福岡県で感染者が急増中らしい。
福岡といえば九州だ。灼熱の島という印象がある。行ったことないけど。
そこの知事が、独自に緊急事態宣言を発して、県境を封鎖した。報道規制も敷かれているらしい。
2ヶ月に及んだ全国的な外出規制よりずっと深刻な状況ぽく、それは新型コロナなのか?もしくは更に新型のウイルスが持ちこまれて暴れているんじゃないのか?という陰謀論まで誕生している。
週明けにはさっそく各紙が特集記事を組んだ。
九州といえば、海を挟んですぐ対岸が韓国。その先に北朝鮮、中国と無法国家群が連なる。
海上保安庁ならびに海上自衛隊が昼夜哨戒しているにもかかわらず、国籍不明船が跳梁跋扈し、屈強な工作員が上陸しては日本人の子供を拉致していくことは常識だ。
この犯罪は何十年も前から連綿と行われているのだが、歴代の日本政府はか細い抗議の声しか上げてこなかった。
岸首相が断固たる態度で近年ようやく現地調査と被害者救出に臨み始めたおかげで国際問題として認知されつつあるというところだが、そんな土地柄なのでウイルスも拉致工作員が持ちこんだ可能性がきわめて高い。
福岡県には国際空港がひとつ、国際拠点港湾がふたつあり、いずれも検疫は完璧であるとの記者調べ。かつ県民の生活も他の都道府県となんら変わるところはなかったそうだ。
となると、やはりなあ、というところである。
そしてこの報道を受け、岸首相は直ちに動く。
全国の医療機関へ向け、手隙きの人員を福岡へ派遣させるよう特命を飛ばした。
「コロナの対応で不眠不休の皆さんには大変申し訳ないけれども、最後にもうひとふんばり、していただきたい。
国民が総力を上げて取り組むべき重大な局面です。そのための特別支援施策も厚労大臣へ指示しました。
新型コロナを撃退したら、交代でゆっくり休んでください。あと、もうひといきですから」
優しい談話だ。勇気がわいてくる。
国民へ向けてはこんな口調だけど、北朝鮮に対しては、もっと怖いのかな。想像できないが。
外務大臣は秀才だけど押しの弱さが難点だと、別な記事で読んだ記憶がある。
交渉の場には首相自ら出向いて、ガツンと言ってくれるのだろうか。
うわあ、それ、日本国民みんなが見てみたいはずだぞ。
ちら。
エヴァンズが、今日はまったく絡んでこない。空き時間はひたすらタブレットでニュースやブログらしきものを読んでいる。
時々、動画も見てる。
ヘリと銃撃。
戦争映画かしらん。
「ドナルド大統領が、とうとう一線を越えてしまった。軍を出動させ、国民へ武力行使したんだ。
いまUSじゅうが騒然となっている。
ドナルドの政権から離別してずっと沈黙を守っていた長官たちまで、抗議の声明を出し始めたところさ。
これでは任期満了まで務まるかどうかも怪しいな」
へえ?いったい何が起きたんです。
「どこから説明しろというんだ。
ブラック・ライヴズ・マターを君は知っているか?」
ブラック……いえ、それは知りませんね。
「じゃあいい。邪魔をしないでくれ」
これだもの。ほんと、愛想のない。
人間として終わっていると思うんだがね。
もっと弱者にいたわりを持ってあげないと、今以上の出世は望めないぜ。部下がついてきてくれるわけないからね。
それでもちらちらと横目で画面を覗くと、戦闘シーンの英語字幕に、ニューヨークとかワシントンとか見える。
ニュース映像だとすると、アメリカ全土でこんな状態なのか。
まじかよ。明日の新聞に載るかな。
そういえばエヴァンズをアメリカ大使館へ送り届けたことないな。
場所は知ってる。赤坂に大きな敷地があって、日本の警官が24時間びっちり護衛している。脇を通過したことしかない。
世界には200ほどの国があり、同じだけの大使館が東京都心に集まっていることになるが、それらの大半は住宅街の一角にこじんまりと旗を立ててたたずんでいる。雑居ビルやマンションの一室というのも珍しくない。
駐車場はあっても公用車を入れておくスペースなので、ほとんどの場合、最寄りのコインパーキングを利用する。
エヴァンズは営業だといって小国をこまめに回るのが基本業務なのだが、今日くらいはアメリカ大使館へも行くのかな、と思ったのだった。
しかしその気配も無さそうである。
いったい何を売り歩いているのだろう。
日本人奴隷いりませんか?暗殺お引き受けしますよ?とかかな。
午後、六本木の駐車場でエヴァンズを見送ったあと、本屋へ雑誌を買いに行った。
ブラックなんとか。
ひとまずドナルド大統領について特集している一冊を見つけ、車へ戻って読んでみる。
あ、これかな?
ブラック・ライヴズ・マター=黒人ヘイトに抗議する。
「黒人差別はドナルドが始めたものではないし、ドナルドの時代に特別ひどくなったわけでもない。アメリカ初の黒人大統領となったバラク時代の8年間に改善されたかといえば、決してそんなこともない」
え、そうなの?
「地域・世代・コミュニティや分野によって多少の差はあっても、ヨーロッパ系白人とそれ以外の人種に生まれながらの絶対的な格差が存在していることはアメリカ合衆国の歴史に深く刻みつけられた伝統の一部なのである。
合衆国の伝統と文化を尊重しようとする限り、その背骨を貫いている人種差別意識から抜け出すことは、英語を捨て去るのと同じくらい難しい。大統領ひとりの力でどうにかできるような問題ではないのだ」
そ、そうかもしれないけどさあ。
「憲法・連邦法・州法のいずれも、人種差別を悪と断じ、違反者には罰則を科している。
アメリカは厳格な法治国家であり、国民がこれらの精神を蔑ろにしているわけでは決してない。
しかし伝統もまた同様に尊重されるのだ。
両親を敬慕し、祖先の財産を継承する者は、生まれながらの社会的階層だって大切に保持する。
衣食住環境それから教育水準は、従来から存在していた格差に基づいた上で発展させられる。
エスタブリッシュメントが主導する文明社会への適応能力には決定的な溝が横たわり、むしろ世代を重ねれば重ねるほど、より深く開いていくばかりなのだ。
一方の上層階級は不満を爆発させる。
人種差別などしていないのに、なぜかれらはこれほどまでに怠惰なのかと。
この段階ではもはや法律は誰かを救うための道具ではなく、持たざる者をより惨めにさせるための武装にしかならない。
かくして必然的にヘイトクライムは暴走を始める。
バラクも、ドナルドも、この奔流の途中でリレーに参加した走者にすぎない。
大統領ごときの力だけでどうにかできる問題ではないのだ」
疲れてきた。
糖分を補給。ごくごく。うめえ。うめえ気がする。
ところで概論はそろそろいいから、最近のドナルド大統領がいったい何をやらかしたのかを知りたいな。
ぱらぱらとめくる。
読みやすそうな座談会コーナーを見つけた。
「ドナルドは3年間で、バラクが8年かけて築きあげた276件の大統領令を9割廃止に追いこみましたけど、それは公約で宣言しちゃってたことだから。
当選した手前、やらないわけにいかないから、リスト作らせて1件1件つぶしていったんですよ。
ドナルドってほんと律儀な性格なんです。あの几帳面さは、ドイツ人の血ですかね」
「ドナルドを人種差別主義者だなんて言ったら、しょげちゃうでしょうね。
彼はずっと白人居住区で暮らしてきたし、テレビ芸人やってた時代でもずっと同じキャラで通してたから、あの態度も言葉遣いもナチュラルかつ視聴者サービスの延長なんですよ。
バカのふりして喝采浴びたいだけに見えるのはテレビの悪影響かもしれませんが、それは支持者が望んでることなので。
バラクだって、終始アナウンサーみたいな喋り方しかしなかったでしょう。根は一緒です。ポピュリスト、すなわち芸人。
ほどほどにしとけやってどっちにも思いますがね」
うーん。読み流しやすいけど、今知りたいのはそんなとこじゃなくて。
「新型コロナウイルスの発生は全世界を恐慌状態に叩き落としました。
多くの国で、次の選挙では野党が政権を奪うでしょう。与党の対応は不適切だったと、そのとき責任能力を持たなかった政治家にはいくらでも攻撃材料が蓄えられたからです。
アメリカでも今は共和党に強い逆風が吹いています。
ドナルド大統領はその矛先を中国へ向けさせようと画策しましたが、どうも、その、彼はアジア人種とアラブ民族、アフリカ系さえも区別できていないみたいで。
不注意な暴言を積み重ねた挙句、国内でそのすべてを敵に回し連帯させるという大失敗につなげてしまいました。
この原稿を執筆時点で、暴動はニューヨークやワシントンDCなど10都市に拡大しています。
いったい、どうなってしまうのでしょう」
これか。これのことか。
そして、鎮圧に軍隊を出動させたというのが今日の最新ニュースか。
なんてこったい。
岸首相、ドナルドにやめろと言ってやってください。それができるのは、世界であなただけです。