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十三番隊に配属になった柊晴は空いた時間で鍛錬に取り組んでいた。まだ、会得していない"卍解"に向けて。
「くっ!」
「これで100回目だな」
背後を取られ振り下ろされる刃、それを紙一重で避けて蹴りを入れ距離を置くが、着地と同時に死の斬撃が迫る。その斬撃を始解状態の斬截の斬撃で急速に霊圧を込めて、圧縮し斬撃を放ち相殺する。撒き散らされる霊圧により、木々が切れ、死覇装も鎌鼬が当たったかのように切れる。
「……相殺は行けるようになったか。だが、今日はここまでだな」
そう言うと斬截は姿を消し、そこには一本の斬魄刀が落ちる。
「クソ……!」
柊晴は大の字になりながら息を切らして空を見上げていた。
「クソ……卍解の習得難しいな……いや、はなから簡単なんて思ってなかったけどよ」
想像を絶するものだった。動きは夢の時よりも数段なんて生温いほどに上がり、始解状態の斬截を握っていても向かい合っただけで斬られる想像ができた。1時間の100回目にようやっとの思いで斬撃の相殺に成功した。向こうはこっちを殺さない程度には加減はしているとは考えても、それでも柊晴は必死である。
臆して足を止めたら即死、迷っても即死、蛮勇なんて以ての外。無理難題に近い斬截の卍解会得に悪態をつけども諦める理由にも停滞するつもりもない。そう思い切り替える。
「よし、休憩終わり、仕事するか!」
そして、再び仕事に取り掛かる。仕事にも慣れてきてある程度余裕が出てきた頃、志波夫妻と昼食を取っている際の海燕が気になったのか質問をしてくる。
「そう言えば、柊晴の斬魄刀の始解能力ってどんなんだ?」
「そうですね、有り体に言えばなんでも斬ります」
「ざっくりとしすぎじゃねぇか……。いや、十分凄いけどよ」
蕎麦を啜りながらに話す海燕と柊晴。その話を聴きながら炊き込みご飯を食べていた都が
「卍解の修行も行っているのよね?海燕さんもうかうかしてられませんね」
「おう!そうだな、こりゃうかうかしてられねぇな!」
「でも、中々上手くいかないんですよね」
柊晴は言葉を零すが、海燕は言う。
「そりゃそうだろ、卍解だぞ卍解。具象化と屈服を経て卍解会得となるからなぁ。屈服もただ倒すのでは無くて認めさせると言う意味合いもあるらしいからな。まぁ、具象化するのが難しいんだけどな」
真剣な表情で話す海燕。海燕自身も卍解の修行は行っている。しかし、そう簡単にいくものではなく難航しているのだ。それは柊晴と同じである。
「俺は逆ですね、屈服に苦戦してます。具象化した斬截と100回は戦っているんですけど……突破口が見えなくて」
「もう、具象化まで行ってるのか!?すげぇな!それにしても……突破口なぁ……」
海燕は悩んでる柊晴の話を聞き思考をめぐらせる。100回も戦っていても突破口が見えていない。進歩と言えば斬撃を相殺した程度であろう。そんな時、都が口にする。
「それじゃあ、斬截の斬撃と切る力を深く知るというのはどうなの?」
「それに関しましては、始解をするまで何度も精神世界で切り伏せられて大体は……」
「扱い方もその威力も身をもって分かっていても、もう少し知れば見え方が変わると思うわ」
都の助言を聞き何回も自分の中で繰り返す柊晴。
「なるほど、そういう発想は無かったです!俺やってみます!」
そう言い、蕎麦を食べ切り走り出していく。
「何か掴んだみたいだな!俺も負けてられねぇな!!」
海燕も昼食を食べ切り鍛錬に入る。柊晴は鍛錬に使っている場所まで行く。
「一切断ち斬れ、斬截」
始解する。無闇には振り回せば被害が出る恐れもあるため、回数を決め力を込めて振るう。
「斬截の能力がなんでも斬るなら、切り方見方を変えれば斬れないモノは無いはずだ……!」
斬截を振るい鍛錬を重ねる。
それから修行を始めて三年が経過した。斬截の屈服させるには未だ至らず卍解をモノにする事は出来ては居ない。
「はぁあああ!!!」
「っ!対応してくるか!」
だが、着実に前に進んできている。スピードには始解状態ではあるが高い霊圧を活かして対応し、受けることも許されない攻撃は瞬歩や、身体を捻り躱す。紙一重すら許さず避ける。しかし、
(見ることで、動きには対応出来る様になったが……攻め手がない……!迂闊に行けばこっちが始解諸共叩き切られる!何かは掴みかけているんだ!!その、何かさえ……掴めれば!!)
攻めなければ決着は着けられない。最初の1年半で相手の速度と動きに着いて行くことができるようになり、飛ばしてくる斬撃も手心を入れられているとは言え、安定して相殺できる様になった。だが、そこから攻撃に転じようとなった時にもう一段難易度を上げていた。攻めては、斬撃をできる限り距離を詰めて斬撃を飛ばすだけである。
結局の所、同系統の能力を持っているもの同士がぶつかればどうなるかは分かりきっている話である。
それは、より出力、格が上の方が勝る他ない。この場合は、始解で挑み続ける柊晴に勝ち目は無い事となる。
「っ!」
「もうすぐ時間だぞ……柊晴!」
思考に精細さがかけてきた所で肩、横腹を掠める。出血しながらも距離を置く。本日の時間も限られてくる。3年も経過し、この戦いも合計は1000回を超えてくる。息の詰まるような戦闘を毎日欠かさず1時間通してで行ってきた。
だけど、柊晴はそれを苦に感じたことも悲観する卍解が会得できず悲観することも無い。苦戦して悩むことはあれど、反省することはあれど諦めることは無い。
「後、5分だ」
時が告げられる。焦れば焦るほど精細さをかきそうになる。それと同時に大きく深呼吸をして冷静さを取り戻す。最後の時間だからこそ冷静に行かないと、研ぎ澄まさなければならないと。
「今日の最後か……行くか……!」
再び攻防が始まる。斬截の鋭い攻めに対しての徹底的な回避と斬撃を飛ばしての攻め。決め手に欠けるのは先刻承知と言わんばかりに行い突破口を探す。
「そんな攻めでは認められないぞ、柊晴」
しかし、その全てを叩き伏せられる。息も絶え絶え、疲労もピークに来る。思わず足元がもたつく。その時、三年前の都との会話を思い出す。
『斬撃と切る力を深く知る、もう少し知れば見え方が変わる』
その言葉を思い出し、柊晴は思い返す。その後から斬截の事をもっと知ろうと、屈服の戦い以外でも斬截を始解させて振るう事があった。他にも、戦いの際に観察をする事が増えていた。しかし、この3年間で分かったのは、動きの癖くらいだった。だが、この土壇場で捉え方が変わる。
(深く知る事で、見え方が変わる……そういう事か!!長かった……けど、掴んだ)
口角が釣り上がる。それと同時に自然と霊圧が迸る。斬截もその表情を見て思わず笑う。そして、柊晴が言う。
「これが……断ち斬るという事だ!!」
目を見開き、手に持つ斬截を振るう。その一撃は具象化している斬截を捉える。具象化した斬截はよろよろと後ろに後ずさりをする。手に持つ大太刀は柊晴が放った斬撃で折れていた。いや、斬られていた。
「……見事だ。認める他ないな」
「ああ、待たせたな。ここまで辿り着くまで」
「そうだ、目に見るモノだけじゃない。絶対に、忘れるなよ……まだ始まりの地点に立ったのにすぎない。でも、お前なら大丈夫の筈だ」
柊晴は頷きながら頭を下げて言う。
「ありがとうございました。そしてこれからもよろしくな……相棒」
「ああ。それでは、告げるぞ……私の名は……」
斬截の真の名前を聞く。斬截は本当の名を名乗ると再び斬魄刀が地面に刺さる。柊晴は大きく息を吸い込みその場で仰向けに寝転がる。
「これからか……上等だ!俺はまだまだ強くなれるんだ!」
嬉しそうに笑っていた。そして更に月日が経ち、雛森、吉良、阿散井が護廷十三隊に入隊が決まり、十三番隊に新入りが入隊すると話が耳に入る。
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