「……そうなんだ。女神様は随分と意地悪な加護を君に授けたんだね」
結局、嘘を見抜けるテレレの追及を交わし切るなんて研一に出来る訳もなく、スキルの詳細を洗いざらい話してしまう羽目になった。
全てを聞き出したテレレは、今までよく頑張ったねとでも言いたげに、慈しむように研一の頭を撫でる。
「そ、それじゃあ何よ。アンタはサーラ様を手籠めになんてしてないって事?」
そんな中、驚きを隠せないのがロザリーであった。
最初は研一達の話を信じられないとばかりに聞いていたのだが、テレレの反応から考えるに信じるしかないという結論に至ったらしい。
――それ程までに、テレレの嘘を見破る力は信頼されているようであった。
「……手籠めにしなかっただけだよ。たくさん暴言を吐いて、どれだけ傷付けたか解からない。憎まれるだけの事は十分にしたさ」
驚きと共に同情のような視線を向けてくるロザリーと目を合わせられず。
自分には同情なんてしてもらえる資格なんてないとばかりに顔を逸らした。
――もう事情を知られたのに演技をしても無駄だろうと、素の口調で話している。
(んな訳ないでしょうが!)
ここに来てロザリーは、どうしてサーラが自分を研一に同行させたのか。
その真意がどこにあったのか、気付いてしまう。
(よく考えたら当たり前じゃない。もし本当にこの人が噂通りの下種だったら、私に案内役なんて生贄みたいな事、サーラ様がさせる訳ないもの……)
研一は気付いていないようだが、おそらくサーラは研一の事情に気付いている。
そして、こうしてテレレに事情が暴かれてしまう事を予測して、研一を憎んでいる自分を傍に付けたのだとロザリーは推測した。
――その推測は大体正しい。
「……ごめん」
「騙してた俺が悪いだけだからさ。そんな気にしないでくれ」
「……それもだけど、本当にごめん」
もうロザリーに研一を憎む事なんて出来そうになかった。
これではサーラの期待に応えられないし、一人で苦労してきた研一にも迷惑が掛かってしまうと表情を暗くするが――
「憎まれたり恨まれたりすれば何でもいいの?」
漂い始めた重たい空気なんて全く気にした様子も見せず。
テレレは何でもない事のように研一に訊ねてくる。
「多分そうだと思いますけど――」
研一だって、スキルの詳細を完璧に把握している訳ではない。
悪感情を向けられている分だけ強くなる、という部分に関しては大体理解出来ているつもりではあるが――
好感情を向けられればスキルの成長が阻害される。
これに関しては実際のところ、よく解っていない部分の方が多い。
「それが敵意等の負の感情から来るモノならば何でもいいのです。恨み、憎しみ、妬み、嫌悪、怒りなんてモノでもいいのです!」
悩み言いよどむ研一を余所に、スキルの化身とも言えるマニュアルちゃんがテレレの疑問に答えた。
相も変わらず表情は人形みたいに薄いのだが、胸を張り力いっぱいに宣言しているので、ドヤ顔でもしているように見える。
「……アナタは?」
「救世主様の一番の理解者にて忠実なる従者、マニュアルちゃんなのです!」
「『ちゃん』までが名前?」
「そうなのです」
「そう……」
どこか訝しむような目でテレレはマニュアルちゃんを暫く眺めていたが――
すぐに興味を失ったように、次は視線をセンの方へと向ける。
「そっちは?」
「あ、えっと、その……」
そこでセンは研一に伺いを立てるように視線を向ける。
研一の事情がバレないように周りに人が居る時は、なるべく押し黙っていようと研一と取り決めていたのだが、バレた後にどう話せばいいかまで決めてなかったのだ。
「ああ、ごめん、センちゃん。もうバレたし、テレレさんの前では普通に話して大丈夫だよ」
「解かりました」
研一の言葉にセンは軽く頷くと、軽く深呼吸をする。
いくら普通に話していいと言われても、テレレは言ってしまえば、お偉いさんなのだ。
失礼な物言いは駄目だという常識もあれば、緊張だってする。
「えと、その、私はセンと言う名前で。女神様の加護を強める為に研一さんに酷い事をされている奴隷だって感じに振る舞わせてもらってますけど、本当は物凄く大事にしてくれて、研一さんの傍で何の不満もない生活を送らせて頂いてます」
「ふふ、女の子だね」
センの言葉に、テレレがくすくすと愉快そうに笑う。
というのも、センが僅かだが嘘を吐いていた事に気付いたのだが――
(大事にされ過ぎて不満だなんて、本当に女の子してるね)
嘘を吐いていた部分とセンの態度から、その嘘の詳細を推測出来てしまい。
ただの可愛らしい悩みにしか見えなかったのだ。
「あ、その、本当に研一さんに不満がある訳じゃなくてですね……」
テレレの反応に自分の想いを悟られた事に気付いて顔を赤くしつつ。
研一に誤解されたくなくて、必死にセンは言い訳の言葉を並び立てていく。
「気にしないでいいよ。むしろ私の提案的には、君のそういう気持ちは、とても有難いから」
そこでテレレは確かめたい事は確かめ終わったとばかりに会話を止めると。
研一の方に向き直った。
「ねえ、救世主様。私達って女として見たら可愛い? 魅力的に見える?」
「それはまあ、よっぽど変わった趣味を持った男でもない限り、大体は可愛いとか綺麗だって感じると思いますけど……」
「……むう。乙女心が少しも解ってない」
「何かスミマセン」
「別にいい。これからたっぷり知る事になるだろうから」
そうして。
悪戯でもするように愉しそうに笑って、テレレは告げる。
「もし私達が君にメロメロになって、人目も憚はばからずイチャイチャしていたら、とっても嫉妬してもらえると思わない?」
無理に悪人の振りなんてしなくても。
一人きりで頑張ったりなんてしなくても。
憎まれる方法なんて、他にいくらでもあると言いたげに。
第二章に付いて何かこの中で言いたい事でもあれば
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センちゃんと研一のこれからが気になる
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センちゃんとマニュアルちゃんの仲が心配
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研一とマニュアルちゃんの仲が気になる
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ロザリーとこれからどうなるか気になる
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テレレとこれからどうなるか気になる
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テレレの作戦が気になる