斬れない物は無い、故に全てを断ち斬る   作:皐月の王

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振るわれる凶刃

処刑の日が来る。柊晴、冬獅郎、桃は四十六室の入口の前まで来ていた。瀞霊廷内では至る所で戦いが繰り広げられているのか戦闘音や霊圧が感じ取れている。

 

「あっちこっちで戦いかよ……しかも死神同士で」

 

「これも何かを狙ってのことなら……早く止めないと不味いな」

 

「でも、どうやって四十六室の所にはいるの?確か、阿散井くんがやられてから戦時特令が発令されてからここは完全隔離状態で近づくことすら許されてないんだよね?」

 

桃が冬獅郎に聞く。冬獅郎もその言葉に頷き

 

「ああ、でも事態が事態だ……強行突破しかねぇ」

 

冬獅郎は斬魄刀を抜き塞がれている入口を切り壊す。

 

「シロちゃん!?ここ中央四十六室の扉だよ!?」

 

桃は慌てる。しかし柊晴と冬獅郎の二人はすぐに異変に気づく。

 

「警報が……」

 

「ならない。扉をぶち破ったのに」

 

強行突破をした際には警報がなり護廷十三隊が駆けつける仕組みにはなっているが、今その機能は停止している。

 

「誰かが門の警備を倒して堂々と正面から入ったということか?」

 

「ああ、しかも俺達みたいのが来た時の為に鍵は閉めても、警報を鳴らないようにしていた」

 

「騒ぎが起きないようってこと?」

 

桃の発言に冬獅郎は頷く。

 

「とりあえず、中に入るぞ」

 

冬獅郎が先陣を切って中に入り走っていく。その後ろを柊晴と桃が着いていく。長く続く階段を降り続け賢者と裁判官が居るであろう場所に辿り着く。目の前に広がる光景は、全員が何者かの手によって全滅させられていたのであった。

 

「四十六室が全滅……!?一体……何があったの!?」

 

冬獅郎は遺体に近づき血溜まりに触れる。血は乾いておりひび割れるほどであった。

 

「見た感じ昨日今日じゃ無さそうだな?」

 

「ああ、戦時特令が発令されて以降は完全隔離状態に入り、誰一人としてここへ近づくことが許されなかった。俺達が強行突破するまでの間の防壁は全て閉ざされたままで何者も侵入した形跡は無かった……!つまり、少なくとも戦時特令以降の四十六室の決定は……贋物だ!」

 

冬獅郎は拳を握りしめながらに言う。何処からが贋物であるか議論は出来ない。重要なのは四十六室が全滅している事実である。犯人が誰なのか思考するが、単独犯とは思えないとその場の三人が考える。

 

「……いらっしゃると思っていました。日番谷隊長、御厨くん、雛森くん」

 

向かいの階段の入口には吉良が立っていた。

 

「おい!吉良!これお前がやったわけじゃねぇよな!?」

 

「吉良くん!何か知ってるの!?」

 

柊晴と桃が呼び掛けると、外に逃げ出す。

 

「待ちやがれ!吉良は俺が追いかける!冬獅郎後は任せた!!」

 

「ああ、吉良を任せるぞ」

 

「柊晴くん……!」

 

「ちょっとお灸を据えるだけだ!」

 

そう言い柊晴は吉良を追いかける。今まで来た道を戻り外に出る。

 

「待てよ吉良!せめて質問に答えろよ!!四十六室をやったのか!?真面目なお前が!」

 

「……いいえ。僕はただ御厨くん達が来るより前に内側から鍵を開けて地下議事堂に入れて貰っただけです」

 

「入れて貰っただと!?誰にだよ!」

 

柊晴が叫ぶと吉良は冷ややかな目を向けながら

 

「……決まっているでしょう。四十六室にですよ!」

 

「ふざけているのか!」

 

さらに足に力を込めて吉良を追い抜き回り込んで蹴りを放つ。吉良は両腕で蹴りを防ぎ屋根の上で後ずさる。

 

「市丸隊長に何を吹き込まれたか知らねぇが……おいたが過ぎるぜ?吉良」

 

「何時まで上のつもりでいるんだい?副隊長でも無いのに、君が僕より上だったのは真央霊術院での話だろ?知らないだろう?僕の斬魄刀の能力……真央霊術院では同期だったけど君は直ぐに卒業し、斬魄刀の能力を話すこともなかったからね」

 

吉良は斬魄刀を抜きながらにそう話す。柊晴は眉を顰めながらに半身に構える。

 

「本気なのか……吉良?」

 

「面を上げろ『侘助』」

 

吉良の持つ斬魄刀は折れ曲り、数字の七の様な形状になる。刀身の内側に刃が付いている斬魄刀を見て柊晴は身構える。

 

「始解……本気かよ!」

 

柊晴がそう言った直後、吉良は視界から消え柊晴に斬りかかっていた。

 

「ふっ!」

 

「くっ!」

 

直前で身を翻し避ける柊晴。斬魄刀を抜刀し叫ぶ。

 

「やめろ吉良!今はこんな事をしている場合じゃ無いだろ!お前だって見たろ!四十六室が全滅しているんだぞ!?ルキアの処刑を止めねぇと行けねぇんだよ!」

 

「それがどうかしたんですか?僕の役目は、御厨くん、日番谷隊長のどちらかが来てくれれば良いんだ。それが僕に与えられた役目だ」

 

振るわれる侘助を掻い潜る。しかし避けきれず5回は弾いいて避ける事にもなる。

 

(くっ!吉良が思いの外いい動きする!長引かせる場合じゃねぇのに!)

 

「いま、何回侘助を受けた?」

 

「あ?んぐっ!?」

 

突如として斬魄刀の重量が重くなり、少し体勢崩される。

 

「なんだ!?何時もの倍以上に重たいぞ……!?」

 

「五回だよ。侘助は切りつけた対象を倍にするんだ。斬魄刀が800グラムとしたら、今の君の斬魄刀は25kgだよ。まだ抱えて走れるかもしれないけど、いきなり重さが変わった状態で対応出来るかな?」

 

吉良が説明する。柊晴は忌々しげに斬魄刀を見ながら大きく息を吐き。

 

「強くなったな……真央霊術院の時と見違えたぜ……。でもな、何時まで俺があの時のままだと思ってんだよ?お前だってあれ以降の俺知らないだろ?」

 

「何?っ!?」

 

吉良が瞬き瞬間腹部に強烈な一撃が入る。腹部を見ると、柊晴の蹴りが深々と入って居たのだ。

 

「ぐっ……!?」

 

「一切、断ち切れ『斬截』!悪いけど奪わせてもらうぞ!」

 

柊晴も始解し、侘助を切る。両断される侘助を見た吉良は目を見開く。

 

「侘助!?」

 

その隙に吉良を掴む。

 

「少し痛いだろうけど我慢して暫く寝てろ!破道の三十三 蒼火墜!」

 

詠唱破棄だがゼロ距離で蒼火墜を放つ。高い霊圧から放たれる蒼火墜は吉良を飲み込み壁を破壊する。吉良は一連の攻撃を受け意識を失う。

 

「くそっ、吉良……!」

 

吉良が気絶したことにより侘助は元の形状に戻り、斬魄刀の重さも元に戻る。斬魄刀を納刀し、柊晴は四十六室に戻るべく走り出す。直ぐに戻ったつもりだった。時間は掛かって無かった筈だった。しかし階段を降りれば降りるほど冷気が強くなる。それが意味することは

 

「冬獅郎が戦っているのか?クソッ!」

 

急いで駆け下りる。そして奥まで進み広がる光景は、自身の血の海で倒れる桃と切り伏せられ、崩れ落ちる冬獅郎だった。

 

「っ!桃!!冬獅郎!!」

 

「おや、もう戻って来たのか。思いの外早かったね」

 

その二人を切ったであろう人物、死んだはずの藍染が中心で立って居た。

 

「藍染……隊長……!これはどういう事ですか?何故二人を!」

 

「そうだね、邪魔だからだよ。雛森くんは僕の想像より冷静に対応し、君たちと協力してここに来た。僕が生きていることを知って喜んでも、四十六室の件、姿を隠していた件で疑念を抱き始めていたから、少し強引だけど始末させて貰った。日番谷隊長は頭に血が上って向かってきてくれたから、雛森くん以上に簡単に事が済んだよ」

 

淡々と話す藍染に斬魄刀を抜き柊晴は激情のままに叫ぶ。

 

「一切、断ち斬れ!斬截!!」

 

しかし、直後第三者の声によって……いや、今まで培った危機察知が柊晴に回避行動を取らせる。しかし、

 

「卍解……」

 

何よりも速い一突きが柊晴に牙を剥く。

 

「神殺鎗」

 

背中から胸に向かって貫かれる。しかし、回避は間に合わずとも身を捩ることで、心臓への命中は避ける。

 

「へぇ、辛うじて身を捩るんや流石やな。念の為に卍解して正解かもしれへんわ」

 

ニヤリと笑い柊晴を串刺しにしている市丸が居た。

 

「ぐっ……ガハッ!い、市丸……!」

 

市丸はそのまま、壁に向けて柊晴を投げ飛ばす。壁に激突し、呻き声を出しながら地面に落ちる。

 

「万全の君なら一撃で仕留めるどころか後ろに立って気づかれないようにするのは難しい。けど、ここ数日僕が後ろに立っても気づけへん程に疲弊しとったからなぁ。容易かったで後ろ取るのは」

 

市丸が口角を吊り上げながらに言う。柊晴は血を吐き自身から流れる血に濡れながらに、二人を睨みつける。

 

「それじゃあ、行こうかギン。一番あの四人の中で厄介な子も始末できた。運がいい」

 

二人が立ち去ろうとした時、

 

「……やはりここに居ましたか、藍染隊長。いえ、最早隊長とは呼ぶべきではありませんね。大逆の罪人、藍染惣右介」

 

四番隊の卯ノ花と勇音、更に海燕の妻の都まで居た。柊晴は倒れたまま話を聞く。

 

藍染の斬魄刀の能力が完全催眠であること。五感全てを支配する能力であり、姿、形、質量、感触、匂いに至るまで全てを誤認させることが出来る。そして、目にすることが無い相手には通用しないという事も。

 

「最後に褒めておこう。検査のために最も長く触れていたとは言え、完全催眠下にありながら僕の死体にわずかでも違和感を感じたのは見事だったよ。卯ノ花隊長。そして御厨柊晴。君は恐らく斬魄刀の能力だろうね、切る性質上、僕の完全催眠に僅かながらに綻びを生じさせていたんだろう。さようなら、君達とはもう、会うこともあるまい」

 

そう言うと藍染と市丸は姿を消す。

 

「都さん、救命措置の手伝いお願いしますね。勇音は藍染惣右介の転移先を探し出した後、全ての隊長、副隊長を捜索・補足し伝信してください。私達が知ったこと、藍染惣右介の全てと行先、旅禍達にも」

 

「「はい!」」

 

卯ノ花は冬獅郎と桃の救命を始める。都は柊晴の救命を回道を使い始める。

 

「……み…やこさん……何で?」

 

「卯ノ花隊長とたまたま会ってね、これでも私は十三番隊に来る前は四番隊の三席でね、回道には自信はあるわ」

 

そう言うと治療を始める。柊晴は都の腕をつかみ

 

「止血……だけで……いい……です!借りを……藍染に受けた借りを少し返したいので……!」

 

止めようとしたが、柊晴の執念の籠った瞳を見た都は止めることは出来なかった。

 

「分かった。でも、事が終わったら四番隊で治療に専念する事よ!勇音副隊長!藍染惣右介の場所は分かる!?」

 

「双極です!」

 

「場所さえ……分かれば良い……外まで肩貸してください」

 

「いえ、背負ってあげるわ。柊晴くん小さいし」

 

背負われて外まで運ばれていく。柊晴は一つの覚悟を決めて外に出るまで目を瞑る。




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