Bloody Arriver   作:Ziz555

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 ジカンカカッチャッタ……

 ヘヴィキャリバー編のこの話書くのにかなり時間をかけてしまいました。
 更新が遅れて面目次第もございません……。

 スズミメインヒロイン小説として、数話をかけてヘヴィキャリバー編をおこないますので、是非楽しんでいただければと思います!




外伝:魔法少女ヘヴィ・キャリバー編1

 

「お久しぶりです!タカツキさん!!」

「おー。元気してたか、ちび助」

「ちび助ではありません!今の私は、テルミット・ピンクです!!」

「そうかそうかぁ。よろしくなぁ、テルミット・ちび助」

「なんか違いますよ!?」

 

 明るい音楽と、楽しげな喧騒が響く、気持ちがいい晴れの日。その場にいる人々は日常から切り離され、夢と遊びに満ちた平和を満喫していた。

 

 ここは、トリニティ自治区とゲヘナ自治区の境界の上にある遊園地――ボーダーランド遊園地。子供達に夢を、大人に遊びを提供するレジャー施設だ。

 

 そんなボーダーランド遊園地に、とある学生の一団が訪れていた。

 

 週末の遊園地に集まる学生たち。それだけを聞けば、学生らしく遊びに来たようにも見えるだろう。だが、そんな彼女たちには、隠された使命がある。

 

 ボーダーランド遊園地の陰に隠れて行われるであろう悪事――、“ジャブジャブヘルメット団”の企みを阻止する事。それが彼女達の目的であった。

 

 集まったメンバーのうちの一人。スズミは、予想外の人員である唯一の少年――タカツキへと視線を向ける。

 

「まさか、タカツキが現場に来るとは……」

「本来なら“先生”が来るところなんだが……あの人はちと忙しいからな。お株が俺に回ってきたんだよ」

『“シャーレの支援”と言うのが、今回正義実現委員会から行える最大限の助力となります。……“先生”にお越しいただけなかったのは、少々想定外ですが』

 

 通信機の向こうから、一人の少女の声が聞こえた。彼女の名前は、静山マシロ。正義実現委員会に所属する一年生であり、今回の騒動における“正義実現委員会”の実働隊を任されている狙撃手でもある。

 彼女は現在、ボーダーランド遊園地のトリニティ自治区区画を一望できる場所に陣取っており――、今回の騒動を収めるため、タカツキ達に協力する事となっていた。

 そんな彼女の、“先生”が不在である事を懸念するような声音に対して……タカツキはにやりと悪辣な笑みを浮かべた。

 

「なんだァ?“トリニティの吸血鬼”じゃァ、信用ならない。ッてか?」

『い、いえ!そういう訳ではなく――』

「ケケケッ。冗談だよ」

「タカツキ。やめてください、マシロさんが困っていますよ」

「あいよ。悪かったな」

『えっ……と。だ、大丈夫……です、よ?』

 

 マシロは“トリニティの吸血鬼”と呼ばれている彼の人物像を知っているわけではないが、エデン条約の折にその存在の危険性を聞いていた。しかし、事実としてそんな彼が目の前で話す姿は想像していたよりずっと穏やかであり、“他人を食い物にする化け物”と言うには、些かその空間に馴染みすぎている。

 

『……スズミさん』

「はい?どうかしましたか?」

『お疲れ様です』

「えっ?ま、まだ何もしていませんよ……?」

「ケケケ」

 

 “トリニティの吸血鬼”の性格の悪さだけは本物だった。

 

「んで。それは置いておくとしてだ」

「置いておくんですね」

 

 露骨な話題のすり替えを隠そうともしないタカツキに、スズミがあきれたような視線を送っていると――そのまま彼と視線が交差した。

 何事だろうか、とスズミが思案をした瞬間、タカツキの口が開かれる。

 

「なんで魔法少女?」

 

 ……今更のことではあるのだが。この場にいるメンバーのうち、自警団の二人――守月スズミと宇沢レイサの二人だ――は、普段とは異なる衣装を身に纏っていた。

 至る所にフリルがあしらわれ、その手には特徴的な装飾のあしらわれた、玩具のような杖――魔法のステッキとでも言うべきだろうか――が握られている。

 

『自警団の制服……とかですか?』

「ンな訳ねぇだろ。俺も自警団に協力してたことはあるが、こんな制服聞いたことねェよ」

『で、ですよね……?』

「なら――」

 

 

 

「それは、私達がこの遊園地に潜む悪を倒しに来た、正義の魔法少女だからです!」

 

 

 

 タカツキたちの疑問に答えたのは、紫色の衣装に身を包んだ宇沢レイサだ。……ただし。ズビシィ!!と、音が聞こえてきそうなほどに勢いよく決めポーズをしながら、だが。

 

「正義の魔法少女ォ?」

「はい!私達は“魔法少女 ヘヴィ・キャリバー”のテルミットホワイトと、テルミット・ピンクです!」

「…………」

 

 ノリノリで目を輝かせているレイサに正常な答えを期待するのを諦めたタカツキが、そのまま視線を横にずらす。

 その先には――もちろん、レイサのものに酷似した衣装を纏うスズミがいた。

 

「潜入捜査の為です……。今日のボーダーランド遊園地では、ゲリラ的に様々な魔法少女ショーが行われるらしく……、それに紛れるための衣装と言いますか」

「あァ。そういう」

 

 タカツキは、ぽん。と手を打った。

 

 というのも。つい先日、タカツキはスズミに“魔法少女衣装”を見せてもらう機会があり、その際に“複雑な事情がある”。という話を聞いていたからだ。

 要領を得ない話を聞いていたタカツキとしては、“まあなんとなくそんな用事があるのだろう”程度で覚えていたのだが、潜入捜査の為に魔法少女衣装を身に纏うというのは、確かに事情が複雑な要項を孕んでいた。

 

「んで……。今日はしっかり着てきてるな」

「……?」

 

 まるで自分の身なりをチェックするような視線を向けられたスズミは、静かに首を傾げる。はて、何か不都合でもあったのだろうか。なんて、そんな事を考えて――。

 

「……ッ!?」

 

 ばっと、胸元を隠す。……スズミの魔法少女衣装は、胸元から首にかけてが大きく開けている、バニースーツのような意匠となっている為、スズミはその部分を隠すために肌色のインナーを下に着ている。

 

 だが。元々の衣装に、そのインナーは含まれていない。

 

「タカツキ」

「悪かったって」

 

 スズミがインナーをつけるにあたってあった一悶着を思い出し、頬を赤く染めたまま、彼女は恨めしげにタカツキを見た。そんなスズミの仕草に苦笑を浮かべたタカツキは、素直に謝罪をする。彼も内心、ホッとしていた。

 

「……なんにしても、顔合わせはこれで十分でしょう。意図も伝えましたし、早速パトロールに……」

「あぁ。ちょい待ち。まだ一人来てねェんだ」

「一人?」

『シミコさんの事ですか?』

「シミコ?いや、それとは別人だな」

 

 タカツキの申告に、通信先のマシロ含めてその場の全員が首を傾げた。

 メンバー不足、と言う意味では確かに、今回の協力者として参加しているはずの円堂シミコ――トリニティの図書委員の一人であり、今回の件で自警団に協力を申し出てくれている――が欠けているが、彼女からは“機を見て合流する”との旨を受けている。

 となると、この場合における“後一人”が誰になるというのか、その答えが分からずにいると――。

 

「ヒロ君、おまたせー」

 

 不意に声がかかり、皆が一斉に振り返る。

 

 鈴の音のようなその声は、自然と周囲の注目を集め、彼女の纏う白いワンピースは、集めた視線を捕らえて離さない。

 大きな帽子を頭にかぶり、穢れを知らない真っ白なワンピースを纏う少女は、幻想の世界から飛び出してきたかのような儚さと美しさを兼ね備える。

 紅く輝くその瞳が、一人の少年をそこに映していた。

 

「どう?似合うかな?」

 

 少女はくるりとその場で回る。合わせてふわりと、ワンピースが花弁のように舞った。

 

「似合ってるよ、アツコ」

「ふふっ……。ありがと、ヒロ君」

 

 そんな二人のやりとりに、周囲の人は呆気にとられ、口をぽかんと開けていた。

 

「アツコさん……何故ここに……?」

「あ、やっほー、スズミ。その服、可愛いね」

「えっ。あ、はい。ありがとうございます……ではなく!」

「?」

 

 スズミの話を聞きながらも、するりとアツコがタカツキの横を陣取り、彼の左手に腕を絡める。

 

「どうしたの?」

「なんでそこに居るんですか」

「……ヒロ君とデートしに来たからかな?」

「………………」

「落ち着けスズミ。いつものだ」

 

 なんとも言い難い追及の視線を向けられたタカツキは、諦めの表情で首を振る。アツコの冗談と我儘は、今に始まったことではない。

 “らしくない”素振りを見せたスズミに、アツコはくすくすと笑みをこぼす。

 

「遊園地で仕事するって聞いて。ヒロ君一人だと目立つと思ったから、私もついていくことにしたんだ。ほら、こんな厳つくて悪人面の男の人が一人でいたら……みんな怖がるでしょ?」

「オイ」

「……なるほど。それは確かにそうですね」

「オイ……!」

 

 タカツキの眉間にシワが寄り、それを偶然目にした子供が、ビクリとその体を震わせ――瞳を潤ませる。

 直後、それに気づいたアツコが満面の笑みを浮かべ、ひらひらと手を振り、子供の意識を自分へと向けさせた。……すると、間一髪。子供が泣き出す前に笑顔に戻り、アツコへひらひらと手を振ってから去っていった。

 

「ね?」

「……………………」

 

 腕に手を絡ませながら、上目遣いで自分を見上げるアツコの様子に、タカツキは何の言葉も出せなかった。

 

「アツコさんがいるなら安心ですね」

「……おい」

「うーん……これなら、タカツキさんにも怪人のヴァンパイア・キッドの役割をお願いするべきだったでしょうか……」

「おい」

「え。楽しそう……ねぇねぇ、なにか私に似合いそうなの、あるかな?」

「おい…………!!」

 

 タカツキを置き去りにして進んでゆく話に、彼は何を言い返す事も出来ず、しかし、遺憾の意のみを示す。

 グダグダと、わいわいと。緊張感を感じさせないやりとりを続ける面々に、通信機の向こう側で一人、マシロが大きなため息をついた。

 

 ――このメンバーで、本当に大丈夫なのだろうか。

 

 それは至極真っ当な疑念であった。





 原作におけるヘヴィキャリバー編のタイミングは最終編後かつオラトリオ前だとは思っていますが、今回はBlAr基準で現在の“エデン4章後、パヴァーヌ2前”のタイミングとさせていただきます。
 というのも、そもそもヘヴィキャリバー編と拙作ではスズミのメンタルに大きな差がある為、原作通りにどのみちならないんですね。
 ヘヴィキャリバー編を既読の方はお気づきかと思いますが、“スズミの正義”という問いかけに対して、この世界にはタカツキという肯定者がいるので、その辺りの話がもう終わってしまってるのが大きくて……(Ep.22偽善者参照)。
 ですが、ヘヴィキャリバー編で絡んだとある要素がこの作品の設定と言い親和性を出してくれていたので、そこをメインに話を進めようと思います。
 「なんだろう?」と思った方は、「Ep.12 たとえ誰であろうとも」を読み返してみてください。ちらっととある要素が出ていますので(本当にちらっと)、もしかしたら楽しめるかもしれません。

 では、次回の更新をお待ち下さい。
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