メジロ家の使用人やってます。あ、彼女募集中です。   作:shch

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8.メジロラモーヌ専属使用人

 

 

 

 

 

 

 

 

迫力のある力強い足音と、踏み抜かれた芝の一部が宙に舞う。

 

…ここは東京レース場、ウマ娘たちの夢がぶつかり合う場所。

 

今日も今日とてウマ娘がターフを駆け、勝利を狙う。

 

だだ今日のレースはそこまで大きいレースではないのか、観客の数が多いというわけでもなく、観客席には多くの空席が見受けられる。

 

…しかし、観客の数が少ないからと言ってレース場内の熱は変わらない、ウマ娘たちは全力で勝利へと向かい、観客もそれを固唾を飲んで見守っている。

 

…そして、一人のウマ娘が誰よりも先にゴール板の前を通過した。

 

「や、やったー!!!勝った!!勝ったんだ!!」

 

喜びの声をあげる彼女に向けて観客席からもまばらながら拍手が起こる。

 

そんな観客席の最後方…

 

「だから言っただろう学?3番があのまま逃げ切ると」

 

「流石ですねルドルフさん、俺は8番の仕上がりも良いと思ったんですが…」

 

そう言葉を交わすウマ娘と一人の青年の姿があった。

 

「確かに学の言う通り8番の仕上がりは中々良かった、最終コーナーで前を塞がれていなければ、一着はあの8番だっただろう……だが、レースは最後まで何があるかわからない……だから面白いんだ」

 

「…確かにそうですね……でもじゃあなんでルドルフさんは最初から3番が勝つと?」

 

青年がそう聞くと、ウマ娘は軽く笑いながら答える。

 

「ハハ…まあそれは完全に勘ってヤツかな?これまでレースをしてきたウマ娘としての長年の勝負勘だ」

 

「…なるほど、流石に無敗の3冠ウマ娘の勘には叶いませんね」

 

そう言って笑い合うウマ娘と青年。

 

そんな2人の片割れの1人は『シンボリルドルフ』かつて無敗の3冠ウマ娘として名をはせたスターウマ娘、今日はお忍びで来ているのかサングラスを着用している。

 

そしてもう片方の青年はお馴染み『九重 学』メジロ家で使用人をしている高校生だ。

 

「だが、一つ前のレースではキミの予想が当たったじゃないか?中々どうして…キミのウマ娘を見る観察眼は本物だよ」

 

「まぁずっとお嬢様たちが走る姿を見てきましたから…それに…」

 

学の言う通り、学は使用人としてレースに深く関わりのあるメジロ家に仕える中で、トレーニングのサポートだったり、レースの応援に出向いたりとレースに関わる機会が多かった。

 

……だがそれ以上に。

 

「…ウマ娘のレースを見るのは、個人的にも嫌いじゃないですから」

 

学は実はレースがちょっと好きだった。

 

数少ない休日をレース観戦に費やす日も少なくは無いし、公園で初めて会ったテイオーと自分が初めてファンになったウマ娘である『シンボリルドルフ』について日が暮れるまで語り合った日もある。

 

さらには、せっかく手に入れたルドルフとの一日お出かけ権の行き先に血迷ってレース場を選んでしまうくらいには、学はレースが好きだった。

 

そんな学のレース好きはある人物からの影響だったりするのだが…

 

「最近は役職柄、関係者席からばかりレースを見ていたが、たまには観客席から見るレースも悪くない…まあ流石にキミが私をレース場に誘ってきた時は驚いたが」

 

ルドルフはクスリと笑いながら学にそう言った。

 

「…あのルドルフさんの隣でレースを観戦できるなんて、またと無い機会かなと思いまして」

 

(…ほんとはお嬢様たち以外の人とお出かけとかしたこと無いから、どこに行けばいいかわからなかっただけなんだけど…)

 

学がそんな事を考えるが、ルドルフの隣でレースを見てみたかったと言うのも学の本音ではある。

 

そんな学にルドルフは続けて口を開く。

 

「キミにはいつも驚かされるよ、この私と「デートしてくれ」だなんて言ってきたものだから、もっとキャピキャピした所へ連れていかれると思ったのだがな」

 

「そっちの方が良かったですか?」

 

「いや、ああいう空気は私はどうも得意ではない、こっちの方がよっぽど良いさ」

 

(気を使ってくれてるのかな?やっぱり優しいなこの人)

 

学はそんなことを思いながら、なんとなく再びレース場へと視線を戻す。

 

その時、再びルドルフが口を開く。

 

「…こうして誰かと並んでレースを見ていると、現役時代にトレーナーくんとお出かけをした時のことを思い出すよ」

 

「僕とお出かけしてるのに他の男の話ですか?」

 

「……変な冗談はよせ、急に彼氏面をするんじゃない…分かっているぞ学、キミはこの私の事を度々からかって、反応を楽しんでいるだろう?」

 

ルドルフはそう言うと腕を組みながらジトっとした目で学に目線を送る。

 

「…そんなことないですよ」

 

学はそんなルドルフからの視線を受けながらも、目を合わせずにそう答える。

 

「嘘だ、だって今日会った時も大袈裟に私の服装を褒めてきたじゃないか、あの時から始まってたんだろう?」

 

「嫌でしたか?」

 

「嫌というわけでは……別に、褒められるのは悪い気分では無い………はあ全く…キミと話しているとどうにも調子が狂う」

 

困り眉で笑いながら、額に手を当てそう言ったルドルフ。

 

そんなルドルフに対して、学はターフに目線を移しながら口を開く。

 

「…まぁ嘘をついてるわけでは無いので、それよりも次のレースが始まっちゃいますよ?」  

 

「…ああそうだったな、学よそれでは次のレースは何番のウマ娘が勝つと思う?」

 

「うーん…5番に勝って()()()ですね」

 

学はレース場にいるレースウマ娘たちを眺めながらそう言った。

 

それに対してルドルフは学に指名された5番のウマ娘を見ながら口を開く。

 

「ふむ…5番…か、見たところそこそこの仕上がりではあるが、4番の仕上がりが良すぎる…彼女が勝つのは相当難しいだろうな…だがキミは今「5番が勝つ」では無く「勝って欲しい」と言っていたな?」

 

ルドルフはそう言いながらウマ娘から学の方に目線を移す。

 

「ええ…彼女は少し前に俺がレース場に来た時もレースに出ていて、その時に惜しい走りをしていたんです、その走りが忘れられなくて…確かに勝つのは難しいかもしれませんが…俺は彼女に勝って欲しい」

 

学はそう言いながら観客席からすっと立ち上がり再び口を開く。

 

「ウマ娘のレースは…ただただ勝つウマ娘を予想するものじゃないと思ってますから、色々なウマ娘がいて、その数だけ夢があって、自分が応援したい夢を見つけて、それを全力で応援するのがレースの醍醐味です」

 

「ほう……」

 

急に席から立ってそう言った学にルドルフは興味深げに頷きながら学に問いかける。

 

「…それでキミはなんで急に立ち上がったんだ?」

 

そんなルドルフの問いに対して学は照れくさそうに笑いながら口を開いた。

 

「…すいませんルドルフさん、この一戦だけ一番前まで応援に行ってきてもいいですか??いつもお嬢様たちのレースは一番前で見てるんです…俺我慢できなくて…はは」

 

「ふふ…まあいいさ、私はお忍びで来ているからここにいるが…楽しんで来い」

 

「ありがとうございます!ルドルフさん!行ってきます!」

 

ルドルフは微笑みながら学に了承の意を伝えると学は喜びながら一目散に観客席の最前列のフェンス前へと向かって行った。

 

「全く…これでは一緒に来た意味が無いじゃないか」

 

1人ポツンと観客席の後方に残されたルドルフはやれやれと言った様子で呟いた。

 

そして独り言を溢しながら、楽しげに前列へと向かう学の背中を見てルドルフは思う。

 

(不思議なヤツだ…『九重 学』…高校一年生の割には大人びすぎている非の打ち所がないヤツかと思えば、急に今の様に年相応な態度を見せたりもする…)

 

ルドルフがそんなことを考えている内にレース場ではゲートが開き、数々のウマ娘たちがターフを駆ける。

 

「頑張れ!!そこだそこー!!」

 

観客の入れる一番前のフェンスの手前から、他の競バおじさん達に紛れて大きな声を出し応援をしている学の姿。

 

そんな学を見ながらルドルフは軽く笑う。

 

「ふふっ…高校生らしい顔もできるんじゃないか」

 

楽しそうに応援の言葉を飛ばす学を最後方の席からルドルフが眺める。

 

(…「自分の応援したい夢を見つけて、それを応援するのがレースの醍醐味」…か…レースに出るウマ娘である私には無かった考え方だ…さらに言えば一般的なレースを観戦する人間とも少し違う考え方…)

 

学を眺めながら顎に手を当て、ルドルフは思考を続ける。

 

(だが私はレースに対して学と似た様な考え方をしている人種を知っている……学のウマ娘に対する観察眼…テイオーやメジロ家のウマ娘達から慕われるその性格…そしてそのレースに対する考え方……)

 

「いけー!!今!スパートだ!!」

 

学の応援の声がレース場に響く。

 

(…学…やはりキミは…使用人では無く…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「トレーナーに向いている」」

 

 

不意に呟いたルドルフの言葉に背後から聞こえる何者かの声が重なった。

 

そしてさらにその声の主はルドルフに語りかける。

 

 

「…そう言いたいのかしら?…ルドルフ?」

 

「…っ!?…その声は…!」

 

 

 

その声に聞き覚えがあったルドルフは反射的に背後を振り返った。

 

そこには…

 

 

 

 

「お久しぶりね、ルドルフ」

 

「ラモーヌ…!」

 

ルドルフの背後にいたのは、メジロ家ご令嬢が1人『メジロラモーヌ』だった。

 

「ラモーヌ…確かに久しぶりだが、キミはメジロの本邸で療養していたんじゃなかったのか?なぜここに…」

 

驚きながらそう問うルドルフにラモーヌは落ち着いた様子で口を開く。

 

「そんなのどうだっていいじゃない、それとも…私が此処にいて何か問題でも?」

 

「いやそういうわけでは無いが…」

 

ルドルフにそう告げたラモーヌはゆっくりと視線をルドルフから観客席の最前列にいる学へと移す。

 

「……久々に見たわ…あの子のあんな顔」

 

ラモーヌは学を見ながらボソッとそう呟くと再びルドルフへと視線を戻し、口を開く。

 

「皇帝ともあろう貴方がウチの使用人を連れ回して…どういうつもりなのかしら?」

 

「別に連れ回しているというわけでは無い、双方同意の上での逢瀬だ、キミにどうこう言われる筋合いは無い」

 

ラモーヌの言葉に対して腕を組みながら冷静にそう返すルドルフ。

 

双方の視線が激しくぶつかる。

 

「あら…貴方から『逢瀬』だなんて言葉を聞くなんて素敵…ウチの学に気でもあるのかしら?」

 

「なに、ちょっとした言葉遊びだよ、確かに学には人としての興味はあれど恋愛的な感情は無いさ……そう言うキミも私の発言に少々敏感に反応しすぎでは無いか?」

 

ルドルフがそう言うとラモーヌは僅かに微笑みながら口を開く。

 

「ふふ…そうかしら?…それよりもさっきの貴方の発言…あの子がトレーナーに向いているだなんて…面白いことを言うわ」

 

「面白がることなど何も無い、単なる事実だ、性格、観察眼、知識、思考能力、どこを見ても才華爛発な学という男は優秀なトレーナーに必要な要素を兼ね備えている…学が使用人を自らの意思で勤めているのは知っているが、私はまだ納得がいっていない。学がトレーナーとなり、ウマ娘のレースに携わることになれば、このレース業界はまた一つ進歩することだろう」

 

「ルドルフ、確かにレース業界の発展は貴方の夢…でもそれにウチの使用人を利用しようというおつもりで?」

 

「利用では無く勧誘だ、学の意思は一番に尊重するさ……まあその前に、学とそれなりの()()()()はするつもりだが」

 

ルドルフはそう言いながら挑発的な笑みをラモーヌに向ける。

 

だがそれを見たラモーヌは余裕ありげに妖しく口角を上げて口を開く。

 

「ふふ…それを聞いて安心したわルドルフ」

 

「どういう意味だ?」

 

ラモーヌの余裕そうな表情を見たルドルフは疑問の声をラモーヌに投げかけた。

 

「そんな()()()()程度じゃあの子の心は動かないもの…あの子の『私への愛』はそんなものじゃ無いわ」

 

妖艶に笑いながらそう言うラモーヌにルドルフは首を傾げながら口を開く。

 

「…ラモーヌへの愛…?」

 

(その言い方は少々限定的過ぎないか?…『私たちへの愛』とかならまだ分かるが…確か…学から聞いた話によれば、アイツは今はメジロマックイーンの専属使用人であったはずだが…)

 

「何か可笑しい事でも?」

 

自らの発言を受けて首を傾げたルドルフにラモーヌはそう尋ねた。

 

「…いやなに、キミの発言に少々気になるところがあってね…『私への愛』と言っていたが…私の聞いた限り学は、メジロ家のウマ娘全員へ平等に愛を持っていると思うんだが…」

 

「…ふぅん…あの子…まだそんな事を言っていたのね…本当につまらない男」

 

ルドルフがそう言うと、ラモーヌの美しく輝く瞳からその輝きが消え、低く冷たい呟きがその口元から漏れ出た。

 

その小さな呟きにルドルフは気が付かずに言葉を続ける。

 

「…それに…平等で無いとしても、少なくとも学が今現在メジロ家で1番愛を持って接しているのは専属であるメジロマックイーンでは無いのか?」

 

そうルドルフが言ったその時。

 

「ルドルフさーん!!勝ちました!勝ちましたよ5番が!!俺が応援してた!」

 

前方から何も知らない学の呑気な声が聞こえてきた。

 

ルドルフとラモーヌはその声に反応し、声のする方向に同時に目線を移す。

 

「いや〜良いレースでしたね〜」

 

そう言いながら嬉しそうな表情で此方に向かって歩いてくる学の姿。

 

そんな学だったが…

 

「ちゃんと見てましたかルドルフさ………ん……?…」

 

自分の視線の先のルドルフの背後にいるラモーヌの姿を発見すると、ルドルフが見たこともないギョッとした表情でその身体を硬直させた。

 

そんな学を見たラモーヌは口元に手を当ててクスリと笑いながら、ルドルフに語りかける。

 

「…ふふっ…ねぇルドルフ、あの子は今後…何があってもトレーナー…いえ…その他の使用人以外の職業は選ばないわ……だって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子は…このわたくし…メジロラモーヌの専属使用人なんですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は北の大地、北海道羊蹄山の麓に位置するメジロ家本邸…

 

 

 

 

 

 

「お嬢様、もうすぐ朝食のお時間です、ご準備はできていますか?」

 

黒の燕尾服を身にまとい、頭髪を七三分けに綺麗に纏めた少年が白い手袋をしている手で大きな木製の両開き扉をコンコンコンとノックする。

 

ノックの音が扉の向こうへ響いたその直後。

 

「…ええ、早く入りなさい」

 

そんな声が扉の向こうから聞こえてくる。

 

その透き通るような声はどこまでも美しく、気品と威厳そしてどこかこの世ならぬ美の気配を纏っていた。

 

「失礼いたします」

 

そんな返事を聞いた少年はそう言いながら、目の前の扉に手をかける。

 

ギィィ…

 

少年がその手に力を籠めれば、扉は重く軋む音を立てながらゆっくりと開いた。

 

扉の先で真っ先に目に入るのは部屋の中央にある大きなベットにて上体を起こすウマ娘の姿。

 

そんな姿を見た少年はゆっくりと口を開く。

 

「お早うございますラモーヌ様、御足の調子はいかがでしょうか」

 

「ええ、お早う、学…それと脚の前に…今日のこの私を見て何か言うことは無くて?」

 

ラモーヌはそう言うとベットの上で目を細めて妖艶な表情を浮かべながら、学の方に視線を送る。

 

その姿は窓から零れる朝の陽ざしに照らされ…美しく輝く。

 

「…ラモーヌ様、今日もお美しゅうございます」

 

「よろしい」

 

学がラモーヌにそう言うと、ラモーヌは満足げな表情で頷いた。

 

(…正解だったっぽいな)

 

その満足げな表情を確認した学はそんな事を考えながら、部屋の隅にある車椅子の元まで足を運ぶ。

 

その車椅子を学はベットの手前まで運び、右手をベットの上にいるラモーヌへと差し出す。

 

「お手をお貸しします…さあラモーヌ様」

 

「ええ…」

 

ラモーヌはそう言うと差し出された学の右手に自分の手を重ね、ゆっくりとベットから立ち上がり、その身を学へと預ける。

 

「どうぞこちらへ…」

 

学はそんなラモーヌの手を引いてすぐ傍にある車椅子へとラモーヌを座らた。

 

そして学はゆっくりと優しくラモーヌの座る車椅子を押し、ラモーヌの部屋から出ると、コロコロと音を立てながらメジロの屋敷の長い廊下を進んでいく。

 

そんな風に朝食の並ぶ部屋に向かうその道中…

 

「…不便なものね…自由に歩けないのは」

 

ラモーヌがボソッと独り言のようにそう呟いた。

 

「…これじゃあ…あのターフに戻るのは…一体何時になるのかしら…」

 

「………」

 

ラモーヌの呟きは静まり返った長い廊下に響き、そのままゆっくりと消える。

 

「…………」

 

「…………」

 

聞こえるのは車椅子が転がる音だけ、2人の間に沈黙が流れる。

 

「…………何か答えなさいな…学?」

 

沈黙を破ったのは少しだけ不機嫌そうなお嬢様の声。

 

(…え?さっきの独り言じゃなかったの?)

 

それを受けた学は少しぎょっとした表情を浮かべるが、すぐさま気を取り直して口元に手を添える。

 

「……コホン」

 

そして、一つ咳払いをした学はラモーヌに言う。

 

「絶対にいつかターフに戻れます…ラモーヌ様なら…」

 

学がそう言うと、それを聞いたラモーヌの耳がピクリと動く。

 

それに構わずに学はさらに言葉を紡ぐ。

 

「……なんて無責任な言葉は残念ながら言えませんよ?私は主治医じゃありませんので」

 

「そんなつまらない答えはハナから求めてないわ」

 

学の言葉にすぐさまそう返したラモーヌ。

 

ラモーヌの表情は車椅子を押している学には見えない、それ故にラモーヌがどんな答えを求めているのか、それは分からない。

 

だが…

 

「ラモーヌ様が求める答えは知りません……ですが…」

 

学は一瞬の間に思考を回すと、口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラモーヌ様がターフ戻るその日まで…このわたくし『九重 学』がお傍で貴方の脚となります」

 

学がそう言うと、車椅子に座るラモーヌがクスリと小さな笑い声と共に声を上げる。

 

「…あら、その日はもしかしたら一生来ないかもしれないのよ?それでもよろしくて?」

 

学の答えにラモーヌは少しイタズラっぽくそう言った。

 

脚が治らなければラモーヌはもう2度と…『永遠』に…ターフに立つ事はできない。

 

ラモーヌのイタズラっぽい雰囲気に対し、その発言は彼女にとって重い意味を持つ。

 

だが…それでも…

 

学はにっこりと笑ってラモーヌに答える。

 

「もちろん、承知の上です」

 

迷いの無い、真っ直ぐな学の言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………よろしい」

 

 

そんな学の返事に少し間を開けてそう答えたラモーヌの表情は…学には見えない。

 

だが…

 

(なんか耳ピコピコ動いてんなぁ…)

 

楽し気に動くそのウマ耳は学の視界にしっかりと入っていた。

 

「…まぁ…あくまでそれが私の仕事ですからね」

 

「つまらない事を言わないで」

 

照れ隠しのつもりか、自分の発言にそう付け加える学と少し低めの声で言葉を返すラモーヌ。

 

2人はそんな他愛の無いやりとりをしながら、メジロ家本邸の長い廊下を一緒に進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから語られるのは…

 

 

学がメジロ家別邸にてメジロマックイーンの専属使用人となる少し前のお話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

おまけ:九重 学の人生早見表

 

3歳:メジロのおばあさまに拾われて、北海道にあるメジロ家の本邸にて生活を始める。

 

6歳:パーマーとライアンと一緒に本邸近くの小学校に入学。

 

10歳:本邸で一緒に住んでたラモーヌがトレセン学園中等部に入学するため、学園の近くの別邸へと移る。

 

11歳:アルダンがトレセン学園中等部に入学、別邸へと移る、アルダンのお見送りで人生で一番の大号泣をする。

 

12歳:本邸近くの中学校に入学、ライアンがトレセン学園中等部に入学、少し反抗期だったパーマーはトレセン学園には行かずに学と同じ中学に入学する。

 

13歳:ブライトとドーベルがトレセン学園中等部に入学、別邸へと移る。ラモーヌが怪我の療養と避暑のために本邸に戻ってくる、夏が明けるとレース復帰のために再び別邸へと戻る。

 

14歳:マックイーンがトレセン学園中等部に入学、別邸へと移る、学にお見送りされる際にマックイーンが人生で一番の大号泣を見せる。去年レースに復帰したものの、またしても怪我でレースに出られなくなったラモーヌが療養のために本邸へと移る。

 

15歳:トレセン学園の隣にある高校に入学、パーマーもトレセン学園高等部に編入したので2人でみんなが居る別邸へと移り住む、マックイーン本人の熱い希望とそのレースの資質を認められ、おばあさま公認で彼女の専属使用人となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








本小説だけの独自設定多めです、悪しからず。
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