異世界で、凡夫と決別して最強を目指す!   作:六畳仙人(ハーメルン)

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修行へ……

 

 

 

 人類圏歴3013年6月21日、三週目の(ケラウノス)の日。

 

 母が用意してくれた朝食を終え、アメジアは家を出た。

 

 「行ってらっしゃい」と穏やかな笑顔で見送る母。その姿は、いつものように穏やかで、どこにも不安や苦しみの影もない。

 

 確かに、昨日、あの時、母は血まみれで倒れ、死の淵に立たされていたはずなのに……今の母は変わらず元気そのものだった。

 

 家の外へ出ると、いつもの村の光景が広がっていた。太陽を浴びて輝く小麦畑、笑顔で挨拶を交わす村人たち。どれも恐怖や不安とは無縁だった。

 

(まるで何もなかったみたいだ……)

 

 胸の奥に小さな違和感が芽生える。それでも、アメジアは知っている。この穏やかな村の裏に、確かにあの惨劇が存在していたことを。

 

 村を襲った魔人族。

 空から降り注いだ隕石の嵐。

 そして、血まみれで倒れる母の姿———

 

 それらは夢でも幻でもなかった。

 

(あの日、絶望を目の当たりにした。ただ立ちすくむことしかできなかった。だけど、ジアが規格外の力を使って、守ってくれた……)

 

 ジアの力が、それらをすべてなかったことにした。そして、時間を巻き戻して、全てを未然に防いでくれた。

 

「ありがとう、ジア……」

 

 自然と口から出た言葉。それは心からの感謝だった。

 

———当然のことをしたまでだ。だが感謝の気持ちがあるなら、一刻も早く強くなれ。凡夫と決別しろ。お前自身が俺を超え、真の最強へと至って俺の代わりに贖罪しろ。それこそが、俺にとって最大の恩返しだ。

 

 脳裏に響くジアの声は冷たく鋭い。だが、その言葉の奥には期待が込められている気がした。

 

「わかった。一刻も早く強くなってみせるよ」

 

 アメジアは頷き、村外れへと足を向けた。

 

 強くなるために。ジアとの修行に向かうために。

 

 いつか自分も凡夫から脱却して、ジアのようにその力で誰かを助けてあげられるように。

 

 

 

 

 

 

 

———よし、着いたな。準備はいいか?今からお前を修行場へ送る。

 

 村外れに着くと、再びジアの声が脳内に直接響いた。

 

———座標指定……

 

 その瞬間、アメジアの身体は虹色の光に包まれた。眩しいほどの光が視界を満たし、足元の感覚が消える。空気が震え、周囲の景色が揺らぐ。この光——これはジアが発動した魔法、次元を越えて移動する魔法だとアメジアには直感的に分かった。

 

———次元跳躍術式(ビフレスト・ジャンプ)——発動。

 

 ジアが呟くと同時に、景色が一瞬で切り替わる。目を開けていたのか閉じていたのかすら分からないほど、一瞬の出来事だった。

 

 アメジアの目に映ったのは、荒涼とした大地だった。見渡す限り広がる荒野は、どこまでも乾ききっていて、風が砂埃を巻き上げている。

 

「ここは?」

 

———ここは人々に安寧を約束している結界の外。人類圏外の荒地だ。未来で俺がよく使っていた派手に魔法を使っても問題がない修行場でもある。今日から毎日、半年後の神聖騎士学園(ケイロン)の入学試験までの間ここで修行をするぞ。

 

 ジアの声が響く。その声からはこの地に対する懐かしが感じられた。

 

———修行は実戦中心で行く。ほら、ちょうど相手も来た。

 

 その言葉に身構えると、次の瞬間、空気が一変した。

 

 刺すような気配——それは明らかに殺意を伴ったものだった。

 

 アメジアの全身がざわついた。

 

 反射的に視線を気配がする方へと向けた。

 

 その視線の先にいたのは———

 

 砂煙を巻き上げながら迫り来る漆黒の巨体。

 

 巨大な蜥蜴のような四足歩行の異形の怪物が、牙を剥き出しにしてこちらに向かって突進してきていた。

 

 それも一匹ではない。次々と現れる巨獣たちが、群れを成してアメジアに向かって突進してくる。

 

 彼らの全身を覆う鱗は陽光を浴びて鈍く光り、その瞳には憎しみと殺意が渦巻いているように見えた。

 

———今からお前には、ここに押し寄せてくる魔獣たちと戦ってもらう。

 

 この世界の人々から魔獣と呼ばれ忌み嫌われている、魔人族に使役されている尖兵の姿がそこにあった。

 

———まずは、現状の把握だ。この世界での十三年間で積み上げてきたものを……今のお前の実力を俺に見せてみろ。

 

 

 

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