その生き方しか知らない。故に――。
目を覚ますと、次の日になっていた。
紫姐さん辺りが俺を家まで運んでくれたのか迷惑をかけてしまった。
身体がベタつくため風呂に入る。
「うわ……まだ治りきらねぇか」
脇腹の傷はもう傷自体は塞がっているのだが、身体の生傷や痣はまだ残っており、切られたり抉られている場所は特に酷い状態だった。
そして、俺の髪は真っ白になっていた。
ストレスで段々と白くなっておりメッシュのように残っていた黒髪もなくなった。
脱衣所で軽く身体と髪を拭き、パンツを履いたところで何の前触れもなく、戸が開かれてしまう。
「はっ?」
「え……」
入ってきたのは燈たちの五人。
何で他のメンバーがここに居るんだという前に俺は今、パンツ一丁なわけだがみんな下の方をガン見している。
「あ、あの……困ります」
恥ずかしすぎる。
同年代の女の子にこんな姿を見られるなんて非常に最悪な状況だった。
「あ、ご、ごめん……」
燈はそう言って戸を閉められてしまったのだが、声のトーンは明らかに不味いモノを見たような声だった。
こんな傷だらけで治りかけのグロいものまであるのだから嫌なモノを見せてしまった。
俺はズボンを履き、台所にある救急箱から新しい包帯を取り出す。
「……」
『……』
居間の方をのぞくと燈達が暗い表情をしながら座っていた。
本当に申し訳ないことをしたなと感じながら包帯をささっと巻き直してシャツを着る。
そして冷蔵庫から麦茶を取り出し、居間へと向かう。
「いや~みんないるなら言ってくれよ~。麦茶しかないけど好きに飲んでいいからね」
「あ、いや、私がやるから嘉村宜は座ってなよ!」
「あ、ああ。ありがとう」
椎名さんは慌てた様子で俺から麦茶とかトレーを受け取り配っていく。
「は~い。あっきーはこっちに座って。そよりん、髪を乾かしてあげて」
「その呼び方やめて。はぁ、乾かしてあげるからジッとしててね~」
などと言われ乾かされ接待を受けている。
何故、こんなことになっているのだろうか。立ち上がろうとすると楽奈ちゃんが膝の上に乗ってきて動けなくされてしまう。
「ら、楽奈ちゃん?」
「なに?」
「ちょっと退いてくれないかな?」
「やだ」
ですよね。
分かっていたことだ。様子もおかしい。むしろ、俺の方が問題を起こしかけているのだ。そのことを謝罪しなけれならないというのにそんな空気ではない。
手持ち無沙汰になり、俺は楽奈ちゃんの頬をムニムニしながら遊んでいた。
「あら? お馬鹿さんが起きたのね」
「紫姐さん……」
「貴方、とんでもないことをしでかしたわね」
「……」
どれの事だろうか。
「全部よ」
「オッケー。姐さんもしかして病院まで行ったの?」
「ええ。貴方、この一年、相当無理したらしいわね」
そう言って紫姐さんは懐から分厚いA4の紙の束を持ってくる。
「全身の骨折に罅、筋肉断裂に裂傷……内臓の損傷に炎症。免疫機能と臓器機能の低下……正直、生きてるのが不思議なくらいよ」
「……みんながいる前でやめてくださいよ」
「黙りなさい。分かってるの? 貴方、寿命を削ってるのよ!」
紫姐さんはすごく怒ってくれているけど、俺にとってはむしろ何で生きてんだよって思っている。
「分かってるよ。今生きているのは燈が拾ってくれたからだ」
「それなら……!」
「でも、俺は生き方を変えられない。これしか、無いんだ」
「……っ!」
命を賭けることしか知らない。
その生き方しか知らない。だからそうするしかない。
別の道を選べることだってできる。だけど、こんな血に濡れた怪物の手を誰がとるのだろうか。
「みんなには、話したんですか?」
「流石に闘技者として企業に所属していることは話したわ。それ以上は言ってない」
「そうか……じゃあ、話さないといけないね」
みんなの顔を見回すとどこか不安そうにしている。
怖い。
軽蔑されるのが、嫌悪されるのが、拒絶されるのが怖い。
身体が震える。
そんな俺の手をそっと掴んでくれる人がいた。
「燈……楽奈ちゃん……」
「あぎと……」
「顎くん。大丈夫だから、話して」
「そうだな。じゃあ、話すよ。暴力と血に飢えた怪物の話を……」