迷奏フィロソフィー   作:葛城イロハ

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 学ぶことは多いと実感する中、少年の心が休まるときは先。


同伴

 椎名さんに貰った地図を頼りに中等部の校舎にようやくたどり着き、教室内に入っていく。

 楽奈ちゃんの姿が見えるので場所は合っている。

 だが、こちらでもかなり注目されていた。

 

「あ……」

 

 向こうも気づいた。

 ここに来る前に黒の丸縁サングラスをしてるため怪しく見えるが問題はあるまい。

 

「楽奈ちゃん。ギターを忘れてたよ」

「ありがとう」

「おう。で、何処に置いとけばいい?」

「持ってて」

 

 そうなるのか。

 となると、参観会が終わるまでこうしているということなのだろうか。

 そう思っていると先生がこちらを見ていた。

 

「えっと……要さんのご親戚の方ですか?」

 

 まぁ、いきなりサングラスをした若い男が教室に入ってくればそうなるか。

 俺はサングラスを外して虹彩異色の目を見せる。

 

「はい。遠縁の親戚です。今日は祖母の変わりに来させていただきました」

「そ、そうですか」

 

 何か、反応が鈍い気がする。

 周囲を見回してみると教室中が浮足立っているようだった。なので少し微笑んでみると椎名さんの教室と似たような感じで歓声が上がる。

 先生、授業を妨害してごめんなさい。

 みんなに見えないように裾をひいてくる楽奈ちゃんの方を見ると、面白くないような表情をしていた。

 

「どうしたの?」

「……なんか、やだ」

「何かごめんね」

 

 あまりかき乱すのも良くないと思い交流もほどほどに後ろの方へ行き授業の様子を見ることにした。

 普通に授業を受けているのは意外だった。

 楽奈ちゃんは結構フラフラと何処かへ行ってしまうような印象であったため意外だった。

 授業内容は道徳系と思ったらバリバリの通常授業で生徒たちは真剣な表情で勉強していた。俺も学校に通っていたらこうしていたのだろうか。

 学校の件もやると言っていたし雰囲気だけには慣れておこう。

 

 それからしばらくして父兄たちは体育館で受験に関しての話を聞くことになり俺はメモを取りながら婆ちゃんや楽奈ちゃんの両親に説明するのかと頭を抱えながらペンを走らせることになった。

 説明会が終了し俺は中庭のベンチでパンダ柄のパックジュースを飲みながら待っていた。

 

「おい、嘉村宜」

「椎名さんじゃん」

「お前のおかげで散々だったんだからな」

「それは……ごめん」

「何でまだいるの?」

「あ~……楽奈ちゃんを見た?」

 

 そう聞くと椎名さんはマジで嫌そうな顔をしながら大きな溜息を吐いた。

 

「手芸部かそこらへんで寝てるかも」

「マジ?」

 

 ギターも重いからいい加減に捕まえないと面倒なことになりそうだと思い立ち上がる。

 

「じゃあ、椎名さん。案内をよろしく」

「はっ? 嫌なんだけど」

「いや~俺だけじゃ道に迷っちゃうよ」

「顔が良い分余計ムカつく」

 

 それは、知らん。

 むしろ俺は、椎名さんやその後ろの席の子とか顔が良かった印象を受ける。

 顔面偏差値が高すぎて俺には眩しく見えたよ。

 

「そう? 椎名さんのクラス……後ろの席の子たちとかも顔良かったね。女の子にモテそう」

「あ~海鈴と三角さんだね」

「三角……? あぁ、三角初華(みすみういか)ね」

「知り合いなの?」

「仕事で少しね」

 

 などと話していると、服の裾をひかれる。

 振り向くと楽奈ちゃんが両手に大量のお菓子を抱えており俺は顔を手で覆い、空を仰いでいた。

 

「何で貰ってきちゃうの……」

「くれた」

「そう……じゃ、行こう。って待って……」

 

 歩き出すと椎名さんは別行動しようとしていたので俺は手を掴み止める。

 

「何?」

「お昼、奢るから楽奈ちゃんを連れ行って」

「あぁ……分かったよ」

 

 椎名さんは周囲を見ながら頬を赤らめ即座にOKしてくれたが、俺はそこで合点がいった。

 やっちまった。

 周囲には人がおり、明らかに盛り上がっている様子だった。

 

「椎名さん」

「何……」

「ゴメン。配慮が足りなさ過ぎた」

「良いよ。その代わり、しょうもない所に連れてったら承知しない」

「期待してていいよ。美味い飯屋は結構知ってるんだ」

 

 そうして俺は二人を連れて学校を後にした。

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