第2部ラスボス『逆行した藤丸立香』 作:プレイヤー名:⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
『カン、カン』と薄い
ロマニ・アーキマンは今、ゆっくりと階段を登っていた。
ロマニはハンドルを回してロックを外し、
———
ロマニが
「ついに
藤丸の声は、何百メートルも離れたここまでハッキリと聞こえてきた。きっとモルガンの魔術か何かで声を届けているのだろう。念話の
そして左側から、キリシュタリアの視線を感じる。彼は、
「……まさか」
「そうだねキリシュタリア。発動した未知の宝具、その効果は
そしてロマニは、キリシュタリアよりも前に出る。
「
前を向く。巨大なカーマの
モルガンと目が合った。
「———ここで出て来るか、ロマニ・アーキマン」
ロマニは、ちょっと声を張り上げる。自分の感覚が正しければ、藤丸の声をここまで運んでいる魔術は、こちらの声もまた、向こうに届けるだろうからだ。
「カルデア式召喚術を
それぞれの特殊領域ごとに
それが
ビースト
「と、いう事はやはり———ちゃんと効果を
モルガンの言いように、ロマニは数瞬、言いよどんだ。
そんなロマニの顔を見たのか、モルガンの言葉はさらに続く。
「我々“異聞連合の対カルデア戦闘部隊”、その最大の天敵は貴様だった、ロマニ・アーキマン。……いや、『魔術王ソロモンが天敵だった』と言うべきだろう。
———ソロモン王の指輪。それは『十の指輪がすべて
モルガンは一度
「———
人間の状態のロマニでも、ここまでの説明があれば理解ができた。『“⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎”の名の
「……なるほど、藤丸立香少年か。
やり直し前の彼とボクは、それなりの知り合いだった
「いいや、そうではない。このオペレーションは私の発案だ。
貴様らカルデアが、我々異聞連合との戦いにおいてどういった戦略を用いるのかを知るためのバロメーター、それが『“⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎”という名そのものが持つ真の役割』だった。
———我が夫は“人たらし”でな、あの人の存在をよく知ろうとした者、あの人と深く
モルガンが、
「そして、貴様らカルデアとて例外ではないと確信していた私は、我が夫に
貴様らがあの人を“⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎”と呼んでいる
「なるほど、寝返った異聞帯の人々の中にスパイを
カルデアのマスターたちが彼を“藤丸立香”と呼び、『彼を真正面から
「実際に、そうなった」
目を細めたモルガンが、ロマニの両方の手袋を
「終局特異点において人王ゲーティアが消えた後に残されたもの、九つ。ロマニ・アーキマンが持っていたもの、一つ。
“十の指輪”、その全てが
……で、あれば。貴様が戦場に現れるだけで我が夫の敗北が決定するというのであれば、全力でこれを
「———なら、その戦略もここまでだ。
これからの戦場にはボクがいるからね」
ロマニは一度
ずっと向こうのモルガンはその姿を見て目を細め、藤丸立香は目を閉じた。
———そう。イスラエルの王が、そこにいた。
引き
ソロモン王は声に出して、その指輪を起動する。
「イスラエルの王ソロモンが、神より
両手にある十の指輪が光を放ち、十本の光線が夜空に上がった。黄金の粒子が
太公望が「おやっ」と
「良いですねぇ〜、使用感が戻っていますよッ」
赤い方陣から雑にビームを撃ち出し、モルガンたちを攻撃する。当然のようにモルガンはビームを
「———本当に久しぶりに、コレは全力を出せそうですね!」
太公望が霊基出力を
『敵宝具の発動によって藤丸立香の手に渡った謎の礼装、その効果解析が完了しました。
木製の人形は、“人間そのものの
もう一つのガラス
さらに先程の、未知の宝具が発動してから存在していた時空間の
「なるほど、最大捕捉も自分自身であるタイプの宝具なんだね。彼のサーヴァント達が格付け勝負での負けを『あり
そう言ってソロモンは、そっと笑う。
「異聞王妃、モルガン。そして異聞帯の王、藤丸立香くん。君たちは7つの異聞帯を特異点として汎人類史に差し込んだ。
それは
だからボクたちのやり方で、これら7つの異聞帯を“特異点”として修復しよう」
「……。今まさに貴様が口にしたように、アレらの異聞帯はとても強固に汎人類史と結びついた。
だからこそ、特異点なぞ好きに修復するが良い」
ここぞとばかりに、モルガンは笑った。
「『特異点となった異聞帯が修復されるよりも前に、異聞帯から外に出た存在』は、一個の生命として———この世界を生きて行くのですから」
その瞬間、空気が変わった。
それは『場の雰囲気が変わった』とか、そんな程度の変化ではなく、世界そのものが書き換わるような、それ
———世界が、押し流されていく。
目に見えない何かがソロモンの後ろから押し寄せてきて、ソロモンの周囲を、また後ろに
彼の左隣で、キリシュタリアと太公望が辛そうに
彼ら二人が
地図そのものを円形に切り取って、別の机に移動させたようなもの。だからこそ、その領域から外に出ることはできないようになっている。
それが、今———全て強引に書き換えられた。
キリシュタリアがグッとモルガンを
「テクスチャそのものを書き換える
……いや違う、そうじゃない。これは———」
「“置換魔術”だ。星見の魔術師」
モルガンが言い放つ。
「“地球表面”というテクスチャそのものを、別のものと置換した。
断層結界が破られたのではない。断層結界は、今も
「『カルデアス表面との座標の入れ替え』……か? ならばこれは———」
「『カルデアス表面と地球表面との
モルガンはスルリと両手を広げ、自分たちの
「返してやろう、本来の、地球という名のテクスチャを。
返してやろう、汎人類史を。
———私たちにはもう不要になった、この世界との決別の証を」
ソロモンの近くにいる、カルデアのマスターたちやサーヴァントたちは
———2017年12月31日、午後4時30分。
太陽は低く、空は茜色に染まっていた。
海の上に、みんないた。
「どうなってるの?」と、
「白紙化が解かれた? この
「———キリシュタリア」と、オフェリアが名を呼びながら、キリシュタリアの
「管制室にも確認を取りました。ここは間違いなく、白紙化前の地球の———地中海の真ん中です」
「そのようだね。正面にマルタ島、右手にはイタリア半島。
キリシュタリアはオフェリアと目を合わせて会話した後、もう一度
「だからこそ今、一番に気にしなくてはいけない事は、『白紙化が解かれた
———藤丸立香がビーストになる時に、7つの異聞帯を『汎人類史の特異点』として
それを聞いていたカドックが、前に出て声を出した。
「待ってくれキリシュタリア。
見ろよ。ここから……何本も空想樹が見えるんだぞッ。
何本もの空想樹が同じ領域にいるんだぞ!
……こんなの、地球全土が特異点になったようなものじゃないか!」
そして、キリシュタリアの
「……それで? “何でも知ってるデイビット”、アンタはどうするのよ」
「何でも知っている
「……ほら、やっぱり知ってるんじゃない。アイツらは汎人類史に空想樹を移して、
デイビットは後ろの
「
「無いわ」
「……だろうな。ドクターが、『ソロモン王の
「まぁ、そうなるわね。
そこから魔神柱の離反があって、結局私たちと戦ったのは人王ゲーティアだったけど……。確かに、“72
「そうだ。
———何故、
「そりゃあ、アイツらの目的のためでしょう?
———確か『最初は地球の始まりに飛びたかった』って言ってたんだっけ。そのために必要だったんじゃないの?」
「それはどういう原理の魔術理論だ?」
「知らないわよ、アンタじゃないんだし。……
「……やはり腐っても精霊か。こういった時のお前の
「何ソレ。喧嘩売ってんの?」
「まさか、単純に
ヒナコと向き合うデイビット。彼らを少し後ろから見ていたソロモンは、ふと、そのずっと向こうに藤丸立香とモルガンを見た。彼らもまた、少しばかり話し込んでいる。
ソロモンは笑った。結末がどうであれ、それはそれで良いだろうと思ったからだ。
「みんな頼んだよ」と声に出す。今まさに愛と希望の物語を歩んでいる、彼らを100%信用したのだ。
キリシュタリアは藤丸立香を
デイビットは、よって来たAチームの面々に、敵の目的を説明していた。
「もう一つの疑問も
『何故、空想樹の形は魔神柱と似て、
さっきの
「……ッ、だあああぁぁぁッ!! もう!
ちゃっちゃと答えを言いなさい!
納得はいらないわ、信じてるもの」
「そう……か。分かった。
まぁ、あくまでオレの推論だが———」
◇ ◇ ◇
巨大化したサンサーラ・カーマ。彼女は、カルデアから少しずつ距離をとっていっている。そんなカーマの
「……どうやら、気づかれたっぽいね」
「関係ありません。我らの計画は、
「『7つの異聞帯をみんな宇宙に打ち上げる計画』、その最終段階。
ここまで強度が上がった特異点なら、異世界と言っても
『異聞帯の過去にレイシフトして、その歴史を書き換えることで特異点とする』。このプロセスを
———ならば、7つの異聞帯の全てを同じやり方で汎人類史の特異点とすれば、空想樹がなくなっても住人たちは消えずにすむ。
———移住先の地球人との不和? そんなもの、
ツングースカ・サンクチュアリが飛び立つことに、当時、新所長やシオンたちは反対しなかった。つまり現実的な確率で、それは成功するって事だから。
「この計画の最初にして最大の難所は、異聞帯の人たちに住んでもらう土地と、それを打ち上げる発射台をどうやって用意するのか、だったね。
結局、カルデアスと交渉する事を思いついたのは、君とコヤンスカヤだったっけ」
「私ほどの魔術師ともなれば、空想樹を一目見ただけでその設計思想を
———アレらは、望遠鏡であり発射台、
———そうだ。人類史の終着点は、二種類。
『自分たち、今を生きる霊長が
そして、そのどちらにおいても、必ず発射台が必要になる。
逆に言えば、人理を打ち上げる為の発射台がある以上、その並行世界は本当の意味では終わらない。“人理を達成するための最後のピース”がある並行世界を、
だからこそ、空想樹を
藤丸立香はこの事を、モルガンたちから聞かされていた。そしてビーストになって、ムーンドバイでの出来事を思い出して確信に
———不可逆
その中で立香の精神の中に
———そうだ。アイツの姿は確かに、魔神柱とよく似ていた。
そしてあの、魔神柱にも似た
——————“星の海を渡る者”。
そうだ、魔神柱のカタチ。あの柱の形状は、
「……地球白紙化が解除された。モルガン、そろそろだね」
モルガンを正面から見て、立香はその言葉を続ける。
「行ってあげて、妖精國のみんなの元へ。これから大航海が始まるんだ。リーダーは必要でしょ」
「我が夫、あなたは……」
「オレは、汎人類史のビーストだからね。このテクスチャから離れられない。でもモルガンは違う。モルガンは、汎人類史の上で起動した大聖杯によって異聞帯の中で召喚されたサーヴァント。汎人類史に依存するサーヴァントでも、異聞帯の土地に召喚されたサーヴァントでもない。
大聖杯によって呼ばれたサーヴァントは、大聖杯がない場所でも———
———ここでお別れだ、モルガン」
『ピピッ』という電子音に似たコールと共に、ムネーモシュネーから通信が届いた。半透明のウィンドウが開いて、彼女の顔が映し出される。
『カルデアスの説得、
マスター藤丸、これまでありがとうございました。王妃モルガン、参りましょう』
……モルガンは
黙りこみ、立香を見て、
立香は大きく笑って、モルガンに語りかけた。
「———あの日、6000年ぶりに目覚めた日。オレが一番欲しかった言葉を君がくれた。覚えてる? モルガン」
顔を上げたモルガンの目を、真正面から見る。
「この“やり直し現象”で、オレは汎人類史の一員じゃなくなった。オレがいなくても世界は回るし。オレがいない方が、カルデアは良くなる。
———逃げ出したくなる足を支える訓練とか、心を透明にする練習とか。
いつ異聞帯や特異点に突入することになってもいいように、万全のコンディションを維持しておく努力とか。いつでも動ける肉体を作っておく
それでも残るものはあったんだって事を、君が教えてくれたから」
いつかの目覚めの日と逆に、今度は立香の方からモルガンの手を引いて、彼女をゆっくりと振り返らせる。
「地球の人類史に、オレの存在は必要ではなくなったけど……。
今のモルガンの心の中に、オレが土台になっている部分が少しでもあるっていうのなら、それで
だから———ここでお別れだよ。モルガン」
「そんな……あなた、だってッ!」
モルガンは、自分の手を引く藤丸の腕を
「あなたの居ない世界に、あなたの居ない
あなたと歩めない
「『空想樹を育ててカルデアと敵対する役割』を与えられたから、オレはモルガンと結婚した。
言い方を
———それでもオレにとって、モルガンとの結婚生活は
君との毎日は、とても楽しかった」
立香は、そうやって
「まあ、いつもオレはおんぶに
最後くらいは、サーヴァントとしてくらいは、役割を果たさせてほしい。
『今を生きる人たちにバトンを渡す』という、役割を———」
「あなたさえ
「でも、今はそうじゃない。でしょ?」
「だって今は……民がいるから。
…………でもッ!
どれほど冷たい冬の
「大丈夫だよ、モルガン。
今、君は自分から、『これからが春だ』と言ってくれたから。オレ一人があげられる熱には限度があるって、本当は気づいてるんだろ? オレ一人分じゃ、よくいってカイロくらいかもだ。
———本物の春の到来を、君の本能が予感してるんだろう?
救世主としてブリテンを、そこに住む妖精や人々を純粋に救いたいと思っていた君は……。
とても長い冬の旅を
だったら満喫しないと。
これからが、———人生で一番楽しいんだから」
目を
「大丈夫だよ、モルガン。オレはみんなに助けられてここに
———人理を達成してはじめて、並行世界論はオレたちの歴史を『有意義なものだった』と認識する。
やっとここまで来れたんだ。あと少し……あと少しで、あの人たちに“未来”と“意味”をあげられる。これからの航海が、どれほど危険に満ちたものであったとしても。それでも……、逃げるように飛び出したのではなく、祝福されながら旅立ったのだと振り返る事ができるように、送り出してあげられる」
立香はキアラにバトンタッチする。それからカルデアをスゥッと
「キアラ、後はお願いね。オレはここでやる事があるから」
「ええ。そう長くはない時間でしたが、
立香の背後で『キーン』という、澄んだ金属を打ちつけたような音がした。
単独顕現スキル発動時の効果音に背中を押されて、立香は思いっきりジャンプする。ぐんぐんと跳び上がり、その
星の光をそのまま抽出したような、
そのビームを立香は、呼び出した盾で防ぎながら突っ込んでいく。
やがてビームが
———盾と
お互いに弾かれ、空中の足場に着地する。キリシュタリアは魔力を固めて足場にし、立香は
キリシュタリアが真面目な顔で聴いてきた。
「藤丸立香、なぜ殴りかかって来たんだい? そのまま逃げ回っていたら君たちの勝ちだっただろうに」
「そんなの、
キリシュタリアは「むっ」と
「君は“様式美”という言葉を知らないのかい? こういう時は、お互いに分かっていてもキチンと理由を説明するものだよ」
「……はい?」
「———むっ。そうだな、どう説明すべきだろうか。えっと……“様式美”というのはだね———」
「いや、“様式美”は知ってます」
「そうなのかい? それは良かった。……でも妙だな、様式美を知っているのに、私の問いかけに理由を説明しないなんて。
———もしや、私の知らない特殊ルールがあるのでは?」
「えっ……と…………」
立香は言葉に
キリシュタリアってこんなに様式美にこだわる人だったのか? と、頭の中に疑問符が浮かぶ。
……いや、まぁ。こちらとしても、ここで殴りあっていられるなら計画の失敗も遠ざかるワケだし……。などと思いながら、とりあえずテンションだけ合わせて、彼のノリにチューニングした。
「オレがこうやって出て来たのは、
確かにこのまま、カルデアスの発射まで逃げおおせれば、異聞帯の存続は
オレは異聞帯の王になって、その運営に
立香が話しだしたのを見て、キリシュタリアはちょっと嬉しそうな顔をした。
「そうだろうとも、藤丸立香。我らカルデアは、君の
———君の想い、君の願い。君の理想とする世界の金型を
キリシュタリアは、こちらを真っ直ぐに見つめていた。
「だから私は文字通り、ここまで飛び出して来たんだ。君は必ず、完璧な勝利に
キリシュタリアは「違うかい?」と問いかけてくる。
「違わない」と言い返す。
「オレは……この世界のあり方に反発した。“弱肉強食”———競争によって世界は豊かになり、人類史は強くなるんだという……この世界のあり方に」
———“能力主義”、と言ってもいいかもしれない。『この世界に
「この星の人理は、これを並行世界単位でやっている。強い人類史は生き残り、弱い人類史は
弱くない。弱いだなんてあり
それは、7つの異聞帯全ての最後を見届けた、藤丸立香が断言できる数少ないものの一つだ。
「『競争するから人は強くなるんだ』っていう考え方は、正しいとオレも思う。でも最近、それは正しいだけなんじゃないかって思うようになった。正しいだけで……強くない。
もし本当に“強い人類史”が生き残るなら……。正しくはなくても、強い人類史であれば生き残れる世界であるというのなら、オレはあの人たちに生きていて欲しいと強く願った。
———だからそれを証明する。
汎人類史に
立香は盾を
「———“人類史の成果”は、異聞連合が
6000年間一度も戦争をしなかった異聞帯の代表として、競争の人類史の代表者たる、カルデアのマスターに勝利宣言をする。
『“強い人類史”とは、地獄のような競争に勝ち抜いてきた者たちの歴史ではなく、
キリシュタリアは右手を
「あらゆる地獄を
人は競争によって
キリシュタリアは右手の
「最後に勝つのは汎人類史だ。その思いだけは負けられない。
それに、時計塔では護身術は必修科目なんだ。たとえビーストといえど、生前
立香はキリシュタリアから意識を
盾を
キリシュタリアが眉をひそめた。
「それにしても、ビーストとなった君の宝具が“人理の盾”とは……。なるほど、“召喚器としての円卓”はカルデアのマスターだった者の象徴でもある
キリシュタリアの言い方に、立香はどこか懐かしさを感じた。
「これはオレの持ち物であって、宝具じゃありません。真名解放ができませんから。
それに中身は別物ですよ。これの素材は、妖精國にあった異聞連合の円卓です。だから汎人類史の英霊の召喚には使えません。
外見がマシュの盾と同じなのは、あれを持って戦った事があったからでしょう」
立香は自分の持つ盾を見た。この盾の外見だけが、自分がかつてカルデアのマスターだった事を示す唯一の証拠となってしまった。
「でも今のオレは、異聞帯のマスターだ。この
キリシュタリアの杖から星光のビームが放たれる。立香は盾で
キリシュタリアが
———ガンド。
4,5発を雑に撃ちこんで
殴り飛ばされて、
立香が
キリシュタリアがステップを踏んだ。横に跳び、盾を
撃ち出した
藤丸が走ってくる。
二発目の光線を撃ち出すには距離が足りない。照準を付けずに乱射してもいいが、それだと彼を止められない。
———ならば
左足を大きく前に出し、右手を大きく振りかぶる。藤丸が近づいてくるのに合わせて
「キリシュタリアッ!」
カドックの声に我に返る。その瞬間、今まで気づかなかった音に気づいた。ガリガリという、
「——————ッ!!」
攻撃をキャンセルして横に跳びのく。前回りの要領で受け身を取ったキリシュタリアは、自分がさっきまでいた場所を回転した盾が
「……なるほど。投げた盾にバックスピンをかけることで、後ろから私を襲うように細工したのか」
正面からやってきた盾をキャッチした藤丸が
「カルデアスの発射台を探しに、機動力のあるペペロン伯爵と事象に干渉できるオフェリアさんが向かった。
それに
———その先を、立香は口にできなかった。
今まで
———地球白紙化が解けてから
立香は、自分の正面に立つキリシュタリアの後ろの空に、強い光を認識していた。
それはまるで、強く輝く大きな星から長い尻尾が伸びているような、巨大な彗星。……いや、『巨大』というのは立香から見て巨大という事だから、つまり、とても近くにある彗星ということだ。
キリシュタリアの真後ろ、視界の真ん中に、まるで絵の主題であるかのように真っ白に輝く
「———捕食遊星、ヴェルバー……」
無意識にキリシュタリアから距離を取り、
……やっぱり、
「そんなッ、まだ新年にもなってないのに……。来るのが早すぎる」
ピクッと、キリシュタリアの眉が上がった。そして彼は振り返る。
「なるほど。アレが、君が過去をやり直した本当の理由なんだね。
———“収穫の星・ハーヴェストスター”。“涙する目”のように見える、人類史の
キリシュタリアは背を向けたまま顔だけをこっちに向けて、フッとわらった。
「ようやく知れた気がするよ、君をね。
確かに君の案は魔術協会の方針に反する。私を含めた協会出身の人間なら、君の立場では『異聞帯による競争』を選択するだろう。
どこの異聞帯が
彼は、近よる立香を見て「うん」と一つ
「君の策はここに
地球を白紙化し、汎人類史と敵対し、我らカルデアと戦いながら、ヴェルバーに対しての一手を準備する。
なるほど———未来視を持つサーヴァント達が、皆そろって口をつぐむ
彼は正面———遊星に視線を戻しながら「
「我らカルデアはこれより、君たち異聞連合と一時的な休戦に入る。
『協力か競争か』という思想の戦いは———君の勝ちだ」
そうしてキリシュタリアは、周囲に残っていたマスター・サーヴァントたちに通達した。異聞連合と休戦すること、その期間は地球へと降り注ぐ脅威を排除し切るまでである事。
そして最後に———
「王、ソロモン。知っていましたね」と問いかけた。
「そりゃ、ここまで来ると
ボクが未来を
そう言うとソロモンは、今までのふわっとした笑顔を消した。
「けど、まだだよ」
———瞬間、世界が震えた。『ドンッ!』という空気の爆発音を聞いて、立香とキリシュタリアは周囲を見渡した。
キリシュタリアの真後ろ。
「アルクェイド!?」というキリシュタリアの声を聞いて、立香も目を
———どういう事だ。
ヴェルバーの彗星がやって来たのは、白紙化が解かれてから———つまり地球の時間が対外的に動き出してから、丸3日たった夜の事だ。ネモサンタたちの話では、朱い月によるアーキタイプ:アースの乗っ取りはさらにその後、ヴェルバーの先兵によって人類が
こんな……こんな。二つの災厄が同時に動き出すなんて……。
「違うッ、カルデアに推理されたんだ! 地球白紙化が解かれた後で、オレたちが
そうであれば、ヴェルバーよりも先に朱い月が介入してきた事の説明がつく。
「打ち上げさせないつもりか!? カルデアスを……」
立香の左隣。キリシュタリアが
「———そうか、“ヴェルバー”に“朱い月”。君が“やり直し”を行った
前を向く。
———そこには、長い金髪の女性が浮いていた。
青いプリーツの白いドレス、朱い瞳。特徴はアーキタイプ:アースと全く同じ。だが、左目だけが
立香は
「——————ッ! マシュ!!」
そして、走り出す。
周囲に目線をはしらせると、カルデアのサーヴァントたちもそれぞれに動き出したのが見えた。
視線を切って前を向き、走り、
そして世界は真っ白になった。
———立香が目を開けると、一面の夜空が見えた。
どうやら、倒れていたらしい。
手をついて立ち上がる……時に下を見ると、そこは全部海だった。
———海の上に、いた。
周りを見る。
さっきの攻撃の影響か、周囲
アーキタイプ:アース……の中に
見つけた立香は身構えたが、ソレは動かないままだった。
時間が止まったような錯覚の中でずっと動けないまま固まっていると、ついに、水蒸気が晴れていく。
カルデアの戦艦は……ない。けれど、
キリシュタリア、マシュ、アルトリア、太公望。立香の隣にはカーマとドラコー、そして、目の前に———
「全く———アクシデントには
「ビーストがカルデアに倒されるという事は、つまりこういう事だろう? なぁ、終局の
立香は、彼に向かってゆっくりと歩く。海の上を、硬い床があるように確かな足取りで、ゆっくりと。
正面の男を見る。
立香がそこまで行くと、彼は振り返って立香と目を合わせた。
その人が誰か、確信を持って立香は、その者の名を口に出す。
「—————人王、ゲーティア」