憎まれた世界の果てに   作:お米うまい

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第189話 色々と美味しくない食事

「部下が大変失礼したわね。あの者達は後で厳重に処罰しておくわ」

 

 アヴァリティア自らの案内で、ファブリス国内にある城に研一は招かれていた。

 

 しかも一方的に国に侵入しようとした挙句、門番含む警備員達を手あたり次第に半殺しにしたというのに、咎める様子がないどころか――

 

「どうかしたかしら? 私の顔に何か付いてる?」

 

 大広間に食事を用意され、国の党首と対面で食事を摂っているのだ。

 

 おまけに控えていた護衛や警備の者を追い出し、アヴァリティア一人で相手をしてくれているだけでなく――

 

 センやミリティを退出させる事もせず、研一の望むままにさせている。

 

 不法侵入というか、襲撃者と言ってもいい研一に対して、あまりにも厚遇過ぎるだろう。

 

「ああ、いやいや。身の程知らずの門番共と違って、随分と話が解かると思ってな。あんな馬鹿共の大将なんで、どんな無礼者かと思っていたから拍子抜けしてな」

 

 ここで下手に誤魔化そうとすればボロが出る。

 

 研一は悪党を演じながらも、素直に驚きの言葉を口にした。

 

「部下の教育がなってなくて本当に申し訳ないわ。街の警備までは手が回ってなくてね。民間人の中から志願者を募ったのだけど、やっぱりマトモな教育も受けてないような愚図に、下手に仕事なんて与えるもんじゃないわね」

 

(……ああ、うん。こりゃ駄目かもしれない)

 

 アヴァリティアからの返答に、研一が抱いた印象は一つ。

 

 部下も部下なら、上司も上司。

 

 今まで出会った党首陣が誰一人例外なく、尊敬出来る素晴らしい人間だっただけに『きっと何か擦れ違いや誤解がある筈だ』なんて淡い期待は完全に崩れ去り。

 

 もはやアヴァリティアの評価は、地の底近くに落ちていた。

 

(声は、凄く可愛いんだけどな……)

 

 ここで研一が見た目でなく、声と言った理由は顔も心と同じように醜いとか、そういう意味では決してない。

 

 答えは至って単純で、頭から足元まで完全に全身鎧を着込んでいて、顔どころか体型すら全く解からないからである。

 

 それでも把握出来ている事なんて、案内された時に、研一よりは少し身長が低かった事くらいだろう。

 

「それにしても。随分と救世主様は変わっているのね」

 

「あ、何がだ?」

 

 声の感じからして、多分自分よりも若いだろう。

 

 そんな事を考えていた研一に、アグリティアからの声が響いて、慌てて応じる。

 

「奴隷や薄汚い獣人達と一緒に食事を摂るなんて。折角の料理も、それじゃあ美味しく食べられないんじゃない?」

 

 アグリティアの心のない言葉を聞いて、ビクリと肩を震わせて縮こまったミリティの姿に内心だけで心を痛めつつ。

 

 むしろお前のその言葉に、飯もマズくなるなんて嫌味の一つも言いたくなるが、そこはグッと堪えて、研一は嫌らしい笑みを浮かべて告げる。

 

「俺が抱きたい時に食事なんて摂ってたら萎えるだろ? こういうのは下手に気取った事なんて止めて、同じように生活した方がいいんだよ」

 

「奴隷なんていくらでも居るんでしょ? 使えない奴は置いといて、使える奴を好きに使えばいいじゃない」

 

「解かってねえなあ。確かに奴隷はいくらでも居るかもしれねえが、使い心地の良い奴隷ってのは数が限られてんだよ。良い物は大事に手入れして、いつでも使えるようにしておかねえと、すぐに駄目になっちまう」

 

「ふうん。奴隷なんて抱いている男は、金も掛けずに好き放題に抱けるなら何でもいい男ばかりだと思ってたけれど、救世主様は、違いの解かる男なのね」

 

「まあな。てめぇも俺様に力を借りたいってんなら、極上の女でも用意しておくんだな」

 

「ええ。そうさせてもらうわ」

 

「それじゃあ折角だし、自慢のファブリス国の料理でも食わせてもらおうか」

 

 正直、これ以上、アグリティアと話していたら本当に食欲が失せそうだ。

 

 さっきの会話内容も大概失礼というか、よくこれで一国の代表なんてやってられるなと言いたいくらいの酷さであったが――

 

 ひとまず研一は会話を切り上げて、用意されている食事に手を付けていく。

 

(あまりこう何と言うか、異世界の食事っぽくはないなあ……)

 

 見た目的には、とても豪華と言えるだろう。

 

 立食パーティーか何かを思わせるように多くの料理が色とりどりに並べられており、肉もあれば野菜もあるし、スープのような物だってあるが――

 

 何というか見た目的には、地球で食べられそうな印象の物しかない。

 

 そりゃあ肉とかは魔獣とかの肉の可能性もあり、地球じゃ食べられない物なのかもしれないが、調理された姿は、鶏肉とか牛肉との違いが解からない状態だ。

 

 研一としては異世界特有の何かを期待していただけに、若干拍子抜けする。

 

(いや、問題は味だ)

 

 だが、よく考えればサラマンドラ国で食べた肉料理も、ウンディーネ国で食べた刺身も見た目は普通だったが、味は格別だった。

 

 アヴァリティアへの悪印象を引き摺っている事に気付いた研一は、気を取り直して料理を口に運ぶ。

 

「…………」

 

 食べられない程、不味くはない。

 

 だが、言い換えればそれだけ。

 

 肉は脂が全て抜け落ちてしまっているのかと思う程、パサ付いていて味気なく、ただ肉を食べているという噛み応えだけが口の中を満たし。

 

 ドレッシングに浸された野菜は、ふにゃふにゃと萎れていて食べても歯応え一つ感じず、若干喉を潤してくれるものの、ただドレッシングの酸っぱさを与えるのみ。

 

 スープに関しては味気ない上に粉っぽい、固体と液体の間をうろ付いている何か。

 

(……食えなくは、ない!)

 

 不味いという程には、酷くない。

 

 だが、美味しいとは決して言いたくない。

 

 そういう内容であった。

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