憎まれた世界の果てに   作:お米うまい

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第201話 また来た全裸女

(ミリティさんには、随分と申し訳ない事をしてしまった……) 

 

 その日の夜。

 

 一人で温泉に浸かる研一は、後悔と反省で頭を抱えていた。

 

(限界だってミリティさんも早くに言ってくれよ! というかセンちゃんも、気付いてたんなら教えてくれたらよかったのに……)

 

 というのも、アレからセンやミリティが何も言わない上に。

 

 驚く程に順調に悪意が溜まりまくるモノだから、一日中、それこそほとんど休みなく、ミリティを連れて街中を歩き回ってしまったのである。

 

 当然、ミリティが弱音を吐かない以上、研一が演技の手を緩める訳がない。

 

 全てを終えて城に戻ると同時に、ミリティは人前だから何とか耐えていた羞恥心とかが決壊してしまったらしく――

 

 もう嫁の貰い手もないでござる、なんて泣き崩れて大変だったのだ。

 

(いや、二人のせいにするのは良くない。俺が気付いて止めないと駄目だった……)

 

 自分から提案した手前、ミリティが引っ込みが付かないのは理解出来るし。

 

 びっくりするくらい悪感情が集まっていき、順調過ぎるなんて、機嫌よくしていた自分をセンに止める事が出来ない事くらい、研一にも解かる。

 

 だから、これは自分の失敗だと反省して、次に似たような事があったら気を付けようと意識して心を切り替えようとする。

 

 だが、そう簡単に切り替えられるなら、人は悩まない。

 

(さすがに演技とはいえ、今回は酷過ぎたしセンちゃんも呆れるのも無理ないよなあ……)

 

 泣き止んだミリティは顔を赤くして潤んだ目で睨むように、じっと見詰められ。

 

 いつでも研一の傍に居たがるセンに関しては、「ここは私が何とかするので、研一さんは温泉にでも行っててください!」なんて怒鳴られて、部屋から追い出されてしまった。

 

 その時の二人の顔を思い出すと、どうしても心が痛んだ。

 

(まさかセンちゃんに、邪魔者みたいに扱われる日が来るなんてなあ……)

 

 特にダメージが大きいのは、センの態度だ。

 

 少しでも早く追い出したいと言わんばかりの姿は、まさに邪魔者に対する扱いそのものにしか見えなくて。

 

 あのべったりなんて言葉では足りないくらい、自分に懐いてくれていたセンに雑に扱われた衝撃は、そう簡単には忘れられそうになかった。

 

 ――ちなみに実際は、ミリティがペット扱いに、こう何か色々と目覚めてしまったらしく。

 

 複数の意味で責任を取ってほしい、と迫ろうとしていた事に気付いたセンが、慌てて研一を逃がしただけである。

 

 今頃は、ミリティを落ち着かせたり、説得するのに苦労しているだろう。

 

(そういえば――)

 

 ひとしきり、落ち込み終えたからだろう。

 

 実は今回の件でもう一つ狙いがあったのだが、完全に空振りに終わってしまった事案を思い出して、想いを巡らせていく。

 

(あれだけ目立つようにミリティさんを酷い扱ったのに、あの酒場に入る前に感じた殺意の持ち主、出てこなかったな……)

 

 それはファブリス国に来て、一番悪意を向けてきた人物の確認だ。

 

 間違いなくミリティの事を思っている相手だろうし、出来る事なら誰か確認して味方側に就けておきたかったのだが――

 

 あれだけミリティを辱めてしまったというのに、影も形も見当たらないのだ。

 

(こっちに協力してくれるならいいんだけど、予想もしてないタイミングでミリティさんを助けに来ようとして来られても困るから、せめて正体くらいは知っておきたかったけれど……)

 

 これが研一が垂れ流した魔力の威圧に当てられて、敵意も戦意も失ってしまっただけなら、気にする必要はない。

 

 問題は、研一への悪意を完全に押し殺して、虎視眈々とミリティ奪還の機会を狙うような凄腕である場合だ。

 

 正体不明のどこから現れるかも解からない実力者なんて、トラブルの種でしかない。

 

「ったく。人の国で随分と好き勝手やってくれたわね……」

 

 どうするべきかと悩む研一の思考を切り裂いたのは、乱入してきた女の声であった。

 

 相も変わらず裸を隠そうともせず、まるでここが自分の定位置だとばかりに、研一が浸かるすぐ隣に当たり前のように入ってくる。

 

 この国の党首であり、普段は全身鎧に身を包んでいて、目すら見えていないリティアだ。

 

「お陰でこっちは苦情が山のように来て困るわ。あの変態野郎をどうにかしろってね」

 

(……本当にこの人、何考えてるんだ?)

 

 当て付けるように言いながらも、研一への悪意は微塵もない。

 

 国民達の前ですら脱がない鎧を脱いでまで姿を現す以上、それこそ一般人よりも警戒されてないという事になるが――

 

(俺なら、絶対近付いてほしくないような事しかしてないんだけど……)

 

 控えめに言って、女狂いの噂だけでも近寄るのを避けるべき要注意人物。

 

 実際に噂すら凌駕する変態行為を、人目も憚らず公の場でやった時点で、どれだけ警戒しても警戒し過ぎと言えない超絶危険人物でしかない筈だ。

 

「でも、対応自体は面倒だけど、痛快では、あったわよ。特に衛兵煽りは最高だったわね。アイツ等、自分じゃ文句の一つも直接言えやしない癖に、顔真っ赤にして、街の治安の為にどうにかしろなんて報告してくんのよ」

 

 それなのに、どうしてこんなに気楽に話し掛けてくるのか。

 

 逆に研一の方が、リティアの方を警戒せざるを得なくなっていた。

 

「笑えるわよね。自分達だってミリティを貸せとか、街の人間の目がある表でほざいてた癖に、どの口で言うんだか……」

 

「人がのんびり風呂入ってるってのに、ごちゃごちゃごちゃごちゃと、うっせーなあ……」

 

 とはいえ、ここまで築き上げた悪人のキャラ像は崩せない。

 

 演技をしたまま、リティアの腹の内を探る事にする。

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