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陽務瑠美は恋愛というものに関わったことがない。精々小学生の時の一目惚れだが、それも1ヶ月も経つ頃には消え失せていた。だが、運命の出会いとは必ずしも恋に関係があるものとは限らない。
その出会いは中学生になって間もない頃に訪れた。コンビニで偶然目に入った、一冊の雑誌。表紙を飾っているのは結構な頻度でテレビでも見かける、今をときめくスーパーカリスマモデル………この瞬間こそが陽務瑠美の人生の分岐点、彼女にとっての光との邂逅であり、邪教徒への第一歩だった。
少々話が逸れたが、重要なのは陽務瑠美がそのファンとなったという事実。ファンとは、崇めるべき対象の行動や言動、仕草から目線の動きまで観察する生き物であり、気づけば崇拝する対象の癖や能力の無意識のうちに身につけていることもある。そして、それは陽務瑠美も例外ではなく……
要約すると彼女は鈍感ではないということだ。
そしてそんな彼女が昨夜見た、親友の表情。その原因は恐らく兄。親友のあんな表情、瑠美は今まで見たことがなく、更に言えばその表情は誰にでも向けるものではないもので、間違いなく瑠美の親友は…隠岐紅音は、兄に恋をしている。
正直、妹の立場としては複雑すぎる心境だが、それは親友の恋を応援しない理由にはならない。
しかし、恋愛経験が無いに等しい自分が力不足なのもまた事実。
ならばどうするのか。頼るのだ。そういう方面でも的確なアドバイスをほぼ確実にいただけるであろう、"完璧"な存在に………
あれから家に帰ってきて、気づけば秋津茜との約束の時間が近づいていた。というか、帰ったときの瑠美の様子が変だった気がするけど大丈夫だろうか?こう、なんというか危ういオーラを感じたしなんだか嫌な予感がするんだが…
「っと」
それはさておき約束の時間5分前だ。一応年上だしリアルで会った以上先にログインしておいた方がいい気がするので無印を一本キメてログインする。
「んー、便Pにログインするのは久しぶりだな。」
辺りを少し見回してみたけど秋津…ドラゴンフライはまだログインしていないだな。それなら間隔が鈍ってるだろうし、少しだけバク技のウォーミングアップでもと思っていると
「あ、サンラクさん!えっと、さっきぶりですね!」
と思っていたらちょうどドラゴンフライが目の前にログインしてきた。
「お、おうそうだな」
なんというか、いつもの秋津茜の様子と違う雰囲気なせいか、こっちまでどもってしまう。
ええい!とにかく便Pだ便P!
「そういえば、今日は何するんだ?」
「えっと、そうですね、今日はサンラクさんとまた対戦したくてゲームにお誘いしました!」
対戦か、ドラゴンフライとは初対面の時以来だし、ここはあれからどれ程成長したのか見せてもらおうか。こっちは練習不足だが、致命的ってほどじゃないしちょうどいいハンデだろう。
「おーけー。じゃあ早速やるか?」
「はい!よろしくお願いします!」
「もちろんルールは…」
「バーグトゥードで!!」
1試合目
ハンデと言った以上言い訳をするつもりはないが突進からの咄嗟のヨーヨーが中途半端にしか発動せず、初手で大ダメージを食らって敗北。
2試合目
慎重に技の感覚を取り戻していって勝利。
3試合目
相手のトドメのゲージ技を自分のドッペルゲンガーを盾にして防ぎ、カウンターを決めて勝利。
4試合目
バグ技を細かいタイミングで使えるようになってきており、居合フィストで相手の攻撃を完封しつつ勝利。
5試合目6試合目7試合目8試合目……………
最終的な戦績は17勝4敗だった。久しぶりとはいえ割とガチでやったんだが結構負けたな…普通にドラゴンフライの成長がエグかった。ゲージ技を使いすぎなところもあったが、最後の方になるにつれそれも減っていって的確にバグ技を発動してきたからな…
「はぁ、、はぁ、、はぁ、、やっぱりサンラクさんは、、強いですね、、」
「いやいや、普通に強かったぞ。多分このゲームでTOP5に入るぐらい」
「本当ですか!?やったぁ!嬉しいです!!」
「俺が言うのもなんだが、よかったな」
「はい!!」
満面の笑みで返事をするその姿に、少し気分が和む。うーん、今まで同じような姿見てもこんなことなかったんだけどな…?やっぱり外道共と長く一緒にいると、心が侵食されるのかもな。あぶねぇあぶねぇ。
と、まぁ対戦という一応の目的は果たした訳だし解散することになり
「サンラクさん!」
「ん?」
「今度また一緒にゲームしませんか?」
「おぉ、いいぞ」
「〜〜!!やったぁ!!」
その喜んでる姿を改めて見て、胸が温かくなるなんともいえない気持ちに襲われる。少なくとも外道共相手だと絶対に感じられない気持ちだな。あいつらすぐ文句垂れるし。
「サンラクさん!もし今度リアルで会う機会があったら、ちゃんとした名前。呼んでくださいね?」
「…っ、あーわかった」
顔がカーッと熱くなる感覚がする。心臓もうるさい。
マジでなんなんだ………?
「はぁ…」
楽朗さんとのゲームを終えて、ログアウトした私は考える。
本当に何なんだろう。この感情は。ずっと、心臓がうるさくて、落ち着くことができない。瑠美ちゃんに聞いたら何かわかるかな…?
ぶっちゃけ展開をどうしていくか迷ってるんですけど、本作はゆっくりなペース(投稿頻度的な意味ではなく)で進んでいけたらなと思っているのでもしかしたらそこそこ長編になるかもしれません。