の突き当たりを右に行ったとこだね。」

 

礼を言い、諏伯の元へと向かう鈴仙。しかし、扉を開けた瞬間、彼女の瞳に狂気の炎が宿る。鈴仙は諏伯に怒りのレーザーを放つ。

 

諏伯は驚いて「なにを、、、」と口にするが、その言葉が終わる前に、部屋にはあらゆる方向からレーザーが走った。「ちっ、やはり死なないか」と鈴仙は苛立たしげに呟く。

 

無傷の諏伯に鈴仙は詰め寄り、「何かしましたかね。」と問う諏伯に対し、「何か、だと?罪人諏伯。貴様のせいで姫様とお師匠様の危機なんだ!」と訴える。

 

騒ぎを聞きつけた神奈子と諏訪子が部屋に駆けつける。「騒がしいと思えば穏やかじゃないね。」と神奈子が言い、「ウチの子が何をしたっていうんだい?」と諏訪子が問いただす。

 

鈴仙は激しい怒りを込めた目で睨むも、「五月蝿い!」と叫んだところで、神奈子が静かに鈴仙を気絶させる。「さて、これからどうしようか。」と神奈子は静かに考え始めた。

 

 数時間後、布団に簀巻きにされた鈴仙は徐々に意識を取り戻し、もがきながら叫んだ。

 

「この!縄を解け!」

 

それに対して神奈子は冷静に返す。「人んちで暴れといてよくそんな要求ができるね。」

 

諏訪子も鈴仙に語りかける。「とりあえず話してみなよ。死なないといえ人の子襲った理由をさ。」

 

鈴仙は少しの沈黙の後、決意したように口を開いた。「嫦娥様だ。彼女がお前をどうも欲しているらしい。月から捜索隊が来て姫様達が露見する可能性がある。捜索隊ではないが、先日一匹の玉兎が永遠亭に来た。」

 

神奈子と諏訪子は互いに顔を見合わせ、状況の深刻さを理解した。「月の者が捜索に来ているというのは大変だが。でも、どうして諏伯を?」と神奈子が尋ねる。

 

鈴仙は深呼吸をして答えた。「詳細は私も知らない。ただ、嫦娥様の地位を考えると捜索隊が組まれる可能性がある。」

 

 諏訪子は記憶をたどりながら、「嫦娥って確か諏伯が一度吹っ飛ばしたと話していた人?そこまで根に持つかね」と疑問を投げかける。

 

諏伯は静かに口を開いた。「母さん。前世で私は嫦娥に唆された父に殺されたんです。理由は知りませんが、、」

 

神奈子は重いため息をつき、「前世からの確執か。平和的に解決する方法があれば良かったんだが」と考え込む。

 

鈴仙は再び声を高めて、「諏伯!お前のせいで師匠と姫様が露見する可能性がある。なんとかしろ!」と訴えるが、諏訪子が上から踏みつけて静かにさせた。

 

「諏伯、とりあえずこの兎を永遠亭のとこへ返しておいで。私達はこれからについて考えるよ。」と諏訪子が指示すると、諏伯は黙って頷き、鈴仙を背負ってその場を去った。

 

部屋に残った諏訪子と神奈子はどうしたものかと頭を悩ませた。

 

諏訪子は不安を隠せずに言う。「神奈子〜。不味いよこれは。」

 

「月人と戦争になりかねない事態だ。私達は月までいけない今は諏伯を隠して置くことしかできんだろう。」と神奈子も同意見であった。

 

諏訪子はちゃぶ台に顔を埋めて、小さくつぶやいた。「ごめんね諏伯。暫く地下暮らしをさせることになりそう。」

 

 

 

 

 

一方、鈴仙を肩にかついでいた諏伯は、まるでこれから何か決意したかのように、いつもの穏やかな歩みでその場を進んでいた。静かに、しかし確固たる決意の如く、足取りは軽やかで自然だった。

 

鈴仙は苦笑しながら言った。 「その……悪かった。お前が悪くないってわかってても、つい襲ってしまって……姫様たちに危険が及ぶと思えば、居ても立ってもいられなくて。」

 

諏伯は控えめに微笑みながら答えた。 「いえ、こちらこそ、気にしなくていいんです。」

 

鈴仙は少し険しい表情になりながらも、素直に言った。 「もう迷いの竹林よ。降ろしても構わないわよ。襲いはしないって約束する。」

 

しかし、諏伯はその誘いに応じる素振りを見せず、静かに立ち止まった。まるで何かを決めているかのように。

 

鈴仙は困惑気味に眉を寄せて尋ねた。 「落とし穴の警戒でもしてるの?」

 

諏伯は静かに頷き、周囲の地面を見つめながら答えた。 「いや、今、穴を掘っているところです。」

 

鈴仙は驚きつも不思議そうに目を向けた。 「何をしようっていうの?」

 

諏伯は微笑を絶やさずに言った。 「迷惑をかけずに、少しでも何とかなる方法を考えているだけです。輝夜には、『もう君を守る約束は果たせそうにない』と伝えてください。」

 

それだけ言うと、彼は静かに鈴仙を穴に放り込んだ。土の中に消えゆく彼女の姿を見ながら、諏伯は何事もなかったかのように歩き出した。

 

落とされた鈴仙は、必死に諏伯の姿を視認しようと目を凝らすが、彼の姿はもうどこにもなかった。土の中からは救いの声も届かない。

 

鈴仙は声を荒げて叫んだ。 「ちょ、ちょっと!何をするつもりなのよ!縄をほどきなさいってば!」

 

彼女は穴に落とされながらも、必死に助けを求めて叫び続けた。

 

 

 

そのころ、諏伯は、自分のした決断に覚悟を持ちながら、静かに走り続けていた。迷惑をかけることになるのは避けたい、そんな思いもあった。

 

彼はやがて、博霊大結界の位置へと近づき、手をかざした。その瞬間、空間の縫い目のようなスキマが開き、八雲紫が静かに現れた。

 

紫は、彼の様子を見るや、やや冷静な口調で言った。 「大結界は私を呼び出す道具じゃないのだけれど…そんなことしなくても、名前を呼んでくれたらすぐに行くわよ。」

 

諏伯はそれを黙って聞きながら、焦りを隠さずに答えた。 「話している暇はない。月まで送ってください。」

 

紫は首をかしげながらも、わずかに微笑を浮かべた。 「鈴仙が話していた件ね。スキマから見てたから知ってるわよ。」

 

諏伯はその言葉に少し安心し、続けて言った。 「なら話は早いです。」

 

紫は軽く手を動かし、スキマを開きながら言った。 「まあ、霊夢たちを月に送る前に、あなたがどうなるか見てみるのも良い参考になるわよね。」

 

 紫はスキマを開きどうぞと手で案内する。

 

諏伯「感謝するよ。」

 

諏伯が通り閉じたスキマを見て隣にいた八雲藍が話す。

 

藍「幻想郷が狙われる可能性があるなら原因を向こうへ送り込んだ方が早いというわけですか。」

 

紫「ええ。大結界があるとはいえ。月の連中が本気で探せば見つかる恐れもあるからね。」

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