憎まれた世界の果てに   作:お米うまい

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第231話 正妻戦争に終わりは見えず――

『迷惑じゃないならよかった。安心。それで光の国に向かう事は出来そう?』

 

『あ、はい。大丈夫です。ファブリスの時みたいに転移陣さえ封印されてないなら、魔法で直接転移陣に飛ぶ事が出来るので』

 

『それじゃあ、こちらで色々と手を回しておくわ。ダーリンは、セレスティアに飛んでくれるだけでいい』

 

『ありがとうございます』

 

 その色々というのが、どうやってテレレが研一を見付けて、セレスティアに派遣したのか。

 

 他の党首に上手い事説明してくれるのだろうと察した研一は、短く感謝の言葉を告げる。

 

『気にしないで。ダーリンが私にしてくれた事に比べれば、このくらい大した事でもないのだけれど――』

 

『どうかしました?』

 

『それはこっちの台詞。何か悩みでもあるの? 少し様子がおかしい……』

 

 物言いこそ素っ気なく聞こえる事も多いテレレだが、人の機微には敏感な方だ。

 

 さっきの場面なら、研一なら礼を言う前に迷惑を掛けた事に対する謝罪を言う可能性の方が高いし。

 

 その辺りの微妙な違和感を察知したのだ。

 

『えーと、ですね……」

 

『悩みがあるなら話して。話すだけで整理出来る事もあるし、相談に乗れる事なら乗る』

 

『それではお言葉に甘えて……』

 

 研一は今の状態を包み隠さず、セン達が奴隷役の件で揉めている事をテレレに伝えていく。

 

 はっきり言って研一には手に負えないというか、何を言っても余計に二人が争う事にしかならない気がして、誰かの知恵を借りたかったからだ。

 

「――という感じなんです。何か良い案はないでしょうか?」

 

『…………』

 

 事情を説明し終えた研一は、首を傾げる。

 

 ずっと黙って話を聞いてくれているのかと思っていたのだが、話が終わったというのにテレレから反応がない。

 

『あれ、通信障害か何かかな? テレレさん、聞こえてます?』

 

『……うん、聞こえてる。ちょっと自分の認識の甘さに頭痛を覚えていたところ』

 

 初めての恋に浮かれていたテレレは、無意識に研一も当たり前のように自分を好きで居てくれていると思っていたし。

 

 そのまま結婚して共に過ごしていくなんて甘い夢を見ていた事に、今になってようやく気付かされた。

 

 研一にも好きになってもらう努力をしていかないと、なんて遠いドリュアスの地で、自分からもっと攻めていこうと決意を新たにする。

 

『認識の甘さ、ですか? それはどういう――』

 

『こっちの話。ダーリンが気にするような事じゃない』

 

 だが、テレレに好かれているなんて夢にも思っていない研一は、テレレの態度に違和感を覚えるものの、本人が気にするなと言う以上、自分に関係ない話だろうと追求しない。

 

 きっとドリュアスで、何かが起きているだろうなんて思ったところで――

 

『簡単な話。一日しか滞在しない訳じゃないんだから、一日交替で隣に居る相手を変えればいい。その方が女をとっかえひっかえしていて、見ている方も不快で効果的』

 

『あ、なるほど。確かに』

 

 テレレの言葉に研一は、目から鱗が落ちたとばかりに頷く。

 

 言われてみれば簡単な話だった。

 

 何もセレスティア滞在中、ずっと一人を固定して連れ歩く必要はないし、いくらでも女に手を出す男の方と思われたが印象は悪くて好都合だろう。

 

『ありがとうございます。これで何とか収まりが付きそうです』

 

『……どういたしまして。役に立てて嬉しい。その、あの、もしダーリンがよかったらでいいのだけれど――』

 

『どうかしましたか?』

 

『……あの、その、そうだ! 薬草が豊富な場所とかに行く事があったら、私を呼んでほしい。新しい薬の研究がしたいから、ドリュアスにはない植物を見てみたくて――』

 

 テレレにしては妙に早口で言葉を捲し立てているし。

 

 はっきりした物言いが多いテレレにしては、尻すぼみな話し方に違和感を覚える研一であったが、よくよく思い貸せば、さっきから妙に慌てたり黙り込んだりする場面が多い。

 

 きっとドリュアスでの業務が忙しいのに、わざわざ時間を取ってくれているのだろうと思い、ここで通信を終える事にした。

 

『お安い御用です。その時は先に連絡させてもらって、テレレさんの手が空いてたら、こっちに召喚しますね』

 

『絶対、絶対だからね。忘れないで』

 

『はい。忙しいのに話を聞いてくれてありがとうございました』

 

『気にしないで。ダーリンの助けになれるなら、無理してでも時間なんて作るから、いつでも連絡して』

 

 尚も名残惜しそうに話すテレレを引き留めても悪いだろうと思い、研一は僅かに会話した後に、テレレに断りを入れて通信能力を切った。

 

 そして、意図的に無視していた二人へと向き直る。

 

「プロディさんは上品過ぎて隣に立っても悲壮感が足りないと思います!」

 

「それを言えばセン様だって、愛らしくて恋人同士にしか見えないでしょう!」

 

 飽きもせず怒鳴り合っているものの、よくよく発言内容を聞いた研一は、思わず笑ってしまう。

 

 罵倒し合っているのかと思ったが、口調が荒いだけで、どっちも褒めていた。

 

(アレだな。ちょっと仲悪いんじゃないかって心配してたけど、思いの外、関係自体は悪くないののかもしれないな……)

 

 それなら話し合いも、すぐに終わってくれるのだろう。

 

 そんな期待を胸にテレレから助言された提案を、研一は二人に話す事にする。

 

「ちょっと、二人とも。聞いてもらいたい事があるんだけれど――」

 

 だが、それが甘い考えであった事と思い知らされる羽目になるのに、時間は掛からなかった。

 

 今度は、どっちが先に研一の隣に立つかの順番決めで、再び揉め始める事になってしまうのだが――

 

 繰り返しにしかならないので、その話は割愛する。

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