H☆EROコハルちゃん   作:エ駄死案件過剰反応実施キャンペーン

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HERO、HなERO。つまりエ駄死ですね、犯罪者は死刑ですね。



コハルちゃんはHEROになりました

 

――正義ってなんだろう?

 

私は馬鹿だ。だから……きっと、一度気になった事に対して曖昧に区切りを付けることが出来ない。

 

頭の良い人だったら答えを導き出すだろうし、分からなくても……まあ、多分私よりはマシな区切りを付けると思う。

でもやっぱり私は馬鹿だから、解らない事に長時間――もしかしたら一生を使って、悩み続ける。

 

 

――例えば『正義』が四則算だったら。

 

 

大声を上げる人が三人いて、それを宥める人が二人。二人ずつがぶつかって、ノーマークの人が一人。じゃあ最後に残ってる一人の大声を上げる人が『正義』?そんなのが引き算で導き出せる『正義』?

 

悪い人と悪い人がいて、(マイナス)(マイナス)×(殴り合って)。それが(プラス)に成るのが『正義』?傷つけ合ってるのに、『正義』?

 

 

……違う。『正義』は四則算ではあらわせない。

 

 

――なら、『正義』って社会的にどう位置付けられてるの?

 

 

よく学校のクラスは社会縮図に例えられている。その中で『正義』が与えられるべきは誰?どの立場の人間?

 

担任が『正義』?イジメを見て見ぬふりをするヤツもいて、自分の考えや意思、思考方向を強制して。共感出来なかった生徒を問題児扱いする担任もいて。

そんな担任も『正義』?発言力があるからって『正義』なの?

 

クラス委員長は『正義』?押し付けられて、渋々やってるだけの未熟な子供。同じ事を学んで、同じ事を見せられ。

社会を知らない子供が『正義』?明確な立ち位置があれば『正義』足り得るの?

 

 

……そんなワケがない。『正義』は社会性から外れた、もっと別の何かだ。

 

 

じゃあ思想の正解を出すには何が必要なの…?ただ真面目に正しいって信じるものがみんな『正義』ってワケじゃない。そんなのは、きっと何処までもワガママなだけ。

人を守る事が『正義』なの?じゃあ弱い子供は誰も守れないから『悪』なの?……そんなハズがない。『正義』の護るべき対象が根源的な『悪』だなんて、そんなの…救いがないし、『正義』の構図じゃない。

 

 

 

私は正義実現委員会。正義を掲げて、平和を築き、平穏を実現させる誇り高き先輩達の後輩。

……失望、させたくない。嫌だ、先輩たちに失望されて……嫌われたくない………そんな理由で正義実現委員会にしがみつく私は、なんて情けなくて…嘆かわしいのか。少し前までは無邪気に掲げていた『正義』を見失って、心に残っているのが依存にも等しい、薄っぺらい人間関係への執着。

 

………『正義』ってなんだろう……()()()()、満足出来る『正義』ってなんなの?

 

 

わからない…わからない、わからない!私はアズサのように誇り高くもないし、ハナコのようにサイエンでもない。ヒフミみたいに一直線に進むには、雑念が多過ぎる。

 

こんな私が正義実現委員会でいいの……?

 

 

 

 

……………………………そうだ。

 

わからないなら……一旦、()()()。私のルール、私のやり方、私の指針、私の――『正義』。

 

 

馬鹿な私が、そんな理由で築き上げたのがH()E()R()O()()()だった。

 

◆◆◆┊︎◆◆◆

◆*◆┊︎◆*◆

 

「ヒフミ、最近…おかしな噂を聞いた」

 

「噂、ですか……?」

 

放課後、ファミレスで向かい合って宿題を進めていたアズサが唐突に口を開いた。あまりにも唐突な話題に、ヒフミは思考の隙もなく、オウム返しのように言葉を返す。

 

続けて刹那的に少女の頭に浮かんだ"最近の噂"の九割はモモフレンズ関連であったが、それならば言葉の頭に『おかしな』と付くのはおかしい。

珍事件の多いキヴォトスに住み、その上でヒフミは断言する。謎の巨大機械生命体や至る場所で温泉やら爆発やらが発生している現状。そのおかしな噂とは相当に珍妙なモノなのだろう、と。

 

「キヴォトスの色々な場所で、ヒーローを自称する変質者が出没している。シスターフッドや正義実現委員会も調査しているらしいけど……まあ、少なくとも公表された情報は一枚の写真だけだって」

 

「写真……あ、もしかして今日配られてたチラシのアレですか!?限定ペロロ様フルウェイスマスクとライダースーツの、あの高度なペロロ様信者なあの方ですよね!?」

 

「い、いや……信者かは分からないけど、恐らくはそうだと思う。何故だろう……分からないが、何だか気になって……」

 

「あはは、ペロロ様ですからね…」

 

――鞄から抜かれた一枚のチラシ。

 

指名手配、と言うには少しばかり仰々しいが。見付けたら然るべき場所への連絡をするように、と綴られた紙にはカラーで一枚の写真が付いていた。

 

左右非対称(アシンメトリー)な緩い瞳に、小さな嘴から飛び出る大きな舌先の装飾。不思議と温かみのある白のフルフェイスヘルメットは華奢な不審者の頭部を丸々と覆い隠し、何処と無くオーバーサイズな黒のライダースーツは肌の一片すら見せない。

 

そんな写真の人物は腕を振り被り、今にも鉄球を投げるように躍動感を宿して写真内に切り取られていた。

 

ペロログッズに見惚れている少女は緩い笑みでロールケーキを頬張る。普段は見せない頬のだらしない弛みはロールケーキの甘さか、或いは敬虔な同士への巡り合いを妄想している故か。

 

「……それで、この方は何をしているんですか?アズサちゃんはさっき、ヒーローを自称している、と言っていましたけれども…」

 

「端的に言えば、喧嘩両成敗だな」

 

「け、喧嘩両成敗…!?」

 

「この自称ヒーロー……巷では『ペロロ仮面』と呼ばれてるが、コイツは不定期的にキヴォトスの至る場所に出現して、恐ろしく正確無比な鉄球の投擲で不良と治安部隊の両方を地に沈めているらしい。桁外れた距離に命中率……細身ながらに異常な腕力。恐らく、聖園ミカと同類だと思う」

 

「ッ!……それは………なんと、言うべきか…本当に桁並外れていますね…」

 

嘗て、聖園ミカと敵対した二人だからこそ彼女と同類と言われた『ペロロ仮面』に恐怖にも近い感情を覚えてしまう。

 

改めて写真を見る。華奢で小柄、発育は控えめだが確かに女性的なシルエット。体型だけならばアズサや、同じ補習授業部のコハルに似ているが、普段の言動や『ペロロ仮面』の活躍を鑑みるに似ているのは体格だけだ。

それならばヒフミの知る限りではアビドス高校の小鳥遊ホシノの方が余程適性があるように思える。無論、彼女がキヴォトスを駆け回って自称ヒーローを名乗るのは考えられないが。

 

「……是非、一度くらいは手合わせを願いたいな。銃撃戦以外の中距離ないし遠距離での奇襲はあまり経験がないから、体験してみたい」

 

「うぅ…わ、私はあまり危険に巻き込まれたくないです……」

 

「大丈夫。ヒフミは私が守る」

 

「……あっ、純粋な瞳が……ふ、普段から勝手に危険に突っ込んでごめんなさい…」

 

「………??」

 

常日頃からブラックマーケットに入り浸り、必要とあらば危険にも銃を片手に躍り出て、巻き込まれたとはいえ闇銀行での強盗も成功させて覆面水着団のトップにされたヒフミは、無垢な瞳の前に鈍い頭痛が生じた。

 

「そう言えば、ハナコちゃん遅いですね」

 

ふと、思い付いた別の話題を言葉にする。

 

放課後にファミレスで集まっているのも、補習授業部の皆で集まって宿題やらアフタヌーン・ティーを目的としての事だ。

いつもならば補習授業部で使用している校舎を使っているが、自分たちで紅茶や菓子を用意するよりも店に入った方が楽なので、飲食物に過剰な拘りを持たない彼女達には打って付けだったのだ。

 

「コハルも遅い……何かあったのか?」

 

「あ、聞いてませんか?コハルちゃん、用事が出来たから行けないってグループチャットに書かれてましたよ。もしかしたら正義実現委員会の用事なのかもしれませんね」

 

「え?だけど……コハル、さっき校外に走って向かってたぞ。てっきり先にファミレスに向かってると思ってたんだけど、居ないからな」

 

「校外に…?」

 

「鞄を脇に抱えてたな………と、話していれば。あそこにハナコが居る」

 

「えっ、あ……あれ?なんだか様子が変じゃないですか?」

 

――ガラスの向こうに見える、桃色の長髪。

 

その様子は何処か困ったように表情が曇っており、そんな彼女を複数の不良生徒が取り囲む。一触即発、とは言えないが。然しどう転んでも良い状況にはなり得ないだろう。

 

「た、大変です…!」

 

「むっ……敵か?直ちに戦闘を開始――いや、待て。()()は…」

 

「アズサちゃん…?」

 

「……噂をすれば。ヒフミ、あっち。あの建物の屋上」

 

「ッ!…あ、アレは…!ペロロ仮面様!!??」

 

 

――腰や肩に鉄球付きのベルトを巻いた、小さなシルエット。間違っているようにサイズが大きい黒のライダースーツに、特徴的なペロロのフルフェイスヘルメット。

 

 

自称ヒーローが、到着した。

 

◆◆◆┊︎◆◆◆

◆*◆┊︎◆*◆

 

遠くでハナコが不良に絡まれてる……HEROとしてパトロール中に見付けてしまった。

 

「……やっぱり、あまりトリニティは活動範囲にしない方がいいのかな…」

 

大きく振り被って、小さな身体をしならせて。力から開放されるバネのように、掌に収まる鉄球を全力で放つ(投げる)

 

私が唯一、正義実現委員会のみんなよりも優れている特技。何度も先生の戦闘指揮を受けて、身体に染み付いて――昇華させた投擲術。

 

セイなる手榴弾とは違って弧を描かない鉄球。狙いはいつも通り、()だ。ヘルメット団のヘルメット程度なら簡単に砕く一撃、例えキヴォトスの住民だろうと脳を揺らせば容易く鎮圧できるって……って、先輩やアズサが言っていた。

 

「――せいっ!」

 

初撃、黒いマスクをしている不良生徒の狙撃銃を弾く。一番大きい反撃の芽を潰して、こちらに顔を向けた生徒の顎を正確な投擲で撃ち抜く。

 

「おい!大丈夫か!?クソッ…!」

 

「だ、誰だ!?」

 

「……HERO」

 

「はぁ!?珍妙な格好して何言ってやがる!!」

 

ヘルメットに搭載されているボイスチェンジャーが、私の声にノイズを付与して別物にしてしまう。根本的な声質も変えているから、親しい人だって気付かない。絶対にバレない。

 

……今の私は『正義』を創っている。

 

だから、全てにおいて()()()。例え…不良に絡まれてるのがハナコだろうと、構わない。目に映る争いは全て私が鎮める。

 

「………でも、見てない内に逃げてたりしたら仕方ないよね…」

 

「撃て!相手は一人だぞ!!」

 

「先にあなた達から、倒す」

 

――私の鉄球は特別製だ。

 

以前、ミレニアムプライスで発表されていた新作武器。でも全員が銃を携帯するこの世界では玩具にしかならない筈だった――私にとっての最高の武器。

 

鉄球に備わっている、推進力増加補助システム。簡単に言えば、弱く投げても鋭く遠くに飛んで、強く投げれば恐ろしいスピードになる。

 

もっとわかり易く言えば、5kgの鉄球が亜音速で鉄球が飛んでくる。私が下手に銃や手榴弾を使うよりも、この鉄球を使った方が()()

 

それに加えて、一度投げた鉄球は時間を置いて戻ってくる仕様だ。最初に鉄球を納めていたベルトに戻ってくるのだ。光学迷彩まで付いてるから、戻ってくる際に追跡される心配もない。

 

「…二人目、三人目、四人目」

 

「ち、くしょう……なんだ、あの速さ……化け物…!!」

 

「化け物じゃなくて、HEROだから」

 

「ぐふぉ!!」

 

「……何だろう、『正義』って」

 

最後の一人の銃を遠くに弾いて、顎を腕で守られていたから額に鉄球をぶつける。

 

……また、簡単に片付いた。HEROになって、人を故意に暴力で傷付けて。そして…悲しいくらい、そして嘆かわしくも、『暴力』は()()()()だった。

不良生徒がそうしているのも、きっと同じ理由だ。一つの枷を解いて、一線を越えて。後は簡単なモノで、一番楽で大きい選択肢が生まれる。

 

(ハナコは……うん、もう居ない…)

 

居たら、ハナコも傷付けなきゃいけない。そして……今の私には、きっとソレが出来てしまう。

 

私の創る『正義』は既存のあやふやで不確かで、私が納得出来なかったモノと同じじゃあいけない。何が正解で何が間違っているのか……そんなのは迷走の果て、ゴールしてから定まるんだと思う。

 

()()、私の『正義』は不安定で感情的で、ハリボテだ。だから沢山傷付けて、沢山救って、背負いきれない程のHEROとしての業を溜めて。

全てを識ってから、『正義』を導き出そう。それまでは――私は私の知らない『正義』を全うする。

 

例え、HEROと『正義』がベツモノだったとしても。

 

◆◆オマケ◆◆

 

《H☆EROコハルちゃん》

 

・ペロロ仮面と呼ばれてる不審者。エ駄死だし、エ駄死じゃなくても殺す正義創造系HERO。ミレニアム製鉄球を亜音速且つ正確無比に投げてくるし、鉄球は勝手に戻るので弾切れもない。

ボイスチェンジャー機能付きの限定ペロロフルフェイスヘルメットは、売れな過ぎて抱き合わせになっていた鉄球と一緒に購入。

ついでにネットで買ったライダースーツはあまりにもサイズが大き過ぎて、裾上げをしている。

 






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