バートのステータスプレート事件の日から2週間が経った。
現在バートは訓練の休憩時間を利用して王立図書館にて調べ物をしていた。バートの戦闘スタイルは速度で相手を撹乱して弱点を一撃で屠ることを主軸としているためモンスターの情報収集を怠ってはいけないのである。いくら弱点看板の技能によって相手の弱点が分かるとはいえそれにかまけていると痛い目を見るので情報収集は大事なのである。
(なるほど……この世界のモンスターは魔物の核が弱点なのか…そして魔族は人間と同じで首は弱点になるのか……)
そんな感じで考え事をしながら時間を潰していると休憩時間が終わりそうだったので席をたった。
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バートは休憩時間が終わるより少し早めに訓練場に着いたからかまだ人は少ないように見える
「さてと……今日の訓練メニューは確か……あぁメルド団長との模擬戦か」
バートは他のクラスメイトと比べてステータスが異様に高いため基本的に訓練内容はメルド団長との模擬戦か自主練となっている。
(訓練まで少し時間があるな……そうだ、久しぶりにあれをするか)
そんなことを思いついたバートはクラスメイトがいないエリアに向かった
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「よし、始めるか」
そう言いバートは目を閉じてある人物の姿を想像する。その人物とはバートと同じ純血騎士であったアンスバッハである。
(久しぶりにやったから不安だったがなんとか出来たか)
そんなことを考えながらバートは槍を構える。それに呼応するようにアンスバッハも鎌を構える。アンスバッハの構えは王朝鎌技、すなわちカウンターを狙っているのである。
両者共にジリジリと距離を縮めながら間合いを測っている。
(マズいな……あのカウンターを崩すには広範囲の祈祷を使う必要がある。だがそんなことしようものなら僅かな詠唱の隙を狙って首を狩られる……やはりアンスバッハ殿は手強い)
アンスバッハの構えをいかにして崩すかをバートは考えていた。おそらく本人は気づいていないのだろうが頬を冷や汗が伝っている。
直後、この均衡が破れた。アンスバッハがバートの目の前まで踏み込んで来た。直後首を狙い刃を向けてきた。
(マズい! やられる!)
咄嗟に槍を盾にして鎌を防ぐ。ガキン! もし実体があるのならそんな音がなるであろうほどの一撃がバートの槍に響く。直後バートはアンスバッハから距離を取る。
(クソッ! いくら実体がないとはいえ油断したらいつでも死ねる! 落ち着け、落ち着くんだ)
落ち着いて息を整えてバートが攻撃に転じようとしたその時
「あら? バート君じゃない、どうしたの? 自主練かしら……ってどうしたの!? すごい汗じゃない!?」
自主練に来た雫が声をかけてきた。それと同時にバートは自分が汗をかいていることにやっと気づいた。
「八重樫さん!そうだよ自主練だね。え?汗?うわほんとだ!?ごめんちょっとタオル取ってくる!」
(結局一撃も打ち込めなかったな……やはりもっと訓練が必要だな)
そんなことを考えながら近くの木のテーブルに置いてあったタオルを取って汗を拭き取り、雫の話を聞きに行く。
「ごめんね八重樫さん。恥ずかしい姿見せちゃって。それより八重樫さんはどうしたの? 俺は自主練だったけどもしかして八重樫さんも?」
「そうね、私も自主練しに来たんだけど先客がいるとは思わなかったわ。それよりバート君は一体どんな自主練してたの? あんなに汗をかくなんて珍しいわよ?」
「あーそれはね、昔俺に自分を守る術を教えてくれた人がいたんだよ。昔の俺は弱かったからね。その人を想像しながら模擬戦をしてたんだ。もっともあくまで想像だから周りから見たら俺一人が動き回ってるようにしか見えないんだけどね」
「へぇ意外ね、バート君にお師匠さんがいたのね。そのお師匠さんは今何をしているのかバート君は知ってるの?」
おそらく雫本人も純粋な疑問だったのだろう、だからこそ本来なら答えることもないであろう質問にバートは答えた。
「今何しているのかはわからないかな。でもなんとなく分かるよ」
「あらそうなの?一体何をして「死んでるよ」……へ?」
空気が凍った。雫はこれがデリケートな質問だと気づいたのだろう。固まってしまっている。
「俺の師匠……アンスバッハ殿はおそらく死んでいる。でも後悔はしてないと思う」
「な、なんでもう死んでるって思うの!?しばらく会っていないんでしょう!?だから大丈夫死んでるはずないって!」
おそらく雫なりの精一杯の励ましなのだろう。
「……それもそうだね、ありがとう八重樫さん。ごめんねこんな暗い話しちゃって」
(嘘だ。本心では理解している。いくらアンスバッハ殿とはいえ祭りの英雄に挑んで生きているはずがない。でも、八重樫さんの言葉で少しは気が楽になったかな……)
「そう言ってもらって助かるわ。あ、そういえばそろそろ休憩終わるけど大丈夫なの?」
「あ!?ほんとだ!ごめん八重樫さん!また後で!」
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(全力で走ったからか意外と時間が余ったな……ん?あれはハジメ?一緒にいるのは檜山達か、なんだかやばい気がするな)
「止めるか」
バートは気配を消して檜山達の後ろに周る。
「よぉ、南雲。なにしてんの? お前が剣持っても意味ないだろが。マジ無能なんだしよ~」
「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」
「なんで毎回訓練に出てくるわけ? 俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」
「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」
「やぁ、随分と楽しそうだな?一体何をしてるのか聞かせてくれないか?」
檜山の肩を掴みながら声をかけるバート。
「おわぁ!?なんだテメェ!バート!」
「なんだとはつれないなぁ檜山?で、結局何をしているんだ?まぁ大体察しが付くがな?」
「う、うるせぇ!!テメェには関係ないだろうが!!」
「関係なくはないぞ?友達が変な奴らに絡まれてたら助けるだろ?」
「黙れ!黙れ!ここに焼撃を望む!──〝火球〟」
「おいおい、マジかお前…」
先ほどのやり取りでイライラしてしまった檜山が我慢の限界を迎えバートに魔法を放ってしまった。一方で魔法を撃たれたバートはあらかじめ持っておいた聖印を握って祈祷で魔法を迎撃するためにタイミングを待っていた。
血盟祈祷 血炎の爪痕
その祈祷を用いてバートが空を引っ掻く。直後、赤き爪痕が顕現する。その数瞬後、赤き爪痕が爆ぜる。その爆発は檜山の放った火球を飲み込み消滅した。
「う、嘘だろ…」
「ま、まぐれに決まってんだろ!!」
自身の魔法をかき消されてへたり込む檜山をよそにもう一度魔法をバートに放とうとする中野。
中野が魔力を貯めていたその時
「何やってるの!?」
一人の少女の声が聞こえた。その声の主は白崎香織。檜山達が惚れている少女であった。他にも光輝や雫、龍太郎も一緒だった。
それ見て思わず「やべっ」と言う顔をする檜山。だが何かを思いついたのかその顔は悪い顔へと変わっていった。
「た、助けてくれ!南雲に訓練してやろうとしたらいきなりバートの奴が魔法を使ってきたんだ!」
檜山が立った行動はバートを悪者に仕立て上げ、あくまでも自分は被害者だと訴えることであった。それを聞いたバートとハジメは思わずマジかコイツと言う顔をする。しかしそんな檜山を無視してすぐさまハジメに駆け寄る香織。
「南雲君!大丈夫?」
香織がハジメの状態を確認している間に光輝達から事情聴取を受けることになったバートと檜山達。
「改めて聞くけど一体何があったんだバート?」
光輝達に聞かれたので事の顛末を語るバート。
「簡単なことだ。檜山達がハジメに訓練という名のイジメをしようとしているのが見えたから背後から何をしてるんだって声をかけたら軽く言い合いになって先に檜山が魔法を使って来たからこちらも魔法を使って相殺しただけだ。」
「そうか、じゃあ檜山。お前の話も聞きたい。聞かせてくれ」
「だからさっき言っただろ!!南雲に訓練してやろうとしたらいきなりバートが魔法を使ったんだって!」
「なるほどな…バート、檜山の言うことが本当なら俺はお前を許すことはできないぞ」
「「はい?」」
思わず声に出して驚いたバート。それの同時になぜ檜山の肩を持つのか不思議でならない雫が声を出していた。
「ちょっと光輝!なんでバート君じゃなくて檜山君の肩を持つの!?」
「雫、悪いが俺はステータスプレートに細工する奴の言葉は信じられない」
バートはまたそのことを言っているのかという顔をしており雫はもはや呆れて声も出ないと言った表情をしている。
この後もバートが何も言わないのを良いことに光輝はこれ幸いとバートを攻め続けていた。なんでも「何も言わないのはボロが出るのが怖いのか!」だとか「黙ってるってことは自分の罪を認めるんだな!」など散々な言われようだった。途中でメルド団長が止めに入ったがヒートアップした光輝には届いていなかった。そしてこのやりとりにだんだん面倒になって来たバートはあることを思いついた。
「はぁ…なぁ光輝、もうこのやり取りめんどくさいんだが?」
「めんどくさいとはなんだ!大体お前が「じゃあもう決闘でもするか?」なに?」
「だから決闘だよ、こんだけやっても話し合いが終わらないんだったらもう決闘で白黒つけようって言ってんだよ」
「あぁいいとも!メルド団長、審判を任せても良いですか?」
「…少し考えさせてくれ。」
そう言ってしばらく考えこむメルド団長。数分後メルド団長が出した結論は
「わかった、その決闘を認めよう。ただし条件を付けさせてもらう。それでもいいなら決闘の審判をしよう」
「俺は異論ありません」
「俺も光輝に同じく異論はありません。それで条件とはなんでしょうか?」
「条件は2つ、まず1つ目の条件は使用する武器はこちらが用意した訓練用の刃を潰した物を使用してもらう。2つ目は相手を攻撃する魔法や技の使用を禁止させてもらう。ただし自身を強化する魔法のみ使用を許可する」
「「了解しました、メルド団長」」
「では二人とも決闘に勝った際に相手に望むことを考えておいてくれ。決闘はこれから1時間後とする。以上、解散!」
こうして俺たちは決闘をすることになった
誤字脱字等あれば報告していただけると幸いです
今回の決闘の条件をエルデン風に説明すると武器固定、攻撃戦技、攻撃魔術、攻撃祈祷の使用禁止。ただしバフ技のみ使用可能。といった感じです