異世界で、凡夫と決別して最強を目指す!   作:六畳仙人(ハーメルン)

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魔獣討伐

 

 

 

 この異世界には、ただ一つの巨大な大陸がある。

 

 その西側にある大陸全体の三分の一を占める領域を、この世界の人々は「人類圏」と呼んでいる。

 

 海に面していない内陸にあるこの領域は強力な結界によって守られており、その結界は太古の昔、太陽神と女神が力を合わせて築き上げたものだという。

 

 今現在、この地には導かれた人間の子孫とごく少数の人間との共存を選んだ亜人族、並びにその子孫たちが暮らしている。

 

 結界に守られたこの人類圏の内部は、平和と安寧が約束された世界だ。

 

 結界が外界との繋がりを断ち、侵入者を寄せ付けないからだ。

 

 しかし、その外側に広がる世界は人類圏内とは事情がまったく異なる。

 

 結界の外——遥か昔に人類が放棄した大陸の三分の二以上を占めるその広大な地域の詳細は、今ではほとんど分かっていない。

 

 仮説として、外界では今も亜人族(ネフィリム)魔人族(グリゴリアス)の争いが続いているという推測や、既に魔人族によって外界に取り残された人間と亜人族は既に滅ぼされているという推測がある程度だ。

 

 ちなみに人類圏誕生から三千年以上……人類圏の外界からの魔人族以外の種族からの接触は過去一度もない。

 

 そんな人間以外の種族が絶滅した、という噂さえ流れる未知と恐怖の世界。それが「人類圏外」と呼ばれる場所なのだ。

 

 同時に、そこは魔人族と彼らに従う魔獣たちが跋扈する恐怖の領域でもある。

 

 一歩でもその地に踏み出せば、確実に跋扈している魔獣の群れに、運が悪ければ魔人族に補足されてしまうだろう。

 

 ゆえに許可が下りた騎士(パラディン)神聖騎士(パラディオン)でなければ、人類圏外に足を踏み入れることは許されていない。

 

 いや、そもそも、正規の方法以外で内側からも神々の結界を超えることは不可能だ。許可を得て、一時的な結界の一部を解除してもらわなければ、外界には出られない。

 

 神々の力を超えた存在の魔法でない限り、人類圏の結界は超えられないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

【グルル……】

 

 低く唸る声が荒野に響く。それは、地鳴りのように空気を震わせた。

 

(こいつらが……)

 

 醜悪な四足歩行の黒い獣たちが群れを成して立ち塞がっている。どれも巨大な爬虫類を思わせる不気味な姿だ。

 

 総数十二匹。

 

 そのうちの八体は、五メートルほどの大きさ。

 

 しなやかな四肢に強靭な体躯を持つ一つ首の個体だ。

 

 そして、次に目を引くのは二つの首を持つ十メートル級の巨獣たちが三匹。

 

 見るだけで圧迫感を覚える異様な存在感だ。

 

 だが、それらすら霞むような威圧感を放つ巨影が、その群れの中心にいた。

 

 全長およそ十五メートル、三つの首を持つ巨大な個体。

 

 それがこの群れを統率しているボスであることは、一目で分かった。

 

 三つの頭がまるで独立した生き物のように動き、それぞれが周囲を監視するように首を巡らせている。

 

 その姿は圧倒的な力を誇示するかのようだった。

 

(……気持ち悪い)

 

 凡夫と決別する修行のために訪れた人類圏外の荒野。

 ジアの魔法で送られたその地で出会った異形たちの姿に、アメジアは心の奥底から湧き上がる嫌悪感を覚えた。

 

 その姿が、アメジアの想像を遥かに超えて遥かに悍ましく醜悪だったからだ。

 

———魔獣はただの生き物じゃない。

 

 脳裏にジアの声が響く。

 

———魔獣は魔人族の創造主である魔神の細胞を使った生物兵器だ。

 

 ジアの言葉を聞いて、アメジアは魔獣たちのことを改めて観察した。

 

(ただの動物じゃない……生物兵器みたいなもの。命を奪うためだけに作られた存在……か)

 

 その姿は、どこか恐竜や竜を思わせるが、ロマンや神秘など微塵も感じられない。あるのは嫌悪感を感じさせる醜悪さと圧倒的な威圧感だけだった。アメジアはごくりと息を呑み、身構える。

 

———魔獣の強さは、首の数でおおよそ見分けがつく。

 

「首の数?」

 

———そうだ。首が増えるほどに力は 魔獣の力は増し、能力の凶悪さも増す。

 

 反射的にアメジアが脳内で問いかけると、ジアは待ってましたとばかりに一つ一つ丁寧に説明を始めた。

 

 魔獣は次のように分類される。

 

一つ首:《スピンクス》

———最も数が多い個体。主に物理攻撃が主体だが、動きが俊敏で力も強い。魔力生成器官を一つ搭載。

 

二つ首:《オルトロス》

———スピンクスの進化形。双頭の魔獣で、口から魔力のビームを放つ能力を持つ。魔力生成器官を二つ搭載。

 

三つ首:《ケルベロス》

———オルトロスからさらに進化した個体。三つの首が異なる方向を警戒し、魔力による防御障壁を展開しているため、非常に厄介。魔力生成器官を三つ搭載。

 

四つ首:《ゴルゴン》

———ケルベロスが進化した個体。障壁の強度も攻撃の殺傷力も桁違い。さらに、再生能力を備えているため討伐は非常に困難。魔力生成器官を四つ搭載。

 

五つ首以上:《ヒュドラ》

———現時点で最も強力とされる魔獣だ。五つ以上の長い首を持つ珍しい個体の総称。確認されている最大のものは九つ首。その強さは次元が違う。首の数だけ特別強化された魔力生成器官を搭載。過去には他の魔獣を産む個体がいたという報告がある。確認された個体ごとに仮称が付けられる。

 

翼付き:《ワイバーン》

———翼を持つ特殊な個体。空を飛ぶ機動力を持ち、他の魔獣たちとは一線を画す戦闘力を持つ。滅多に遭遇しないが、現れた場合は最優先で対処すべき危険な存在。

 

 以上が魔獣という魔人族の尖兵についてだった。

 

———世界静止。よし、まずは一つ首とサシで戦え。

 

 説明を終えると、早速ジアが魔法で時を止めた。

 時が止まり、世界が完全に静止する。

 こちらに向かって来ていた魔獣の群れの動きも完全に止まった。

 

 ただ、一匹だけあえて時を止められていなかった。

 

 しかし、その一体の一つ首の魔獣(スピンクス)は最初こそ戸惑う様子を見せたが、すぐに獲物を狩ることを優先したのか、視線をアメジアのいる方へと定めた。

 

 そして、時を止められて動かなくなった群れを離れ、単独で襲いかかってきた。

 

———構えろ。チュートリアルを始めるぞ。

 

「……ッ!」

 

 アメジアにとっての初めての実戦が始まった。

 

 

 

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