第2部ラスボス『逆行した藤丸立香』 作:プレイヤー名:⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
大変お待たせしました!
めちゃくちゃな難産でした……。これも一発ネタなんてタグをつけるからだと、反省していた2週間でした。
※すみません、誤字報告の処理をミスってしまって大変な事になってしまいました。現在はバックアップから貼り付けなおしましたので、なんとかなっているかと思います。
“ここすき”をしてくださった方々、すみません。
お騒がせいたしました。
ここは、虚数戦闘大艦イマジナリ・ボーダー。サーヴァントたちのマイルームの一室。
カイニスの
その日の朝、カドックは朝食も
ノックして入室の許可をとる。返事を待って入ってみると、ロード・エルメロイ二世の他にアナスタシアが座っていた。
「なんだってお前がいるんだよ……」
カドックの気の抜けた声に、飲み終えたカップをソーサーに置いたアナスタシアが立ち上がりながら返答した。
「だって……
ミスターもそうだけれど、朝食はちゃんと
ロード・エルメロイ二世は飲みかけのカップをソーサーに戻して、息を吐きながら立ち上がる。カドックの方に歩きながら口を開いた。
「カドック、君の行動はレディに読まれていたようだが……気にする事はない。女性とはそういうものだ。
朝食を共にしよう。
君の話は、その後にでも聞かせてほしい」
カドックはロード・エルメロイ二世の後ろを歩きながら、右隣のアナスタシアに小声で聞いた。
「……で、結局お前は何であそこにいたんだよ」
アナスタシアもまた、カドックの方に首を
「そんなもの、そろそろ
「だから、何で今日、あの人を頼るって知ってるんだよ」
その言葉を聞いたアナスタシアはキョトンと目を丸くして、それから「ふふっ」と少し笑う。
「
何かをするにしても、何もしないとしても……。———現状を
———こういう時、
アナスタシアはこちらの表情をチラリと確認して、それからニヤリと勝ち誇った。
「ほら。
当たったでしょう?」
「……完敗だよ」
カドックは両手を上げた。首を振り、ため息をつく。
「このまま、我が姫君が疑問の答えを見つけてくれたら言う事はないんだがな」
「あら、それは現代魔術科の
アナスタシアは
「
「マスターにとっては、
“解体屋”。“魔術世界の破壊者”。“神秘に対する冒涜者”。
全ての努力が失敗した後の最終手段として頼るのも、とても
「そういった二つ名は普段から否定して回っている。レディも
そう言って“ロード・エルメロイ二世”は、スライドしたドアをくぐって食堂に足を踏み入れた。
そうして、お
「あら、これは珍しい組み合わせね」
最初に気づいたのはアナスタシアだった。そのテーブルについていた面々を見て、歩み寄って声をかける。
メルトリリス、パッションリップ、アルトリア・キャスター、そして殺生院
イマジナリ・ボーダーの食堂のテーブルは
メルトリリスが「そっちの方こそ珍しい組み合わせね」と返答し、パッションリップが相席を
パッションリップの隣の席はもうどうしようもなく使えないので、カドックはメルトリリスを
カドックの左隣に座るメルトリリスは、
「まあ……まだマシな顔になったじゃない。悩みは解決したの?」
「してない。でもタイムリミットが近い。
カドックがちぎったパンをスープに
「でも
「
カドックはひと息入れて、それからメルトリリスを見た。
「そうしたらアイツ、『
———カドックは昨日、ケルヌンノスや神たるアルジュナから
そこで
あの時、モリアーティは、一人
そして、「全く……実に
「犯罪理念としては実に見事だ。実際のテクニック
それに比べれば———
モリアーティの言葉を受けて、カドックが「どういう事か説明しろ」と言うと、「コレに関しては君自身が見つけることだネ」と返ってきた。
「いいかな。君が
———こう言った事情はね、
ここで私が語ってしまえば、それは『ジェームズ・モリアーティの主観による真実』となってしまう。そうなれば、君のこれからの判断にも影響が出るだろう」
モリアーティはソファの上で優雅にふんぞり返り、組んだ脚と指はそのままに、最後にこう締めくくった。
「君は『ただ真実が知りたい』というものではないだろう? 主観の入らぬ事実を見つけ、それをもとに『自分は何をするべきか』を
ならば少なくとも、“悪のカリスマ”に聞くべき
———だから。
「だから僕は、ロード・エルメロイ二世にアポイントを取った。明日———つまり今日のことだが———、朝からの時間をもらったんだよ」
カドックの話が終わると、テーブルに
このテーブルで朝食をとっている全ての者が、
「まさか……。ここで私に推理しろとは言わないよな」
「……でも、えっと……」と、メルトリリスにフォークでハンバーグを食べさせてもらっていたパッションリップは、遠慮がちに発言した。
「わたし、知りたいですっ。カドックくんが悩んでいること」
その言葉を聞いたメルトリリスが、二世にフォークを突きつける。ドヤ顔で勝ち誇った。
「さあ、私たちも聞いてあげるから、ここでキリキリ推理しなさい。
それに———語るに落ちたわね。『
だって普通なら『私に推理しろとは———』っていう感じになって、『ここで』って単語は出てこない
再度、沈黙。
何秒かがたった後で、二世は
「……承知した。確かに、ここで推理できない
———とは言えそのピースは、ある程度このメンバーの証言で
二世は黒い紙コップホルダーを持ち上げて、コーヒーをひと口、流し込んだ。目を細めながらお盆の上に戻して、紙コップの中のコーヒーを見ながら語り始めた。
「まずは、君の疑問を整理しよう。
カドック、君の知りたい事は“
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎は
「そうだ。
……トネリコやウーサー、男のアーサー王なんて戦力を、アイツはギリギリまで隠し続けた。“アルビオンの左手”だって、僕たちとヤツらとの戦争が本格的に開始して
でも、『アイツがそうやって出し
カドックは一度みんなを見渡して、それから、自分の心の内を
「異聞帯陣営からの離反者には四つのパターンがあった。
一つ目は、そもそも、汎人類史とは戦うべきではないというパターン。
二つ目は、どうしても⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎を殺したいんだというパターン。
そして三つ目の、カルデア勢力が優勢だからウチに
それと“その他”」
カドックの握る手に、少し力がこもった。
「一つ目と二つ目は、僕たちの離反政策の成果だとみる事もできる。でも三つ目『カルデアが優勢だから離反した』タイプは、明らかにアイツの落ち度なんだよ。
昨日初めて出てきた“ケルヌンノス”とかいう神性だってそうだ。最初から戦線に参加していたなら、妖精國での戦いで、僕たちが優勢で有り続けるなんて事は起こらなかった
実際その
———それなのにアイツは、ギリギリまでトネリコの存在を
「なるほど」
二世は、テーブルの上に両
「そして彼が、そうまでしてトネリコたちを隠していた理由として真っ先に思い当たったのが、妖精國の歴史の誤認だった、と。
———確かに私も、その意見には賛成だ。
『トネリコが今も、モルガンとは別の存在として生きている』という事を知らなければ、我々はその歴史を誤認する。妖精國各地に点在していた遺跡や妖精たちの
我々カルデアは今まで、この歴史を現在の妖精國の歴史に変えた
「———けど、トネリコも生きてるんじゃ、その考えが間違ってたって事になる。
モルガンは霊基を維持したまま過去へレイシフトしていて、過去の自分と共に妖精國の歴史を変えていってたんだ」
カドックの言葉の後、二世の左に座っている殺生院
「でも、それがどうしたと言うのです? 妖精國の歴史が改変されていた事に変わりはないのでしょう?
ならば、そう
「そう、
なのにアイツは、この事実を何ヶ月も隠し続けた。自分たちが劣勢になっても、異聞帯から離反者が
それが何か異様に思えてくるんだよ。何かを見落としているような気がする。だから昨日モリアーティのところに行って———今日、ロード・エルメロイに時間を作ってもらったんだ」
カドックの左でカチャっという音がした。ティーカップをソーサーに置いたメルトリリスは目線を上にして、頭の中を探りながら言葉を探していた。
「ねぇカドック、そのモリアーティの言葉なんだけど、私にはよく分からないのよね。“犯罪理念”とか“完全犯罪”とか“一発ネタ”とか……あれ、どういう意味なの?」
「いや、実は僕も分からない。モリアーティのヤツが思わせぶりな事を言うのはいつもだから、適当に聞き流したんだけど」
「———ああ、それについては簡単だよ。レディ」
二世は今も、ずっと指を絡めたまま、目を細めてじっとしている。
「“一発ネタ”というのは、『最初の1回だけ効果があるネタ』のことを指す。一回のボケで笑いをとる“一発ギャグ”と混同して使われることもあって、だいたいはギャグやお笑いの世界で使われる用語だ。
だが、それ以外の時に使われない事もない。
“ネタ”という言葉は、“アイデア”という意味で使われる事もあるからな。その言葉は、小説などの創作物を
……だが、そのほとんどは“一発ネタ”にはならないんだ。恋愛もの、ゾンビなどのパニックもの。それが何であれ、一度しか使えないネタなど、創作の世界ではほとんど無い。同じネタであったとしても、作者が違えば、それは作者自身のオリジナリティの一部として評価されるものだからだ。
———だが、たった1つだけ、それが絶対に通用しないジャンルがある」
どれほどオリジナリティを
「——————“ミステリ”、と呼ばれるジャンルだ」
二世は同じテーブルに座る面々を見渡してから、「もちろん“一発ネタ”という特性は、ミステリに限定されるものではないが」と前置きした。
「だが、ジェームズ・モリアーティが“犯罪理念”“完全犯罪”などという推理小説でよく使用される用語と共にこの言葉を口にしたのなら、
メルトリリスの顔から納得の色を読み取ったのか、二世は一つ
「モリアーティ氏がカドックの疑問を受けて“犯罪理念”、“完全犯罪”と口にした以上、藤丸立香という少年は何らかの罪を犯したのだろう。そしてそれを隠すために、トネリコたちを我々に見せる
「あるいは現在、
殺生院の言葉に、二世は「それもあり
「とは言え、その理由に心当たりがない事もない。モルガンが霊基を
———つまり、仮説その1だ。
『藤丸立香はコヤンスカヤが過去に飛んでいたことを隠すために、コヤンスカヤの関与によって変化した事象をカルデアから隠していた』
まずはこの仮説を、検証してみよう」
二世は
「実際、『トネリコの存在がバレた
そして左を向き、殺生院のもう一つ隣に座っているアルトリア・キャスターに問いかけた。
「アルトリア・キャスター、妖精國の歴史を教えてほしい」
アルトリア・キャスターはパンの最後の
「そういうの、あんまり
———アルトリアは語る。自分は“巡礼の旅”を完成させるために楽園から派遣された存在だけど、自分が湖水地方に流れついた時には
モルガンは妖精歴の終わり、つまり2000年前に、みんなと力を合わせてケルヌンノスを説得した。そしてヴォーティガーンを封印することで、ブリテンには平和がおとずれた。
「これが女王歴元年の
異聞帯の、結婚する時にチョコを
アルトリアは少し笑った。
「こうして妖精國は一つになって、妖精たちは罪を
理由は確か……『妖精國に本当の危機が
———たとえば、アラヤによって派遣される人理の守護者は“カウンターガーディアン”と呼ばれたりする。これは
よって絶対に勝てる
これと同じことを、モルガンは聖剣でやろうとした。
汎人類史で作られた聖剣:
モルガンはこれを、未来にやってくる本当の危機のために使おうとしたのだ。
だから妖精たちに命令して、聖剣
「そうやって、延期を続けて2000年。ついに
アルトリアが
———大きくなったら、どこへなりと行きなさい。そこで新しく“自分の意味”を見つけるのです」と。
その言葉の通りという
アルトリアの言葉に「なるほど」と言ったロード・エルメロイ二世は「ならば君の知る限りでいい、2000年前にあったという“王の
二世はそこで言葉を切った。アルトリアの不思議そうな顔を見て「何かおかしかったかね、レディ」と問いかける。アルトリアは「えっと……」と口ごもりながら、言葉を選んでいた。
「えっと、
異聞連合の首脳陣に言っちゃうとイヤな顔されるかもな〜くらいの……」
「それでも
「あのね、実は“異聞帯の王”っていう
だからモルガンとかゼウスとか、始皇帝とかを“異聞帯の王”って言っちゃうと、本人たちに
アルトリア・キャスターの助言に、カドックは声を上げずにはいられなかった。テーブルに手をつき、腰を少し上げて、ちょっと
「待て、じゃあ誰の事なんだ? “異聞帯の王”っていうのが“各異聞帯にいる最高存在”のことじゃないなら、一体なんの……いやそれより、『1人だけを指す言葉』だって? 異聞帯が白紙化地球に投影されるより前の段階から“7つの異聞帯でただ1人を指す言葉”が存在するなんて、おかしいだろ!」
「えっと、異聞帯の成り立ちについては
それは、ただ1人の人間を指す言葉なのです。
———藤丸立香という、異聞帯の全てにおいて、古今東西ただ1人の王さまを」
カドックは沈黙した。疑問で言葉が出なかったからだ。
人間なのに、何千年も前から王だと? 秦の始皇帝のように自分自身を改造したのか? いや……そんな感じはしなかっ———
「
カドックの耳にロード・エルメロイ二世の声が飛び込んできた。
「そういう事かッ! だから概念防御を
これは確かに、トネリコを
と、ブツブツ
「ロード・エルメロイ二世、もし良かったらもう一度モリアーティに———」
「いや。それはあまりおすすめ
「それは———」
カドックは
「それはジェームズ・モリアーティが異聞帯側のサーヴァントで、スパイか裏切り者だってことか?」
「それに
二世はゴソゴソと
「私の推理に間違いがなければ、我々カルデアと異聞帯との敵対構造そのものが意味をなさなくなる。“敵”や“味方”といった概念が崩壊し、我々の認識は
———朝の食堂、その
カドックは、同じテーブルを囲む
ロード・エルメロイ二世を
「ロード・エルメロイ二世、
「いや……確証がない。
だから君たちに聞きたい。
もしも私の推理に間違いがなければ、君たちはその
二世は胸ポケットから携帯灰皿を取り出し、葉巻の灰を落とす。もう一度葉巻の煙を吸い込んで、その先端を携帯灰皿の中に入れた。
そして、右手の人差し指を立てる。
「まず一つ、全ての異聞帯で
「それは……」とカドックが空中を見上げた。頭の中を
「そう言われれば、確かにそうかもしれない。他の異聞帯で戦ってた時は、陣の後ろにいることはあっても、前線に直接出てくることはなかったと思う」
「よく分かった」
そう締め括った二世は、中指も立てて2本をしめした。
「それでは2つ目だ。
カドック、アナスタシア、メルトリリス、パッションリップ。君たちはそれぞれ、ビーストⅢのLとRと
ビーストⅢ(L)の魔王カーマ/マーラ。
ビーストⅢ(R)の
———この2体のビーストと戦っていた時、このビーストたちが口にした『あの人』や『彼』、『マスター』と言った言葉があった
ビーストたちは、どういう文脈でそれらを口にしたのかを、私に教えてほしい」
「そうね」とカドックの正面に腰掛けるアナスタシアが返答した。
「吉原特異点は『この世全ての人間に快楽を叩き込むための特異点』だったのだけど、カーマ本人は、誰か1人を
今から思えば、カーマは自分の次にやってくる
二世が、今度はメルトリリスとパッションリップの方を見た。
「
少しして、パッションリップが「えっと……」と声を上げる。
「ビーストの方のキアラさんは、あの時たしか、『苦しい汎人類史など
———セラフィックス特異点。
真っ先にレイシフトできたカドック以外のAチームは、特異点の時間加速によって置き去りにされた。
よってあの時、ビーストⅢ(R)が
その最終決戦で、殺生院キアラはカドックたちに問いかけたのだった。
「
後は、
———それで
それは
魔力で編み込まれた真っ白な手、巨大な
「
———何が不満なのです?
「
「それだと歴史ごと消えてしまうじゃない。
———やっと分かったわ。どうして人間たちが歴史を積み上げるのか。どうして、人理を守ろうと
残したかったのね。
……生きて、育ち、出会って、恋をした。
だったら、その
「それを実行できると思って?
この特異点の危険度を誤認させてマスターの数を
———そうなれば、この並行世界を
もう十分苦しんだのではないですか? ならば苦しい汎人類史など
———心地よい世界線だけを残す。それが並行世界論なのですから———
パッションリップが語り終えると、ロード・エルメロイ二世は
「———なるほど、良く分かった。
ならば、やはり
ロード・エルメロイ二世は、テーブルに置いてある携帯灰皿の口から葉巻を取り上げ、大きく煙を吸い込んだ。
「—————謎は、これで解けた」
次回『第九話:ロード・エルメロイ二世の推理』
明日14日の00:00に予約投稿、完了。