「お前本当に刀を握ったのがアレが初めてだったって本当か?動きは戦い慣れてるそれだぞ!」
「何度も言うが、俺はアレが初めて虚と戦ったんだよ!だから素人だ!」
真央霊術院の入試までの1ヶ月、海燕は柊晴に稽古と勉強を教えていた。勿論職務の合間を見つけてである。時より十三番隊舎に連れていき、妻であり、第三席の都に勉強を教えさせていた。柊晴は鬼道と筆記意外は飲み込みが良く、半月で瞬歩が使えるようになっていた。白打と剣術に関してはただの半月では無く、相も変わらず夢での謎の人物との戦いもあるため、飛躍的に伸びている。だが、鬼道は人並みである。現在は海燕と木刀で打ち込みを行っている。まだ、海燕の方が経験も実力も上ではあるが、それでも海燕が一切の気も抜けなくなるほどには強くなっていた。
「そろそろ、休憩してはどうですか?」
「あぁ、そうだな。柊晴!休憩にするぞ!」
「はい!」
都が休憩にしないかと言う提案の下、剣術の鍛錬は休憩に入る。三人で縁側に座り茶を飲む。
「休憩が終われば次は座学ですよ柊晴くん」
「ざ、座学かぁ……大事だしやるしかねぇよなぁ」
「そうだぞ、死神になるんだったらきっちりしておけよ?試験まではあと半月だぞ?」
海燕は柊晴の肩を組みながらに言う。柊晴が嫌そうな顔をしているのは見逃さなかったからもある。
「分かってるよ。二人が忙しい合間に見てくれていることも……無駄にしない為にも頑張るさ。都さんお願いします」
「ええ、今日もビシバシ行くわよ」
都は微笑みながらに柊晴を連れて部屋に入っていく。入れ替わりで浮竹が入ってくる。
「どうだい?彼の様子は」
「ええ、一言で言えば天才ですよ。半月で俺も気が抜けない程に強くなりましたし、瞬歩はオレと同格はありますね。まぁ、鬼道や座学は並程度ですけど。やはり、それ以上に……」
海燕が言う前に浮竹が言う。感じていること、恐らく口にする言葉は一緒である。
「霊圧か」
「はい、柊晴の霊圧ははっきり言えば異常ですよ。あの日感じた霊圧、俺は隊長格が戦っていると誤認しました」
「それは俺も同じだ。知らない霊圧だったが、感じた霊圧は隊長格とも見紛う程だった。だが、蓋を開けたら霊圧を扱えきれない子供だった。しかも、ただ無意識に垂れ流しているだけでアレほどの霊圧を放っていた。まさか、アレほどの逸材がいるなんてな」
浮竹は嬉しそうに笑う。海燕も苦笑いをしながら立ち上がる。
「そうですね、これは俺もうかうかしてられないですね。浮竹隊長、俺仕事してきます」
「ああ、頼んだぞ海燕」
海燕は副隊長の仕事を行うために隊舎を歩く。浮竹はそれを見送り。柊晴と出会った日の事を思い返す。虚を倒した、戦い方をあまり知らない子供。ただ、霊圧は垂れ流しているだけとは分かるが、隊長格と見紛う程のモノを持っていた。今では霊圧を抑える方法を教えたこともあり、なりは潜めているが、飛んでもない潜在能力を秘めていると浮竹は感じていた。
「このまま行けば、問題なく真央霊術院に入り、直ぐに卒業してくるだろうな」
浮竹は将来が楽しみだと嬉しげに笑を零して歩くのであった。
ある日久々に桃、冬獅郎がいる所に遊びに来た柊晴。試験を明日に控えてゆっくりしているのだ。そんな中
「最近どこに行ってたの?柊くん。全然遊びに来ないし」
「うん?あー、勉強してるんだよ真央霊術院に行きたいから」
その言葉を聞き、桃は暫く固まったかと思うと花が咲いた様に笑顔になり、
「本当に!?柊くんも真央霊術院に行くの!?死神を目指すの!!一緒に死神になろう!!」
「ま、まだ試験も受けてないんだから気が早いだろ」
「そうだぞ桃二人とも落ちるかもしれないだろー?」
茶化すように冬獅郎は言う。勿論本心では無く、適当に言っているだけである。
「何でそんな事言うの!シロちゃん!」
二人は追いかけっこを始める。柊晴は腰を上げて入口に立ち、
「明日試験なんだから、早く寝ろよ桃。冬獅郎もあんまり揶揄うなよ。俺は自信が無いから先に帰って復習するわ」
笑顔で二人にそう言い、柊晴は一足早くに自身が寝泊まりしている小屋にたどり着き、眠りにつく。そして夢を見る。そして謎の剣士との戦いが始まる前。その前に
「よぉ、お前とは何回、何十回、何百回、とやり合ってたけど、そろそろ勝たせて貰うぜ!」
そう宣言して斬り合いを始める。受ける事は許されず、一太刀浴びれば致命的な戦闘続行不能になる斬撃を避けながら斬り倒す為に距離を詰める。紙一重しか許されない。だが、
「っ!」
「どうした!俺は何度もお前の剣を受けてきたと思ってんだ?いい加減太刀筋見切れるぜ!?」
避けるしか選択肢を与えず受け太刀を許さない角度から斬り掛かる。それも余裕なんて与えずに、攻める。受けられそうになれば攻撃の角度を変えて切り込む。
それを嫌がった剣士は距離を取り、赤い刀身に霊圧を纏わせ圧縮し、振るうのと同時に何発も放つ。
「……言ったろ、見えてるって!」
飛翔する斬撃も紙一重で躱し、一気に距離を詰めるべく走る。神経を研ぎ澄ました攻めは一ヶ月という短期間で確実に研磨されたのだ。それだけではなく、何百回も繰り返したこの戦いという土台があったからこそ飛躍的に剣の才を開花させた。
「お前が何者かは分からないが、この1ヶ月はお前に感謝してる……。今までは人が寝るのにとか思ったし、夢と言えど切られるのは堪えるし……けど、そのおかげで強くなったと言える!だから、ありがとうございました!」
感謝の言葉を口にし、振るわれる凶刃を頬に掠めながら一太刀を深々と叩き付ける。そこで夢が覚めた。目を開けると朝日が昇っており、小鳥の鳴き声も聞こえる。
「いい所で、目覚めか。けど、勝って目が覚めるのは縁起が良いな。よし、行くか試験!」
柊晴は顔を洗い、必要な物を持ち試験を受けに行く。途中、桃と合流し話をしながらに試験会場に行く。試験は順調に進みあっという間に終わりを告げた。
(流石に現役の死神に教わったら余裕だな……。剣に関しては副隊長と夢で鍛えたと言うのもあるけど)
教わった甲斐があると思いながらもあまりにもあっさり行ったものだから拍子抜けしたと内心感じながら試験会場を後にしていた。
「シュウくん!試験お疲れ様!」
同じ日に試験を受けていた桃が声をかけてくる。柊晴は振り返りながら手を挙げて
「おー、桃。お疲れ様。そっちは試験の手応えはどうだった?」
「私の方は手応えあったかな。シュウくんは?」
「俺か?俺も同じようなものだな。まぁ、これで落ちてたら恥ずかしいことこの上無いけどな」
「大丈夫だよ!何をしてたかは分からないけど、何となく頑張ってたのは分かるの!だから大丈夫だからさ!」
必死に励ましてくる桃を見て柊晴は思わず吹き出して笑う。笑われた事に顔を赤くして桃が怒る。
「そこまで笑わなくても!!」
「あー、悪ぃ悪ぃ。あまりにも必死に言うもんだから……ついな。さて、帰って美味しい飯でも作るか!」
「手伝うよシュウくん!また、まな板や机切られたくないからね」
「悪いが、もうそんなヘマはしないんだよな」
試験が終わった事もあり、二人はリラックスをして夕飯の話をしながら帰路に着く。それから数日後の合格発表の時、柊晴は主席で合格を果たしていた。
そして、
「それじゃ行ってくるねシロちゃん!」
「いい加減シロちゃんてのやめろ!」
桃は冬獅郎の頭を撫でながらに言う。笑いながら駆けていく桃を冬獅郎の隣で苦笑いする柊晴。
「あたしと同じトコに入学できるようになったら苗字で呼んであげる!シュウくんも遅れちゃうよ!」
「ふざけんな!誰が死神の学校なんか入るかよっ!!」
何時ものやり取りを見ながら柊晴は溜息をもらす。
「はぁ……浮かれてるなぁ。それじゃあ行ってくるわ冬獅郎」
「たく、ああ、またな柊晴」
冬獅郎は柊晴にそう声をかける。柊晴は歩きながらに桃の追いかけるように歩き出す。そして振り返る。
「ああ、たまには顔を出すぜ」
「あたしも寮に入っても休みになったら遊びに来てあげるからね!!」
顔を出すと言った柊晴に続き桃も顔を出すと宣言する。
「二度と戻ってくんな、寝ションベン桃~~~へっぽこ料理人~~~」
冬獅郎はそう言って見送る。
『ようこそ新入生諸君!我が真央霊術院は二千年を誇る歴史を持ち、未来の鬼道衆・隠密機動・そして護廷十三隊を作る若者を育成する伝統ある学院である!』
入学式が終わり、クラス分けが行われていた。桃も柊晴も同じクラスであった。そして同じクラスに集うのは試験に於いて最も優秀な成績を認められた者達。特進学級であった。
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