憎まれた世界の果てに   作:お米うまい

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第99話 発明王マキ

「それで研一様をお呼び立てした件についてなのですが、ここ一か月ほど、魔物や魔族への防衛の為に設置している魔導人形が破壊される事件が起きていますの」

 

 食事を終えた研一は、マキに案内されるままに国境に向かっていた。

 

 道すがら色々と事情を説明してくれているのだが――

 

 その言葉は、はっきり言ってほとんど頭に響いていない。

 

(この国だけ異常に文明発展し過ぎじゃないか!?)

 

 それというのも、マキの話以上に気になる事があり過ぎるからだ。

 

 その最たる物が現在、研一とマキが居る場所というか、目的の場所に向かっている乗り物。

 

 空を飛ぶ車の後部座席である。

 

 ――ちなみに運転席にはプロディが居た。

 

(こんなの、まだ地球にも普及してないぞ……)

 

 厳密には空を飛んでいるという程ではなく、地面から少し浮いている程度ではある。

 

 それでも舗装もされてない道を、車輪がないだけで地球の車によく似た形をした乗り物が人を乗せて自由自在に進んでいるのだ。

 

 十分、驚嘆に値すると言っていいだろう。

 

 ――ちなみに短時間であり着地と安全性を度外視すれば、浮くとかいう次元じゃなく普通に飛べるらしい。

 

(マキさんが着ている服も何か近未来的だし、建物だって転送陣で中に居たから気付かなかったけど、外から見たらもう昔のSF小説にでも出てきそうな雰囲気だったし、この国だけ世界観が違うよな……)

 

 事前情報で、機械の国という話は聞き及んでいた。

 

 それでも今まで居たサラマンドラ国やドリュアス国から考えて、この世界の文明レベルがそれ程高いと思っておらず。

 

 研一はマキの前だというのに、悪党演技をする事も忘れ――

 

 ただただ圧倒されていた。

 

「そこまで驚いて頂けて嬉しいですわ。実は結構な自信作でしたのよ」

 

 説明を聞き流されている事に気分を害した様子も見せず。

 

 むしろマキは、嬉しそうに研一の驚く姿に表情をほころばせる。

 

「え、この車を作ったのって――」

 

「……ええ、そうですの。御存じとは思いますが、私は民草から良く思われていません。協力を得られず、道を整備する事も出来なければ、車を引いてくれる魔獣も用意出来なかったものですから」

 

 それならば整備されてない道を、引いてくれる魔獣もなしに進める物を作ればいい。

 

 そう思い至り、実際に作り上げたのだろう。

 

(という事はアレだよな? 馬車レベルの物しかなかったのに、自動車通り越していきなりコレを作ったって事で――)

 

 打算抜きで、本当に凄いとしか研一には思えず、言葉すら出ない。

 

「魔法もマトモに使えない出来損ないが、また下らない小細工をしているなんて言われてしまっていますが、私は、そうは思いませんの。きっといつか、この『どこでも進める君シリーズ』が認められ、世界に羽ばたいてくモノだと信じておりますわ」

 

「ど、どこでも進める君?」

 

「ええ、可愛らしい名前でしょう?」

 

 ゆくゆくは名前に恥じないよう、海でも空でも運用出来るようになってほしいですわ、なんて呟きながら。

 

 優しくも儚い目をして、自分の座っている席をマキは優しく撫でる。

 

(自分で開発するじゃなく、なってほしい、か……)

 

 おそらくは、そこまで自分は生きていないだろうという事を無意識に考えての言葉だろう。

 

 そんな言葉が気負う事も無く、マキの口から自然に出た事に僅かばかりの哀愁を覚えたところで――

 

「着きましたわ。ここが問題のあった地点ですの」

 

 『どこでも進める君』という名の車が静止したかと思うと、ゆっくりと地面に着陸する。

 

 そして、車から出た研一が目にしたのは――

 

「これが魔導人形……」

 

 今までの経緯から考えて、ロボットめいた物でも出てくると想像していた研一であったが、どうも予想とは違っていた。

 

 解かり易く言えば、大きい鎧の化け物だ。

 

 全身鎧を思わせる金属質めいた素材で出来た人を模した形をした物体で、大きさは三メートルより少し大きいくらいと、中々の大きさ。

 

(武器も銃とかじゃないんだな……)

 

 そんな無骨で巨大な物体が、槍のような物を構えて六体ほど、佇んでいた。

 

 相当に威圧感があると言えるだろう。

 

「ちょっとした魔物や魔族程度なら、簡単に追い払ってくれるんですのよ?」

 

 マキの言葉を疑う気持ちなんて研一にはない。

 

 これでそこ等辺の魔物に負けると言われたなら、むしろ見掛け倒し過ぎて逆に驚いてしまう事だろう。

 

「それは謙遜が過ぎます、マキ様。この魔導人形達に、精強で知られるマキーナ国の軍でさえ太刀打ち出来なかったのは立証されているでしょう?」

 

「……古い話ですわ。それに結局、一番の難敵であった王を倒したのはプロディでしたもの。それで自惚れる事なんて出来ませんもの」

 

 そして、どうやら見た目の厳つさに相応しいだけの戦闘力を兼ね備えているらしい。

 

 だが、だからこそ研一は驚きと戸惑いを隠せない。

 

「この魔導人形達が何度も壊された?」

 

「はい、その通りですの……」

 

「それも誰が壊したかも解からない程に素早く?」

 

「ええ。おそらく相当に強い魔族の仕業だと思われますわ」

 

 マキの言葉に研一の背筋に悪寒が走る。

 

 別に何かマキの返答におかしいモノがあった訳ではないのだが――

 

(これって、あの時と似ているよな?)

 

 とある経験から。

 

 この状況の異質さに気付いてしまったからだ。

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