だが、その信念は揺るぐことはない。
たとえ、それが悪と断じられる罪人の行いだとしても。
洗いざらい話した後、見計らったように料理を運んでくる店長。
見ていたなら助けてくださいよと恨みがましい目で見るが『流石に割って入るのは怖いよ』と目で訴えかけてきたため思わず肩を落としてしまった。
そうだよな。
あの椎名さん、スゲー怖い。
燈絶対肯定ガールすぎる。好きすぎて厄介オタクみたいになっている。
「はーい。バーガーにステーキね。デザートはその後だから期待してていいよ」
「あれ、嘉村宜は?」
「俺は後、時間かかるんだよ」
などと言っているとたくさんの料理が乗ったワゴンが運ばれてくる。
他のお客さんも見ている。
「顎用のメニューだ」
「俺、店長のそういうとこ、好きだよ」
「気色悪いこと言ってんなよ」
「はーい。じゃあ、いただきまーす」
俺はバーガーの一つを取りかぶりつく。
半分以上を口に含み、噛みながらどんどんテーブルの上に料理を並べていく。
ステーキにポテト、サンドウィッチやフライドチキン、ナチョスなどが並び、俺は無言で食事に没頭する。
肉体が未だに完治していない故に身体が早く治そうとして食欲を刺激してくる。だから馬鹿にならない食事量になる。
実際、ここいらの大食いチャレンジメニューを制覇し、挑戦できないようにされてしまった。だから札束で量を喰うしかない。
「嘉村宜って食べるの綺麗だね」
「うん。あぎとは食べ方がキレイで美味しそうに食べる」
「ん~! これ、美味いな……あぐっ」
「それに、料理上手」
「楽奈は嘉村宜の料理食べたことあるんだ」
「うん。よく食べてる」
二人は食べてる俺を見てくるが気にせず食べ続ける。
一口が大きい分、減りも速いが気にしない。ただ、食に没頭する。食べてっ全てを血肉に変えて細胞の一つ一つにエネルギーを補給する勢いで胃におさめる。
今回はステーキは赤身にしてもらっている分、歯応えがあり食べてる感がある。それに飽きがこない。香辛料のおかげなのかそれとも単純に傷を治すために身体がそうしているのかは分からないが、手が止まることはない。
そんなことをしていると、ふと知り合いが目に入る。
「あれ、愛音さん?」
「えっ……あっきーにりっきーじゃん。あ、楽奈ちゃんもいるんだ。奇遇だね」
「愛音さんもお昼? 奢るから一緒に食べない?」
「えっ! いいの?」
俺は愛音さんを隣に座らせる。
「すごい食べるんだね」
「これくらい食べないと傷が治らないから」
「あ……そっか」
「別に気にしなくていいよ。食べるの好きだし」
「そうなんだね。でもすごくきれいに食べるね」
「親にすごく怒られながら食べ方を矯正されたからな。今では感謝してるよ」
こうやって大食いしても汚くならないのは良いことだ。
そんなことをしていると愛音さんは写真を撮り始めた。
「……?」
「あ、あっきーは気にしなくていいよ?」
「分かった」
十五個目のハンバーガーに手を付けかぶりつく。牛パティの溢れる肉汁にトマトとレタス、玉ねぎにピクルスの酸味が調和し重厚的な味になる。いくらでも食える。
チキンは口に放り込み引き抜くと綺麗な骨の状態で出てくる。
「う~ん。あっきーの食べる所をみるとお腹空いてきたなぁ」
「お前と同じ感想だくの嫌なんだけど」
「りっきー冷たい」
「うるさい」
「あのん、何であぎとの隣に座るの?」
「えっ⁉ ら、楽奈ちゃん?」
「何で?」
「え……あっきーが座らせてくれたから?」
そう言うと楽奈ちゃんは立ち上がりこちらへと来る。
「あっち行って」
「あ、はい?」
「行って」
「はい……」
普段見せない圧に負けた愛音さんは椎名さんの隣へと行く。
今度は椎名さんが文句を言うかと思ったが楽奈ちゃんが放つ圧に負けたのか愛音さんを素直に隣に座らせる。
「えぇ……」
「おい、何もいうなよ」
「でも、りっきー……!」
「何も言うなって。私もとばっちりをくらうだろうが」
何か言い合っている二人をよそに、俺は寄こされた料理を平らげて一息ついた。
「仲いいね」
「「どこが……!」」
「そういうとこ」
そのまま食事を終え、会計することになるのだが値段を見た椎名さんと愛音さんは目を見開き驚いていた。
「じゃ、店長、カードで」
「おう、っとまて、顎に渡すのがあった」
差し出されたのは手紙。
「店長。これって」
「あぁ、お前の
「男? 見た目は?」
「黒髪黒目で言っちゃ悪いが似ては無いな。でも――」
目つきは同じだった。
「っ……!」
『――ちゃんはお兄ちゃんと同じ目つきなんだね』
『――はお前と同じ目つきだから一瞬間違えるんだよな』
生きて居たのか。
弟よ。お前は、今、何をしている。そう思いながらも俺は手紙の中を確認し、すぐに閉じた。
「店長。ありがとう」
「おう?」
店を後にして、俺は三人をRINGへと送る。
「じゃ、俺は行くから。楽奈ちゃんをよろしく」
ここに来るまで、俺は一言も話さずに来てしまった。
心が乱れる。
多分、店長の話を聞く限り、弟だ。そして手紙の中に入っていたのは錠剤の入った袋と黒い百合と蒲公英が一本入っていた。
花言葉は呪いと別離。
あいつは俺を恨み呪っている。しかも、この錠剤は師匠を殺したモノ。あの日、全てを破壊したはずだが、これはあいつからの宣戦布告なのだろうか。
考えがまとまらない。
「顎くん……?」
「燈? 何、やってんだ」
「みんなは、準備……あるから。私は、少し……顎くんと話、たくて」
「あぁ、それで?」
「明日、一日。私に顎くんの時間を頂戴」
「あぁ、良いよ」
「良かった。じゃあ……また、明日」
そう言って彼女はRINGへと戻ってしまうが、俺はその後、自分が何を言ったのか遅れて理解した。
「……やっちまった」
今更、後悔してもすでに時遅し。
これでやっぱ無しとはできない。やったら椎名さんにどつかれて終わる。
だが、もうやることは変わらないのだ。
俺は、彼女たちの為にこの命を使うと決めた。なら、あいつ――弟――が俺の前に立ち塞がるというのなら、俺は躊躇いなく殺すだろう。
例え、俺が罪人になるとしても。