全てを失っても尚、死ぬことを許さなかった。
戸惑いと不安の中、少年は邂逅する――。
「ん……」
消毒液のにおいが鼻を突き、目が覚める。
知らない真っ白な天井。
病院にいるのだと理解するが一体誰が、連絡したのだろうか。
「包帯……点滴。そっか……生き残ったのか」
両腕に頭、身体の至るとこをに包帯やガーゼによって治療されており、右腕には点滴が刺さっている。
「おや? 目が覚めたかい」
「詩船大叔母様……」
母方の親族で俺は両親の葬式と新年会の挨拶で数える程度しかあったことがなかったが、両親がよく話していたことは記憶に残っており、いつも不機嫌そうな顔をしていたために印象に残っていた。
「大叔母様なんてよしな。そう呼ばれるほどできちゃいないよ」
「いえ、俺にとっては……恩人なので」
「ん? 私は連絡があって来ただけだよ」
「え? そうなんですか」
「ああ、何だい。運よく私に見つけてもらったとでも思っていたのかい?」
「いえ、そこまでは……」
そんな都合よくいっているなんて思ってはいない。
だが、それなら誰が。
「あ、あの……すいません」
「貴女は……」
茶髪のボブカットでブラウンダイヤモンドのような澄んだ色の瞳。小ぶりだがスッとした鼻筋の下で桜色の唇が彩を添えている。どこか気弱そうで小動物感が漂っている。
「ど、どうも……あの、私、
「
「あ、はじめまして」
「高松さんが、俺を?」
「は、はい。えっと、嘉村宜さんが、その、帰り道で倒れていたので」
視線が左右に揺れ、声音からかなり緊張しているのが分かる。それに他人と喋り慣れてない感じがひしひしと伝わる。
「すいません。あんな傷だらけで驚いたでしょう?」
「え、いえ! その、泣いて……いたので」
「は?」
「あ……す、すいません!」
「あんた、女の子を怖がらせるんじゃないよ」
「高松さん、ごめんね。怒ってるわけじゃないよ。助けてくれてありがとう」
「いえ、そんな……」
かなり愉快な人なのだろうか。
俺が今まで出会って来た人の中でもダントツで気が抜けてしまいそうになる。
何処か放っておけなくて、力になってあげたくなるような不思議な魅力があった。
「顎、私はもう行くよ」
「あ、大叔母様。すいません」
「だから……はぁ、今は傷をなおしな。話はそれからだ」
「はい」
そう言って大叔母様は病室を出ていき、高松さんと二人っきりにされてしまう。
普通は高松さんと一緒に帰るだろうと思っていると、高松さんは大叔母様が座っていた場所に座りこちらをジッと見てくる。
俺は思わず彼女の方を見たまま見つめ合う状態で固まってしまう。
「あの、嘉村宜さん」
「何かな?」
「また来て良いですか?」
「良いですよ」
とんでもない人に目をつけられたような気がした。