ありふれない転生純血騎士は異世界最強   作:ただの紅茶好き

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第二話 純血騎士トータスで交渉する

 あの忌々しい神の声を聞いた直後に複数の気配を感じ目を覚ます。まず巨大な絵画が目に入ってきた。縦横10mはあるか? なかなか悪くないが私の琴線には触れんな

 

 改めて周りを見渡してみるとどうやら私達は教会と思しき場所にいるのだと推測できる

 

 それより気になるのは少なくとも三十人はいるか? 錫杖や白地に金装飾のある服装を見るに神官あたりの役人か? まぁいい、後で話を聞くとするか

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 イシュタルと名乗ったその老人は笑みを見せていた

 

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 現在バート達は場所を変え、巨大なテーブル幾つも置かれている部屋に連れてこられた 豪華絢爛な作りから推測するに晩餐会などに使う場所なのだろうと推測できる

 

 各々が席に座ると随分とタイミングよくメイドが出て来た

 

(随分とタイミングがいいな、おそらく最初から待機させていたと見える。随分と狡猾なジジイだな)

 

 他の者がどうかはわからないが少なくともバートは既にイシュタルを警戒し始めていた

 

 バートを除く他の男子生徒はで出来たメイド達を凝視している。ハジメも例に漏れず凝視しそうになっていたがどうやら背後から何かを感じたのかすぐさまやめていた

 

 その後全員に飲み物が配られたのをイシュタルが確認すると話しを始めた

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 その後イシュタルが話した内容を要約すると

 

 まず、この世界はトータスと呼ばれている。そして、トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。

 

 人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。

 

 この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

 

 魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。

 

 それが、魔人族による魔物の使役だ。

 

 魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。

 

 今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。

 

(つまりは人間が持っていた数のアドバンテージを失ったから助けてくれってことか、ふざけているのか?)

 

「あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という救いを送ると。あなた方には是非その力を発揮し、エヒト様の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 エヒトという神の話しをしているイシュタルの表情は随分と恍惚的な笑みを浮かべている。おそらく神託を受けた時のことを思い出しているのだろう。

 

 イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 

 バートが、神の意思を疑いなく、それどころか嬉々として従うのであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感を覚えていると、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。

 

 愛子先生だ。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 ぷりぷりと怒る愛子先生。

 

 今回も理不尽な召喚理由に怒り、ウガーと立ち上がったのだ。「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」と、ほんわかした気持ちでイシュタルに食ってかかる愛子先生を眺めていた生徒達だったが、次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

 場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に押しかかっているようだ。誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。

 

 愛子先生が思わず叫びそうになるがそれより先にバートが叫ぶ

 

「ふざけるな!! 何が帰還は出来ないだ! ただお前達の都合で呼んでおいて置きながら戦えと要求されてる時点でコチラにはなんのメリットもないのに挙げ句の果てに帰還すらさせないとはお前らが信仰するエヒトとやらは随分と狭量だな」

 

 だがその叫びにイシュタルが答える

 

「……先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな。ですが貴方は全てが終わった後にも帰れるかどうかは分かりませんがな」

 

(どうやらエヒトを侮辱するのはあまり良くなかったな)

 

 周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

 パニックになる生徒達。

 

 先程叫んだバートとて例外でもない、正直言って先程の叫びは感情に任せて叫んだ面があるのでかなり困っている

 

 誰もが狼狽える中、イシュタルは特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた。

 

 皆がパニックになっている中、光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 ギュッと握り拳を作りそう宣言する光輝。無駄に歯がキラリと光る。

 

 彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

 

 いつものメンバーが光輝に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。

 

 しかしこの空気の中で例外的に光輝を否定する人物がいた、バートだ

 

「光輝、普段ならこのカリスマ性に感謝するかもしれないが今このタイミングでその発言は愚策だと言うしかないぞ」

 

「愚策だと!? バート、この世界の人たちが困っていると言うのお前は見過ごすというのか!!」

 

「あぁ、見過ごすさ逆に聞くが光輝、お前はなんで見ず知らずの人々の為に見返りなしで力を貸せるのだ? 俺の知り合い達でもみんな何か頼むなら見返りを渡すぞ? そもそも何故全員が参加する前提なんだ? 戦闘ができない者はどうするんだ? 肉壁にでもするのか? だとしたら流石だな光輝」

 

「見返りならあるさ! みんなの感謝の声だ!! それに戦えない奴だって訓練すれば戦いに参加出来るだろうが!!」

 

「はぁ……お前の頭にはガラス片でも詰まっているのか? まぁいいイシュタル殿、俺たちが戦争に参加するにしても条件があるがいいか?」

 

 突然のキラーパスを喰らったイシュタルは一瞬驚いていたがすぐに持ち直して

 

「え、えぇ……構いませんが一体どのような条件でしょうか?」

 

「まず戦争の参加者を志願制にしてくれ、これが最低条件だできないと言うなら今すぐにお前の首を裂く、次に戦争に参加しない者の安全な衣食住の確保だ」

 

 バートはそう言いながら制服の内ポケットに仕込ませていた聖印を取り出して手から出現させた赤い刃を構えながらイシュタルに殺気を向ける

 

「なるほどその条件を飲むとしましょう、ただしそこまで言うなら貴方だけは必ず参加していただきますよ」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

「でしたらこれ以上私が口を挟むこともないでしょう」

 

 イシュタルに条件を取り付けたことでバートはイシュタルから目を離しクラスメイトに目を向け、発言を始めた

 

「さてと、みんな聞いた通りこの戦争には参加したい奴だけ参加すればいい、いくらでも待つから参加するかどうか決めたら俺のところに来てどうするか伝えてくれ」

 

「お、おう分かった、ってちょっと待て! おいバートさっきのは一体何なんだ!」

 

 思わず龍太郎が叫んだ、さっきのとはおそらくバートが使った祈祷の事だろう

 

「龍太郎、うるさい、それに何ださっきのって……あーアレのことなら後で話す、とりあえず今は参加するのかしないのかを考えてくれ」

 

 バートはそう言ってすぐに話を終わらせた

 

 その後しばらくして全員が参加するのかしないかを決めてバートがリストにまとめた結果クラスの半分程は参加を表明していた

 

(予想以上に参加人数が多いな、やはり最初の光輝の演説が響いているのか……)

 

 バートがそんな感じで考え事をしていると光輝達が声をかけて来た

 

「バート、少しいいか?」

 

「随分とタイミングがいいな、もしかして俺の作業が終わるのを待っていてくれたのか?」

 

「えぇ、流石に作業に集中していたからね、邪魔するのは悪いと思って、光輝達と一緒に待っていたのよ」

 

 光輝より先に一緒にいた雫が答えた

 

「そうかそれはありがたいな、で? 聞きたいことってのは一体何だ?」

 

「バート、単刀直入に聞かせてもらう、さっきの手から出していたアレは何だ?」

 

 光輝の疑問も無理もない、だがバートは今すぐに祈祷について語るのはどうなのかと言う悩みもあり有耶無耶にしたい気持ちでいっぱいだった

 

(ここでバカ正直に話してもいいが、それではダメだな、下手に話して光輝から話に尾鰭がつくと私からしても困る……)

 

 そんな感じで悩んでいると一つの考えが思いついた、それは

 

「光輝、俺としては今話してもいいが辺に尾鰭がついても困る、だから明日か、長くても今週中には戦争参加者達に訓練が行われるだろう、そこで皆の前で話す」

 

 未来への先延ばしだった

 

「おい! その言い方だとまるで俺たちがおかしな伝え方をすると思っているのか!?」

 

「やめなって光輝、バート君の言うことはもっともよ、今聞いてるのは私たちだけじゃないのかもしれないの、そこから尾鰭がついて困るのはバート君なのよ? だからみんなの前で誤解が無いように話すって言っているなら私はそれを尊重するわ」

 

 バートが否定するより先に雫が光輝をなだめてくれたおかげで、この話はここで終わった

 

 ────────────────────────

 

 その後しばらくして皆が就寝するかと言う頃の時間帯

 

「八重樫さん、少しいいかい?」

 

「あら? バート君どうしたの? 別にいいけど」

 

「先程俺が口を出すより先に光輝をなだめてくれて感謝する」

 

 バートはそう言いながら深くお辞儀をした

 

「やめてよそんなこと、私はいつも通りのことをしただけよ」

 

「そうか、そう言ってくれて助かる、俺は礼が言いたかっただけだからここで失礼させてもらう」

 

「そう、それじゃあまた明日」

 

 そんな些細な会話をして別れようとした時、不意にバートが伝えようと思って忘れていたことを伝えようと振り返ったがすでに雫の姿はなかった

 

「うーむ、タイミングを逃したか。まぁいいかまた今度伝えよう。ファ〜眠い」

 

 そんな感じのことを呟きながらバートは自分の部屋に戻った

 

 ───────────────────────

 

 誰もいない空間で一人の男が叫ぶ

 

「クソ! 一体どうなっている! 何故だ何故だ何故だ! 何故あの憎たらしいガキの気配があるのだ!」

 

 その叫びは一体誰に向かっていっているのだろうか

 




誤字脱字等あれば伝えていただけると幸いです

祈祷について
今回バートが脅しに使っていた祈祷については察しのいい人は気づいていると思いますがアンスバッハの狂刃です、またバートが内ポッケに入れていた聖印は現代で作ったオリジナル品です、即席で作った品のため正直言ってゴミです

純血騎士の聖印
純血騎士バートが現代で木を掘り自身の血を染み込ませた一品
その出来は拙く祈祷本来の力を発揮することができない
だが己を守る程度ならこんな物でいいのだから

以上フロム風テキストでした
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