憎まれた世界の果てに   作:お米うまい

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予約投稿がズレていたのに気付いて、慌てて投稿しました
昨日の投稿をお待ちしていた方は申し訳ありません。


第102話 仲良しこよし、ではないらしく

「お嬢様は現在、離れの方に居られます」

 

 謀反とか国家転覆だとか言いたくなる手紙をプロディに押し付けがてら。

 

 マキの様子を見に行こうと居場所を尋ねた研一に返ってきたのは、そんな言葉であった。

 

「離れ?」

 

「案内します。付いてきてください」

 

 プロディの言葉に従い、案内されるままに背中を追っていた研一であったが――

 

(え、離れなのに外なのか?)

 

 プロディが『どこでも進める君』という名の車に乗り込んだところで、僅かに戸惑う。

 

 だが、よく考えれば異世界だ。

 

 自分が思っている離れとは完全に別物の可能性もあるし、騙されていたら騙されていたで構わない。

 

 促されるままに研一は、空飛ぶ車の後部座席へと乗り込む。

 

「…………」

 

 研一と世間話なんてしたくもないのか。

 

 無言のまま、車が進み続けて数分ばかりの時が流れて。

 

「それにしても、てっきりマキの忠実な下僕かと思っていたが、意外な面もあるじゃねえか」

 

 あまりにも静か過ぎる空間の重圧に耐え兼ねたのもあるが。

 

 少し気になった事があり、探りを入れる為に口を開く。

 

「反逆者共の手紙を渡しもせずに燃やすなんてな。なんだ、実はてめぇが黒幕で知られちゃ困るってか?」

 

 それは研一が渡した手紙を、軽く流し読んだだけでプロディが燃やしてしまった事だった。

 

 仮に手紙を見たマキが気にする可能性があるからと言っても、中には個人名が書かれている物だって多数あった。

 

 反逆者の名前くらい把握しておいた方がいいと思う研一であったが、その答えは驚く程にあっさりとプロディの口から放たれる。

 

「私に断られたからと言って、ならばとばかりに昨日現れた信用も出来ない男に尻尾を振る馬鹿共の事で、マキ様が気に病んでも仕方ないですから」

 

 どうやら手紙を受け取ったのは、マキの方が先だったらしい。

 

 軽く流し読んでいたのは、新しい人間が増えていないか確認していたのだろう。

 

「はっ、そうかい……」

 

 そこで研一が短く返答したのを最後に。

 

 再び車内に沈黙が落ちた。

 

 重苦しい空気が漂うが、もう研一は口を開く気はなかった。

 

(話したところでお互いに気分が悪くなるだけだしな)

 

 口を開いたところで結局、嫌味か皮肉か。

 

 あるいは腹の探り合いのような胃の痛くなる会話しか出来ない。

 

 それなら息苦しい空間で黙り込んでいるのと大して変わりは、ないからだ。

 

「あの女、また……」

 

 暫くして車が止まったかと思うと、プロディが口を開く。

 

 どうやら目的地に着いたらしい。

 

(あれはマキさんと――)

 

 研究所を思わせる近未来的な場所で、マキが誰か女の人と話していた。

 

 日に焼けた肌が活発そうな雰囲気を与える女性なのだが、それ以上に印象的なのが会話中だと言うのに背負っている大荷物だ。

 

(旅人か行商人か?)

 

 そこから連想される職業なんて、研一には二つくらいしかなく。

 

 更にその内の一つで正解だとでも言わんばかりの言葉が、車から降りた研一の耳に響いてきた。

 

「えー!! 今日は魔導人形壊れてへんの!? いっぱい部品仕入れてきたんやで?」

 

 まだ研一からは多少の距離があるにも関わらず、はっきりと内容が聞き取れる大きな声。

 

 それに対してマキが何か言葉を返しているようだが、マキの声は普通の声量だった為、何を言っているかは研一には聞こえない。

 

 とりあえず、離れていたんじゃ何もならないと二人に近付いていく。

 

「予備の部品くらい多めに、あってもええやろ? 今買うてくれるなら、おまけするで?」

 

「物が物ですわ。こんな値段の品物、無駄に買う予算なんてありませんの」

 

「そこはほら、ウチを助けると思うて。こんな部品の需要なんて、オタクくらいしかないんや。オタクが買うてくれんと、収容空間が部品だけで、いっぱいになってしまうんや。な、な? 頼むさかい……」

 

 そこで聞こえてきた話から察するに。

 

 どうも魔導人形の部品を何が何でも売り付けたいらしく。

 

 マキが断っているにも関わらず、必死で食い下がっているようだが――

 

(……この手の人が関西弁みたいに翻訳されるのは、俺がそういうイメージを持っているからなんだろうか)

 

 研一には会話の内容よりも、商人の女の言葉遣いが気になった。

 

 ――とはいえ、気にしたところでどうにもならないのだが。

 

「ウィアー様。私の居ないところで、マキ様に無理やり物を売り付けようとするのは、止めて頂くように頼んだと思いますが?」

 

 研一が考え込んでいる間も熱心に売り込みを続ける商人、ウィアーという名前の女の肩にプロディは手を置いて。

 

 敵意を隠しもしない鋭い目付きで睨み付ける。

 

「無理やり売ろうなんてしてへんやろ! こっちが無理言うてるのは解ってるさかいに、値段交渉してるんやないか! ほら、見てみい! 大分勉強した価格や、思わんか!?」

 

「……確かに。儲けがあるようには見えませんね」

 

「せやろ! ほな、アンタからも言ってやってえな! また魔導人形壊れてる思うて、勝手に品を仕入れたのはウチの失敗やし、儲けは考えてへんのや。ここで部品売り切らんと、仕入れもままならんから、赤字覚悟の奉仕価格なんやで」

 

「……マキ様。魔導人形は我が国の防衛の要なのです。予備の部品が無くて困る事はあるかもしれませんが、多い分には問題ないのではないでしょうか?」

 

「ディー! 貴女、どちらの味方ですの!?」

 

 どうもプロディー的には、お得な買い物に見えたらしい。

 

 最初の剣幕はどこへ行ったのやら。

 

 あっさりと掌を返して、マキに部品の購入を薦め始める。

 

「『すくすくお米を育てるちゃん』や『遠くの音まで聞き取れるんです』等の開発に力を入れるくらいなら、その方が有意義だと私は思いますので」

 

「これ等の開発が進めば無理して戦わなくても飢えずに済みますし、身体の不自由な方だって過ごしやすくなりますのよ!」

 

「魔族の脅威さえ身近になければ、私も反対したくはないのですが……」

 

 そして、二人は傍に居る研一やウィアーをそっちのけで。

 

 あーだこーだと議論を交わし始めてしまった。

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