迷奏フィロソフィー   作:葛城イロハ

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 躍動する怪物はもうその歩みを止めない。
 どこまでも強くなろうじゃないか。俺はもう、迷わない。


戦塵

 バイクを走らせて指定された場所につくのだがそこは更地する予定の場所で、中が見えないように高い敷居がある。

 どう侵入したらいいのか悩みながらもバイクを近くの駐車場に止めて中に入っていく。

 緊急というからどうなんだと思ったが、少し急いだほうがよさそうだった。

 意を決して廃墟の中に入っていく。

 

「うげぇ……どんだけいるんだよ。ボコボコじゃん」

 

 中に入ると出迎えてくれたのは倒れた人の山。服装からウチの所属ではないが、そのほとんどが顔面を潰されており、死んでこそいないがしばらくは起きれないだろう。起きたとしても激痛で動けまい。

 

「おい! こっちにもいるぞ!」

「ダル……」

 

 ゴキブリみたいにいっぱいいるじゃん。

 俺は陽炎で近づいて脳天、鼻、顎、鳩尾に打撃を打ち込み落とす。

 通路の奥からわらわらと十人ほど湧き出てきたので先手必勝と姿勢を低くして地面を滑空して一撃で全員を気絶させる。

 

「よし……行くか」

 

 弱い。

 企業闘技者の平均以下。

 本当にただのチンピラだが無駄に数が多い。身体能力、頑丈さ、精神性。どれをとっても闘技者としては落第中の落第。

 詳細もよく分からないのでさっさと合流するのが吉だろう。

 俺は建物内を走り奥地を目指すことにした。

 所々倒壊しておりいつ崩れてもおかしくないくらいには解体が進んでおりすぐに見つかるだろうと高を括っていたのだがどれだけ進もうとも雑魚が湧き出るだけ。

 最奥の扉を蹴破ると古波蔵がいた。

 

「来たか……」

「お~い。古波蔵ぁ! 何でこんなに奥に来てるんだよ! 雑魚が道中で湧き出てウザかったぞ!」

「お前、なんかキャラが……」

「そんなことはどうだっていいだろ? それで、何の用だよ」

 

 奥の部屋は緑があちこちで生い茂っており廃墟と言っても差し支えない状態であり室内のあちこちで古波蔵にぶっ飛ばされた人が倒れていた。

 

「何だ……もう終わりそうじゃん」

「顎、油断するな。まだ、いる……」

「そう言っても複数でやらなきゃアンタに傷をつけられない雑魚なんてどうだっていいよ。俺は、忙しいんだ」

 

 どいつもこいつも実力がない癖に嚙みついてくるなよ。

 やる必要のない戦いは嫌いだ。

 無意味な戦いは暴力と変わらない。それを身をもって知っている。

 

「だから、即行で終わらせる」

 

 そう言うとわらわらと出てくる。

 

「マジでゴキブリみたいに湧き出るんだな」

「殺せ……」

「出来もしないことをほざくなって……」

 

 俺は左側から攻める。

 それに反応してこっちに向かってくるが壁を走り上の方から片づけることにした。

 

「よう」

「なっ……! 壁を――」

 

 一番手前の奴から殴りながら奥へと進んでいく。

 面白いくらい人が飛び、倒れていく。

 元の身体能力差のせいで殴るだけで骨と肉が砕ける感触が拳に伝わる。下手に蹴りをかませば殺してしまうかもしれないくらい差があった。

 

「らぁああああ!」

 

 目につく奴は全員倒し、古波蔵の方を確認するために下のフロアをのぞくのだが結構残っていた。

 

「おーい! 大丈夫か!」

「顎? そっちはどうした!」

「もう終わったよ!」

「何?」

 

 崩れかけた床の下をのぞくとリーダー格っぽい奴が驚愕した顔でこちらを見てきた。

 

「うわっ……何?」

「馬鹿な……百人は居たはずだ。それを五分も満たない時間で制圧だと⁉」

「え……何? 怖……」

「嘘を吐くな! お前みたいな小僧がそんなことできるわけ……」

「それは、アンタの情報収集不足だろ? 悪いけどもう終わらせて帰らせてもらうよ」

「は?」

 

 何を言ってるんだこいつは? という顔をしているがこんなくだらないことで時間を無駄にしたくない。

 だから俺は下に飛びおりて肩を軽く慣らす。

 

「女を待たせてるんだ。だからさっさと帰りたいんだ」

「調子に乗るなよ餓鬼が!」

「そうカッカするなって。禿げるよ?」

「余計なお世話だ」

 

 嘘だろ。フード被ってるから分からないけど髪が結構細く見える。薄くなっているのだろう。

 かわいそうに。

 

「まぁ、とりあえずルールを決めよう」

「ルールだと……?」

「あぁ、やりすぎると後処理の人達にぶっ殺されそうになるからな。とりあえず泣いて謝って二度と姿を現さないなら殺さないでおいてやるよ。これがルールな?」

「この……クソガキがぁああああ!」

 

 叫んでいる間に俺は《陽炎》で人の壁をすり抜けリーダー格の前に現れて右腕を振り上げる。

 

「じゃ、これで終わりだ」

「え……?」

 

 俺は顔面に《閃撃・廻》を叩き込む。

 前とは違い、足から腰の回転を拳にまで伝達させより威力を上げ、砲撃のような打撃音と共に男は分厚い柱に頭から激突して柱と一体化してしまう。

 

「愉快なオブジェになっちまった。さて、お前らは……どうする?」

 

 俺は残った集団に『ああなりたいか』と遠回しに聞いてみると集まっていたチンピラは顔を青くして立ち尽くしている。

 

「あぁ、顔は全員覚えているからな? 逃げるなら追わない。だけどな。俺の前にもう一度、その面を見せてみろ。生まれてきたことを後悔させてやる。分かったら散れぇ!」

 

 そう一喝してやると蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 よし、これで帰れるだろう。

 

「よし、古波蔵。俺は帰るからな」

「あ、あぁ」

 

 そう言って俺はバイクを止めている駐車場へと行き、帰ることにした。

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