第2部ラスボス『逆行した藤丸立香』 作:プレイヤー名:⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
実は、第六話が先にできたのです。
この話を書いてる途中にムネーモシュネーをどの時系列に出すのか決まって、「ヤベぇ、先に掲示板を投稿しなきゃ」ってなって、第五話に取り掛かりました。
なので連続投稿です。
第五話は掲示板回なので、こっちから先に読んでも大丈夫です。
その時藤丸立香は、石造りの螺旋階段を
この螺旋階段は中心に柱がないタイプの螺旋階段で、筒状の石壁の内側に張り付くかたちで存在している。螺旋階段の中央は吹き抜けになっていて、真向かいまで、ここから20mくらいの距離があった。
「——————
そしてその、吹き抜けを
そして
「あらあら、そんなにも情熱的に求められてしまったら———立てなくなってしまいそう」
などという言葉と共に聞こえてくる『コツッコツッ』という、ピンヒールが石段を踏みしめる音。
体の線がはっきりと出る黒いドレスの上から白い
立香はその人物に目をとめて、そしてようやっと息を吐いた。
「ありがとう。キアラ」
「どういたしまして。
キアラは、「
「それよりも、マスター。ここにいらっしゃるという事は、やはり気づいておられるのですね。
———
キアラは立香と向かい合った状態から、真後ろに現れた
おそらく、なんらかの体術を使ったのだろうが……
一段、二段。キアラが
「さぁ、マスター。
もっと奥に、もっと下に
立香は、キアラを追って階段を
螺旋階段は暗く、
キアラの声が、耳に届いた。
「
立香が右隣にいるキアラを見る。
気づいたキアラが視線を
———そうして、キアラは話し始めた。
「ここは
かつてはアヴェンジャーのサーヴァントたちが
キアラは指を少しだけ動かし、2人の前面に巨大な魔力腕を出現させる。
その
「……いつの
そうしなければ、
自分の頬に右手を当てたキアラは、「あぁっツ! なんて
「
『自分は本来、カルデアのマスターになるべき人材ではなかった』
『適任者さえ現れたならすぐに取って代わられるだけの、能力の
『自分より優秀な人間など計り知れない
……これらは推測ですらありませんね。
2人が今
さらに内側、
「
なのに、自分よりも優れたマスターがカルデアに現れ、自分がお
そこから先を、どうやって生きれば
———これは
キアラは笑う。
「ですから———えぇ、ですから。マスターはただ生きているだけで、心に
本来であれば『
『コツッコツッ』と
「……ねぇマスター。マスターの体感時間で、あれから何年が過ぎたのですか?」
「…………何年になるだろう。
気がついたら過去に居て、そこから7度の人理修復をやり
それから、
立香は、自分の経験を全て語った。
道中に出てくる
しばらく語り、しばらく
静かに最後まで聴き終えたキアラが、「そう……、色々なことがあったのですね」……と、そっと息を吐き出した。
そして、ふと質問をした。
「———ねぇ、マスター。
カルデア行きを決めたのは『
ある日突然、
『世界を救えば元の平穏な生活に戻れる』などと
人理修復で1度、地球白紙化で1度。
そしてやり直しの世界での、7度の人理修復シミュレーション。
———合計、9度。
藤丸立香は世界を救い、そして
「そんな
マスター。
「…………『
藤丸立香は、右手の感触を確かめるように2度、握り込む。
「何度も心が折れそうになって、その
立香は、ゆっくりと顔を上げた。
キアラは立ち止まって、真正面で、真剣に話しを聞いていた。
「……本当は、元の生活に戻れないことも分かってる。だって、戦わなくて良くなった世界で、何をしたら良いのか
生き方を……忘れてしまったから」
キアラが
そして、そっと
「だからオレは夢見てるんだ。いつの日か全てが終わって、そしてみんなが笑ってる。そんな景色を夢見てる」
———たとえ、自分の心がどうしようもなく……壊れているのだとしても———
「そんな景色を、生きて見ることができたなら……。
きっと、幸福だと思える気がする」
「そうですか……夢を」と、キアラが
そしてふと、本当に思わずといった風に、立香の顔に手を伸ばした。
「———なるほど、そういう事ですか」
「ん? どういう事?」
「あぁ、いえ。こちらの話です。
「どんな言葉か、聞いても良い?」
「…………。『恋は夢見る心』だ、そうですわよ。
なんでも『恋は現実の前に折れ、現実は愛の前に歪み、愛は、恋の前では無力になる』のだとか」
キアラは、立香の
そして、「それでは
「本当にギリギリで間に合ったのでございますね。ならやはり……ジャンケンなどで順番を決めるべきでなかったという事ね」
というキアラの
◇ ◇ ◇
———2016年。人理焼却期間中。
ここは、今年の終わりに“終局特異点”と名付けられる場所。最新の王の固有結界。
つまりは、人王ゲーティアの
冠位時間神殿の玉座に、人王ゲーティアが座っている。
そしてその場に集っているのは、単独顕現を持っている者ばかりだった。
かつてビーストⅡだった、ラーヴァ/ティアマト。
かつてビーストⅢ(R)だった、殺生院キアラ。
かつてビーストⅢ(L)だった、カーマ。
かつてビーストⅣ(L)だった、光のコヤンスカヤ。
現在ビーストⅥ(S)である、ソドムズビースト/ドラコー。
そして、———「両儀式」。
玉座の人王が、周囲に立つ者たちに語りかけた。
「本来ならば、
だが、
———しかし、藤丸立香としては困るだろう。
人王の正面に立つ小さなカーマが、
「そんなのはどうでも良いんですッ! 今問題なのは、このままだとマスターさんが消失しちゃうってことでしょう!
どーするんですか!」
「———何も」
「ちょッ! 『何も』って、このままだとマスターさんが———」
「何もせずとも、それについては解決される。比較の獣も、良く駆け回っている。何もせずともマシュは生き、藤丸立香は
単独顕現持ちを集めたのは、その後の事を任せる
「勝手に話を進めないでください! こっちは
———。特務機関カルデアは、カルデアスに封印処置を
カルデアスの意思を凍結して、超高性能な地球模型として使用しているんです。このままでは……空想樹の植樹なんてできません。
マスターさんは『カルデアと戦う役割』を押し付けられたのに……。その役割自体が無くなってしまったら、あの人の存在は矛盾を抱えきれなくなって
カーマは長く息を吐き、心を落ち着けた。そして真っ直ぐゲーティアを見る。
「……それで? こんな状態でどう大丈夫だって言うんです?」
「大丈夫だとも。何故なら、あの男が藤丸立香だからだ」
「答えになってないんですけど……」
「答えているとも。キチンと、答えたとも。
———私はかつて、己の
ゲーティアが、カーマと共に並ぶ者たちを見た。
「———7騎だ。単独顕現を持つサーヴァントが、私の呼びかけに7騎も応じたのだ。比較の獣は塔に引き
カーマ、何を案ずることがある。
まさか……あの男の危機に立ち上がる存在が、我ら8騎だけだと思っていたのか?」
カーマは
ゲーティアは、ゆるく微笑んだ。
「言った
記憶を
「へえー。……誰なんですか?」
「それは『あらゆる並行世界を観測する性質』を持つ。レオナルド・ダ・ヴィンチが製造した存在証明用人工知能:ムネーモシュネーだ」
「ムネーモシュネーというと、———ああ。私の愛の巣がそこのアレに台無しにされた後にマスターさんを閉じ込めた……」
「記憶の女神は
どうあれ、彼女は藤丸立香を、必ず未来へ送り出すのだから」
いつの間にか止めていた息を鼻から吐き出したカーマは、大きく息を吸い込んで、さらに大きなため息を吐く。そして両手を上げて、降参の意を表明した。
「分かりました、分かりました。“過去と未来を見通す眼”を持つ
———でももし、本当にマズい事態になった時は、なり
「構わない。
元より我らは等しく
人王は己が玉座に座り直し、7騎のサーヴァントの全てを、視界に収めた。
「……難儀な男だ。
いくつか打っておきたい手はあるが、私は
誰か1人で
その人選を、ジャンケンで決めることになった。
自分は人理焼却を
よって審判を申し出たゲーティアによって、勝負開始が宣言される。
「……なるほど、『最初はグーの方式』で行くのだな。良いだろう。
では、始める。
——————最初はグー、———」
全員がグーを出すのを確認したキアラは、己が能力を全開にした。
“ロゴスイーター”。かつて自身が
それが何であれ、知性を有するものであれば
一切の
その、
「———は?」
瞬く間に大人モードに変身。シヴァの炎に焼かれた肉体という性質を“
「
カーマの“惑わす者”としての性質が、カーマ自身の肉体そのものを愛の矢に書き換える。———よって、神殿の空間そのものであるカーマの肉体に触れている存在全てに、強制的に、
「
ビーストⅢ:キアラとは本来、現実にできた
こうして、愛欲と
大気が揺れる音。愛欲と
右手をジャンケン用に突き出したままにして、左手を手刀にし、魔眼を発動。直死の魔眼によって2体のビーストの宝具効果そのものに死の概念を付与、“眼に見えるようになった宝具効果の死の線”に対して左手の手刀を走らせることで、愛欲と
ドラコーは激突する2つの宝具の影響を受けて、このままだとマズいことを
自分には精神異常系の攻撃に対する耐性を持つ“単独顕現”のスキルの他に、“獣の権能”というスキルも持っている。
『それがなんであれ、人間と
当然、キアラもカーマも“人間との交流がある存在”なので、その全ての攻撃が効きづらくなってはいる。———とは言え、ドラコー自身が人間と関わるようになったことでスキルランクが低下している今、元ビースト2体の宝具の効果をジャンケンの
なので気合いを入れてナイスバディに変身。
愛によって覚醒し“落陽を超えた姿”となった。
———そしてティアマトは感動していた。
だって、子供たちがこんなにも頑張っている!
テンションがガン上げになったティアマトは、上がりに上がったテンションのままに、ビースト2体の宝具効果を、さらに上からねじ伏せる。しかし同時に、「みんなの母として、これは見守るべき案件なのでは!?」と気づき、ジャンケンからスルリと離脱した。
結果、ティアマトによって強引に宝具が潰されて一瞬硬直したキアラとカーマ。
左手一本では全ての死の線に対応できず、意識を持っていかれかけた「両儀式」。
愛によって覚醒した姿を自称してしまったが
そしてジャンケンから抜けたティアマトと、
「——————勝負あり」
事態を見極めて、人王ゲーティアが
「
◇ ◇ ◇
「ジャンケンとかしてたんだ……」というのが、藤丸立香の正直な感想だった。
「ええ、それはもう……。とてもとても
話を一通り聞き終えた立香は、ふと疑問に思ったことをキアラに聴いた。
「聴きたい事があるんだけど。……コヤンスカヤはどうやって勝ったの?」
「ああ、その事ですか。
———“
これらの能力を使って、闇のコヤンスカヤさんは光のコヤンスカヤさんを支配していましたの」
相変わらず螺旋階段を
キアラは右手を
「
自我も自己もない存在には、愛も恋も無意味ですもの」
キアラが立ち止まり、藤丸立香を振り返る。
「さあ、マスター。
ここから先は最深部です。今はカーマさんが
———だって感情の大元は
最近になって
気がついたら平坦な地面に立っていて、階段など、周囲のどこにも見当たらなかった。
「カルデアと戦うことを決めたのは
戦争が本格化して異聞帯からも離反者が続出し劣勢に立たされている以上———どこに行っても、
藤丸立香は周囲を見渡す。
そんな炎の、全てを自分の手足に収めて、巨大なカーマは今も炎を焼いている。
立香が、最下層に
「別に、こんなのいくらでも焼けるんですけど……。マスターさんがやらないことには結局何も変わらないですから。
……大丈夫ですよね?」
「うん、———大丈夫。前に進むあり方を好きだと言ってくれた人がいたからね。
今度こそ、オレの力でやり切るよ」
藤丸立香は、自分自身の恩讐に向かった。恩讐の目の前まで来て———数秒。カーマは“
アイコンタクトでそのタイミングを教えてもらっていた立香は、カーマのスキル解除と全くの同時に距離を詰めて、両腕を炎に差し込んだ。
そしてかき分けるようにして、自分の体を潜り込ませる。
「彼女たちに
◇ ◇ ◇
目が覚めた時。立香は自分が、どこにいるのか分からなかった。
「———本当に良かった」というモルガンの声。
慌てて周りを見渡すと———目の前で、藤丸立香を
「我が夫、
見るとモルガンは自分の左腕を相手に向かって投げ捨てて、
「問題ありません。……と、言うより———これでもまだマシな方なのです。どちらか一本の腕を盾にする必要が生じたから、左腕を犠牲にしたまでのこと。
ここは私の
それはどういう意味かと前を見て、そして
———
ただそれだけだと思っていた。今は夜であるのだと。
…………でも、星の光を見て気づいた。
現実の汎人類史や
藤丸立香が
———
「だったらこれは……
「意識を取り戻してから私の魔術系統を弾き出すまで、こうも短時間でやってのけるとは……。
夜空から目を引き
……そうだった。妖精國で惑星轟が展開されているということは、彼がいるという事だ。
藤丸立香と真正面から
その7人の中にあって唯一浮遊している男。キリシュタリア・ヴォーダイムが口を
「“
マスターという存在が無事であれば、異聞連合が再起してくる可能性もある。
———で、あるからこそ。ここで確実に君を倒す。
君を
星々が
アルトリアと村正がその
キリシュタリアの足元にいるオフェリアとアナスタシアが、共に魔眼で
…………そんなカルデアの
モルガンの横顔が、見えたからだ。
「良く———踏み
カルデアの面々と
モルガンの
…………感じない。キアラとカーマは、もう離脱したようだった。
ビーストたちから聞かされたゲーティアの考えを実行に移すには、相手が無警戒である必要があるらしい。だからここで彼女たちが出てきて、気付かれてしまっては意味がない、とのことだった。
立香は
「……さて。このピンチをどう
「おいおい。この状況でまだ『勝てるかも』とか考えてるのかよ。マジでやばいな、おまえ」
……ベリル・ガット。黒い色のカルデア制服を身に纏い、マシュの盾の後ろに立ったその男は、立香の
その瞬間、カルデアのサーヴァントたちの雰囲気が変わった。
立香は、その雰囲気に見覚えがあった。積極的に攻めるのではなく、敵の攻撃をより警戒している雰囲気。この戦況を、より長く続けようとする意思。
つまりこれは『ベリル・ガットにこの場を託した』という事だろう。
ベリルが何かを
「おまえさぁ、まだやる気だろ? 最後の最後まで戦うって
ベリルの口が回る。
その姿がやり直し前の記憶と重なり、思わず言い返しそうになった口を押さえた。
「
せっかくここまで頑張ってきて、汎人類史をぶっ壊す寸前まで来たんだ。おまえはすげ〜よ。
……オレも時々思うんだ。汎人類史なんて壊れちまえば良いのにってな。オレもおまえの同類なワケ。だから本当に良く分かるんだぜ。———おまえ、死んでるだろ」
ベリルが盾からちょっと乗り出す。それにマシュが反応して、ベリルを守れるように立ち位置を変えた。
立香は笑う、できるだけ楽しそうに。マシュを自分の意思から外して、ベリルを見て言い返した。
「そんな事はない、ベリル・ガット。オレは生きてる」
「あん? 気づいてないのか? それはダメだろ、色々とさ。……それとも気づいてて見ないフリをしてるのか? だったら
———オレ、そういうの得意なんだよ」
何故ベリルが任されたのか、気づいた立香は無意識に「くそッ」と吐き捨てた。
藤丸立香は今の今まで、自分自身の心に燃える恩讐と戦っていたのだ。
カルデアのみんなとの接触の
2人の助力があって何とか持ち直した立香だったけれど……それだけだった。
———今、立香の心は自分でも分かるくらいにボロボロだ。ここでベリルに心の傷を
モルガンがスッと、立香の前に立つ。
「マスターの心は、我ら異聞連合の最重要課題でもあります。我々が何もしていないとでも?」
「できてねーじゃねぇの、実際。
ここに来て致命的な弱点が
———戦況はオレたちカルデアが優勢———ってか、もうチェックの段階まで来てる。後はおまえさん
モルガンが黙る。彼女の
矢が一本飛んでくる。
モルガンが
そしてモルガンは、吐き捨てるように
「逃走に対して
———マスター。もう少しだけ
「やれるだけやってみるよ。最後まで諦めない事は……得意だからね」
諦めないと口にしてもモルガンは安心した様子がない。彼女を見た立香が、力なく笑う。
それほどに、カルデアの戦力が強大だった。その中でも飛び抜けて苦戦したサーヴァントたちのうちの6騎が、今も立香の目の前にいるからだ。
グランドセイバー:アルトリア・ペンドラゴン
グランドランサー:ロムルス=クィリヌス
グランドアーチャー:オリオン
グランドキャスター:太公望
グランドライダー:ノア
そして、グランドバーサーカー:アルクェイド・ブリュンスタッド
ベリルが立香の目を
「———それで? ここからどうやって逆転するんだよ、兄弟」
「それは———」
「おまえのストレス値くらい、
戦えないんだろ?
格上との戦いにビビってんのか、それとも戦いそのものが恐怖なのか。どっちにしろそろそろ限界だろ?」
「限界などと、貴様にマスターの何が———」
「分かるさ。……
おまえさん達の戦い方からは
呼吸を整える立香の耳に、ベリルの声が染み込んできた。
「———ほうら、
気づいた時には遅かった。
「
宮本武蔵の斬撃を防いだ竜種に向かって、ベリルは軽い調子で文句を言った。
「おいおい……。ダメだろそりゃ、ソイツは“悪い王さま”なんだぜ。正義の騎士としちゃあ、カルデアに付いてくれないと」
「……何を言うかと思えば。
ベリル・ガット、私たち竜種は全てを見てから
そういう
そして今しがた、宮本武蔵を
「マスター、避難誘導は間に合わせたわ。
———もう、加勢しても
「もちろん!」と
「総員ッ、全力戦闘!」という彼の声を
それら全てを
◇ ◇ ◇
浮いているキリシュタリアの足元にいるカドックは、後ろに下がってきたベリルとキリシュタリアの会話を聞いていた。
「悪い、しくじった」と、視線を前に固定したままベリルが言う。
「気にしてないさ」とキリシュタリアが返答する。
「元より、異聞帯陣営の持つ逆転の策の
「それを言うなら……いや、やっぱ無しだ。それで? 気づいた事はあるか、キリシュタリア。
オレは『逆転の策なんて無い』って方に
カドックの左手、地面から2m程のところに浮遊しているキリシュタリアがハッと笑った。———瞬間、降り注ぐ隕石の全てが迎撃されて爆発。その衝撃で発生した爆風が、キリシュタリアのマントを
「まさか、思ってもいない事を口にするものではないよ、ベリル。何に気づいたのか、教えてくれるかい」
「つってもまあ、大したものは無いぜ。ただアイツらに“逆転の一手”ってヤツがあるなら、それはこの局面を切り抜けた先の話だってことくらいさ。使える戦力はまだあるだろうに出し
まぁ逆に言えば、ここで殺せば次はない。戦力は分散してるうちに叩くのがセオリーってな」
「であれば、ココが正念場だね」
キリシュタリアはまたしても隕石の流星群を撃ち込んだ。同時にオリオンは⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎を狙い撃ち、アルトリアはエクスカリバーを振りかぶる。
ロムルス=クィリヌスはかつての属国たるブリテンの存在を
カドックはさらに後ろに下がってアナスタシアの隣に移動、全体を
「
「心配のしすぎよ、カドック。相手は計画のためにこの場に戦力を集中できないし、他の異聞帯からの援軍も
何より、異聞帯の住民が次々と寝返ってきている現状では、時間をかけるほどこっちが有利よ」
「それは分かってるさ。計画とやらにかける
だからここで倒す。それは分かる。
……でも、どうしても不安なんだよ」
「———そう」とアナスタシアは言葉を発する。それから、隣に確認を取った。「いいかしら?」と。
「ええ、もちろん」
カドックの左にいるアナスタシアのさらに左から、オフェリアの声がやってきた。
「私はキリシュタリアから、そのために
「……。どういう事だよ」
「そのままよ。『カドックの慎重さは時に、我々の見落としを補ってくれる』と。
どこへなりと連れて行きなさい。必ず生きて帰してあげるわ」
カドックが気になった場所はなんて事ない、戦場から
だがカドックの
「何でッ! …………何でお前がここにいる!?」
カドックは彼女を見て、思わず
「あり得ないだろ。僕たちは、全ての異聞帯の歴史を
彼女は、「あははは……」と
「えっと、コレ……どうするべきかな?」
「戦うべきじゃないかな。我らが王が戦っている事は伝え聞いているし、
「そうだね、それじゃあ始めましょうか。
外の世界、正しく繁栄した歴史からお越しくださった皆様———どうかブリテンでの日々が、楽しいものとして心に残りますように」
などとやっている男女2人組を目の当たりにしたカドックは、自分たちがとても大きな認識の
……どこが間違っていたのか。いや、どこから間違って認識していたのか。
思わずオフェリアを振り返り、彼女もまた
「2人とも逃げるぞ!」
我に帰ったオフェリアが魔眼を起動。くるりと反転して、3人は逃げ出した。
「妖精暦の英雄、救世主トネリコは……女王暦のモルガンと同一人物だろう!?」
走りながら、カドックは確認する。
「モルガンが
何で救世主トネリコが……この時代に生きてるんだ!?」
◇ ◇ ◇
戦場を上から観察して、キリシュタリアは納得した。
「ふむ、やはり
サーヴァントたちの一点集中攻撃はモルガンの時空跳躍術式によって回避された。
だが
「ロムルス=クィリヌス、宝具の準備を」
「白兵戦での足止め+太公望による時空跳躍の妨害+近接距離からの範囲エクスカリバー+迎撃か回避の後に放たれるローマ特攻攻撃。
君の持ち
「キリシュタリアッ!」
カドックが呼ぶ声がする。
振り返った視線の先に、駆け寄ってくる2人と1騎の姿があった。
「キリシュタリアッ、ダメだ! 僕たちの認識は間違っていた。一度立て直せッ! 何かがおかしい……。
根本的に何かがおかしい!」
「それはどうい———」
『ドンッ』という音と共に、爆風がここまで飛んできた。
モルガンと境界の竜、それと⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎がいる場所に視線を走らせると、聖剣でガードしたアルトリアと共に、何騎かのサーヴァントが黄金の光の柱から吹き飛ばされているところだった。吹き飛ばした方の少女は、そのまま槍に魔力を注ぎ込み、その黄金の魔力波動でオリオンの一射の軌道を
それだけではない。滑空するアルビオンの背に着地した少女の真下、地面の上にも、魔力を
その輝きの
魔力が膨れ上がり、黄金の輝きで満たされる。
「——————
「ロムルスッ!」
指示を受けるまでもなく、ロムルス=クィリヌスは己が宝具を守りとして展開していた。
「
「———
———そうしてまた、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎には逃げられた。
◇ ◇ ◇
「ご苦労だったね」と
彼らを
「マジかよアイツら、あの状況から逃げ切るのかよ。笑っちまうな!」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ」
「あの後、トネリコとウーサーの助力を得て⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎は離脱。私たちの調べた妖精國史は、根本から間違っていたことが明かされた。
———あのクソッタレのマスターの事だもの、この事実にどんな罠が張ってあっても不思議じゃないわ」
その言葉にダ・ヴィンチが乗っかる。マシュが差し出したカップを受け取り、適当な椅子に座りながら口を挟んだ。
「確かにねぇ。天才としたことが考えもしなかったよ。まさか、特異点以外にレイシフトして霊基が霧散しない方法を見つけているだなんてね」
最後にキリシュタリアが入室して、長方形のミーティングテーブルの上座に座った。
「まずは謝らせてほしい、私の
言い切らないうちに、キリシュタリアは後頭部を叩かれて机に頭を打ちつけた。叩いた本人
「魔力暴走による肉体の崩壊と再構成を、私の後ろを取るためだけに使うだなんて……」
「仕方ないでしょ、あんたの抱え込み
優雅な所作で自分の椅子に腰掛けて、ゆっくりと紅茶に口をつけた。
「だいたい、コレは何かがおかしいと誰も気づかなかった事が問題なの。ここからは問題の洗い出しと考察をするべきであって、責め合いをしたいのでも謝罪合戦がやりたいのでもないわ」
「だから———」と周囲を見渡した。
「何でもいいわよ、気づいた事を教えてちょうだい」
「…………。それじゃあ、僕から」
一瞬の沈黙の後、カドックが
まずは彼が、自分たちの認識をすり合わせる。
ブリテン島の異聞帯は元々歴史なんて持てないくらい崩壊していた。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎に召喚されたモルガンが妖精歴4000年にレイシフトして、異聞帯の歴史を守った。けど、特異点ではない場所へのレイシフトでは、サーヴァントとは言え霊基は
———だから⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎が召喚したモルガンは
「……でも違った。モルガンもトネリコも、両方とも存在していた。僕たちの推測は、何かが致命的に間違っていたんだ」
カドックの問題提起の後、オフェリアがスッと手を
「モルガンとトネリコが2017年に共に存在しているのなら、考えられる事態は一つでしょう。つまり、『召喚された方のモルガンは、霊基を
妖精國には、“今を生きるトネリコ”と、“サーヴァントとなったモルガン”の両方がいる事になるわ」
「でも、それだけなら大した事ではないわよね」とペペロンチーノが感想をもらした。
「彼らを殺し切れる可能性は低くはなかったわ。にも
「まあ、ペペロンチーノの言う通りだよ。この2つの事象の違いは、ハッキリ言って大した違いじゃない。敵の戦力がいくらか隠れていたってだけだ。
……でも僕には、それを今まで隠していた理由が分からない。あんな
「ただの雑感じゃないの」と
「まあでも、分からなくはないわね。
あの始皇帝が、その戦略の
皆の発言を黙って聞いていたキリシュタリアが、そのままダ・ヴィンチの方を向いた。
「これらの意見を聞いて、レオナルドはなにかあるだろうか」
「そうだねぇ。モルガンが過去にレイシフトしても霧散しない方法がない
先に、特異点となり得るモノを送り込んでおく事だ。そうして妖精歴4000年が特異点となった後で、モルガン自身がレイシフトすれば良い」
「ただ問題なのは、特異点じゃない場所に何を送り込んでもすぐさま消滅してしまうってコトさ」と彼女は続ける。
「それを送り込むだけで歴史を大きく歪めるもの。かつ、事象の矛盾に
———真っ先に思いつくのは聖杯かな。現地の人間か妖精に聖杯を渡して歴史を歪めてもらった後で、自分もその時代にレイシフトして再度歴史に干渉する。それ以外の存在であれば大抵消滅の…………ああ」
ダ・ヴィンチは人差し指を一歩立てて顔の前に持ってきた。
「そういえばもう一つあったね、ビーストだ。
ビーストであれば“単独顕現”を保有している。消滅する心配はないし、歴史を歪めて余りある人類悪だ。
コヤンスカヤと名乗っている彼女がビーストの候補であろう事はほぼ確定しているから、先に彼女を妖精歴4000年に送り込んでからモルガンも追いかけるようにレイシフトすれば、今の状況と
ダ・ヴィンチは少し笑って、「それでも、カドックの疑問には答えられそうにない」と返答した。
「大切なピースが、まだ隠されてる気が———」
『ドンッ!』という轟音と共に、イマジナリ・ボーダーが激しく揺れる。
ぺぺが立ち上がり女性陣を抱き止めて支え、ベリルは「何だよッ」と状況の確認に飛び出そうとした瞬間———。
赤いランプが点灯し、アラートが鳴り響く。
『総員、
揺れる船内を走り、全てを投げ出して管制室に入室するAチームとダ・ヴィンチ。
ダ・ヴィンチの「ロマニっ!」という声に応えて、Dr.ロマンが状況を
「これはマズいよ! デッカいモフモフがビームを出しながら攻めてきた!」