憎まれた世界の果てに   作:お米うまい

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第四章 真の敵は――
第104話 まさかの襲撃者


(まさか見張り初日から遭遇するとは思ってなかった……)

 

 その日の夜。

 

 研一は部屋を抜け出して、魔導人形の見張りに付いていた。

 

 別に何か理由があったという訳でなく、単に来るか解からない魔族を待っているよりは、何かしていた方がマシだと思っただけだったのだが――

 

 予想に反して、襲撃者が隠れて研一を狙っているようだった。

 

(何か視界がゆっくり見えてるし、敵意を持っているヤツの気配は感じる)

 

 まだ敵の正体は解かっていない。

 

 ただ自分に攻撃を仕掛けようとしている何者かが居る事を、研一はスキルの効果で感じていた。 

 

(けど、悪感情が全く流れてこない……。もしかして魔導人形を破壊していたのは、マキーナ国の人間じゃないのか!?)

 

 敵意も悪意もなく襲い掛かって来れる人間も居るかもしれないが、そんな達人暗殺者が突然現れる可能性よりも、敵の正体が魔族の方が遥かに高いだろう。

 

 マキ達に披露した推測が間違っていたのか、と考える研一であったが――

 

(くそ! 考えている暇なんてないか!?)

 

 悠長に悩んでいる時間を、襲撃者は与えてくれない。

 

 世界が遅く見えている筈の研一でさえ、姿がブレて見える程の速さで襲い掛かってきた。

 

(ジーンみたいなタイプか?)

 

 襲撃者は、人の形をした電気のような存在であった。

 

 おそらく魔族か何かが、その身体を雷にでも変換しているのだろう。

 

 文字通り雷めいた恐るべき速さで殴り掛かって来たかと思うと、即座に離脱していくヒットアンドアウェイ戦法で研一の身体に傷を作っていく。

 

(これだけ傷を負ったのは、サラマンドラ国でジュウザとかいう奴と戦った時以来だな……)

 

 はっきり言って、今まで研一が戦ってきた中では最強の相手。

 

 ウィアーに悪感情を向けられ、力が増した状態でなければ、なす術もなく殺されていた可能性すらある。

 

(今、襲ってきてくれたのは運が良かったかもしれない……)

 

 だが、それはあくまで昨日の研一だったらの話だ。

 

 速過ぎて残像すら見えているくらいだが、動き自体は直線的で、倒すだけなら突っ込んでくるタイミングで魔力を放てば、消し飛ばす事は出来るだろう。

 

(これなら捕まえられる!)

 

 だが、これだけの強さを持っているなら魔導人形を破壊して、マキーナ国の人間を殲滅する事さえ出来ても、驚かない。

 

 一体、魔族陣営が何を考えているのか。

 

 解からないまま倒してしまった方が危険だと考えた研一は、一息に倒してしまわず、捕まえて企みを聞き出す道を選ぶ。

 

(要は、リズムゲーみたいなモノだ……)

 

 おそらくその速さに任せて今までは相手を圧倒してきたのだろう。

 

 離れて突撃を繰り返すだけで、途中で動きが変化する訳でもなくタイミング自体は量り易い。

 

 身体が傷付く度に血が噴き出していくが、研一は意識を集中すると――

 

(ここだ!)

 

 襲撃者と交錯する瞬間を狙い、地面に組み伏せた。

 

 雷みたいになっているし触れない可能性も考えていた研一であったが、その心配は杞憂だったらしい。

 

 ビリビリと手に多少の痺れのようなモノが走るが、今の研一の強さならば大したダメージにはならず、気にせず企みを聞き出そうとするが――

 

「え!?」

 

 ここで予想外の事態が起きる。

 

 研一に捕らえられた事で観念したのか。

 

 襲撃者が雷化を解いて、本来の姿を見せたのだ。

 

「何でテメェが……」

 

 服や装飾品までは、雷に変換出来ないのだろう。

 

 メイド姿でないせいか印象こそ普段と違うように感じるモノの、最近ずっと見ている顔だから見間違いようなんてない。

 

「くっ、まさかこれ程までの強さとは……」

 

 そこに居たのは、マキーナ国の党首であるマキに仕える従者。

 

 プロディ・トラシオであった。

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