純狐の息子は二度目の生で母を追う   作:四国の探索人

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お褒めの言葉

諏伯は阿礼の家で待機していると、役人が知らせを持ってきた。

 

遣いの者は、「お褒めの言葉を頂けるみたいです。一緒に参りましょう。」と伝えた。

 

阿礼は驚きつも、「お褒めの言葉?封獣ぬえ程の妖怪なら謝礼くらい出そうなものですが」と言った。

 

「多分想像よりもっと上の人からのお褒めの言葉だ。」と遣いの者は返答した。

 

諏伯と阿礼は遣いに従い、案内された大きな邸宅へと向かった。

 

「大きい建物ですね。土地もこの京にてかなりの広さだ。」と諏伯は感心しながら言った。

 

阿礼は何かに気づいたようで、少し緊張した様子でお腹を抱え、「諏伯どの、これから会う人物どうやら1番上の人みたいです。」と告げた。

 

待機部屋でしばらく待っていると、奥から貴公子のような姿の男たちが鎮座し、初めに小姓が大きなカーテンのようなものを掲げた。その向かい側には一人の男がゆっくりと現れた。

 

貴族が「帝様からのお言葉である。」と前置きし、帝は諭伯を見て言った。「京を恐怖に陥れる妖怪、封獣ぬえの撃退大義であった。他の陰陽師にも任せてはいたが、みな撃退されてしまったようだからの。」

 

「ありがとうございます。」と諏伯が礼を述べると、帝は「汝の名は?」と尋ねた。

 

「諏伯にございます。今は旅をしております。」

 

「そうか、諏伯。お主の実力を見込み頼みがある。」と帝は続けた。

 

「頼みですか?」と諏伯。

 

「うむ。1つは封獣ぬえの撃退。倒してしまってもいいが、無理なら京より前で撃退してもらえばいい。」

 

「撃退だけならなんとか。」と諏伯は自信を持って応じた。

 

「そして重要なのは2つ目、私の文通相手の輝夜姫。姫を月の使者から守って貰いたい。」と帝は頼んだ。

 

「月の使者?ですか?」と諏伯は確認する。

 

「そうじゃ。輝夜姫は本来月の産まれ。罪を犯し地上に参ったが、その迎えがそのうち来るそうなのだ。輝夜姫も地上にいることを望んでいるため、時が来れば月の使者を倒して欲しい。」

 

「お引き受け致します。」諏伯は決意を示した。

 

「なにタダとは言わん。少しであるが、給金を出そう。そして隣の阿礼?だったか。そちは封獣ぬえの書を纏めていたらしいな。そちは、その腕を見込み国の歴史書'古事記'の編纂に関わって欲しい。」

 

「本当ですか!ありがとうございます。」阿礼は頭を下げ、感謝の意を示した。

 

「要件は以上じゃ。後は頼む。」帝の言葉に従い、諏伯と阿礼は御所を後にした。

 

帰り道、阿礼は言った。「諏伯さん、京にいる間はぜひ滞在してください。」

 

諏伯は頷き、阿礼の家にて再びお世話になることを決めた。新たな任務を受けたことで、彼はさらなる使命感とともに、京の地でしばらくの間過ごすことになった。

 

 諏伯は阿礼の家を拠点としながらしばらく過ごし、ぬえが出現したという報が出れば、外へ駆けて行った。

 

「来ましたね!ぬえ。」と諏伯が声をかける。

 

「ゲッ!またあんたなの。」ぬえは少し呆れた様子で振り返る。

 

「京の土地には入れませんよ。」と諏伯は釘を刺すように言いつつ、穏やかな表情を見せた。

 

「はい。分かってますよ。通行人しか驚かしていないからいいでしょ。」ぬえも軽く返事をした。

 

「まあ、それはそうですが。」と納得しつも諏伯は続ける。

 

「折角だから話でもしよう。」ぬえは提案した。

 

諏伯はぬえとこれまでのことについて話し始めた。ぬえは都市の外で出現し、人々を軽く驚かせてはいたが、その度に諏伯が現れ、二人は世間話を楽しんだ。こうしているうちに、いつしか友達のような関係になっていった。

 

「アンタ私といて倒したいとか思わないの?」ぬえは少し不思議そうに尋ねた。

 

「町に迷惑をかけている訳ではないし、妖怪だからといって退治する理由もない。京に入れなければ問題ないしね。」と諏伯は自然体で話した。

 

「変わってるわね。アンタ。」ぬえは笑いながら応えた。二人は互いに理解し合い、ちょっと不思議な友情を築いていた。決して普通ではない状況であれど、そんな関係を心地よく感じていた。

 

 ある日のこと、諏伯はぬえの出現の報を聞き、また世間話をしに向かっていた。

 

その様子を、卑しい陰陽師が複雑な心境で見ていた。「あれは、ぬえを撃退したという諏伯。毎日忙しそうだけど、どんな風に戦っているのか見てみよう。」と彼は興味を抱く。

 

卑しい陰陽師は諏伯の後をつけ、京の外れで腕組みをしながら隠れて見張ることにした。しかし、そこで目にしたのは、諏伯とぬえが楽しそうに話している姿だった。

 

「諏伯。そうか、妖怪とグルなのかアイツ。だから撃退したなんて嘘をつけた訳だ。これは役人に報告しなくては。」と陰陽師は勘違いをし、すぐに何かを企みながらそう言い残す。

 

卑しい陰陽師は役人にそのことを報告することにした。報告は伝聞に頼るため、すぐには広まらなかったが、徐々にその噂はゆっくりと広まっていった。

 

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