今日は紅音がうちに泊まりに来る日だ。現在時刻は11時。瑠美いわく紅音は昼頃に到着するらしいので俺は昼飯を作って待機している。因みにメニューは瑠美に聞いても詳しい好みまではわからなかったのでステーキにした。この家に訪問する人間は滅多にいないというのもあるが、せっかくのお泊り会なのだし2人には少しでも贅沢なもので楽しんでほしいという魂胆ゆえのメニューだ。
というわけでまぁ付け合わせ作りや肉への味付けを終わらせ、そろそろ到着すると瑠美から伝えられたためいよいよ肉を焼いていると、半分くらい焼き切ったところでピンポーンと家のチャイムがなった。
「瑠美ー」
「わかってるー」
肉を焼いているため手が離せない俺の代わりに瑠美が1人で玄関へと向かう。
「お邪魔します!」
「はいいらっしゃ…どうしたのその格好!」
「えへへ…部活で忙しくて中々着れなかったお母さんが買ってくれた服着てきたんだ!」
「かわいい!!凄い似合ってるよ紅音!」
「本当!?やったぁ!…………あ」
「ん?どうしたの?」
「そ、その…」
今も恐らくお肉を焼いているのだろう、ジュージューと肉を焼いている音と香ばしい香りが玄関にまで届いている。そしてそのお肉を焼いているであろう方向に視線をちらっと向けた紅音に対して察した私は
「いやぁ、それにしても本当に似合ってるよね!紅音にその服が似合ってないなんて思う人なんかどこにもいないと思うくらいだよ!」
と紅音に対するメンタルカバーを図る。実際紅音の格好は本当に似合っているし、兄も絶対に惹かれるはずである。
「そうかな…うん!ありがとう!」
少し不安そうだったあかねの表情がぱっと晴れる。
…本当にお兄ちゃんにはもったいなすぎると思う……
服…か。思えば前回来たときも学校帰りだったこともあって制服だったし、紅音の私服を見るのは今回が初めてだな…うん。 おっと焦げる。
というか盗み聞きをするつもりはなくとも会話が聞こえてくる距離だったとはいえ、途中で紅音が小声になったのが妙に気になる…もしかして俺の今の格好がダサいという話だろうか?でも下が黒の短パンで上が白のTシャツ。無難だしそもそも玄関からリビングへの扉は空いていなかったから見えるはずがない。……なぜか無性に気になる。 おっと焦げ、、あ
しっかり肉の内一枚の片面が黒焦げになっている。これは俺の分だな。
ガチャ
「お、お邪魔します!」
肉を焼く作業を再開していると、リビングの扉が開かれた音がしたため手を動かしつつ首だけを後ろにやると、そこには真っ白なワンピースに身を包み、可愛らしいベージュのショルダーバッグを肩にかけている紅音がいた。
「…ッッ!」
紅音は少し照れくさそうにしながら
「そ、その…どうでしょうか、この服…」
なんてことを聞いてきた。
「………………あーその、とても、似合っていると思う」
あークソ!服のことなんて全然わからねぇから上手く褒めれねぇ!
だがそんな俺の微妙な感想でも紅音は目を輝かせて嬉しそうにする。
「〜〜〜やったぁ!!嬉しいです楽郎さん!!」
「お、おう」
それにしても白いワンピースなら肉はまずかっただろうか。食べる時に少なくともかなり服に気を使ってしまいそうだ。……ん?肉?
ジュァァァーーーー(明らかに肉が焦げている音)
「おわぁ!やっべぇ!」
「楽郎さん!?」
振り向いた時点で紅音の服のことでいっぱいいっぱいになって手を動かすの忘れてた!
「紅音!今日の昼はステーキなんだけど大丈夫か?」
慌てて肉をひっくり返しながら聞く。
「あ、えっと、はい!お肉は好きです!」
そういうことじゃなくてだな…
そんなこんなで、グダグダな状態で1泊2日のお泊まり会が始まった。