第2部ラスボス『逆行した藤丸立香』 作:プレイヤー名:⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
———実は、今回と次回あたりのイメージから始まったのがこのssだったりします。
やっと、第一・第二話に戻ってきたって感じですね。
Aチーム率いるカルデアの新居地、虚数戦闘大艦イマジナリ・ボーダーの中に、緊急のアラートが鳴り響いた。
赤いランプがゆっくりと点滅し、各電子機器のモニターには『緊急事態発生!』の文字がともる。
そんなアラートを受けて管制室に集合したAチームのマスターたちの背後から『シュン』という、スライドドアの音がした。
管制室後ろのスライドドアからやってきたサーヴァント、ジェームズ・モリアーティは
「さて、諸君。———犯罪計画の始まりだヨ」
その言葉に真っ先に反応したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチと共に管制室正面のモニターを見ていた、ロード・エルメロイ二世だった。
彼はモニターから振り返り、首に真っ赤なスカーフを巻いた老紳士に問いかける。
「ミスター・モリアーティ、
「いやいや、君は全くもって正しいとも。私は断じて藤丸くんとは繋がっていない。
ビーストの一部であったバアルと霊基を共有しているおかげで、『藤丸くんに召喚された時の記録を保有したままでの現界である』という推理も大当たりだとも」
「『繋がっていない』という見立てが正しいのでしたら、ミスター。
「それこそ
だって私は、こんな犯罪計画なんてまるで知らなかったのだからネ!」
ジェームズ・モリアーティは実に楽しそうにモニター前まで歩みよる。そして、ダ・ヴィンチとエルメロイ二世を見た。
「私が君たちより先にこの回答に
さらに言えば、『君たちカルデアの諸君の予想は全て正しかった』と言っても良いだろうね」
彼は振り返り、カルデアのマスターたち全体を見て、その中からカドック、キリシュタリア、デイビットを
「カドックくんがロード・エルメロイ二世と共に辿り着いた結論『事件はまだ始まっていない』というのも正しく、またキリシュタリアくんがデイビットくんと共に辿り着いた結論『藤丸くんはマシュを気にかけていて、現カルデア勢力に殺してみせろと宣言している』というものも、全て正しい」
キリシュタリアが、一歩前に踏み出した。
「———同意しよう、ジェームズ・モリアーティ。さらに付け足すならば、未来視を持つサーヴァントたちが、私たちの行動に
「流石はキリシュタリア・ヴォーダイムだ、それもまた正しい。
当たり前だネ。君たちの知り得る全ての情報・状況から導き出されるあらゆる結論は、全てが『藤丸立香を殺すために全力を尽くすべきだ』と出てくるのだから。
———だからこそ君たちは、それこそが彼の狙いであると気づいて
モリアーティは
「心中お察しするヨ」と
「実に
『自らの犯行を止められたくなければ、それを知り得る全ての者たちにとってその犯行が最善であるように見せれば
コレを達成するために、藤丸くんは自らの犯罪が汎人類史にとって
———何も知らない者は全力で藤丸くんを滅ぼしにかかり、世界のやり直しに思い至った者はカルデアの強さを示すために彼を全力で倒そうとし、彼の真意に気づいた者はそのために彼を殺そうとし、この現状が彼の思惑の内だと
モリアーティは両手を広げる。
「そうとも! この戦争は
よって君たちカルデアは藤丸くんにとって敵ではなかったのだ、最初からね」
人差し指を立てて、
「———では、この戦争において
モリアーティはマスターたちの
「どうしても
『シュ』というエアーの音と共に、ドアがスライドする。
その奥から入ってきた異聞帯の民たちを見て、オフェリアが声をもらした。
「アデーレ、マカリオス……」
アデーレが「オフェリア……」と
「でもごめんなさい。これは、私たちがあのお方に
マカリオスが一歩前に出て、アデーレの言葉を引き継いだ。
「
それが、『もしも俺たち“反異聞連合”が目的を達成できなかった時には、立香王の代わりにカルデアへの伝言を預かること』
———だから、今日、ここへ来たんだ」
ダ・ヴィンチはモニターの下で腕を組んで口を開いて、その状態で一瞬だけ
「マカリオス、君が我々に伝言を届けることになる条件。つまり君たちの目的というのは、一体何だったんだい?」
マカリオスは少し黙って
「カルデアの人たちよりも先に『立香王を異聞帯の者の手で殺すこと』だ」
その言葉を聞いたダ・ヴィンチはすぐにモリアーティを振り返った。
「“犯罪計画”とは、異聞帯からの概念的な攻撃なのか!?」
「おっと……。当たらずとも遠からず、と言ったところかナ?
何にせよ、私にはそれを口にする時間が無いのだヨ。私はもうじき消滅する身だ。バアルが完全に破壊されたらしいからね、霊基を同じくするこの肉体も崩壊を始めている。
だがッ! 心配めされるなダ・ヴィンチ女史。それは彼らにこそ与えられた役割なのだから」
キラキラと霊基を崩壊させながらモリアーティは、スッと反異聞連合の
そんなマカリオスは自らの姉に視線を飛ばし、姉が
「オレたちの歴史———つまり7つある異聞帯は、本来なら存在しない
そんな……空想樹を伐採されただけで消滅するような空虚な歴史を存続させたいと、本気で願ってくれた人がいたんだ」
ダ・ヴィンチはゆっくりと目を
「それが藤丸立香という少年だった……と」
「そういう事。立香王は2017年の異聞帯ブリテンに降臨して、異聞王妃を召喚した。王妃は立香王の記憶から6000年前の妖精國に、立香王と共にレイシフトした。そうして7つの異聞帯において、6000年間のやり直しが始まったんだ。
妖精國は王妃によって、それ以外の異聞帯は召喚された王によって」
マカリオスは言葉を切り、カルデアの面々を見る。押し黙った彼らの視線に返答するよう、声を出す。
「だから今オレたちがいる“2周目の歴史”は、立香王と結びついている歴史なんだ。7つの異聞帯の歴史が全て、立香王と繋がっている。
でも“存在しない歴史”である事に変わりはないから、7つの異聞帯はいずれ等しく消滅する運命にある。
———汎人類史と概念的に繋がらなければ、だけどな」
マカリオスの最後の言い回しを聞いた瞬間、ロード・エルメロイ二世が小さな声で「
「そういう……まさかそういう事なのか? だとしたら
二世は顔を上げて「マカリオス」と呼びかける。
「マカリオス。お前たち“反異聞連合”は、藤丸立香にそうなって欲しくなくて、彼を
———藤丸立香が異聞帯の者の手によって殺されたならば、その因果は7つの異聞帯の中だけで完結する。そうなれば異聞帯の消滅と共に、藤丸立香もまた消えることができる」
二世はマカリオスに「お前たちはそう考えたんだな」と確認した。
「そうなんだ。ここで———汎人類史の者によって殺されてしまったら、“2周目を経験した王”という概念は、汎人類史と縁ができてしまう。
———何が悪いかって?
悪いに決まってるだろ。立香王は7つの異聞帯の全てにおいて圧倒的な知名度を誇るんだ。それがサーヴァントとして召喚できない
話を聞いていたカドックが自分の
「それはつまり、お前らは藤丸立香を汎人類史で召喚されたくないからというだけの理由で、藤丸立香を殺そうとしてたってことか?」
「いや」と
「違うッ逆だ! 汎人類史で藤丸立香を———異聞帯のマスターを召喚する事が唯一の打開策なんだ!」
ダ・ヴィンチの声に二世も「その手が残されていたかッ」と反応し、メインモニター入力用の空間投影型タッチパネルに打ち込みはじめた。
ダ・ヴィンチは連絡用の職員を向き、急いで管制スタッフに指示を出す。
「総員!
何としてでもカルデア式召喚を確定させて———」
アデーレがゆっくりを首を振る。
「いいえ。もう遅いわ」
彼女は一瞬振り返ることでマカリオスとアイコンタクト。タイミングを合わせる。
———そこに、ちょっと確認したい事があるからとミクトランを調査していたロマニからの通信が入った。
「ダメだった! レオナルドごめんッ、もう———何もかも手遅れだったんだッ!」
アデーレがマカリオスの
「「藤丸立香は異聞帯全ての王であり、また唯一のマスターである。その経験から
6つの異聞帯を踏破して、7つの異聞帯全ての王となった者。
カルデアスの人理修復シミュレーションにて、七度も世界を救った者。
そして何よりも、人類最後のマスターとして“やり直し前の汎人類史”を二度救った、“カルデアのマスター”だった者」」
管制室が
各職員が高速で端末モニターにたくさんの情報を表示させて、あるいはトリスメギストスに演算させ、弾き出された結果をそれぞれに共有するのに必死になっている。
ダ・ヴィンチとロード・エルメロイ二世もまた、共有された情報を管制室中央の空間投影モニターに表示させ、その結論に顔を
2人が今まさに
『ミクトランに出現した未確認存在。
魔力
一瞬、管制室が静かになった。
その一瞬の静寂によって、マカリオスとアデーレの声は室内の職員たち全ての耳に、飛び込んできたのだった。
「「以上の功績をもって彼のクラスは決定された。
異聞帯のマスターなぞ偽りの
その名をビーストⅦ。
『あらゆる英霊・人間への共感』と『自らの生存欲求』を
オリュンポス異聞帯からやって来た2人の
「「『汎人類史の者の手によって藤丸立香が殺される』という条件が達成されたことにより、オリュンポス異聞帯からカルデアへと出向しているこのアデーレとマカリオスが臨時大使として、カルデアへの
———『カルデアのみんな。
そうして全てを計画して……そしてまた
異聞帯の人たちと過ごした時間、ビーストたちの手助け。今のオレには、カルデアのマスターとして立っていた頃には無かった、全く違う人たちとの大切で、とても美しい思い出があります。
そういうモノを負けられない理由にして、オレは全力でカルデアを打ち負かす。
———ここからが、最終決戦だ』」」
◇ ◇ ◇
———同刻、オリュンポス機神回廊奥。大祭壇。
その中心には木製の薄い円形テーブル“円卓”が置かれ、異聞連合の会議の時には各異聞帯間の“円卓”と同期できるように調整されている。
そんな円卓の外側を囲むように、機神たちの席がある。その中の一つでディオスクロイ・カストロは、何度目かの後悔を口にしていた。
「せめて……あの男に加護を与えていれば……」
カストロが後悔を口にする
「心にもない事を言うものではない、カストロ。あの男に加護を
父親に
「父上! あの男が加護を望まない事は承知しております。俺が言いたいのは、無理矢理にでも加護を押し付けていればあのような死に方などせず、今もまだ生きていたのではないかとッ———」
だが、ゼウスはそれを
ゼウスの人型
「何の力も持たず、ただ『人間である事』以上の性能の一切を保有せぬままに———あの男は運命に
気づかなかったというのか、カストロ。
加護とは、自らよりも
これは
「それは……」
「そうだ、今のままで良いのだ。ディオスクロイ・カストロよ、これでよい。我らは何一つ間違えてはいないのだ。
我らは進み、あの男の望んだ景色を、共に
———その時、ゼウスの座る円卓の中央から『ピッ』という電子音のような音と共に、ダ・ヴィンチのカタチを取っているムネーモシュネーから通信が入った。円卓中央に投影された彼女は何も言わず、ただ
白い、大理石が如く白いゼウスの人型
「
こうして、異聞帯とカルデアにおける戦争は最終段階に入ったのだ。
今までの異聞連合にとってカルデアとは“敵”ではなかった、作戦目標が同じであったが
◇ ◇ ◇
藤丸立香がビーストとして
一瞬、ここはどこだと考えて……すぐに思い当たる。『ああ、確かここはミクトランの最深部、シバルバーにある“チコナワロヤン”とか言う遺跡だったかな』と。
それはつまり
「……良かった。これで役目を終えられますね」
立香のすぐ目の前から、女性の声が聞こえた。少し視線を下げると、石階段を何段が下ったところにククルカンがいた。その服装は濃紺の着物。
彼女は少し高くなっているこちらを見上げ、
「気に病まないでくださいね、マスター。
大丈夫。これはちゃんと、みんなで話し合って決めたんです」
立香は、やっとの思いで
「
———この6000年間、本当にありがとうございました。私とはここでお別れです。
ククルカンは石段をトントンと駆け上り、立香の後ろから背中をそっと押し出した。思わず一歩を踏み出す立香に、ククルカンは後ろからエールを送る。
「
空想樹が無くなれば異聞帯は存続できないけれど、今のミクトランだけは例外です。だって、ミクトランの中に一本でも空想樹がある限り、この異聞帯はあり続けるのだから」
もう一度彼女は、立香の背中をトンと押して別れを告げた。
「行ってください、振り返らずに。———大丈夫。
立香の背後で、『シャラン』と霊基の解ける音。同時に、『キーン』という、澄んだ金属を打ちつけたような音———単独顕現の音だ。
立香は少し上を見上るのと、彼女たちが
「———あらっ、泣いてるんですか? マスターさん。
いけないですねぇ。でも、泣き虫マスターさんに朗報です」
「そんなお顔をされてしまっては、
「……どうでも良いが、サッサと
「…………みんな、帰って来てくれたんだ」
童女の姿のドラコーが、立香の前に着地しながら口を開いた。
「……まぁ。
ドラコーは振り返り、立香に背を向けて歩き出す。さらに2体のビーストも
神殿の出口を目指して歩く3体の内、カーマが目線だけを立香によこした。
「行きますよマスターさん。
マスターさんの“異聞帯を全部守る戦い”ステップ2、『全異聞帯の特異点化』は、これで達成できましたね。
これからはステップ3、『カルデアとの最終決戦』が待ってますけど ———大丈夫。ダメだった時は、私も一緒に死んであげます」
こうして、“異聞帯全ての王”が帰還する。
ディノスたちに
その行き先は———虚数戦闘大艦イマジナリ・ボーダー。
先の戦闘の
「やってくれたわね」
ほどなく、戦艦の甲板の上に現れたカルデアのマスターたちとそのサーヴァント。そして彼ら全員のさらに前に仁王立ちするオルガマリーが、
「たった今、シバが汎人類史の危機を観測、トリスメギストスがその原因を特定しました。それは『7つの異聞帯の歴史を丸ごと特異点にする事による汎人類史への大規模攻撃』
———間違いありませんね」
「うん、間違いないよ」
立香はオルガマリーに笑いかける。
「並行世界論にすら切り捨てられたイフの歴史である異聞帯をキチンと存続させるには、汎人類史と
———オレがビーストになった以上、“オレというビーストが羽化するために使用した
だからこそ———この瞬間に“オレというビーストを形作った7つの異聞帯”は、汎人類史の特異点として人理に認定されたんだ」
「それが問題だと言っているのです」
オルガマリーは甲板の上から、腕を組んで言い返す。
「そんな事をされては、汎人類史は立ちいかなくなる。ロシア、北欧、中国、インド、大西洋、イギリス、南米。こんなにも
「そうだね」
「我々、人理継続保証機関は、これを容認できません」
「オレたち異聞帯は、これを押し通す用意がある」
「……どうしても引けないのですね」
「どうしても引けないんだ」
「なら———」
「だから———」
「「
オルガマリーは右手で、藤丸立香を指し示す。
「カルデアの皆さん! 人類史を
藤丸立香は右手首を左手で
「行くよみんな。第三ステップ、『カルデアとの戦い』だ」