憎まれた世界の果てに   作:お米うまい

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第114話 プロディの裏切り

「……あれ、生きとる?」

 

 魔導人形達を自爆させた瞬間に自らの死を確信して、目を瞑っていたウィアーは予想外に痛みも何も来ない事に違和感を覚える。

 

 もしかしたら、痛みも感じる暇も無くあの世とやらに逝ってしまったのかと思い、恐る恐る目を開けたウィアーであったが、予想外の光景が飛び込んできて言葉に詰まる。

 

「よかった。怪我はなさそうだ……」

 

 研一が覆い被さるようにして、爆発からウィアーを守っていたのだ。

 

 だが、ウィアーが言葉に詰まる程に驚いたのは、敵だった筈の相手に自分が庇われたという部分ではない。

 

(何でや。何でそんな大怪我をしてんのに、そない穏やかに笑えるんや……)

 

 コインで異世界に来て最大の負傷をして魔力が落ちているところに、畳み掛けるようにして撃ち込まれた、一国の戦力に匹敵する魔導人形達の自爆攻撃。

 

 さしもの研一も相当な痛手を負っており、もはやボロボロと言っていい状態だ。

 

(ウィアーさんは自分が死ぬ覚悟で俺を倒そうとしてた。つまり、国を乗っ取ろうととかそういう気は一切なく、言っていた事は全て本音……)

 

 それでも研一に後悔の気持ちなんて、微塵もなかった。

 

 この状況から考えるに、ウィアーはプロディに騙されて自分と戦っていただけだと解かっていたから。

 

 自分の命を捨ててでも、マキという他人を守ろうとしたウィアーを見捨てるなんて選択肢は最初から研一になく――

 

 ただ、そうして誰かの為に頑張れる人間を守れたという誇らしさに、自分の身体がボロボロになっている事なんて忘れ、喜びすら覚えていた程であった。

 

(これはスキルの効果なのか? それとも痛みが強過ぎて感覚すら麻痺してしまったのか、どっちなんだろう……)

 

 遅れて自分の身体の状態に気付いた研一であったが、痛みは全く感じていないらしく――

 

 ウィアーの無事を確認するなり、素早く立ち上がって即座に戦闘態勢を取る。

 

「おいおい、あのプロディとかいう女の言ったとおりじゃねえか!」

 

「マジであの鬱陶しいデカイ人形みたいなヤツ等、全部居なくなってるぞ!」

 

 いつの間にか、周囲に魔族の群れが集まっていた。

 

 どうやら話を聞くに、このタイミングでここに魔族達がやってきたのも、偶然ではなくプロディの仕業のようであった。

 

「何があのプロディとかいう女の言葉は信用出来ない、だ。本隊の連中、日和りやがって」

 

「威張ってるだけのヘタレの連中なんて気にすんじゃねえよ。それより俺達で手柄を独占してやろうぜ!」

 

 見たところ、魔族は数こそそれなりに居るものの、大した敵は居ない。

 

 強化された状態の研一ならば、魔力を込めて腕を振るうだけで全員を消し飛ばす事さえ出来るかもしれなかったが――

 

(マズい、かもしれないな……)

 

 それは無傷で万全の状態だったらの話。

 

 今の研一は、身体自体は思ったとおりに動いてくれているものの、感覚が一切なくて、魔力での攻撃を繰り出せるのかさえ、解からない状態だ。

 

 ここは一旦逃げて、最低限、回復するまで待つのが賢い選択だろう。

 

「う、嘘や。あの誰よりもマキはんの事を考えているプロディはんが、魔族の手引きなんてする訳あらへん……」

 

 だが、研一にウィアーを見捨てて逃げるなんて選択肢はない。

 

 かといって、感覚のない腕でウィアーを抱えて逃げるなんて博打も犯せない以上、この場に留まって戦うしかない。

 

 かに思われた。

 

「居たわ! プロディ様の忠告通り! 救世主様が魔族に取り囲まれているわよ!」

 

「あの女を守ろうとしているのかしら? 良く解からないけど、とりあえず突撃ー!!」

 

 そこにマキーナ国の女戦士達が現れたかと思うと。

 

 一瞬の躊躇いすら見せずに、我先にと魔族の群れへと突っ込んでいく。

 

「くっ、あの女! ハメやがったな!?」

 

「ヤバいぞ。この国の蛮族共相手に俺達だけじゃあ……」

 

 さすが魔族にすら脳筋民族で知れ渡っている、マキーナ国の女戦士達。

 

 数も力も大して変わらないだろうに、突然の事態に戸惑っている魔族達を勢いのままに押しまくっていく。

 

「ちっ、全員引くぞ! 一旦下がって態勢を立て直せ!」

 

 さすがに倒す事までは叶わない。

 

 それでも、あっという間に研一達を取り囲んでいた魔族達を後方まで引かせる事に成功した。

 

「救世主様! それでこれはどのような状況でしょうか!」

 

 そこに来て初めて、女戦士達は事態の把握に勤めようと研一に話し掛けてくる。

 

 とはいえ、研一に話をしに来たのは極一部の女戦士だけで――

 

 大半の女戦士は、下がっていく魔族に追撃を仕掛けに行ってしまったのだが。

 

(いや、俺も何がなんだか解からないんだけど……)

 

 そんな魔族からも蛮族扱いされているマキーナ国の女戦士達の姿なんて認識出来ないくらい、研一は混乱していた。

 

 だって、プロディが何を考えているか解からない。

 

(俺を殺す為に、ウィアーさんを騙して俺と戦わせて、それが失敗した時の追撃の為に魔族達を寄越したんじゃなかったのか?)

 

 どう考えても、ここにマキーナ国の戦士達を呼んだ理由が出てこない。

 

 むしろ、どうなっているのか。

 

 研一の方が状況を教えてほしいくらいなのだ。

 

「……アンタ等全員、中立派の戦士達やな。プロディ派の奴等は、どこや?」

 

 そこでウィアーが青ざめた表情で、何事か確認する。

 

 その内容の意味が解からず、ただ聞くだけになっていた研一であったが――

 

「アイツ等ならプロディ様と一緒にマキ様達の護衛をしているわよ。マキ様の失脚を企んでいる子達を護衛に残すのはどうかと私も思ったけど、大丈夫よ。プロディ様が居るのに、アイツ等だって変な事しないでしょ」

 

 女戦士の言葉を聞くなり。

 

 窮地に駆け付けて貰った事への御礼すら忘れて、一目散に走り出す。

 

 今、マキの傍に居るのは――

 

 マキの死を願う者達と、自分達を騙したプロディだけであった。

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