※やりたい放題注意報!!
この先、ハチャメチャが押し寄せてきます。
「バンプくん、どっちをやるの?……って、聞くまでもないか」
「分かってんなら聞くな、クソウィッチ」
拳を合わせた二人は、それぞれの標的を定め、歩き出した。
「コレで二回目?……アリスちゃん含めたら三回目?まあ、どっちでもいいか」
「どっちにしてもやる事は変わらねェだろ。肩並べてる訳でもねぇ」
「それもそうだね。……今回は先に倒れるの、ナシだからね」
「テメェこそな」
タカツキはアビ・エシュフを纏うトキへ。
ミカはそのままアバンギャルドくんへ。
背中合わせの戦いの場へ向かう。
「あ、そーだ。これ、勝手に使ってもいいから、ちょっと預かってて」
「あン?」
数歩離れた辺りで、ミカは手に持っていた
投げ渡されたタカツキは、半身だけ振り返り、渡された銃を左手で受け取った。
「私が使うと壊れちゃうから、……壊さないでよ?」
「善処する」
そのやり取りを最後に、ミカはタカツキを見送るでもなく、目の前の敵へと向き直った。
「自ら武器を手放すなんて。武器さえあれば彼がトキを超えられると思っているの?」
「あはは、それってジョーク?鉄面皮でも、案外気の利いた事言えるじゃんね」
「……本心よ」
自らを護る盾であり、敵を屠る剣でもある武器を手放したミカに対して、リオが不審げな視線を向ける。
唯一の武器を手放したミカに、隠し玉になるような武装がある様には見られない。完全な
「ねぇ。リオ……だっけ」
「なにかしら」
「貴女、“魔王”って見たことある?」
「……それは、AL-1Sのことを指しているのかしら?」
「あっははは。本当にジョークが上手いんだから!」
ミカは心底楽しそうに腹を抱えて笑い声を上げる。……それがリオには、理解できない。
「何を言いたいの?」
「別に。……あんな小さくて、可愛い女の子が魔王に見えるなんて……ずいぶんぬくぬくとした人生を送ってきたんだなー。って」
「……私は常に、考えられる限りの策を講じて、できる限りの行動をしているだけよ」
「だから。それが“ぬるい”んだって」
「…………」
ミカの視線が――
「さっき、私が
それまでの笑みとは異なる気配をにじませて。
「あれさ。私が“本気”を出しちゃうとさすがに壊れちゃうんだよね。だから、壊したくなくってさ」
「……壊れる?」
「そう。……触れるものすべて、ブッ壊しちゃうの」
静かな物言いとは裏腹な、荒い言葉使い。
「だから……あなたに見せてあげるよ」
そうして、“魔女”は――
「本物の、“魔女”……ううん――」
「――“魔王”の恐怖。ってヤツ☆」
――“魔王”は、嗤う。
「はぁぁぁぁぁぁーーッ!!!!」
ミカが全身へ力を込めた瞬間。彼女を中心としてビリビリと空気が震える。
彼女の全身を迸る“神秘”は、淡い輝きから、みるみるうちに激しいオーラの様なエネルギーへと変化してゆく。
同時に、彼女のヘイローが一際大きな輝きを放ち、彼女の髪は淡い桜色から――深紅に染まってゆく。
「この、反応は……ッ!?」
目の前で行われる異変――いや、“変身”に、リオは大きく目を見開いた。
「――私の事、調べてるって言ってたけど。……一番大事なところを、調べ損ねてたみたいだね」
全身に凄まじい“神秘”を纏い、その輝きを放ちながら、聖園ミカは不敵な笑みをリオへと浮かべた。
「これが私の“
調月リオは、今まで見たこともない、比類する事象すら知り得ぬその超常現象を前に――しかし、その冷静さを失わなかった。
「……まさか、そこまで意図的に神秘をコントロールできる存在がいるとは思わなかったわ」
「へぇ」
聖園ミカの身体に現れた変化を見て、リオは“それが彼女の神秘のコントロールによるもの”であるという事を一目で見抜く。
キヴォトスにおいて“神秘”とは、その存在は確認されていながらも、法則性や技術性に一貫性が存在せず、“ただ、なんとなく使う事ができる”程度のものでしかない。
だが、それらの影響で彼女達の用いる弾丸は通常と比べ物にならない威力や速度を実現していたり、実力者であるほど、その“神秘”は強力であると言うのが一般的に論じられている“神秘”に対する概論だ。
「銃や武装に神秘を込めるのではなく、肉体そのものの活性。……貴女は。神秘を事象の強化ではなく、“それそのものが物理的な干渉力を持つエネルギー”にまで練り上げられるのね」
「わーお。びっくり、一目でそこまでわかるんだ」
「ただの推論よ。“本気を出すと銃が壊れてしまう”というのも、あなたのそのエネルギー量に耐えられる銃器なんて、今のキヴォトスには存在しないでしょうから」
「大正解。クイズだったら拍手喝采って所だね」
パチパチとミカが両手を静かに叩く。
「じゃあ。第二問、行ってみよっか」
パチン。と一際大きく柏手を打ち――
――一瞬にして姿を消した。
「……ッ!アバンギャルドくん!!」
即座にリオは、アバンギャルドくんへと防御指令を出す。
その瞬間、既にミカはアバンギャルドくんの前へと移動を終えていた。
「“魔王”を倒すには……どうすればいいでしょう、か?」
無造作に振り上げられるミカの拳。
アバンギャルド君は、その半身を覆えるほどの盾を構える。
それは、調月リオが設計した究極の盾。黄金比をベースとした特殊な表面設計を施された特殊防楯は、その性能をアバンギャルドくんの超高性能計算能力でもって的確に、敵の攻撃に合わせた適切な角度で攻撃を受ける事で、文字通り“傷一つ無く”全てを受け流すことの出来る鉄壁の防御機能を備えている。
計算上、800mm以上の鉄板すらぶち抜く超高性能の電磁投射砲ですら無傷で凌げる最強の盾だ。
もっとも――
――“魔王”の前には、そんな物、紙くず同然だが。
凄まじい破砕音と、驚異的な拳圧が突風を巻き起こす。
まるで、枝の先についた落ち葉を、枝ごとへし折るかのように――アバンギャルドくんの構えた盾が、それを支えるアームごと吹き飛ばされた。
「!?」
「脆いッ!!」
驚異的な一撃に、アバンギャルドくんの姿勢制御装置に強烈な負荷がかる。
拳を振り抜いたミカの体は、重力に従ってそのまま地面に落下していくが、着地と同時に膝を折りたたみ、再び跳躍の為の力を蓄えた。
「まずい――!!」
防御の術を失ったアバンギャルドくんが、再びあの一撃を受ければ、その結果は火を見るより明らかだ。
当然、それが分かって対策を取らないほど、リオは油断してはいない。即座に手元のデバイスを操作し、アバンギャルドくんへと特殊な指示を繰り出した。
指示を受けたアバンギャルドくんの脚部装甲の一部が展開し、同時にそこから複数の黒い球体が一斉に放出された。
機雷だ。
「……ッ!!」
それは、着地の反動を活かして跳躍したミカを取り囲むようにして打ち出されていた。
周囲を取り囲むようにして打ち出されたそれらが爆薬であることを察知したミカは、両手を交差し、頭を防御する。
同時に、アバンギャルドくんが後退を開始した。キャタピラが逆回転し、高架路を高速で後退していく。……その最中、残された腕部の一つ、そこに装備されたバズーカ砲をミカへと放つ。
機雷と弾頭が衝突し、衝撃が――連鎖する。
弾ける炸裂音と、連鎖的な爆発がミカの全身を襲った。肌を焼く熱波と、飛び散る破片がミカの全身をつつみ込む。
だが、“スーパーモード”によって引き出されたのは、何も攻撃力だけではない。
この世界における“神秘”の総保有量と言うのは、そのままフィジカルに直結する。
保有する神秘の量や質が高ければ高いほど、本人の攻撃に対する耐性、防御力も当然その分上昇し、肉体的な出力もそれに比例するように上昇するとされている。
当然、元より神秘保有量が桁違いの聖園ミカは、昔からその圧倒的なフィジカルを武器に戦い、勝利を重ねてきた。
そして、“スーパーモード”は、そんな彼女が編み出した一つの進化の形。
通常であれば、己の中に保有する神秘は無意識下のなかでコントロールされており、その“出力”に一定の制限がなされている。
それは、生物として持ちうる本能から来る安全弁でもある。
“神秘”の枯渇は、そのまま生命の危機に直結する。
故に、まかり間違っても、生命維持に支障をきたす程の神秘消費が起こり得ぬよう、“一度に放出される神秘量”には、文字通りの“安全弁”があった。
例えるなら――身体の中のタンクに蓄えられた“神秘”という水。それを取り出すための蛇口のサイズには限界があると言うことだ。
――だが。……もし、そのタンクに、蛇口ではなく。“消火用のホース”を取り付ければ?
「ハァッ!!」
ミカは、己の神秘の放出量を引き上げた。
瞬間、彼女を纏う輝きは、物理的な斥力を持って彼女の身体にまとわりついた熱と鉄片を吹き飛ばす。
爆炎をかき消してその中より現れたミカは、服の端々に煤と焦げを作り、破れたそれを纏いながらも、致命な傷を受けていない。
だが、攻撃を振り払う一瞬は、後退の隙を作るには十分すぎた。
「ちぇっ……!」
拳はすでに、アバンギャルドくんへ届かない。
再びミカは、重力に引かれて地面へと落ちてゆく。
「今よ」
当然、動かぬ的を狙わぬ道理もなく、アバンギャルドくんの全火力が解放された。
放たれる弾丸と弾頭。火線の嵐が襲いかかる。
着地と同時に、ミカは地面を強く蹴る。今度は、跳ぶ為でなく、駆けるため。
ダダダダダダッ!と、コンクリートの地面が爆ぜた、ミカの蹴った路面の舗装が粉砕されて小さく凹む。
大きく蛇行するようにして高架路を駆け抜ける事で、ミカは己へ向けられた火線の嵐をくぐり抜け――再びアバンギャルドくんへと肉薄する。
「“スーパーモード”。……確かに、強烈な力ね」
なおも後退を続けるアバンギャルドくんと、攻撃をかいくぐりながら走り抜けるミカの距離が近づいてゆく。
「けれど――、タネが割れれば。対策は存在するわ」
リオの言葉とともに――突如、ミカの走る高架路が大きく揺れた。
「足場が――!?」
「忘れたのかしら。……
高架路の接続が解除され、ミカの走る道が崩れていく。
「くっ……!!」
アバンギャルドくんへと続く道が、地面へと落ちてゆく。
空を飛ぶような芸当は、今のミカには不可能であり、高架路という道が奪われてしまえば、アバンギャルドくんへと肉薄する手は失われる。
力を込めて、膝を折り曲げる。――跳ぶしかない。
「無駄よ」
しかし、そんな隙を見逃すはずもなく――再び、機雷が飛び上がったミカの目の前へ撃ち出された。
展開、防御、弾頭の衝撃。
爆発。
「くっ……!!!!」
ミカは爆発を受け、後方へと押し返され――、再び、高架路へと着地した。
未だ健在のアバンギャルドくんは前方に。……しかし。
「これで、道はなくなった」
――崩落した高架路が、ミカとアバンギャルドくんの間に、大きな隔たりを作っていた。
「ハァ……ハァ……ハァ……っ」
「随分と苦しそうね」
激しい戦闘による運動で、ミカの呼吸は荒くなっていた。……いや、違う。これは。
「その“スーパーモード”。……まだ未完成、と言う所かしら」
「へぇ……。なんで、そう……思うのかな?」
「今のあなたを見ればわかるわ。……それほどの神秘放出量、そう長く続くはずがない」
「…………」
沈黙するミカ。それは、リオの憶測を否定する事がないと言うことであり――故に、その肯定でもあった。
「銃を捨てたのは、やはり愚策だったようね。武器に神秘を注げないとしても、遠距離の攻撃手段を持たないあなたは、今のアバンギャルドくんへ手出しをすることができない。……でも、こちらは違うわ」
「…………」
「退いても私は構わないのよ?……アナタ達を倒す事は、私の勝利条件には含まれていないもの」
リオにとって、ミカ達は敵ではない。このエリドゥから退けることさえ出来れば、彼女の目的はいずれ達成できる。
そして、一度判明した情報に、二度敗北するほど――調月リオは甘くはない。
「――あーあ」
ミカは、落胆するような声を出した。
「分かってくれた――」
「もう。これはバンプくん相手に取っておきたかったんだけどな」
――聖園ミカが、半身を引いて構えを作る。
「……何をするつもりかしら」
「私さ、こう見えて結構負けず嫌いなの」
バチバチと、再びミカの神秘が高まってゆく。
「無駄よ。もう貴方は勝てないわ」
「スーパーモードだって、バンプくんに勝つ為に考えたんだよね。……でも、それだけじゃやっぱりちょっと足りなかったから」
後へ引いて重ね合わせた彼女の“掌”に、その輝きが集中して行く。
「だからさ」
彼女が構えた掌に集う光が――一際大きく、煌めきを放つ。
「――これが私の、“
地面を蹴って――ミカは再び高く跳び上がる。
桜色の輝きは、その激しさと強さを増し、黄金の輝きを放ち始める。
「――走れ閃光!!」
その姿はまるで。
「――輝け流星!!」
大空に閃く――星の輝き。
「オプロ…………!!!!」
星が。
「メテ……オーーーーラッッッッ!!!!」
落ちる。
「ッ!?!?」
極限まで高められたミカの神秘は、輝く星となり、天より落ちる。
「アバンギャルドくん!!!!」
放たれた光弾に、アバンギャルドくんはありったけの弾丸を放つ。
そして……、そのすべてが、光の前に塵となる。
光弾が――白い機体を貫いた。
光弾の炸裂は激しい爆発を伴い、アバンギャルドくんはその爆風と、内部を貫かれた衝撃が燃料タンクへ引火し――激しい衝撃を伴い、粉々に吹き飛ばされた。
標的の爆散を目視したミカは、両足で地面へ着地すると、ビッと親指を立て。煤だらけの顔に笑みを浮かべた。
「よしッ!楽勝っ♪」
『オプロ・メテオーラ』。
ギリシャ語で“流星の弾丸”という意味の必殺技です。
え?どう見てもアレのアレだって?
いやいやいや、ゲームのミカのも隕石落としてるじゃないですか、ちょっと発生のさせ方が違うだけですって(?)